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出生前診断の存在を知り、どれを選べばよいかお悩みの方はいらっしゃるのではないでしょうか。出生前診断は妊娠初期から実施でき、早期発見により適切な対応や治療が可能となります。
本記事では、新型の出生前診断で注目される「NIPT」と「クアトロ検査」に焦点を当て、これらの検査の基本、対象となる疾患、受診時期、料金などの違いを解説します。
クアトロ検査とは
クアトロテストは、出生前診断の一環として行われる検査の1つです。この検査は、母体の採血だけで胎児の染色体異常や先天的な疾患のリスクを調べるもので、非侵襲性(*1)の手法に分類されます。
クアトロテストの名前の由来は、4つの異なるバイオマーカー(αフェトプロテイン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、エストリオール、インヒビンA)を同時に測定することにあります。
実施可能な時期は、一般的には16週(15週〜17週)からと、出生前診断の中では遅めです検査実施日から結果までは、約10日程度となります。
*1 非侵襲性:生物体に害を与えず、または直接接触することなく行うこと
クアトロ検査のメリット・デメリット
では、クアトロ検査のメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
メリット1:非侵襲性の検査法
母体の血液を使用するため、羊水の採取や絨毛検査のような早産や流産のリスクがありません。これにより、検査自体が安全でリスクが低いとされています。
メリット2:4つのバイオマーカーの同時測定ができる
クアトロ検査ではαフェトプロテイン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、エストリオール、インヒビンAの4つのバイオマーカーを同時に測定します。これにより、より多角的で正確なリスク評価が可能です。
デメリット1:開始時期の制約
クアトロテストは通常、妊娠16週以降に行われます。これは、特に胎児の生物学的な変化が確認しやすい時期であるためです。妊婦はこの時点で検査を受け、結果を待つことになります。クアトロテストで異常が出た場合、確定診断にはさらに羊水検査をすることとなり、中絶可能な時期が21週までなので、タイミングとしてはギリギリになることは懸念材料です。
デメリット2:確定的な診断ができるわけではない
クアトロテストは非侵襲性の検査である一方で、確定的な診断ができるわけではありません。クアトロテストは、染色体異常のリスクを評価するための1つの手段となりますが、最終的な確定診断には、絨毛検査や羊水検査など他の検査が必要となることがあります。
クアトロ検査でわかる病気
クアトロ検査では、胎児がダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、開放性神経管奇形(無能症、二分脊椎)を持っているかどうかを調べられます。
開放性神経管奇形:開放性神経管奇形(Neural Tube Defects, NTDs)は、胚の神経管が正常に閉じないことで発生する先天性の異常です。正常な発達では神経管が閉じ、脳や脊髄が形成されますが、このプロセスが失敗すると、開放性神経管奇形が発症します。
開放性神経管奇形の原因は複雑で、遺伝的要因や環境要因が関与していると考えられています。
葉酸の不足もリスクを増加させる可能性があります。開放性神経管奇形は通常、妊娠初期に発生するため、妊娠初期の適切な医学的ケアやサプリメントの摂取が重要です。
また、クアトロ検査におけるダウン症の検出率(感度)は81.1%、偽陽性率は7.2%でした。
クアトロテストは確率で結果が出るので、陰性という概念がありません。したがって、陰性的中率も算出できません。
NIPT(新型出生前診断とは)
NIPTは、クアトロ検査と同様に母体の血液から胎児の遺伝子情報を調べる非侵襲性の検査です。従来の検査法よりも高い精度で、唾液や羊水の採取などが必要ありません。
実施可能な時期は10週から、施設によっては6週などもっと早い時期から行われています。
この検査では、母体の血液中に存在する胎児の細胞フラグメントやDNA断片を解析することで、染色体異常や遺伝的な疾患のリスクを詳細に評価します。
NIPTのメリット・デメリット
クアトロ検査に続き、NIPTのメリット・デメリットも確認していきましょう。
メリット1:高い精度
NIPTは染色体異常や先天的な疾患の検出精度が非常に高く、正確な結果が得られることが特長です。
メリット2:早期検査
妊娠10週の妊娠初期から実施可能であり、他の従来の検査法よりも早い段階で結果がわかるため、妊娠生活の早い段階で結果を知ることができ安心を得られます。
メリット3:非侵襲性の検査法
クアトロ検査と同様、NIPTでも母体の血液を使用します。早産や流産のリスクはなく、安心して検査を受けることができます。
デメリット1:料金が高い
NIPTは妊娠初期に実施でき、精度が高い最新の出生前診断ですが、料金が高い傾向にあります。受ける施設や検査項目の数にもよりますが、おおよそ10〜20万円が相場です。
NIPTでわかる病気
NIPTを受けられる施設には認証施設と非認証施設があります。
それぞれのメリット・デメリットがありますが、認証施設で調べられるのはダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つのみです。これらは基本検査と呼ばれています。
ダウン症(トリソミー21) | 通常の23対の染色体のうち、21番染色体が3本存在する場合。 |
エドワーズ症候群 (トリソミー18) |
18番染色体の余分なコピーが存在する症状。生存率が低く、心臓や腎臓などの器官に重篤な異常が見られることがある。 |
パトウ症候群 (トリソミー13) |
13番染色体の余分なコピーが存在する症状。心臓や脳、消化器系などの重篤な異常が見られることがある。 |
これに加えて、非認証施設では以下の病気を調べることができます。
性染色体異常 | ターナー症候群、クラインフェルター症候群など。 |
22q11.2欠失症候群(DiGeorge症候群) | 22番染色体の一部が欠失している症状。免疫系や心臓、顔の形成に関連する異常が見られることがある。 |
22q11.2欠失症候群以外の微小欠失症候群 | 染色体上の小さな欠失が原因で発生する症候群。検査会社によって検査対象が異なる。 |
その他の染色体異常 | 他にも様々な染色体異常のスクリーニングに使用される |
単一遺伝子疾患 | 1つの遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性の疾患。 |
これらの疾患は通常、特定の遺伝子の機能が変異することにより、生体機能の正常な制御が妨げられることで生じます。NIPTが進歩するにつれ、より多くの遺伝子疾患のスクリーニングが可能になりつつあります。
クアトロ検査とNIPTの比較
では、クアトロ検査とNIPTを比較した際どのような点が異なるのか見ていきましょう。
検査結果の出方
NIPTの検出感度はダウン症(トリソミー21)、エドワーズ症候群(トリソミー18)、パトゥ症候群(トリソミー13)すべてにおいて99%以上と非常に高くなっています。また、NIPTは陰性的中率は99.99%以上ですので、陰性と出た場合にはその疾患に対しては心配しなくてよいというのが嬉しいですね。
クアトロテストにおけるダウン症の検出率(感度)と偽陽性率はそれぞれ81.1%と7.2%でした。クアトロテストは確率で結果が出るので、陰性という概念がありません。したがって、陰性的中率も算出できません。
このあたりがNIPTと比べたクアトロテストのデメリットです。
料金
NIPTとクアトロテストの費用は、地域や医療機関によって異なります。どちらも検査は高度な技術を使用しており、そのため費用も他の検査に比べて高いことが一般的です。
NIPTの費用は地域や提供する医療機関により異なりますが、通常は10万円からオプションによっては40万円台になることがあります。健康保険はカバーしていません。
クアトロテストは、NIPTよりも費用が安いです。大体3万円程度です。こちらも保険適応はありません。
出生前診断を受けるならNIPTがおすすめ
ここまで、クアトロ検査とNIPTの違いを解説してきました。結局どちらの検査を受けるのがよいかと悩む方もいらっしゃるでしょう。
出生前診断を受けるなら、NIPTがおすすめです。理由として、まずは非侵襲性であることです。クアトロ検査も同様ですが、もともと健康な赤ちゃんが検査によって何らかの影響を受けるのは最も避けたいことではないでしょうか。その点、母体の採血のみで実施できるNIPTは安心です。
また、高い検査精度もおすすめのポイントの1つです。NIPTは3つのトリソミーの的中率が99%と非常に高い精度を誇ります。早産や流産のリスクのある確定的検査は、できれば避けたいもの。でもNIPTの検査結果は非常に確度が高いため、より陽性の確率が高い検査結果をもって確定的検査を受けることができます。
NIPTを受けるなら、ミネルバクリニックへ
クアトロ検査とは妊婦さんの血液を採取し、4つのたんぱく質を調べることで、胎児が先天性疾患を持っている可能性を調べる検査方法です。あくまでも可能性を調べるための検査なので、陽性判定が出た場合でも必ず障害があるとは限りません。検査結果を確定させるためには、別途、羊水検査などが必要です。
また、一般的にはNIPTの正確性が出生前診断の中でも高い精度を誇っており、たくさんの妊婦さんの決断に役立っています。
ミネルバクリニックでは、妊娠9週から(ご希望の方は妊娠6週から)受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を、業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを実施しておりますので、お気軽にご相談ください。オンライン診療で全国カバー、採血はお近くの提携医療機関でしていただくことも可能ですので是非ご検討ください。