新型出生前検査(NIPT)は、一般的な胎児異数性障害(トリソミー21、18、13)のリスクを評価するための出生前スクリーニングとして確立されています。NIPTは高感度と高特異性を持っていますが、偽陽性や偽陰性も発生します。NIPTの偽陰性結果、特にダウン症の場合はまれですが、家族や社会に重大な臨床的影響を与えるため、、重要です。
セルフリーDNA(cfDNA)ベースの出生前スクリーニングは、非侵襲的出生前検査(NIPT)としても知られており、他のスクリーニング方法と比較した場合、トリソミー21に対する感度と特異度は比類なき優れたものです。検出率は通常99%を超え、偽陽性(FP)率は0.1%未満です。まれに偽陰性の症例が大規模な臨床研究で報告されています。
ダウン症の出生前スクリーニングで偽陰性になる原因とは
ダウン症に関するセルフリーDNA(cfDNA)スクリーニング(NIPT)の結果が偽陰性であることはまれです。しかし、患者やその医療提供者に臨床的に大きな影響を与えるので、偽陰性の背景を理解するのは非常に重要です。
- 多いのは21qのアイソクロモソーム
- cfDNAスクリーニングの文献からの報告をまとめると、新型出生前診断(NIPT)が偽陰性であったダウン症症例29例中8例(28%)が21q;21q再構成と関連していました。
これは、21番染色体の長腕どうしがくっついてできた同腕染色体です。
21q;21q再構成を伴うNIPT真陽性症例3例中3例に限局性胎盤モザイクまたは胎児モザイクの証拠があり、胎盤材料が研究可能であった偽陰性症例1例で確認されています。
21q染色体再構成は、ダウン症に関与するcfDNAスクリーニングの偽陰性結果において多いものです。
胎盤モザイクにつながる接合後アイソクロモソーム形成が、偽陰性症例におけるこれらの再配列の有病率の増加の生物学的原因となります。
接合後というのは、精子1個、卵子1個で受精卵を形成(接合といいます)したあとに、染色体再構成がおこることを意味しています。臨床的には、胎児分画に対してトリソミー分画(zスコアまたは同等の指標)が低い場合は胎盤モザイクが示唆される一方、これらの症例は限局性胎盤モザイクではなく、正常細胞を含む胎盤の存在下での完全なトリソミーを反映している可能性があるので注意が必要です。
21q;21q染色体再構成の症例はすべて、新生突然変異でした。つまり、ご両親には異常がないが、赤ちゃんで突然変異により異常となるものです。21q;21q再構成を原因とするダウン症候群は、ダウン症全体の2%未満でみられるものです。アイソクロモソームは2本の同じ染色体アームを持ち、受精後のセントロメアの分離不全や姉妹染色分体間のU型交換を伴う事象からde novo(新生突然変異)で生じてしまいます。この事象が胚のなかで起こる場所とタイミングによっては、最初の2倍体(正常)細胞株のモザイクが胎盤に残存する可能性があります。
絨毛膜絨毛サンプリング(CVS:絨毛検査)の文献には、de novo isochromosome 21qを伴うトリソミー21の偽陰性症例が報告されています。
胎盤の細胞栄養芽細胞は、胚とともに内側の細胞塊から派生した間葉系コアの細胞よりも、胚とより遠い関係にあります。もし内細胞塊前駆体においてde novoのアイソクロモソーム21q形成が起こるとすれば、間葉系コアと胎児はトリソミー21を持つことになるが、細胞栄養芽細胞は、正常のままとなります。そうすると、NIPTの結果は異常がないというものになってしまい、うまれたあとにダウン症とわかる偽陰性となってしまいます。 - 低胎児分画(FF)
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胎児分画とは、母体血中の全セルフリーDNAのうち、胎児-胎盤ユニットに由来するものの割合をいいます。胎児-胎盤に由来するセルフリーDNAは、早ければ妊娠5週、ほとんど妊娠9週までに母体血中に検出されるようになります。
信頼できるcfDNAスクリーニング結果を得るためには、十分な量の胎児-胎盤cfDNAが存在する必要があります。一般に、検査を成功させるためには、循環セルフリーDNA全体の最低3~4%が胎児-胎盤由来である必要があります。胎児分画が少ないと「検査結果が出せない」というの報告になったり、偽陰性の結果につながったりします。
胎児率が低くても十分(3~5%)であれば、21番染色体断片の割合の期待値(正常基準)と観察値の差は非常に小さくなります。十分な数の断片の塩基配列が決定されないと、この差は識別できず、結果はスクリーン陰性と誤って報告されます。胎児分画は妊娠週数と共に増えるので、あまりに早い時期にNIPTを受けるのは避けたほうが良いでしょう。低胎児分画は以下のような原因が考えられます。
- 妊娠早期
- 妊娠10週以前は胎児分画がかなり低くなるため、ほとんどの検査施設では、検査に十分な胎児分画を確保するために、患者に少なくとも妊娠10週まで待つよう求めています。
- 母親の肥満
- 母親の体重が増加するにつれて、胎児分画は減少します。この逆相関は、比較的一定量しかない胎児セルフリーDNAが、肥満状態の、より多い母体血漿量で希釈されること、母体体重の増加に伴って母体由来cfDNA量が増加することに起因しています。低胎児分画(3.5%未満)が全サンプルの1%程度に認められますが、体重が60kg未満では0.2%に対し、110kg以上では10.5%となっています。
- 胎児染色体核型
- 妊娠10~20週における平均胎児分画は、胎児トリソミー18では平均胎児分画9%となっており、正常核型の胎児の妊娠における平均胎児分画11~13%よりも低くなっています。逆に、トリソミー21胎児の妊娠では、平均胎児分画13~15%と正常より高くなっています。13トリソミーとターナー症候群の胎児分画も2倍体胎児より低いようです。このことが、ダウン症候群の検出率が一番高いことにつながっていると考えられます。
- その他
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妊娠20週以前の母体による低分子ヘパリンの使用。
体外受精による妊娠。
双胎妊娠:胎児1人当たりの胎児分画は双胎の方が低いため
NIPTでダウン症偽陰性の症例提示
ミネルバクリニックでは、「健常なお子さんを抱かせてあげたい」という考えの臨床遺伝専門医の院長のもと、東京都港区青山で、NIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度、かつ、ご希望に合わせてたくさんの疾患検査を提供してくれる確かな技術力のある検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。オンライン診療で全国カバー、採血はお近くの提携医療機関でしていただくことも可能ですので是非ご検討ください。