InstagramInstagram

葉酸の取り過ぎはどこから?妊娠中の上限量と副作用、サプリを重ねるときの計算

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・がん薬物療法専門医・総合内科専門医。

葉酸の取り過ぎの目安は、サプリや葉酸を加えた食品から摂る葉酸の合計で、1日900〜1,000μg(年齢による)です。ふだんの食べ物に含まれる葉酸には上限がなく、食事で取りすぎる心配はほとんどありません。上限が決められている主な理由は、大量の葉酸がビタミンB12の不足を見つけにくくするためです。葉酸サプリの推奨量400μgや、800μg配合のサプリは上限の範囲内で、取りすぎで赤ちゃんが自閉症になるという因果関係も確かめられていません。この記事では、どこからが取り過ぎなのか、取りすぎると何が起こるのか、複数のサプリを重ねて飲むときの計算の仕方を、国の基準と研究をもとに臨床遺伝専門医が解説します。葉酸をいつから・いつまで、どれだけ摂るかは、葉酸サプリはいつからいつまで?妊婦に必要な理由と効果、1日の摂取量で解説しています。

この記事でわかること
📖 読了時間:約14分
💊 上限量・副作用・サプリの計算
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 葉酸はどこからが取り過ぎですか?

A. サプリや葉酸を加えた食品から摂る葉酸の合計が、18〜29歳で1日900μg、30〜64歳で1日1,000μgを習慣的に超えると取り過ぎです。食べ物にもともと含まれる葉酸は、この計算に入れません。1日だけうっかり超えた場合と、毎日超え続けている場合とでは、意味がまったく違います。

  • ➤上限の対象 → サプリ・葉酸を加えた食品の葉酸だけ。食事の葉酸は数えない
  • ➤取りすぎのリスク → ビタミンB12の不足が見つけにくくなり、神経の障害が進むおそれ
  • ➤赤ちゃんへの影響 → 自閉症や喘息の原因になるとは確かめられていない
  • ➤800μgのサプリ → 上限の範囲内。ほかのサプリと重ねるときは合計を計算する

1. 葉酸の取り過ぎはどこから?上限量の考え方

葉酸の取り過ぎかどうかは、サプリや葉酸を加えた食品から摂る葉酸の合計が、年齢ごとの「耐容上限量」を超えているかで判断します。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、18〜29歳で1日900μg、30〜64歳で1日1,000μgを上限としています[1][2]。

耐容上限量とは、過剰摂取による健康障害を未然に防ぐために設定された、習慣的な摂取量の上限の指標です[1]。したがって、習慣的にその量を超え続けないための目安であり、1日だけ超えたことで直ちに健康障害が起こることを意味する値ではありません。

上限はサプリなどで足した葉酸だけに適用される

葉酸の上限は、サプリや葉酸を加えた食品など「通常の食品以外の食品」に含まれる葉酸だけに適用されます。野菜や豆類など、ふだんの食べ物に含まれる葉酸には上限がありません。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の表の注に、耐容上限量は通常の食品以外の食品に含まれる葉酸に適用する、と明記されています[1]。米国でも、食品にもともと含まれる葉酸には上限が設けられていません[3]。

「通常の食品以外の食品」には、葉酸サプリ、葉酸を含むマルチビタミン、妊婦向けの栄養補助食品のほか、葉酸を加えた飲料やシリアルなどが含まれます。サプリの葉酸は「プテロイルモノグルタミン酸」という形で、体に吸収されやすいのが特徴です。上限を決めるときに数えるのは、この形の葉酸です[1][4]。

年齢別の上限量

💊 葉酸の耐容上限量(1日あたり)

年齢 上限(サプリなどの葉酸) 参考:推奨量(食事から)
18〜29歳 900μg 240μg
30〜64歳 1,000μg 240μg
65歳以上 900μg 240μg
妊活中〜妊娠初期に勧められる量 サプリなどから400μg(食事の240μgに上乗せ)

※「日本人の食事摂取基準(2025年版)」[1]および健康長寿ネット[2]による。妊娠中・授乳中も、年齢ごとの上限が適用されます。

妊活中に勧められる400μgは、上限の半分以下です。つまり、推奨どおりに葉酸サプリを1種類飲んでいる限り、取り過ぎになることはありません。問題になるのは、複数のサプリを重ねたり、推奨量の何倍もの製品を自己判断で飲み続けたりする場合です。2000年に厚生省が妊娠を計画する女性に葉酸サプリを勧めたときも、1日1mg(1,000μg)を超えないよう注意を添えています[5]。

食べ物の葉酸で取りすぎにならない理由

食べ物の葉酸は体に吸収される割合が低く、調理でも失われやすいため、食事だけで取りすぎになる心配はほとんどありません。米国国立衛生研究所(NIH)の栄養補助食品局によると、食品にもともと含まれる葉酸で体に利用されるのは約50%です。これに対し、サプリの葉酸は食事と一緒に摂っても少なくとも85%、空腹時ならほぼ100%が利用されます[3]。

さらに葉酸は水に溶けやすく熱に弱いビタミンなので、ゆでたり水にさらしたりすると減ってしまいます。葉酸の多い野菜をたくさん食べても、上限を気にする必要はありません。むしろ妊娠中期以降は、食事からの葉酸を増やすことが勧められています。葉酸の多い食品や調理のコツは、葉酸を含む食べ物とは?で紹介しています。

2. 葉酸を取りすぎるとどうなる?

葉酸を取りすぎたときに最も注意したいのは、ビタミンB12の不足が見つけにくくなることです。そのほか、まれに過敏症(アレルギー反応)が起こることがあります。葉酸は水溶性ビタミンですが、高用量を習慣的に摂取しても問題がないという意味ではありません。特にサプリメントなどからの合成葉酸には耐容上限量が設定されており、過剰摂取ではビタミンB12欠乏に伴う神経障害を見逃す懸念などがあります。

ビタミンB12の不足が見つけにくくなる

大量の葉酸は、ビタミンB12不足による貧血を改善してしまう一方で、神経の障害は改善しません。そのため、ビタミンB12の不足に気づくのが遅れ、神経の障害が進むおそれがあります。これが、葉酸に上限が設けられている主な理由です[3][2]。

葉酸とビタミンB12は、どちらも赤血球をつくるのに欠かせません。どちらが不足しても、骨髄で赤血球のもとになる細胞がうまく分裂できず、大きく未熟な細胞のまま壊れる巨赤芽球性貧血が起こります。ビタミンB12の不足は、血液検査で巨赤芽球性貧血を契機に見つかる場合がありますが、ビタミンB12欠乏による神経症状は貧血がなくても起こり得ます。

ビタミンB12が不足貧血+神経の障害
▶
葉酸を大量に摂る上限を超え続ける
▶
貧血だけ改善血液検査で気づきにくい
▶
神経の障害が進むしびれ・歩きにくさ

ところが大量の葉酸を摂っていると、貧血のほうだけが改善します。貧血というサインが消えてしまうので、ビタミンB12の不足そのものに気づかないまま、手足のしびれや歩きにくさといった神経の障害が進んでしまうことがあるのです。脊髄の神経が傷む後外側脊髄変性は、発見が遅れると回復しにくくなります[2]。NIHのビタミンB12の資料は、神経の症状は貧血がなくても起こりうるため、早く見つけて治療することが大切だとしています[6]。

ビタミンB12が不足しやすいのは、高齢者、萎縮性胃炎や悪性貧血のある人、胃や腸の手術を受けた人、クローン病などの腸の病気がある人、動物性食品をとらない菜食の人、メトホルミン(糖尿病の薬)や胃酸を抑える薬を飲んでいる人などです[6]。妊活中の若い女性の多くは当てはまりませんが、菜食を続けている人や胃の手術を受けたことがある人は、葉酸だけでなくビタミンB12の状態についても医師に相談してください。

💡 用語解説:ビタミンB12

ビタミンB12(コバラミン)は、肉・魚・卵・乳製品などの動物性食品に含まれる水溶性のビタミンです。葉酸と協力して赤血球をつくるほか、神経の働きを保つのに欠かせません。吸収には胃から出る「内因子」というタンパク質が必要なため、胃の病気や手術のあとは不足しやすくなります。

まれに起こる過敏症(アレルギー反応)

ごくまれですが、葉酸サプリでじんましんやアナフィラキシーなどのアレルギー反応が起こることがあります。国内でも、市販のサプリメントに含まれる葉酸によってアナフィラキシーショックが起きた例が、日本アレルギー学会で報告されています[7]。

これは量の多さではなく体質による反応で、推奨量の範囲で起こったものです。頻度は非常に低く、葉酸サプリを避ける理由にはなりません。ただし、飲んだあとにじんましん、顔や唇の腫れ、息苦しさなどが出たら、すぐに服用をやめて医療機関を受診してください。サプリに含まれる葉酸以外の成分に反応している場合もあります。

「代謝されない葉酸」について分かっていること

体が処理しきれない量の合成葉酸を摂ると、使える形に変わらないままの葉酸が血液中に残ります。ただし、それが健康に悪い影響を与えるかどうかは確かめられていません。NIHの栄養補助食品局も、合成葉酸の摂取量が体内で変換できる量を超えると、代謝されない葉酸が体内に残ることを説明しています[3]。

この「代謝されない葉酸」を理由に、活性型葉酸(メチル葉酸)を勧める情報もあります。葉酸を働く形に変える酵素の遺伝子や、活性型葉酸との違いについては、MTHFR遺伝子とはで詳しく解説しています。推奨量の範囲で合成葉酸を摂取していることを理由に、代謝されない葉酸の存在だけから健康被害を推定する根拠は確立していません。

3. 妊娠中に葉酸を取りすぎると赤ちゃんに影響はある?

推奨量の葉酸サプリで、赤ちゃんに悪い影響が出るという根拠はありません。取りすぎが自閉症や喘息の原因になるという説も、確かめられていません。インターネットではこうした説がよく見られるため、研究で分かっていることを整理します。

葉酸の取りすぎで自閉症になる?

葉酸の取りすぎが自閉症の原因になるとは確かめられていません。むしろ、妊娠初期に推奨量の葉酸サプリを飲んでいた母親の子どもで、自閉症が少なかったという大規模な研究があります。

ノルウェーの子ども85,176人を追跡した研究(2013年)では、妊娠前4週から妊娠8週までに葉酸サプリを使っていた母親の子どもは、使っていなかった母親の子どもに比べて、自閉性障害と診断されるリスクが低い傾向がありました(調整オッズ比0.61)[8]。

一方、米国ボストンの母子1,257組を調べた観察研究(2018年)では、出産後2〜3日に採取した母体血漿の葉酸濃度が非常に高かったグループ(60.3nmol/L以上)で、子どもの自閉スペクトラム症のリスクが約2.5倍という関連が報告されました。ビタミンB12の濃度が非常に高かったグループでも、同じような結果でした[9]。

ただし、この研究の著者自身が、結果は「仮説を立てるための段階のもの」であり、妊娠中に適切な量の葉酸を摂ることは重要だと述べています[9]。どちらも観察研究で、「関連がみられた」ことは「原因である」ことを意味しません。この研究は葉酸サプリの摂取量とASD発症を直接比較した試験ではなく、出産直後の母体血漿葉酸濃度との関連をみた観察研究です。血中濃度は摂取量だけでなく、体質や代謝、採血時期などにも左右されます。推奨量の400μgの合成葉酸摂取が自閉スペクトラム症を増やすという因果関係は確立していません。

自閉スペクトラム症は、多くの遺伝的な要因が関わって起こると考えられています。原因についての最新の知見は、自閉症と遺伝の関係:遺伝専門医が解説する最新の研究で解説しています。

喘息やアレルギーとの関係は?

妊娠中に葉酸サプリを飲むと子どもが喘息になりやすい、という関連は、複数の研究をまとめた解析では認められていません。米国疾病予防管理センター(CDC)の研究者らが14の研究をまとめたメタ解析(2013年)では、妊娠前後から妊娠初期の葉酸サプリと子どもの喘息との関連は、リスク比1.01で、関連を支持する結果ではありませんでした[10]。

ただし著者らは、研究の数や種類が限られているため、さらに研究が必要だとも述べています[10]。現時点で、喘息を心配して推奨量の葉酸サプリを控える理由はありません。

妊娠中期以降も葉酸サプリを飲み続けてよい?

上限の範囲内であれば、妊娠中期以降も葉酸サプリを飲み続けて問題ありません。日本の食事摂取基準では、神経管閉鎖障害のリスク低減を目的とする400μgの付加は妊娠を計画している時期から妊娠初期が対象で、妊娠中期・後期は食事由来葉酸に+240μgの付加量が設定されています[1]。

妊婦向けのマルチビタミンには鉄やカルシウムなども含まれているため、医師に勧められて続けている人も多いでしょう。その場合も、ほかのサプリと重ねて上限を超えていないかだけ確認してください。時期ごとの摂り方は、葉酸サプリはいつまで飲む?で詳しく解説しています。

\ 妊娠中のサプリや赤ちゃんへの影響、専門医にご相談ください /

📅 遺伝カウンセリングを予約する

お問い合わせはこちら | 遺伝カウンセリングとは

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「関連がある」と「原因である」は違う】

葉酸と自閉スペクトラム症の関係を検討した研究には、周受精期の葉酸摂取とASDリスク低下の関連を報告したものがある一方、出産直後の母体血漿葉酸濃度が非常に高い群でASDとの関連を報告した観察研究もあります。後者の研究者自身も、この結果を仮説生成的な知見と位置づけています。

一方、周受精期の葉酸摂取による神経管閉鎖障害のリスク低減は、ランダム化比較試験などで確立しています。観察研究で報告された関連と因果関係を区別し、一般的な妊活では推奨量を守って摂取することが重要です。

4. サプリを重ねて飲むときの計算

複数のサプリを飲むときは、それぞれのサプリと、葉酸を加えた食品に含まれる葉酸を足し合わせ、その合計が上限を超えないかを確認します。食べ物にもともと含まれる葉酸は、計算に入れません。国立健康・栄養研究所も、多くのサプリメントには有効成分が高い濃度で加えられているため、過剰摂取や成分どうしの相互作用のリスクがあると注意を呼びかけています[4]。

計算の基本:合計するのはサプリなどの葉酸だけ

計算に入れるのは、製品の成分表示に「葉酸」として書かれている量です。成分表示は「1日の目安量あたり」で書かれていることが多いので、1粒あたりの量ではなく、実際に1日に飲む量に換算して足し合わせます。

見落としやすいのが、葉酸サプリとは別に飲んでいるマルチビタミンや、鉄・カルシウムのサプリに葉酸が含まれている場合です。「葉酸」と名前がついていない製品でも、成分表示を確認してください。葉酸を加えた飲料やシリアル、栄養補助食品を毎日とっている場合も、その分を足します。

計算例

🧮 サプリを重ねたときの葉酸の合計(例)

組み合わせの例 葉酸の合計 判定(30〜64歳の上限1,000μg)
葉酸サプリ400μgのみ 400μg 上限内(推奨どおり)
葉酸800μg配合のマルチビタミンのみ 800μg 上限内
葉酸サプリ400μg+葉酸400μg入りのマルチビタミン 800μg 上限内
葉酸800μg配合のマルチビタミン+葉酸サプリ400μg 1,200μg 上限超え
葉酸サプリ400μg+葉酸入り飲料200μg+鉄サプリ(葉酸160μg) 760μg 上限内

※数値は計算方法を示すための例です。実際の含有量は、お使いの製品の成分表示で確認してください。18〜29歳の上限は900μgです[1]。

表のとおり、1種類ずつなら上限内でも、葉酸を多く含む製品を2つ重ねると、上限を超えやすくなります。妊活中に葉酸サプリを飲み始め、妊娠後に医師から妊婦用のマルチビタミンを勧められて、前のサプリもそのまま続けていた、というのはよくあるパターンです。新しいサプリを始めるときは、今飲んでいるものに葉酸が入っていないかを確認し、重なる場合はどちらか一方にしましょう。

エレビットの葉酸800μgは多すぎ?なぜ800μgなのか

葉酸800μgは、日本の上限(18〜29歳900μg、30〜64歳1,000μg)の範囲内なので、それだけで飲むなら多すぎではありません。バイエル薬品の妊婦向けマルチビタミン「エレビット」は、1日の目安量で葉酸800μgを含むと公式に表示しています[11]。

800μgという量は、国際的な推奨の範囲にも入っています。米国予防医療専門委員会(USPSTF)は2023年、妊娠を計画している人や妊娠の可能性がある人に、1日0.4〜0.8mg(400〜800μg)の葉酸サプリを勧めています[12]。また、ハンガリーで行われた、神経管閉鎖障害の初発予防を示した代表的な試験では、葉酸0.8mgを含むマルチビタミンが使われました[13]。

ただし、日本の国の推奨量は400μgなので、800μgの製品は推奨量の2倍にあたります。800μgの製品に、さらに葉酸サプリを足すと上限を超えることになります。800μgの製品を飲むなら、ほかの葉酸サプリは重ねないのが原則です。なお、錠数や成分は製品の改良で変わることがあるので、必ずお手元の製品の表示で確認してください。

5. 間違えて2回飲んだ・取りすぎていたときの対処

葉酸サプリを間違えて2回飲んでしまった程度なら、慌てる必要はありません。次の日からいつもの量に戻せば大丈夫です。耐容上限量は、習慣的に摂り続ける量の上限として決められたものだからです[1]。

1日だけ多く飲んだ場合

1日だけ上限を超えても、それで健康に問題が起こるとは考えにくいです。耐容上限量は習慣的な摂取を対象とする指標なので、1日だけ誤って多く摂取したことだけで健康障害が起こるとは通常考えにくいです。飲んでしまった分を調整するために、翌日の分を倍量にしたりする必要はありません。翌日からは、いつもどおりの量を続けてください。

うっかり2回飲みを防ぐには、飲む時間を決めて習慣にする、1週間分のピルケースを使う、カレンダーやアプリに記録するといった工夫が役立ちます。

上限を超える量を続けていた場合

複数のサプリを重ねて、しばらく上限を超える量を飲んでいたと気づいた場合は、今日から合計を上限内に減らしてください。そのうえで、次の妊婦健診や受診のときに、飲んでいたサプリと期間を医師に伝えましょう。

上限を少し超える量を一定期間飲んでいたことで、すぐに赤ちゃんに影響が出るという根拠はありません。ただ、先に説明したように、ビタミンB12が不足しやすい人では不足に気づきにくくなることがあります。手足のしびれや歩きにくさ、強い疲れなどが気になる場合は、そのことも伝えてください。

すぐに受診したい症状

⚠️ サプリを飲んだあと、こんな症状が出たらすぐ受診を

・全身のじんましん、強いかゆみ
・顔や唇、まぶたの腫れ
・息苦しさ、ゼーゼーする呼吸、声のかすれ
・めまい、ふらつき、気が遠くなる感じ

これらはアレルギー反応(アナフィラキシー)のサインである可能性があります[7]。量の多い少ないに関係なく起こりうるので、服用をやめてすぐに医療機関を受診し、飲んだサプリの容器を持参してください。症状が重いときは救急車を呼ぶことをためらわないでください。

6. 医師が高用量の葉酸を処方する場合は別

以前に神経管閉鎖障害の赤ちゃんを妊娠したことがある人などでは、医師が上限を超える量の葉酸を処方することがあります。これは医師の管理のもとで行われる治療で、この記事の「取り過ぎ」とは別に考えます。

英国医学研究評議会(MRC)の試験では、神経管閉鎖障害の妊娠歴がある女性に1日4mgの葉酸を用い、再発が72%少なくなりました[14]。NIHの栄養補助食品局も、こうした女性には妊娠の1〜3か月以上前から1日4,000〜5,000μgの葉酸を摂るよう専門家が勧めていると紹介しています[3]。2000年の厚生省の情報提供でも、神経管閉鎖障害の妊娠歴がある場合は、医師の管理のもとで、より多くの葉酸を摂ることが必要とされています[5]。神経管閉鎖障害そのものについては、神経管閉鎖障害の原因と葉酸の関係で解説しています。

抗てんかん薬を飲んでいる人でも、主治医の判断で多めの葉酸が勧められることがあります。こうした高用量は、市販のサプリを重ねて自己判断で実現するものではありません。処方された量は自己判断で減らさず、逆に処方がないのに増やすこともしないでください。

\ 前回の妊娠歴や持病・服薬について、妊娠前に相談したい方へ /

📅 遺伝カウンセリングを予約する

お問い合わせはこちら | 葉酸の摂り方の基本

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「多いほど安心」ではなく「必要な量を確実に」】

葉酸は、多く摂るほど神経管閉鎖障害の予防効果が高くなるとは限りません。一般的な妊活では、推奨される400μgを妊娠前から継続し、高用量が必要な場合は医師の管理下で用いることが基本です。

一方、過剰摂取への懸念だけを理由に、妊娠前から妊娠初期に推奨される葉酸摂取を中止する必要はありません。複数製品を併用する場合には成分表示を確認し、サプリメント等からの合計量が年齢別の耐容上限量を超えないようにします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 食べ物だけで葉酸を取りすぎることはありますか?

ふつうの食事で取りすぎになることは、ほとんどありません。上限はサプリや葉酸を加えた食品の葉酸だけに適用され、野菜や豆類などにもともと含まれる葉酸には上限が設けられていません。食品の葉酸は体に利用される割合が約50%と低く、調理でも失われやすいためです。

Q2. 男性や授乳中の女性も、上限は同じですか?

同じです。葉酸の上限は男女共通で、18〜29歳は1日900μg、30〜64歳は1日1,000μgです。妊娠中や授乳中も、年齢ごとの同じ上限が適用されます。授乳中は食事からの葉酸を少し多めに摂ることが勧められていますが、サプリを重ねる場合は合計を確認してください。

Q3. 1,000μgを少し超えてしまった日があったら、どうすればいいですか?

1日だけなら、慌てる必要はありません。上限は習慣的に摂り続ける量の上限なので、翌日からいつもの量に戻せば大丈夫です。毎日超えていたと気づいた場合は、サプリの組み合わせを見直して合計を上限内に減らし、次の受診のときに医師に伝えてください。

Q4. 葉酸の多い食事と葉酸サプリを両方とってもいいですか?

問題ありません。食事の葉酸は上限の計算に入らないので、葉酸の多い食事をとりながらサプリを飲んでも、サプリなどの葉酸の合計が上限内なら大丈夫です。国の推奨も、食事からの葉酸にサプリの400μgを上乗せする形になっています。

Q5. 複数のサプリを飲むとき、葉酸以外に気をつけることはありますか?

あります。サプリには有効成分が高い濃度で加えられていることが多く、重ねると葉酸以外の成分も取りすぎになったり、成分どうしが影響し合ったりすることがあります。持病の薬を飲んでいる場合は、サプリを始める前に主治医や薬剤師に相談してください。

Q6. 取りすぎが心配なので、葉酸サプリはやめたほうがいいですか?

やめる必要はありません。推奨量の400μgは上限の半分以下で、1種類を目安どおりに飲んでいれば取りすぎにはなりません。妊娠前から妊娠初期の葉酸摂取は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを下げることが確かめられています。量を守って続けることが大切です(葉酸サプリは飲まないほうがいい?)。

まとめ

葉酸の取り過ぎの目安は、サプリや葉酸を加えた食品から摂る葉酸の合計で、18〜29歳は1日900μg、30〜64歳は1日1,000μgです[1]。食べ物にもともと含まれる葉酸には上限がなく、食事だけで取りすぎる心配はほとんどありません。上限が決められている主な理由は、大量の葉酸がビタミンB12の不足による貧血を隠し、神経の障害の発見を遅らせるおそれがあるためです[3][2]。

推奨量の400μgや、800μg配合のサプリは上限の範囲内です。葉酸の取りすぎが自閉症や喘息の原因になるとは確かめられていません[8][9][10]。複数のサプリを重ねるときは成分表示の葉酸を足し合わせて、上限を超えないように調整してください。うっかり2回飲んだ程度なら、翌日からいつもの量に戻せば大丈夫です。

💊 サプリや妊娠前の不安を、専門医と整理しませんか

飲んでいるサプリの量が心配、前回の妊娠で赤ちゃんに病気があった、持病の薬が妊娠に影響しないか気になる——。前回の妊娠歴や家族歴など遺伝に関する相談には、遺伝カウンセリングがあります。ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを行っています。

参考文献

  • [1] 厚生労働省. 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書. 2024. [厚生労働省]
  • [2] 葉酸の働きと1日の摂取量. 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団). [健康長寿ネット]
  • [3] Folate: Fact Sheet for Health Professionals. Office of Dietary Supplements, National Institutes of Health. [NIH ODS]
  • [4] 妊娠中のサプリメントの利用について. 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所). [hfnet]
  • [5] 厚生省. 神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について(報道発表資料). 2000年12月28日. [厚生労働省]
  • [6] Vitamin B12: Fact Sheet for Health Professionals. Office of Dietary Supplements, National Institutes of Health. [NIH ODS]
  • [7] Nishitani N, Adachi A, Fukumoto T, Ueno M. 市販サプリメントに含まれる,葉酸によるアナフィラキシーショック. アレルギー. 2007;56(8-9):1113. [DOI]
  • [8] Surén P, Roth C, Bresnahan M, et al. Association between maternal use of folic acid supplements and risk of autism spectrum disorders in children. JAMA. 2013;309(6):570-577. [DOI]
  • [9] Raghavan R, et al. Maternal Multivitamin Intake, Plasma Folate and Vitamin B12 Levels and Autism Spectrum Disorder Risk in Offspring. Paediatr Perinat Epidemiol. 2018;32(1):100-111. [DOI]
  • [10] Crider KS, Cordero AM, Qi YP, Mulinare J, Dowling NF, Berry RJ. Prenatal folic acid and risk of asthma in children: a systematic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2013;98(5):1272-1281. [DOI]
  • [11] 葉酸とエレビットの成分について. バイエル薬品株式会社. [エレビット公式]
  • [12] US Preventive Services Task Force. Folic Acid Supplementation to Prevent Neural Tube Defects: US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement. JAMA. 2023;330(5):454-459. [DOI]
  • [13] Czeizel AE, Dudás I. Prevention of the first occurrence of neural-tube defects by periconceptional vitamin supplementation. N Engl J Med. 1992;327(26):1832-1835. [DOI]
  • [14] MRC Vitamin Study Research Group. Prevention of neural tube defects: results of the Medical Research Council Vitamin Study. Lancet. 1991;338(8760):131-137. [PubMed 1677062]

関連記事

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事