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PGT-Aのデメリットとは?体外受精で妊娠した女性の実体験

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

「PGT-Aをやらなきゃ良かった」「意味がなかったのでは」。そう感じて検索する方の多くは、正常胚が残らなかった、正常胚を移植しても着床しなかった、あるいはPGT-Aで正常胚と言われたのに、妊娠後の検査で別の病気の可能性を指摘された、という場面にいます。この記事では、PGT-Aのメリットとデメリットを整理したうえで、PGT-Aの体験談を探している方に向けて、PGT-Aの正常胚で妊娠したあと当院のNIPTで1p36欠失症候群が陽性となった方の実際の経過を、検査の事実にしぼって紹介します。先にお伝えしたい結論は、PGT-Aを受けても、妊娠後の出生前検査(NIPT・確定検査)が要らなくなるわけではないということです。PGT-Aが何を調べ、何を調べていないかを知ることが、検査を選ぶときの物差しになります。なお、ミネルバクリニックは体外受精・PGT-Aを行っていません。PGT-Aについては一般的な医学情報として解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🧬 PGT-A・NIPT・微小欠失
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤PGT-Aのメリットとデメリット(全国調査と臨床試験の数字つき)
  • ➤「PGT-Aをやらなきゃ良かった」と感じやすい4つの場面
  • ➤PGT-Aの正常胚で妊娠後、NIPTで1p36欠失症候群が陽性となった方の経過
  • ➤正常胚でもNIPTで陽性になる3つの理由と、確定検査で確かめる意味
  • ➤PGT-Aでは調べていない微小欠失・単一遺伝子と、一部の自閉症・発達障害・知的障害

⏱️ 30秒でわかる要約

🤔 Q. 「PGT-Aをやらなきゃ良かった」と感じるのは、どんなとき?

多いのは、①正常胚が1つも残らなかった、②正常胚を移植しても着床しない・流産した、③費用がかさんだ、④PGT-Aで調べていない病気が妊娠後に見つかった、の4つです。日本の全国調査では、正常胚が1個以上得られた採卵周期は38.3%でした。PGT-Aは染色体の数を主に調べる検査で、微小欠失や単一遺伝子の病気は基本的に対象外です。

🧩 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。この記事の方も、PGT-Aで正常胚と判定されたあと、NIPTで1p36欠失症候群(微小欠失症候群の一つ)が陽性になりました。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも行動の問題です。行動の問題を伴いやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患は、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。

🧬 Q. PGT-Aで正常胚だったのに、NIPTで陽性になることはある?

あります。正常胚を1個移植して妊娠した1,139人の研究では、NIPT陽性は8人で、確定検査で実際に染色体の変化があったのは1人でした。陽性=確定ではないので、羊水検査・絨毛検査で確かめることが必要です。

🩺 Q. PGT-Aを受けたら、NIPTや確定検査は要らない?

要らなくなるわけではありません。米国産科婦人科学会(ACOG)は、PGT-Aを受けた方にも、ほかの妊婦さんと同じように出生前の検査を提案すべきだとしています。PGT-Aの結果が赤ちゃんと一致しないことがあり、PGT-Aで調べていない病気もあるためです。

🌱 Q. 自閉症・発達障害はPGT-AやNIPTでわかる?

PGT-Aでは基本的にわかりません。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる遺伝子や染色体の変化の一部を調べられます。陰性でも否定はできず、陽性なら確定検査が必要です。

\ PGT-Aで調べていない範囲を、妊娠後に確かめたい方へ /

ダウン症候群だけで大丈夫ですか? 当院のNIPTは、PGT-Aでは調べていない微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。

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PGT-Aとは?体外受精における役割

PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)は、体外受精(IVF)でできた胚の細胞を数個採り、染色体の数に過不足がないかを調べる検査です。染色体の数が合っている胚(正常胚)を選んで移植することで、移植あたりの妊娠率を上げ、流産を減らすことを目的としています。

日本では、日本産科婦人科学会が定めたルールに沿って、対象となる方と実施する施設が決められています。検査のしくみや費用はPGT-Aとは?費用・成功率・限界で解説しています。

💡 用語解説:栄養外胚葉(えいようがいはいよう)と正常胚・モザイク胚

受精から5〜6日目の胚(胚盤胞)は、赤ちゃんになる部分(内細胞塊)と、将来おもに胎盤になる部分(栄養外胚葉)に分かれています。PGT-Aで調べるのは、栄養外胚葉の細胞数個です。染色体の数が合っている胚を「正常胚」、染色体の数が正常な細胞と異常な細胞が混ざっている胚を「モザイク胚」と呼びます。

PGT-Aのメリットとデメリット

PGT-Aのメリット

PGT-Aには、次のようなメリットが期待されています。

  • 移植あたりの妊娠率を上げる:染色体の数に異常のある胚を移植の対象から外し、正常胚を選んで移植します。
  • 流産を減らす:初期流産の多くは胚の染色体の数の異常で起こるため、流産の回数を減らすことが期待できます。
  • 移植の回数を減らす:妊娠に至りにくい胚の移植を避けることで、体と心、費用の負担を減らせる場合があります。
  • 着床しない・流産をくり返す原因の手がかりになる:原因が胚の染色体にあるのかどうかを知り、次の方針を考える材料になります。

日本産科婦人科学会の全国調査では、PGT-Aを行った胚のうち正常胚は25.5%、モザイク胚は11.7%、異常は61.7%、判定不能は1.1%でした(女性の平均年齢39.3歳)[1]。移植6,080回のまとめでは、臨床妊娠率68.8%、流産率10.4%と報告されています[1]。

PGT-Aのデメリット

一方で、PGT-Aには次のようなデメリットと限界があります。

  • 正常胚が1つも残らないことがある:全国調査で、正常胚が1個以上得られた採卵周期は38.3%でした[1]。移植できる胚がないという結果になることがあります。
  • モザイク胚の判断が難しい:調べるのは胚の一部の細胞だけなので、正常な細胞と異常な細胞が混ざっている胚では、移植するかどうかの判断が難しくなります。
  • 出産に至る割合が上がるとは限らない:予後がよいと見込まれる女性を対象にした臨床試験では、累積の出生率はPGT-Aありで77.2%、なしで81.8%で、PGT-Aによって出生率は上がりませんでした。流産はPGT-Aありのほうが少なく、8.7%対12.6%でした[2]。
  • 胚の細胞を採る必要があり、費用もかかる:胚から細胞を採る操作が必要です。検査の費用は、施設や調べる胚の数によって変わります。
  • 調べられない病気がある:一般的なPGT-Aは、決められた大きさ(検証に使われるのは5〜20Mb)より小さい欠失・重複を検出できません[3]。米国産科婦人科学会(ACOG)も、現在の着床前検査はすべての微小欠失・重複を検出できるわけではなく、新しく起きた遺伝子の変化(de novo変異)も検出しないと述べています[4]。

それぞれの項目のくわしいデータ(判定の一致率、モザイク胚を移植したときの経過、胚への影響、費用の例)は、PGT-Aのデメリットを詳細解説!NIPTとの関係も紹介にまとめています。この記事では、5つ目の「調べられない病気がある」が実際にどう表れるのかを、1人の方の経過で見ていきます。

💡 用語解説:Mb(メガベース)と微小欠失

MbはDNAの長さの単位で、1Mbは100万塩基です。染色体のごく一部が欠けることを「微小欠失(びしょうけっしつ)」と呼び、欠ける場所によって、1p36欠失症候群や22q11.2欠失症候群などの病気になります。染色体の本数は正常なので、数だけを数える検査では見つかりません。

「PGT-Aをやらなきゃ良かった」「意味ない」と感じたときに確かめたいこと

「PGT-Aをやらなきゃ良かった」と感じやすい場面は、大きく4つに分けられます。①正常胚が1つも残らなかった、②正常胚を移植しても着床しなかった・流産した、③費用がかさんだ、④PGT-Aで調べていない病気が妊娠後に見つかった、の4つです。

①〜③は、上の数字が示すとおり、PGT-Aを受けた方に一定の割合で起こることです。正常胚を移植しても、妊娠に至らないことや流産になることはあります[1]。反対に「やってよかった」と感じやすいのは、移植あたりの妊娠率の高さや、流産の少なさ[2]を重視していた方です。PGT-Aに何を期待するのかを、受ける前にはっきりさせておくことが、受けたあとの納得につながります。

④は、PGT-Aが誤っていたのではなく、PGT-Aがもともと調べていない範囲の変化だったという場合です。この場合は「やらなきゃ良かった」ではなく、「PGT-Aで調べた範囲と、妊娠後に調べる範囲は別だった」と整理できます。次の章から、その実例を紹介します。

【実体験】PGT-Aを受けて妊娠した方のケース

ここからは、当院でNIPTを受けた方の実際の経過です。不妊治療やPGT-Aの体験談は、感じ方が人によって大きく違います。ここでは個人が特定されないよう、検査にかかわる事実だけを記します。

この方は、他の医療機関で体外受精とPGT-Aを受け、正常胚と判定された胚を移植して、第1子を妊娠しました。染色体の数はPGT-Aですでに確かめていましたが、妊娠後にNIPT(新型出生前診断)も受けることを選びました。

① PGT-A正常胚と判定
▶
② 胚移植第1子を妊娠
▶
③ NIPT微小欠失・単一遺伝子まで調べる範囲
▶
④ 結果1p36欠失症候群が陽性

ミネルバクリニックは体外受精・PGT-Aを行っていません。この記事は、PGT-Aを行った医療機関の検査や判定を評価するものではなく、PGT-AとNIPTでは調べている範囲が違うことを、実際の経過で示すためのものです。

この方が受けたNIPT「COATE法」とは?

この方が受けたのは、現在の当院のダイヤモンドプランと同じ範囲を調べるNIPTです。ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※で検査します。

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

調べる範囲は次のとおりです。

  • 13・18・21トリソミーと、15・16・22トリソミー
  • 微小欠失 12種類13疾患(1p36欠失症候群を含む)
  • 単一遺伝子(de novo変異)56遺伝子

超音波検査で赤ちゃんに異常が疑われた妊婦さんなど1,090例を対象にした研究では、感度98.5%、特異度99.3%でした[5]。同じ研究で、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件、60.7%増)に増えたと報告されています[5]。これはハイリスクの妊婦さんを対象にした研究で、すべての妊婦さんで1.6倍になるという意味ではありません。

こうした単一遺伝子疾患は1つひとつはまれですが、わずか30遺伝子・25疾患を合わせただけでも、約600人に1人(0.17%)の頻度になると報告されています[6][7]。これは、ダウン症候群の出生頻度(全体で約700人に1人)と同じくらいの数字です。当院のインペリアルプランでは、最大155遺伝子のde novo変異を対象にしています(ダイヤモンドプランは56遺伝子)。

一方で、微小欠失の陽性的中率は、染色体の数の異常より低め(項目によって60〜70%程度)です。陽性になっても、実際には赤ちゃんに変化がないことがあります。陽性のときは必ず確定検査で確かめる必要があります。また、まれですが偽陰性の可能性もあります。微小欠失の陽性的中率はNIPT 微小欠失の陽性的中率はどのくらい?で解説しています。

NIPTの結果:1p36欠失症候群が陽性に

マイページに表示された「陽性」

当院のNIPTの結果は、マイページで確認できます。この方の結果には、「1p36欠失症候群 陽性」と表示されていました。PGT-Aで正常胚と判定されていたため、予想していなかった結果でした。

ここで押さえておきたいのは、NIPTの陽性は「可能性が高い」という意味で、診断の確定ではないということです。NIPTはスクリーニング検査で、赤ちゃんに本当に変化があるかどうかは、羊水検査や絨毛検査(確定検査)で確かめます。

💡 用語解説:スクリーニング検査と確定検査

スクリーニング検査は、多くの人の中から「可能性が高い人」を見つけるための検査で、NIPTはこれにあたります。確定検査(かくていけんさ)は、羊水や絨毛(じゅうもう:胎盤のもとになる組織)を採って赤ちゃんの染色体を直接調べる検査です。微小欠失を確かめるときは、染色体の細かい欠失・重複を調べるマイクロアレイ検査を使います。

PGT-Aの限界とNIPTの重要性 ― 正常胚でもNIPTで陽性になる3つの理由

PGT-Aで正常胚と判定されていても、妊娠後のNIPTで陽性になることはあります。理由は3つあります。

1つ目は、PGT-Aが小さな欠失を検出の対象にしていないことです。PGT-Aは染色体の数の異常を主に調べる検査で、決められた大きさより小さい変化は検出できません[3][4]。微小欠失は、PGT-Aの結果が「正常」でも否定されていないことがあります。

2つ目は、PGT-Aが調べているのは胚の一部の細胞であることです。調べるのは将来おもに胎盤になる栄養外胚葉の細胞数個で、その結果は、赤ちゃんになる内細胞塊の状態を反映しないことがあります。どの方法の着床前検査でも、偽陽性・偽陰性は起こりえます[4]。

3つ目は、NIPTの側にも偽陽性があることです。PGT-Aの正常胚を1個移植して妊娠し、NIPTを受けた1,139人の研究では、NIPTが陽性だったのは8人で、そのうち確定検査で実際に染色体の変化があったのは1人でした[8]。正常胚を移植した妊娠では、もともと染色体の変化がある可能性が低いので、陽性が本当に陽性である割合(陽性的中率)は下がります。

つまり、PGT-AのあとのNIPT陽性は、「本当に変化がある場合」と「NIPTの偽陽性の場合」の両方がありうるということです。どちらなのかは、確定検査でしか分かりません。結果を確かめる前に、妊娠を続けるかどうかを決めないことが大切です。

1p36欠失症候群とは?

1p36欠失症候群は、1番染色体の短腕の端(1p36)の一部が欠けることで起こる病気です。新生児のおよそ5,000人に1人にみられ、染色体の端が欠けるタイプの欠失の中では最も多いとされています[9]。

主な特徴として、次のものが知られています[9]。

  • 発達の遅れ・知的障害
  • てんかん発作
  • 視覚・聴覚の症状
  • 先天性心疾患・心筋症
  • 脳の形の変化、口唇口蓋裂、腎臓の変化
  • 低身長、特徴のある顔立ち

欠ける場所と大きさは人によって違い、症状の現れ方には大きな幅があります[9]。欠失そのものを治す治療はなく、てんかんや心臓など、それぞれの症状に合わせた治療と、療育などの支援を続けていきます。検査で欠失が分かっても、症状がどの程度になるかまでは予測できません。症状・寿命・治療のくわしい内容は1p36欠失症候群の症状・寿命・原因・治療で解説しています。

微小欠失は、お母さんの年齢に関係なく起こります。年齢や母体血清マーカー検査の結果を理由に確定検査を受け、染色体の数と形が正常だった妊婦さんの約1.7%に、病気と関係する微小欠失・重複が見つかったと報告されています[10]。NIPTで調べられるのは、このうちの一部です。1p36欠失症候群は、当院ではスタンダードプランを含むすべてのプランで調べられます。微小欠失症候群の全体像は微小欠失症候群とは?をご覧ください。

陽性のあと、ミネルバクリニックでできること

陽性の場合も、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。当院は2025年6月から産婦人科を併設しており、確定検査のために別の医療機関を探す必要はありません。

陽性後の遺伝カウンセリングは、臨床遺伝専門医が行い、何度でも無料です。羊水検査互助会(カトレア会・8,000円)は、陽性時の確定検査の費用を補助します(補助の上限はありません)。

検査結果をもとにどの選択をするかは、ご本人とご家族が決めることです。当院は特定の選択を勧めず、病気の内容と今後の見通しについて、分かっていることと分かっていないことの両方をお伝えします。

妊娠中の遺伝子検査の重要性 ― PGT-Aを受けても出生前検査は要らなくならない

ACOGは、PGT-Aを受けた方にも、ほかの妊婦さんと同じように、染色体の数の異常について確定検査かスクリーニング検査を提案すべきだとしています[4]。PGT-Aを受けて妊娠しても、妊娠後の出生前検査(NIPT・確定検査)が要らなくなるわけではありません。

PGT-Aは「どの胚を移植するか」を選ぶための検査で、NIPTと確定検査は「妊娠した赤ちゃんの状態」を調べる検査です。目的も、調べる時期も、調べる範囲も違います。PGT-Aの正常胚で妊娠した方がNIPTを受けることは、PGT-Aを疑うことではなく、PGT-Aが調べていない範囲を確かめることです。

着床前診断のあとにNIPTを受ける意味は着床前診断でダウン症は防げる?NIPTとの違いと限界で、体外受精で妊娠したあとにどこまで調べるかは体外受精後の染色体異常リスクと拡大NIPTで解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「やらなきゃ良かった」ではなく「調べた範囲が違った」】

PGT-Aの正常胚で妊娠したのにNIPTで陽性になると、「PGT-Aは何だったのか」と感じるのは自然なことだと考えています。けれども、PGT-Aが調べているのは主に染色体の数で、染色体のごく一部が欠ける微小欠失や、1つの遺伝子の変化は、もともと調べる範囲に入っていません。PGT-Aが見逃したのではなく、見ていなかった場所に変化があった、ということです。

臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、「どの検査が、何を調べ、何を調べていないか」を、検査を受ける前に知っていただくことです。検査の限界を知ることは、検査を否定することではありません。限界を知っていれば、次にどの検査で何を確かめればよいかを、自分で選べるようになります。

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陽性でも、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。

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まだ決めていない方は:羊水検査・絨毛検査を見る | 施設の選び方を読む

自閉症・発達障害・知的障害もNIPTで一部わかる ― PGT-Aでは調べていない範囲

体外受精で授かった赤ちゃんの発達を心配するのは、自然なことです。自閉症・発達障害・知的障害の原因はさまざまで、多くは特定できませんが、一部は染色体や遺伝子の変化で起こります。知的障害の遺伝的な原因で最も多いのはダウン症候群で、発達の遅れや知的障害のある方を染色体マイクロアレイ検査で調べると、約15〜20%に微細な欠失・重複が見つかります[11]。この記事で紹介した1p36欠失症候群も、発達の遅れや知的障害を伴う微小欠失症候群の一つです[9]。

こうした微小欠失や、1つの遺伝子の変化は、一般的なPGT-Aでは調べていません[3][4]。当院のNIPTでは、その一部を妊娠中に調べられます。プランごとの対象は次のとおりです。

🧬 当院のNIPTで調べられる範囲(プラン別)

プラン 微小欠失・重複 単一遺伝子 自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある主な疾患
スタンダード 6種類7疾患 ― 22q11.2欠失(ディジョージ)症候群、1p36欠失症候群、スミス・マゲニス症候群、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群、猫鳴き症候群
プレミアム 12種類13疾患 ― スタンダードの7つに加え、2q33欠失症候群、ランガー・ギーディオン症候群、9p欠失症候群、ジェイコブセン症候群、18p欠失症候群、18q欠失症候群
ダイヤモンド 12種類13疾患 56遺伝子 プレミアムの13疾患に加え、レット症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、CHARGE症候群、ソトス症候群、ヌーナン症候群など
双子マックス 92種類+5Mbを超える構造異常 ― プレミアムの13疾患に加え、ウィリアムズ症候群、ミラー・ディーカー症候群、16p11.2欠失・重複、1q41-q42欠失症候群など
インペリアル 92種類+5Mbを超える構造異常 最大155遺伝子(202疾患) 双子マックスの範囲に加え、レット症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、ピット・ホプキンス症候群、フェラン・マクダーミッド症候群、KBG症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群、ドラベ症候群など

※プレミアム・ダイヤモンド・インペリアルは単胎のみ、スタンダード・双子マックスは単胎・双胎で受けられます。16p11.2欠失・重複は、双子マックスとインペリアルだけが対象です。

ダウン症候群だけを調べればよいわけではない

出生前検査で調べる病気は、どれも命・発達・ご家族の暮らしに大きくかかわりますが、その中身は病気によって違います。違いは「命の見通し」「自立の見通し」「自閉症や強い行動の問題を伴うか」「ご家族の介護や見守りの負担」に表れます。たとえば自閉スペクトラム症を伴う割合は、レット症候群61%、コルネリア・デ・ランゲ症候群43%、アンジェルマン症候群34%、CHARGE症候群30%、ダウン症候群16%、22q11.2欠失症候群11%と報告されており、ダウン症候群は、出生前検査で調べるほかの病気と比べて少ないほうです[12]。

知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いと報告されています[13]。ストレスを最も強く左右していたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷などの行動の問題と、睡眠の問題でした[13]。他人への攻撃的な行動はアンジェルマン症候群とスミス・マゲニス症候群で、自傷はコルネリア・デ・ランゲ症候群、スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群で多いことが分かっています[14]。

これらは、PGT-Aでも、三大トリソミーだけを調べるNIPTでも分からない病気です。当院では、スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群はスタンダードを含むすべてのプランで、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンドとインペリアルで、ウィリアムズ症候群は双子マックスとインペリアルで調べられます。

体外受精で妊娠する方は、ご夫婦の年齢が高いこともあります。父親の年齢が上がるほど、精子に新しく起こる遺伝子の変化(de novo変異)が増えることが分かっており[15]、de novo変異はPGT-Aでは検出されません[4]。父親の年齢が気になる場合は、単一遺伝子まで調べるダイヤモンドプランやインペリアルプランを選ぶ、という考え方があります。インペリアルプランの検証データでは、陽性的中率96.9%、感度100%、特異度99.9%でした(高リスクの妊娠750例)[16]。

あわせて、限界も知っておいてください。陽性なら確定検査が必要なこと、微小欠失は陽性的中率が低めなこと、陰性でも自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えないこと、脆弱X症候群などNIPTで調べられない原因があること、症状の現れ方は予測できないことの5つです。リスクの数字は、大多数のお子さんには当てはまりません。くわしくは自閉症はNIPTでわかりますか?をご覧ください。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

この記事の方で陽性になったのは、三大トリソミーではなく、微小欠失症候群でした。PGT-Aで染色体の数を確かめた方が、妊娠後の検査を三大トリソミーだけにすると、PGT-Aで調べた範囲をもう一度調べることになり、PGT-Aで調べていない範囲は残ったままになります。出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。三大トリソミーだけを調べる検査では、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患は調べられません。

そこで、検査を「値段」ではなく「調べられる範囲」で比べる物差しとして、1つの病気あたりで考える方法があります。

📊 1つの病気あたりで考えると

検査・プラン 価格(税込)※1 調べられる病気の数 ※2 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査 ※3 仮に100,000円 3 約33,333円
スタンダード 220,000円 14 約15,714円
プレミアム 264,000円 23 約11,478円
ダイヤモンド 407,000円 79 約5,152円
双子マックス 440,000円 114+α 約3,860円
インペリアル 550,000円 320+α 約1,719円

※1 価格は、事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。料金は変わることがあるため、最新の金額はNIPTの料金ページでご確認ください。

※2 病気の数は、染色体の数の異常、微小欠失・重複、単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類として数えています。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。

※3 「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

この表は、調べられる病気の数が多い検査ほど良い検査だ、という意味ではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる場面や、確定検査が必要になる場面も増えます。とくにPGT-Aの正常胚で妊娠した方は、陽性的中率が下がることも知っておく必要があります[8]。だからこそ、どこまで調べるかは、検査の前の遺伝カウンセリングで決めることが大切です。90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。

まとめ:PGT-Aだけでは万全ではない

PGT-Aは、移植あたりの妊娠率を上げ、流産を減らすことを目的とした検査です。一方で、正常胚が残らないことがある、出産に至る割合が上がるとは限らない、調べられない病気がある、といったデメリットがあります。この記事の方のように、PGT-Aの正常胚で妊娠しても、妊娠後のNIPTで微小欠失症候群が陽性になることがあります。

そのときに大切なのは、次の3つです。

  • PGT-Aが調べているのは主に染色体の数で、微小欠失や単一遺伝子の変化は基本的に対象外であること
  • NIPTの陽性は確定ではないので、羊水検査・絨毛検査で確かめてから考えること
  • どこまで調べるかは、PGT-Aで調べた範囲と調べていない範囲を分けて、検査の前に決めること

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます(週数が早いほど赤ちゃん由来のDNAが少なく、再検査になることがあります)。結果は基本的に10〜14日で出ます。インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります。来院が難しい方は、Zoomで遺伝カウンセリングを受け、全国110か所の提携施設で採血するオンラインNIPTも利用できます(採血料は施設ごとに別にかかります)。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【検査を重ねることは、前の検査を疑うことではない】

体外受精とPGT-Aを経て妊娠した方ほど、「ここまで調べたのだから、もう検査は要らないはず」と考えやすいと思います。その気持ちは当然のものです。けれども、PGT-Aは「移植する胚を選ぶ検査」で、NIPTや確定検査は「妊娠した赤ちゃんを調べる検査」です。役割が違うので、片方がもう片方の代わりにはなりません。

一方で、調べる範囲を広げれば、陽性になる場面も増えます。陽性は確定ではなく、確定検査で確かめて初めて分かることです。だからこそ、陽性になったあとに確定検査まで同じ場所で受けられること、結果の意味を臨床遺伝専門医から聞けることが、検査そのものと同じくらい大切だと考えています。

🏥 PGT-Aのあと、妊娠後に確かめる検査を選ぶために

ダウン症候群だけでなく、18・13トリソミーや微小欠失症候群、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因まで、当院のNIPTでわかります。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。陽性の場合も、確定検査まで院内で受けられます。

まだ決めていない方は、料金ページと各プランのページをご覧ください。NIPT専用ダイヤル:03-3408-3768

よくある質問(FAQ)

Q1. 「PGT-Aをやらなきゃ良かった」と感じるのは、どんなときですか?

多いのは、正常胚が1つも残らなかったとき、正常胚を移植しても着床しなかった・流産したとき、費用がかさんだとき、PGT-Aで調べていない病気が妊娠後に見つかったときの4つです。日本の全国調査では、正常胚が1個以上得られた採卵周期は38.3%、移植後の流産率は10.4%でした。PGT-Aは染色体の数を主に調べる検査で、結果が出産を保証するものではないことを、受ける前に知っておくことが大切です。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。PGT-Aで正常胚と判定された方が、妊娠後のNIPTで1p36欠失症候群(微小欠失症候群の一つ)の陽性となることもあります。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題などの行動の問題です。こうした行動の問題を伴いやすい病気には微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。

Q3. PGT-Aで正常胚だったのに、NIPTで陽性になることはありますか?

あります。正常胚を1個移植して妊娠し、NIPTを受けた1,139人の研究では、8人が陽性で、確定検査で実際に染色体の変化があったのは1人でした。PGT-Aが調べるのは将来おもに胎盤になる細胞数個で、小さな欠失は検出の対象にしていません。一方でNIPTにも偽陽性があるため、陽性のときは羊水検査や絨毛検査で確かめることが必要です。

Q4. PGT-Aは意味がないのですか?やってよかったと言えるのはどんな場合ですか?

意味がないとは言えません。PGT-Aは移植あたりの妊娠率を上げ、流産を減らすことを目的とした検査で、流産が少ないことは臨床試験でも示されています(8.7%対12.6%)。一方、予後がよいと見込まれる女性では、累積の出生率はPGT-Aありで77.2%、なしで81.8%と、上がらなかったという報告もあります。何を期待して受けるのかを、検査の前に不妊治療を担当する医師と確かめておくことが大切です。

Q5. PGT-Aを受けていれば、NIPTや羊水検査は受けなくてよいですか?

要らなくなるわけではありません。米国産科婦人科学会(ACOG)は、PGT-Aを受けた方にも、ほかの妊婦さんと同じように、染色体の数の異常について確定検査かスクリーニング検査を提案すべきだとしています。PGT-Aの結果が赤ちゃんと一致しないことがあり、PGT-Aでは調べていない病気もあるためです。

Q6. 1p36欠失症候群はPGT-Aでわかりますか?

一般的なPGT-Aでは、わからないことがあります。PGT-Aは染色体の数を主に調べる検査で、決められた大きさ(検証に使われるのは5〜20Mb)より小さい欠失は検出できません。1p36欠失症候群は、欠ける場所と大きさが人によって違います。当院のNIPTでは、スタンダードプランを含むすべてのプランで1p36欠失症候群を調べられます。

Q7. NIPTで微小欠失が陽性だったら、どうすればよいですか?

確定検査(羊水検査・絨毛検査)で確かめます。微小欠失の陽性的中率は染色体の数の異常より低め(項目によって60〜70%程度)で、陽性でも実際には赤ちゃんに変化がないことがあります。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。

Q8. 自閉症・発達障害はPGT-AやNIPTでわかりますか?

PGT-Aでは基本的にわかりません。当院のNIPTでは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる染色体や遺伝子の変化の一部を調べられます。ただし、陰性でも自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えず、陽性の場合は確定検査が必要です。脆弱X症候群など、NIPTで調べられない原因もあります。

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。ミネルバクリニックは体外受精・PGT-Aを行っていません。PGT-Aを受けるかどうかは、不妊治療を担当する医師にご確認ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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