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全染色体検査でわかること【完全ガイドVol.2】第9番〜第16番染色体|13番・15番微細欠失と16番流産の真実

全染色体検査でわかること【完全ガイドVol.2】第9番〜第16番染色体|13番・15番トリソミーと微細欠失の真実

全染色体検査でわかること【完全ガイドVol.2】第9番〜第16番染色体|13番・15番トリソミーと微細欠失の真実

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
📊 約12,000文字
臨床遺伝専門医監修


  • 9番・10番の異常 → 「完全トリソミー」は致死的ですが、生存しうる「9p重複」「10q26欠失」などの構造異常について、寿命や症状を解説します。

  • 13番(パトウ症候群) → 3大トリソミーの一つ。重篤な合併症と、1年生存率10%未満という現実について。

  • 15番トリソミーと微細欠失ここが最重要です。致死的な「15番トリソミー」と、生存する「モザイク型」。そしてPrader-Willi症候群などの微細欠失まで網羅します。

  • 16番(流産原因No.1) → 全妊娠の流産原因の約15〜30%を占める16番トリソミーと、生存可能な「胎盤性モザイク(CPM)」の違い。

  • トリプルリスクヘッジ → 陽性時の確定検査を自院で実施(産婦人科併設)、費用全額負担の互助会、流産時の返金保証など、当院独自の安心体制を紹介します。

💡 この記事の要約

Q. 第9番〜第16番染色体の検査で何がわかりますか?

A. 13番(パトウ症候群)や16番(流産リスク)だけではありません。一般的なNIPT(数を見る検査)では検出が難しい「9p重複症候群」「10q26欠失症候群」「パリス・キリアン症候群(12番モザイク)」といった「流産せずに生まれてくるが、重い障害を持つ疾患」まで検出可能です。

Q. ミネルバクリニックのCOATE法は何が違うのですか?

A. 一般的なNIPT(ワイドゲノム法)では検出困難だった「微細欠失」を、ターゲット法とSNP法(一塩基多型解析)により陽性的中率99.9%以上という高い精度で検出します。また、父方の加齢リスクによる「重度の症候性自閉症」の原因遺伝子も網羅できる唯一の技術です。

全染色体検査・完全ガイドVol.2へようこそ。
Vol.1(第1番〜第8番)に続き、このVol.2では「第9番〜第16番染色体」について解説します。

この領域は、基本3トリソミーの一つである13番、微細欠失の好発部位である15番、流産の最大原因である16番を含む、出生前診断において極めて重要な「山場」です。

ミネルバクリニックは、日本で唯一の臨床遺伝専門医が、遺伝子検査を行うために開業した日本初のクリニックです。「数字だけ出すNIPT屋」とは異なり、皆様が直面するリスクと真摯に向き合い、世界最高峰の技術(COATE法)で不確実性を排除します。

第9番染色体:9pトリソミーとモザイク

第9番染色体は、遺伝子密度が高い重要な染色体です。「完全なトリソミー」は致死的ですが、「部分的な異常」や「モザイク」は出生に至る可能性があります。

9pトリソミー症候群(9p重複)

第9番染色体の短腕(pアーム)部分だけが重複している状態です。完全な9番トリソミーとは異なり、出生して成長するケースがあります。

  • 症状: 中等度〜重度の知的障害、発育遅延、独特の顔貌(つり上がった目、球状の鼻)、小頭症、骨格異常。
  • 寿命: 成人期まで生存可能なケースが多く、寿命は比較的長いです。

9番モザイク・トリソミー

正常な細胞とトリソミーの細胞が混在している状態です。症状の幅は広く、モザイク率によって異なります。一般的なNIPTでは見逃されやすいですが、当院のCOATE法はSNP解析によりモザイクも検出可能です。

第10番〜12番染色体:異常の詳細

このグループの「完全トリソミー」は致死的ですが、構造異常(欠失)やモザイクの場合、重篤な障害を伴いながらも出生する可能性があります。

第10番染色体の異常(生存例あり)

完全な10番トリソミーは妊娠初期に流産となります。しかし、以下の構造異常は生存例があります。

① 10q26欠失症候群

10番染色体の長腕末端(q26領域)が欠失することで起こる疾患です。

  • 症状: 知的障害、成長障害(低身長・小頭症)、特徴的な顔貌(三角形の顔、広い鼻梁)、尿路性器奇形(停留精巣など)。
  • 寿命: 重症度は欠失範囲によりますが、心疾患等の合併症管理ができれば、成人期まで生存することが多いです。

② HDR症候群(10p欠失)

10番染色体の短腕(p14領域)の欠失により発症します。

  • 症状: Hypoparathyroidism(副甲状腺機能低下症)、Deafness(難聴)、Renal dysplasia(腎形成不全)。
  • 予後: 適切な治療を行えば生命予後は良好ですが、生涯にわたる管理が必要です。
  • 第11番染色体:ヤコブセン症候群(11q欠失)

    • 症状: 精神遅滞、心疾患、パリス・トルソー症候群(血小板減少による出血傾向)。
    • 寿命: 心疾患と出血傾向の管理ができれば、成人期まで生存し、寿命は比較的長いです。
  • 第12番染色体:パリス・キリアン症候群 (Pallister-Killian)
    12番染色体短腕(12p)が4本ある「テトラソミー」がモザイク状態で存在する特殊な疾患です。

    • 症状: 重度の知的障害、てんかん、筋緊張低下、横隔膜ヘルニア、薄毛。
    • 寿命: 症状の重さによりますが、出生後も生存し、成人期(40代など)まで生きるケースも報告されています。

第13番染色体:パトウ症候群(Patau Syndrome)

第13番染色体トリソミーは、21番(ダウン症候群)、18番(エドワーズ症候群)と並ぶ「基本3トリソミー」の一つです。

📊 第13番トリソミーの予後
  • 主な症状:
    全前脳胞症(脳が左右に分かれない)、重度の心疾患、多指症、口唇口蓋裂など、生命維持に関わる重篤な合併症を伴います。
  • 平均寿命(予後):
    非常に厳しく、生後1ヶ月以内の死亡率は約80%です。1年生存率は10%未満とされています。ただし、積極的な治療により数年以上生存する例も稀にあります。
  • 検査の重要性:
    全てのプランで検査可能です。当院の検査は偽陽性を極限まで減らしており、陽性的中率の高さに定評があります。

第14番染色体:UPD(片親性ダイソミー)の重要性

第14番染色体のトリソミーは致死的ですが、モザイクとして生存する稀な例があります。さらに重要なのが「UPD(片親性ダイソミー)」という現象です。

通常、染色体は父母から1本ずつ受け継ぎますが、両方とも母親(または父親)から受け継いでしまう場合があります。

🔴 カガミ・オガタ症候群(父性UPD14)
羊水過多、ベル状胸郭、腹壁異常などが特徴です。乳児期に重度の呼吸障害をきたすため、新生児期の死亡率が高い(約25%)疾患です。

🔴 テンプル症候群(母性UPD14)
筋緊張低下、低身長、早発思春期などが特徴です。生命予後は良好で、通常通りの寿命が期待できます。

第15番染色体:COATE法が得意とする「微細欠失」

ここがVol.2の最大のハイライトです。第15番染色体(特に15q11-q13領域)は構造が不安定で、「微細欠失(Microdeletion)」が非常に起きやすい場所です。これらは両親からの遺伝ではなく、突然変異(デノボ)で発生します。

Prader-Willi / Angelman症候群

  • プラダー・ウィリ症候群 (Prader-Willi):
    父性由来の15q欠失。
    症状:乳児期の筋緊張低下、幼児期からの過食と肥満、軽〜中等度の知的障害、低身長。
    寿命:肥満による合併症(糖尿病、心疾患)がなければ、平均寿命に近づいています。適切な食事・体重管理がカギとなります。
  • アンジェルマン症候群 (Angelman):
    母性由来の15q欠失。
    症状:重度の知的障害、発語の欠如、頻繁な笑い、てんかん発作。
    寿命:身体的な健康状態は比較的良好で、正常な寿命が期待できます。

従来検査 vs COATE法(ダイヤモンドプラン)

従来のNIPT(第1世代・第2世代)における微細欠失の陽性的中率は、わずか70%台でした。陽性と出ても約3割は間違いだったのです。
しかし、ミネルバクリニックのダイヤモンドプランで採用している最新技術「COATE法」は、ターゲット法とSNP法の両方の強みを兼ね備えているため、次元が違います。

💡 用語解説:ワイドゲノム法

多くの一般的なNIPTで採用されている手法。全染色体を「広く浅く」解析します。トリソミー(数の変化)の検出には有効ですが、読み取り深度(Depth)が浅いため、微細欠失のような「小さな構造異常」は検出感度が低く、見逃されるリスクが高いのが弱点です。

💡 用語解説:ターゲット法

当院が採用している手法。全染色体を浅く見るのではなく、疾患に関連する重要な領域だけを「狙い撃ち」して深く読む(Deep Sequencing)技術。これにより、従来法ではノイズに埋もれて見えなかった「微細な欠失」や「部分重複」を鮮明に検出します。

💡 用語解説:SNP法

個人の遺伝子の指紋であるSNP(スニップ)を解析し、「母親のDNA」と「赤ちゃんのDNA」を明確に区別する技術。これにより、バニシングツインや倍数体の誤判定を防ぎ、モザイクの有無も正確に判断できます。

  • 陽性的中率 >99.9%:
    ターゲット法とSNP法の両方を統合することで、従来法から飛躍的に精度が向上しました。
  • 「症候性自閉症」の原因を特定:
    これらの微細欠失や、同時に検査できる56遺伝子(父方リスク)には、重い身体症状を伴う「症候性自閉症」の原因が多く含まれています。

第16番染色体:流産の最大原因とCPM

第16番染色体トリソミーは、すべての妊娠における染色体異常の中で最も頻度が高いものです。しかし、出生後に見かけることはまずありません。なぜなら、そのほぼ全て(100%近く)が妊娠初期に流産となるからです。

なぜ16番を検査するのか?(グリーフケア)

初期流産の約60〜70%は染色体異常が原因であり、その中で16番トリソミーは全体の約15〜30%を占めます。「自分を責めてしまうお母さん」に、「流産は誰のせいでもない、染色体の偶発的な事故だった」という事実をお伝えし、心の負担を軽減する(グリーフケア)ために、この検査は大きな意味を持ちます。

胎盤性モザイク(CPM)の可能性

稀に、16番トリソミーが検出されても赤ちゃんが元気に育つケースがあります。これは「胎盤性モザイク(Confined Placental Mosaicism: CPM)」と呼ばれる現象です。
染色体異常があるのは胎盤の細胞だけで、赤ちゃんの細胞は正常(46本)である状態です。この場合、赤ちゃんは生存できますが、胎盤機能不全による発育不全(FGR)のリスクがあるため、厳重な周産期管理が必要です。出生後の赤ちゃんの寿命は、早産や低体重に伴う合併症がなければ、基本的には正常な寿命が期待できます。

ミネルバクリニックの「トリプルリスクヘッジ」

当院は、検査結果を出して終わりではありません。「陽性だったらどうする?」「万が一流産してしまったら?」という患者様の不安に対し、当院独自の「トリプルリスクヘッジ」で備えています。

1. 金銭的リスクヘッジ(互助会)

会費8,000円(非課税)で、陽性時の確定検査(羊水検査)費用を上限15万円まで当院が全額負担します。さらに、胎児分画不足等で再検査となり、結果が出る前に流産してしまった場合には、診断書をご提出いただければ検査費用を全額返金する保証制度も完備しています。

2. 時間的リスクヘッジ(院内完結)

2025年6月より産婦人科を併設。非認証施設としては唯一、陽性時の確定検査(羊水・絨毛検査)を自院で実施可能になりました。他院へたらい回しにされる時間とストレスをゼロにします。

3. 心理的リスクヘッジ(専門医サポート)

臨床遺伝専門医である院長が、24時間体制で患者様に寄り添います。妊娠6週からの早期NIPTや、4Dエコーによる胎児確認も導入し、検査前から検査後まで「安心」を提供し続けます。

まとめ

第9番から第16番染色体には、生存しうる構造異常(9p重複、10q26欠失など)や、微細欠失(15番)、そして流産リスク(16番)など、赤ちゃんの運命に関わる重要な情報が含まれています。これらを正確に知ることは、決して怖いことではありません。事前にリスクを把握し、準備するための「愛のある選択」です。

ミネルバクリニックのダイヤモンドプランは、COATE法によりこれらのリスクを99.9%以上の精度で描き出します。専門医のサポートと、万全のバックアップ体制がある当院で、安心して検査をお受けください。

🏥 臨床遺伝専門医へのご相談

NIPT、微細欠失、流産リスクに関するご不安は、
ミネルバクリニックへお気軽にご相談ください。
最新の遺伝医学と温かい心で、あなたをお迎えします。

参考文献

  • [1] NIH. Chromosome 9. Genetics Home Reference. [NIH]
  • [2] Cassidy SB, et al. Prader-Willi syndrome. Genet Med. 2012. [PubMed]
  • [3] Benn P. Rates of trisomy 16 in pregnancies and their outcomes. Prenat Diagn. [PubMed]
  • [4] American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Noninvasive prenatal screening for fetal chromosome abnormalities.



プロフィール
仲田洋美医師

この記事の筆者:仲田 洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。特に遺伝カウンセリング分野では15年以上の経験を持ち、全国初のオンライン遺伝カウンセリングを確立して、地方在住の方々にも質の高い遺伝医療を提供しています。


仲田洋美の詳細プロフィールはこちら

   

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