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ダウン症の平均寿命・寿命に影響する要因・最高齢・死因|アルツハイマーとの関係

ダウン症の平均寿命はこの半世紀で格段にのびて現在では約60歳と言われています。この記事ではダウン症の最高齢、寿命に影響を及ぼす要因、死因、また意外なアルツハイマーとの関係などについてお伝えします。

ダウン症の人の平均寿命はどのくらい?

患者さん

ダウン症の人の平均寿命はどのくらいなのでしょうか?

お医者さん

1960年、つまり60年前には、ダウン症の方は平均約10歳までしか生きられませんでした。2000年代には、ダウン症の方の平均寿命は50歳を少し切る程度になりました。現在では約60歳までのびています。成人期になると成人特有の問題も出てきますのでしっかり理解しておきましょう。

ダウン症の寿命に影響するものとは?

ダウン症の寿命には何が影響するのでしょうか?実は、ダウン症の人の寿命に影響する要因はいろいろあります。

ダウン症の寿命に影響する要因1.生まれた時の体重

ダウン症はパトウ症候群エドワーズ症候群に比べると子宮内発育も良いとされていますが、ダウン症の方の中でも生まれたときの体重が1,500グラム以下の場合(超低出生体重児)の赤ちゃんは、通常の出生体重(2,500グラム~4,000グラムのダウン症の赤ちゃんに比べて、生後28日間の死亡率が24倍と報告されています。

ダウン症の寿命に影響する要因2.人種

黒人のダウン症の乳児は、白人のダウン症の乳児と比較して、生後1年以上生存する確率が低いと報告されていますが、その理由を理解するためには、さらなる研究を必要としています。

ダウン症の寿命に影響する要因3.先天性心疾患

先天性心疾患併発しているダウン症の乳児は、先天性心疾患合併していないダウン症の赤ちゃんに比べて、生後1年間に死亡する確率が5倍高いと報告されています。
1歳になる前に死亡するダウン症のお子さんの数は、時代とともに減少しています。例えば、2003年の間の40年ほどで、ダウン症の赤ちゃんのうち、生後1年以内に死亡する割合は、約40%減少しました。しかし、ダウン症のない一般の赤ちゃんの生後1年以内の死亡率も同時期に約40%減少しています。

ダウン症の寿命に影響する要因4.一過性骨髄異常増殖症

ダウン症の新生児のの約1割が一過性骨髄異常増殖症と呼ばれる病態を合併すると知られています。
症状としては

  • 白血球が増える
  • 血小板が減少する
  • 肝臓や脾臓が腫れる

などがあります。

肝臓や脾臓(右上腹部にあります)が大きく晴れることでおなかが膨れる(腹部膨満)症状が現れたり、血小板が減ることで出血しやすくなったりします。先天性心疾患があるお子さんで重症な一過性骨髄異常増殖症を発症するとそれをきっかけにチアノーゼや心不全をおこして死亡に至ることがあります。重症例は発症例の2~3割と言われています。

ダウン症における一過性骨髄異常増殖症にはGATA1遺伝子の変異がかかわっているとされていますが、そのほかの要因も研究されています。

ダウン症の最高齢は何歳ですか?

世界最高齢と考えられるのが、2020年に80歳を迎えたイギリスのジョー・サンダーソンさんでしょう。現在はギネス記録もダウン症を対象として記録を取っていませんので、なかなか公式な記録がないのですが、報道をネットサーフィンするとそうなります。

ダウン症の死因とは?

ダウン症候群には様々な死因がありますが、意外と知られていなくて注意を要するのが悪性新生物がん)です。

ダウン症の死因1.がん

ダウン症の死因となるものが悪性新生物で、なかでも白血病がいちばん多くなっています。これに限らず、ダウン症の方々はその他のぶいのがんも一般の方々に比べて発症しやすくなっています。

ダウン症の死因2.先天性循環器系異常

先天性の心奇形をはじめとする循環器系の異常もダウン症の死因として重要な位置を占めています。

ダウン症の死因3.呼吸器系疾患

誤嚥以外の肺炎、誤嚥性肺炎(気道に食べものが入ってしまうことによる肺炎)のどちらも死因としてあがります。

ダウン症の死因4.神経系疾患

てんかん発作やアルツハイマー病もダウン症の死因として重要なものです。

ダウン症の死因5.消化器系疾患

肝硬変もダウン症に合併しやすく、死因としてあがる疾患です。

ダウン症候群の平均寿命がのびたことで起こる問題点とは?

ダウン症の合併症はいろいろ知られているのですが、実はダウン症候群は若くして認知症を発症します。ダウン症の60%はは55歳までにアルツハイマー病またはその他の認知症と診断を受けると報告されています。はじめは認知症がなくても、時間の経過とともに認知症と診断される確率が年々上がっていき、ダウン症のない人たちよりも格段に早く症状が現れることが明らかになっています。

まとめ

ダウン症の平均寿命がのび、また、障害者雇用が推進されていることから、軽作業で就労するダウン症候群の成人もいらっしゃいます。ある企業に就職したダウン症候群の成人のかたは、最初は普通だったそうですが、そのうち認知症を発症したようで、『物忘れがひどくなった』あと、仕事に来なくなってしまったようです。ダウン症候群の成人期の問題も理解して受け入れるようにしてください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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