InstagramInstagram

子宮内膜ポリープってどんな病気?不妊の原因になっている場合に必要な検査と治療についても解説

子宮内膜ポリープは、子宮内膜が過剰増殖し、子宮の内側にポリープ(腫瘍)ができる病気です。

ほとんどの場合ポリープは良性ですが、閉経後にできたものや不正出血を伴うものは、子宮体がんの発生と関係していることも徐々に明らかになってきているため、注意しなければいけません。

また、自覚症状がないケースも多く、婦人科健診や健康診断などでたまたま発見されることが多いのも子宮内膜ポリープの特徴です。ポリープの大きさや場所によっては不妊の原因にもなるため、妊娠を希望する方はとくに気をつける必要があります。

この記事では、子宮内膜ポリープの症状や原因などの基本的な情報と、子宮内膜ポリープと不妊の関係についてご紹介します。

子宮内膜ポリープとは

ポリープとは、正確には病名ではなく、粘膜の表面が変化して出っ張った状態のものの総称です。喉にできた場合は声帯ポリープ、胃なら胃ポリープ、腸なら大腸ポリープなど、あらゆる臓器にポリープができます。

子宮にも比較的高い頻度でポリープがみられるので、それほどめずらしいものではありませんが、稀に悪性のものもあるため、気になる症状がある場合は早めに婦人科を受診しましょう。

ここではまず、子宮内膜ポリープの症状や原因などについてご紹介します。

子宮にできるポリープの種類

婦人科領域でみられる主なポリープには、子宮頚管ポリープと子宮内膜ポリープの2種類があります。

以下は、子宮頚管ポリープと子宮内膜ポリープのそれぞれの特徴をまとめたものです。

  • 子宮頚管ポリープ:子宮の入り口にある子宮頚管にキノコ状のポリープができる。30〜50代の経産婦に多く発生する。ほとんどが良性。
  • 子宮内膜ポリープ:子宮内膜の細胞の一部が増殖し子宮内腔に突出したキノコ状のポリープ。サイズもさまざまで、多発するケースもある。40〜50代に多くみられるが、がん化することはほとんどない。

子宮頚管ポリープも、子宮内膜ポリープも多くの場合良性です。悪性化することは非常に稀ですが、中には悪性の腫瘍であったり前がん病変であったりするケースもあるので、定期的に婦人科健診を受けて早期発見に努めましょう。

子宮内膜ポリープの症状と原因

子宮内膜ポリープは、自覚症状がないケースも多いため、婦人科健診や会社の健康診断などで発見されるケースが多く、気づいたときにはすでに悪化していることもあります。

ただし、以下のような自覚症状が現れることもありますので、注意しておきましょう。

  • 不正出血
  • 月経の量が多い
  • 月経が長引く
  • 貧血
  • 閉経後の性器出血
  • 不妊症

不正出血は、子宮内膜ポリープの代表的な症状です。その多くは、月経周期とは無関係に出現し、中にはひと月の半分ほど出血が続くケースもあります。

不妊症の原因となる可能性もあるので、妊娠を希望する方は早めに適切な治療を受ける必要があるでしょう。

子宮内膜ポリープが発生する原因は、いまだはっきりとわかっていませんが、女性ホルモン「エストロゲン」が深く関わっているとされています。とくにエストロゲンの分泌量が多くなる「エストロゲン作用依存症」などの場合は、子宮内膜ポリープができやすいようです。

また、乳がん治療で「タモキシフェン」という薬剤を服用している場合も、子宮内膜ポリープが発生しやすく、悪性の可能性も高まるので定期的なチェックが必要です。

子宮内膜ポリープの検査と治療について

子宮内膜ポリープが疑われる場合は、婦人科や産婦人科を受診します。

一般的には、経膣超音波検査(エコー検査)を行ってポリープの有無を確認します。受診する医療機関によっても異なりますが、その後は子宮鏡(ファイバースコープ)を使ってさらに詳しく検査することも。

子宮鏡とは、わかりやすくいうと胃カメラの子宮版です。検査では、ポリープの大きさや個数、位置などを確認します。

治療には薬物療法と手術療法がありますが、1cmを超える場合や多発性の場合や不妊症の原因となる場合、悪性が疑われる場合などは、子宮内膜ポリープの切除を勧められるでしょう。

ただし、不正出血などの自覚症状がないなど、切除の必要がないと判断された場合は、定期的に経過を観察することもあります。

子宮内膜ポリープと不妊の関係

子宮内膜ポリープが発生しているにもかかわらず、放置してしまうと不妊や貧血の原因になる恐れがあります。

とくに不妊は、女性の一生に関わる重大な問題であるため、妊活中の方や近い将来妊娠をお考えの方は、気になってしまうことでしょう。

そこでここでは、子宮内膜ポリープと不妊の関係について詳しくご紹介します。

子宮内膜ポリープを放置すると不妊の原因になることも

子宮内膜ポリープ自体は良性の腫瘍であるため、そのまま放置してもすぐにトラブルが起こるわけではありません。

しかし、子宮内膜ポリープは受精卵が着床する子宮内膜にできることから、正常な内膜組織とポリープが混在することになります。

受精卵がうまく正常な内膜に着床できれば問題ないのですが、できる箇所によっては、受精卵の着床が妨げられてしまう恐れも。卵管口付近にポリープができている場合は、それによって卵子の移動を妨げて不妊になる可能性もあります。

また、子宮内膜ポリープは多発するのも特徴のひとつです。ポリープがいくつもある場合、デコボコした内膜に着床できず、受精卵が子宮に戻ってきてしまい、妊娠が成立せずに終わってしまう可能性もあるでしょう。

不妊症の治療方針を決めるにあたって必要な検査とは

不妊症は、子宮内膜ポリープだけでなくさまざまな原因によって引き起こされます。

子宮内膜ポリープが原因の不妊症が疑われる場合でも、正確な原因を把握するために以下のような検査を行ってから治療方針を決定します。

  • 排卵因子の検査:超音波検査によって卵胞の発育状態や排卵のチェックを行い、血中ホルモン測定による内分泌的検査などを行う。抗ミューラー管ホルモン(AMH)の測定も行い、卵巣予備能の評価も行う。
  • 卵管や子宮因子の検査:子宮内腔の形状や卵管の通過性を調べる子宮卵管造影検査を行う。着床率を著しく低下させる卵管留水腫がないかなども調べる。
  • 男性因子の検査:女性側の原因だけでなく、男性の精子濃度や運動率、速度などを精子自動解析装置で計測する。場合によっては、より精密な検査が可能である精子正常形態率などの検査で精子の受精能力を判定することもある。

これらの不妊検査や一般的な不妊治療を受けても妊娠しない場合は、内視鏡検査を行ってポリープや筋腫、子宮内腔の癒着や子宮内膜症の有無を調べ、不妊の原因を特定していくことになるでしょう。

妊娠を希望する方の子宮内膜ポリープの治療について

子宮内膜ポリープが不妊原因となる可能性があるのは、主に1cmを超えるくらいの大きさからです。それを境に、以下のような治療方針にわけられることになります。

  • 1cm未満:ポリープが卵管付近にはない場合や慢性子宮内膜炎や内膜炎がある場合は、それらの治療が終われば特別な治療をせずに経過観察を行う。
  • 1cm超:受精卵の着床を妨げる原因となるため、子宮内膜掻爬術か子宮鏡下手術で切除する。

子宮内膜ポリープは、症状がない患者さんには経過観察で様子をみる場合もあります。

ポリープがある状態で妊娠した場合、流産してしまわないか心配になってしまうかもしれませんが、担当の医師の協力のもと適切に妊娠の経過を観察し、問題がなければそのまま妊娠を継続できる可能性が高いでしょう。

ただし、不正出血などの症状が現れたときは速やかにかかりつけの医療機関に連絡し、指示を仰ぐようにしてください。

また、ポリープが原因の不妊症で手術が必要だと判断された場合は、子宮内膜掻爬術か子宮鏡下手術のどちらかでポリープを切除することになります。

ただし、子宮内膜掻爬術はエコー画像を確認しながら行うので、周囲の子宮内膜への影響が懸念されます。子宮内膜掻爬術の選択は、慎重に行うべきでしょう。

子宮鏡下手術は、全身麻酔下もしくは局所麻酔下で行われます。子宮鏡下手術にはさまざまなデバイスを用いた方法があるので、担当の医師とよく相談して納得のいくものを選ぶようにしましょう。

まとめ

子宮内膜ポリープの症状や原因などの基本的な情報と、子宮内膜ポリープと不妊の関係についてご紹介しました。

子宮内膜ポリープは、自覚症状がないケースも多く、気づいたときにはある程度大きくなっていることも少なくありません。ほとんどが良性のものですが、不妊や貧血の原因となるため、妊娠を希望する方は早めに適切な治療を受ける必要があります。

子宮内膜ポリープの治療では、薬物療法が取り入れられることもあるものの、効果はあまり期待できないので、手術でポリープを摘出するのがもっとも確実です。

近年の医療技術の発達により、入院せず日帰りで行える医療機関も増えてきています。ポリープの大きさや数にもよりますが、15〜30分程度で終了するケースも多いので、気になる症状がある方は、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事