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胚盤胞の基礎知識|胚盤胞移植のメリット・デメリット・着床率を上げる方法

胚盤胞と聞いても、どんなものなのかイメージできる人はそう多くいません。

そこでこの記事では、胚盤胞に関する以下の内容をお伝えします。

  • ・胚盤胞や胚盤胞移植の基礎知識
  • ・胚盤胞移植を受けるメリット・デメリット
  • 着床率を上げる方法
  • ・胚盤胞移植の費用

胚盤胞や胚盤胞移植に関して正しく学んだうえで、あなたに必要な治療かを考えてみましょう。

胚盤胞(はいばんほう)とは?サクッとわかりやすく解説

胚盤胞とは、受精後5〜7日経過した受精卵のことです。胚移植において着床率を高めるために、受精卵を培養で胚盤胞まで成熟させて用いられることで有名な受精卵です。

この章では、胚盤胞に成長する過程の初期胚とともに、胚盤胞の基礎知識について学びましょう。

初期胚

初期胚とは受精後2〜3日目の受精卵のことです。

受精卵は受精後に細胞分裂をして胚になります。そして、初期胚は細胞が2〜8個まで分裂した状態のことを示します。張りがあり、均等な大きさで分裂したものが良い初期胚とされており、初期胚移植に用いられます。

胚盤胞

胚盤胞(はいばんほう)とは受精5〜7日目の受精卵のことです。採卵後、初期胚よりも培養する日数が長いことから初期胚よりも成長した胚とイメージするとわかりやすいでしょう。

胚盤胞は以下の3つから構成されており、70〜1,000個程度の細胞数まで分裂します。

  • ・内細胞塊
  • ・栄養外胚葉
  • ・胞胚腔

以下のイラストがわかりやすいため、ご覧ください。

内細胞塊
園田桃代ARTクリニック/桃クリブログより画像引用)

内細胞塊とは「胎児になる部分」、栄養外胚葉は「胎盤になる部分」のことです。胞胚腔とは「内細胞塊や栄養外胚葉以外の胚内のスペース」のことです。

移植後に着床が成功すると各組織の成長が始まり、やがて胎児へ成熟します。

参考資料:園田桃代ARTクリニック/桃クリブログ

受精卵について

受精しても必ずしも妊娠が成立するわけではありません。当然のことながら受精卵にも良し悪しがあります。そして胚移植においては、良い受精卵を選べるかどうかが着床率に直結します。

そこでこの章では、胚盤胞のグレードについて触れた後、胚移植に向き・不向きな受精卵の特徴をお伝えします。胚移植で着床率を少しでも上げたいという方は、必ず押さえてもらいたい内容になっているのでぜひ最後までお読みください。

胚盤胞のグレード|ガードナー分類

胚盤胞のグレードには「ガードナー分類」が用いられます。

ガードナー分類については、以下の表をご覧ください。

ガードナー分類
ivfdoctor.jp/グレードの悪い胚盤胞についてより画像引用)

ガードナー分類とは、「胚盤胞腔内の広がり」を6段階で、「内細胞塊」「栄養外胚葉」の成長程度を3段階で分類して、胚盤胞を総合的に評価するグレードのことです。

また、一般的には3AA以上が良好と考えられており、着床率が高い胚盤胞移植に適した受精卵とされています。もちろん3AA以下の受精卵でも胚移植して着床する可能性もあります。

ただし、うまく成熟できなかったり、染色体異常が発症する危険性が高まったりすることがわかっています。

移植対象の胚盤胞の発達段階は「グレード3〜6」であり、妊娠率が最も高いのは「グレード4」です。グレード4で内部細胞塊が「AもしくはB」だった場合、臨床的には「約50%」の確率で妊娠(胎児心拍を確認できる)の治療成績がある病院もあります。

参考資料:ivfdoctor.jp/グレードの悪い胚盤胞について

胚移植に向いている受精卵の特徴

胚移植に向いている受精卵の特徴は、以下のとおりです。

  • ・均一に細胞分裂している
  • ・細胞に張りがある
  • ・フラグメンテーションが少ない

胚移植に向いている受精卵は分裂した細胞の大きさが均一であり、細胞自体に張りがあります。また、フラグメンテーションが少ないことも重要な条件です。

フラグメンテーションとは、不規則かつ不均一な状態で細胞分裂をした状態のことです。この割合がゼロもしくは少ないほど、良い分裂過程を歩む受精卵と言えるでしょう。

また、胚移植後も子宮内膜への着床率が高く、胎児に成長できる可能性が高いと言われています。

胚移植に向いていない受精卵の特徴

胚移植に向いていない受精卵の特徴は、以下のとおりです。

  • ・不均一に細胞分裂している
  • ・細胞に張りがない
  • ・フラグメンテーションが多い

胚移植に向いていない受精卵は、細胞分裂が不均一で張りがありません。また、フラグメンテーションの数が多いことから、細胞自体が正常な成長過程を歩めないことがわかります。

つまり、形態不良な受精卵であるということです。

このような受精卵は胚移植をしても着床やその後成熟できる確率が低いため、胚移植に用いられる受精卵としてはあまり推奨されていません。

胚盤胞移植とは?

不妊治療 体外受精

胚盤胞移植とは、胚盤胞を子宮に戻す移植方法のことです。

採取した卵子精子体外受精させて、培養にて胚盤胞まで成熟させるのが特徴です。初期胚を移植するよりも成熟した受精卵を戻せるため、着床率が高まるメリットがあります。

この章では、胚盤胞移植について「胚盤胞の種類や対象者」「実施の流れ」について詳しく見ていきましょう。

胚盤胞移植について具体的なイメージを持つことで、積極的に治療に参加できるようになります。

胚盤胞移植の種類

胚盤胞移植には、以下の2種類があります。

  • ・新鮮胚盤胞移植
  • ・凍結融解胚盤胞移植

新鮮胚盤胞移植とは採卵周期に合わせた胚移植法で、採卵後5〜6日で胚移植を行います。排卵後の「受精〜胚盤胞までの細胞分裂」の過程を体外で管理して確実に行え、排卵周期に合わせた胚移植ができるため、自然な流れで妊娠ができます。

一方の凍結融解胚盤胞移植とは、凍結した胚盤胞を時期に合わせて融解して胚移植を行う方法で、近年主流の胚移植法です。妊娠率の高い時期を狙い移植できるため、新鮮胚盤胞移植よりも着床率が高いメリットがあります。

また、採卵直後の移植を避けられるため子宮収縮を助長する可能性が低く、流産のリスクを減らせます。

一方で胚盤胞を凍結保存すると「約3%」の胚盤胞が使用できなくなることも知っておきましょう。

参考資料
厚生労働省/個別事項(その4)不妊治療の保険適用(その2)
医療法人社団 生新会/凍結融解胚移植とは?新鮮胚移植の違いと、凍結・融解の方法

胚盤胞移植の対象者

胚盤胞移植の対象者となる条件は、以下のとおりです。

  • ・初期胚移植にて状態の良い初期胚(受精卵)を移植しても妊娠に至らなかった方
  • ・何らかが原因で子宮内では初期胚から胚盤胞に成熟できない方

体外で成熟状況を確認できる胚盤胞移植の方が、初期胚よりも着床率は上がります。ただし、対象者の状況によっては初期胚移植の方が、妊娠率が高いため、担当医と話し合ってあなたに最適な治療法を選びましょう。

【4ステップ】胚盤胞移植の流れ

以下の流れで胚盤胞移植を行います。

  • STEP1:タイムラプスによる観察で状態の良い胚盤胞を選ぶ
  • STEP2:胚盤胞をカテーテルで回収
  • STEP3:胚盤胞を子宮内に戻す(移植)
  • STEP4:黄体補充を行う

胚盤胞移植は着床率(妊娠率)を上げるために、状態の良い胚盤胞を選ぶことが重要です。そこでタイムラプスにより成熟の経過を確認して、最も胚移植に適した胚盤胞(受精卵)を選びます。

移植には胚盤胞や移植先(子宮内膜)を傷つけないようにカテーテルと呼ばれる柔らかい管が用いられます。移植時に違和感が生じる可能性はありますが、先が尖ったものではないため痛みは感じにくいでしょう。

移植が完了したら、最後に黄体補充を行います。黄体を補充すると胚盤胞が着床しやすくなるからです。妊娠後に受精卵が黄体となりプロゲステロン黄体ホルモン)を分泌するのを人工的に行うイメージです。

以上が胚盤胞移植の流れになります。胚盤胞移植は心身の負担も大きいため、体調を相談しながら慎重に進めましょう。

胚盤胞移植を受ける6つのメリット

夫婦は病院の医師から説明を受けた

胚盤胞移植を受けるメリットは、以下の6つです。

  • メリット①:胚盤胞まで成熟したことを確認して移植できる
  • メリット②:初期胚移植よりも着床率が高い
  • メリット③:異所性妊娠のリスクが少ない
  • メリット④:単一胚盤胞移植で多胎(双子以上の)妊娠を予防できる
  • メリット⑤:男性不妊の可能性も探れる
  • メリット⑥:生理学的に自然な流れで妊娠できる

胚盤胞移植のメリットや他の治療との違いがわかれば、治療に対して積極的になれます。

では、1つずつ解説します。

メリット①:胚盤胞まで成熟したことを確認して移植できる

胚盤胞まで成熟したことを確認して移植できます。

胚盤胞とは初期胚が成熟した受精卵のことです。受精卵は着床する(妊娠を成立させる)ため、受精後5日〜1週間かけて卵管から子宮へ向かいます。その過程で細胞分裂を繰り返して初期胚から胚盤胞に成熟します。

しかし、受精卵の中には細胞分裂がうまくできず、着床できないことも少なくありません。

一方で胚盤胞移植なら胚盤胞まで培養できたことを確認して移植するため、胚盤胞まで確実に成熟できた受精卵のみ使えます。自然妊娠における着床までの過程をすべてクリアした状態で移植できます。

メリット②:初期胚移植よりも着床率が高い

初期胚移植よりも胚盤胞移植の方が、着床率が高いこともメリットです。

なぜなら、初期胚から胚盤胞まで正常に成熟したのを確認して胚移植ができるからです。

つまり、フラグメンテーションが多い胚盤胞を除外した形で移植できることになります。順調に成熟した胚盤胞であれば、子宮内膜に着床するために必要な生命力があり、妊娠率が上がるでしょう。

一方の初期胚移植だと無事に胚盤胞に成熟したかを確認できません。胚盤胞まで成熟できない受精卵は着床(妊娠成立)ができないため、胚移植を受けても思うような結果は得られないでしょう。

ただし、初期胚移植よりも培養期間が「約3日」多いため、受精卵が胚盤胞まで成熟できない可能性もあります。初期胚のうちに胚移植をしておくか、それとも着床率を高めるために胚盤胞まで培養できるのを待つかを天秤にかけて選ぶ必要がありそうです。

メリット③:異所性妊娠のリスクが少ない

胚盤胞移植なら異所性妊娠(子宮外妊娠)のリスクを大幅に減らせます。

胚盤胞移植ならすでに胚盤胞まで成熟した受精卵を子宮内膜に移植できるからです。

自然妊娠の場合、受精卵は5日〜1週間ほどかけて卵管から子宮内膜まで移動します。その過程で細胞分裂を繰り返し、初期胚から胚盤胞まで成熟します。

一方で胚盤胞移植は子宮内膜に直接移植するため、異所性妊娠や前置・低置胎盤が予防可能です。特に卵管破裂などのリスクがある異所性妊娠はお母さんの命に関わるため、予防できると安心ですよね。

参考資料:公益社団法人 日本産科婦人科学会/異所性妊娠

メリット④:単一胚盤胞移植で多胎(双子以上の)妊娠を予防できる

基本的には単一移植であるため、多胎妊娠の予防ができます。

単体妊娠に比べて多胎妊娠は、以下のリスクが高いと言われています。

  • ・早産
  • 妊娠糖尿病
  • 妊娠高血圧症候群
  • ・HELLP症候群
  • 胎児発育不全
  • ・胎児形態異常
  • ・子宮内胎児死亡
  • ・血栓症

不妊治療によりやっとの思いで妊娠しても、多胎妊娠だと上記のリスクが伴い、ハイリスク出産になります。授かった赤ちゃんを確実に出産するためにも、これらのリスクは避けたいところです。

ただし、一卵性双生児(1つの受精卵が2つに分かれるもの)は予防できないことは知っておきましょう。予防できるのは、二卵性双生児(2つの受精卵が同時に育つこと)です。

参考資料
厚生労働省/多胎児支援のポイント P3
大阪大学大学院医学系研究科付属ツインリサーチセンター/一卵性と二卵性

メリット⑤:男性不妊の可能性も探れる

男性不妊の可能性についても探れるメリットもあります。

というのも、培養するために顕微鏡で精子の数や活動性を確認できるからです。

不妊治療で成果がでない方の中には、男性側に問題があるケースも少なくありません。一方で不妊治療に積極的に参加する男性は少なく、女性だけで悩んでいることもあります。

新たな治療方法を考えるきっかけを作れる点でも、胚盤胞移植を受ける価値はあるでしょう。

メリット⑥:生理学的に自然な流れで妊娠できる

胚盤胞移植にて胚盤胞を子宮内膜に移植すると、その後は自然妊娠と全く同じ経過をたどります。

つまり、生理学的に自然な流れで妊娠が可能です。

妊娠後の生活を思い描いて不妊治療に臨んでいる方も少なくありません。自然妊娠した方と同じように、一人の妊婦として胎児とともに妊娠生活を歩める喜びを感じることもできるのです。

また、順調に細胞分裂した選りすぐりの胚盤胞を移植するため、未成熟や移植する時点での欠点を最小限に抑えることもできます。妊娠に対する安心感という観点からも胚盤胞移植を受けるメリットは十分あると考えられます。

胚盤胞移植を受ける2つのデメリット

生殖医療の中心で卵を扱う。 女の子の手は人間の dna で動作します。 ピペットを使った診療所での卵子の人工受精

前章で解説したように胚盤胞移植にはさまざまなメリットがあることがわかりました。

一方でデメリットがあることも知っておかなければなりません。

具体的なデメリットは、以下の2つです。

  • デメリット①:胚盤胞まで成熟しないことがある
  • デメリット②:初期胚移植より費用が高い

デメリットまで知ったうえで、胚盤胞移植があなたにとって最適な治療法なのかを考えられるようになりましょう。

デメリット①:胚盤胞まで成熟しないことがある

受精卵が胚盤胞まで成熟しないケースも少なくありません。

初期胚よりも3日程度培養する期間が長いため、培養途中に育たなくなることもあります。移植に向けて体調管理や子宮内の環境調整をしていても、移植する胚盤胞がないと苦労が水の泡になります。

一般的に、培養により受精卵が胚盤胞まで育つ確率は「約30%」と言われています。培養中に受精卵が育たなくなる理由は「培養環境」「代謝不良」「DNAの損傷」などさまざまです。

しかし、初期胚移植に比べて、事前に「代謝不良」「DNAの損傷」の問題を見つけられ、正常な受精卵を選んで移植できると捉えると、胚盤胞移植の方が安全性の高い移植と考えられます。

デメリット②:初期胚移植より費用が高い

当然ですが、初期胚移植よりも培養期間が長い分、治療費は高くなります。

しかし、初期胚移植よりも高額になっても、以下の理由から胚盤胞移植を選ぶメリットがあります。

  • メリット①:胚盤胞まで成熟したことを確認して移植できる
  • メリット②:初期胚移植よりも着床率が高い
  • メリット③:異所性妊娠のリスクが少ない
  • メリット④:単一胚盤胞移植で多胎(双子以上の)妊娠を予防できる
  • メリット⑤:男性不妊の可能性も探れる
  • メリット⑥:生理学的に自然な流れで妊娠できる

詳しくは前章の「胚盤胞移植を受ける6つのメリット」で解説しているので、ご覧ください。

胚移植をはじめとする不妊治療は自由診療(各施設により設定金額が異なる)であるため、具体的な金額は明言できません。具体的な金額が知りたい方は、治療を受ける施設に直接確認してみましょう。

また、経済的な負担を少しでも減らしたい方は、厚生労働省の助成金を活用する方法もあります。経済的な理由で赤ちゃんを諦めるのは勿体ないです。助成金に関する説明はこの記事の「胚盤胞移植の費用」でしているので、ぜひご覧ください。

胚盤胞移植で着床率を上げる3つの方法

胚盤胞移植を受ける方の多くは、期待と不安を胸に抱いています。

「本当に妊娠できるだろうか?」
「妊娠するためにもっとできることはないか?」

妊娠したいという気持ちが強いからこそ、さまざまなことが頭をよぎります。

そこでこの章では胚盤胞移植で着床率を上げる3つの方法について解説します。

  • 方法①:自分に合った胚盤胞の移植方法を選ぶ
  • 方法②:疲労やストレスを溜めない
  • 方法③:早めに治療を始める

念願の妊娠に少しでも近づけるための参考にしていただけると幸いです。

方法①:自分に合った胚盤胞の移植方法を選ぶ

あなたに合った胚盤胞の移植方法を選びましょう。

胚盤胞移植には以下の2種類があります。

  • ・新鮮胚盤胞移植
  • ・凍結融解胚盤胞移植

一般的には、凍結融解胚盤胞移植の方が、治療実績が高いと考えられています。

理由は以下の2つです。

  • ・凍結保存することでコンディションの良い最適な時期に移植できるから
  • ・採卵直後に移植をしないため、子宮収縮になるリスクが少ない

ただし、不妊症の原因やその時の状況によっては新鮮胚盤胞移植の方が、妊娠率が高いこともあるため、治療前にパートナーや医師と相談してあなたにとって有効な治療法を決めましょう。

方法②:疲労やストレスを溜めない

疲労やストレスは生殖環境へ悪影響を及ぼす可能性があります。

着床や妊娠継続をするための環境作りには、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が必須です。しかし、過度な疲労やストレスで自律神経が乱れてホルモンバランスが崩れると、プロゲステロンがうまく分泌されなくなります。

つまり胚盤胞移植の準備ができたとしても、プロゲステロンがうまく分泌されていないと効果的な胚移植にはなりません。妊娠が成立したとしても流産や死産のリスクが高いことも考えられます。

また、近年の研究により胚盤胞移植で妊娠率の高い妊婦は、着床前にストレスが少ない(ストレスに関するホルモンの分泌が少ない)ことがわかっています。

過度な疲労やストレスは妊娠率を下げる危険性があるため、回避や緩和できるような自分なりの方法を見つけられると良いですね。

方法③:早めに治療を始める

当然ですが、男女ともに年齢とともに生殖機能が衰えていきます。つまり、状態の悪い卵子や精子ができやすくなるのです。

胚盤胞移植で培養するのは、ご両親の卵子と精子です。培養する卵子もしくは精子に欠損があれば、順調に成熟できません。仮に成熟したとしても、染色体異常などの先天性障害を発症するリスクが高いこともわかっています。

また、子宮環境や体力面でも若いに越したことはないため、胚盤胞移植を受けるなら早い時期に始める方が妊娠率を高められるでしょう。

年齢別に見た不妊症の治療実績|染色体異常が発症する確率

不妊治療は始める時期が早ければ早いほど治療成績が高いです。

なぜなら、男女とも年齢とともに生殖機能が低下するからです。つまり、卵子や精子も劣化するのです。

胚盤胞移植に使用する精子や卵子は、ご両親から採取します。そのため、高齢になるにつれて胚盤胞に成熟できる受精卵の数が減ります。

実際、日本産科婦人科学会ARTのデータによると、生殖補助医療による妊娠・生産・流産率は、以下のようになっています。

日本産婦人科学会が2017年に発表した生殖補助医療(体外受精・人工授精・顕微授精)の妊娠率・生産率(子どもが生きて生まれてくる確率)・流産率
公益社団法人 日本産科婦人科学会ARTより画像引用)

胚移植(総ET:青線)の治療成績(妊娠率)は、以下のとおりです。

  • 20代:45%以上
  • 30代:30〜45%
  • 40代:5%未満〜30%未満

また、40代では妊娠できたとしても流産率が「約30〜70%」と非常に高いことがわかります。

次に、年齢別に見た染色体異常の発症率については、以下の表をご覧ください。

ダウン症確率
NIPT Japan/ダウン症のある赤ちゃんの成長より画像引用)

染色体異常に関しても年齢が上がるにつれて発症する確率が高くなります。

このことより、胚移植を含む不妊治療を受けるなら早い方が良いことがわかりますね。

参考資料
公益社団法人 日本産科婦人科学会ART
NIPT Japan/ダウン症のある赤ちゃんの成長

胚盤胞移植の費用

特定不妊治療費助成申請書 夫婦 家族 出産 妊娠 妊活(手帳)

不妊治療は自由診療であるため病院やクリニックごとに治療費が異なります。「新鮮胚盤胞移植をするか」「凍結融解胚盤胞移植をするか」によっても費用が違いますが「およそ12〜30万円」で設定していることが多いようです。

とはいっても治療費が高額であることに変わりはありません。これまでの不妊治療代や妊娠後の経済的な負担を考えると、少しでも安く受ける方法がないか知りたいですよね。

そこで、厚生労働省が行う不妊症の方を対象にした特定治療支援事業を活用すると良いでしょう。給付対象であれば、 1回の不妊治療で「30万円」の補助を受けられます。

特定支援事業
厚生労働省/個別事項(その4)不妊治療の保険適用(その2)P41より画像引用)

経済的な負担を理由に妊娠を諦めるのは非常に残念なので、この制度を利用して少しでも妊娠する可能性の幅を広げてみましょう。

参考資料:厚生労働省/個別事項(その4)不妊治療の保険適用(その2)P41

まとめ: 胚盤胞移植で着床率を上げよう

夫婦は産院の女医に説明を受けている

以上、胚盤胞や胚盤胞移植に関する基礎知識について詳しく解説しました。

胚盤胞とは受精後5〜7日経過した受精卵のことでした。胚移植には「初期胚移植」と「胚盤胞移植」の2種類があり、胚盤胞移植なら着床率を上げることができます。

胚盤胞移植を受けるメリットは、以下のとおりでした。

  • メリット①:胚盤胞まで成熟したことを確認して移植できる
  • メリット②:初期胚移植よりも着床率が高い
  • メリット③:異所性妊娠のリスクが少ない
  • メリット④:単一胚盤胞移植で多胎(双子以上の)妊娠を予防できる
  • メリット⑤:男性不妊の可能性も探れる
  • メリット⑥:生理学的に自然な流れで妊娠できる

胚盤胞移植は、正常に成熟した受精卵(胚盤胞)を最適な時期・場所に移植できます。そのため、通常の不妊治療より妊娠率を高めることができます。そして、移植後は自然妊娠と同じ経過をたどれることから、より自然な形で妊娠生活を始められるでしょう。

一方で、初期胚移植よりも培養工程が長いため、治療費が高くなるデメリットがありました。そこで、経済的な負担を少しでも減らすために厚生労働省の助成金を活用する方法がありました。

胚盤胞移植に関するこれらのメリット・デメリットを知った上で、治療を望むか決められると良いですね。

この記事が胚盤胞移植に対する不安を解消するのに役立てれば幸いです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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