この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

多発性外骨腫(遺伝性多発性骨軟骨腫)は、軟骨におおわれた骨のこぶ(骨軟骨腫)が全身の骨にいくつもできる遺伝性の病気で、多くはEXT1遺伝子かEXT2遺伝子の変化で起こります。こぶそのものは良性ですが、骨の変形・低身長・痛みにつながることがあり、まれに大人になってから悪性化します。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査で原因がわかれば、ご自身の見守りの計画だけでなく、お子さんへの遺伝や、ご家族の検査を考える手がかりにもなります。このページでは、症状・遺伝のしかた・悪性化への備えと、EXT1・EXT2を一度に調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
多発性外骨腫の原因遺伝子であるEXT1とEXT2の2つを一度に調べ、病気の原因となる変化があるかを確かめます。遺伝子の配列の変化に加えて、遺伝子の一部や全体が欠けている変化(欠失・重複)も調べます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
骨のこぶが複数あると言われた方やそのお子さん、ご家族に多発性外骨腫の方がいる方、結婚・妊娠を考えていて、お子さんへの遺伝が気になる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です(至急オプションで約7日短縮)。血液・唾液・口の内側の粘膜で受けられ、オンライン診療にも対応しています。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、お子さんに受け継がれる確率は2分の1です。ご家族の検査、出生前診断、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 多発性外骨腫(遺伝性多発性骨軟骨腫)とは
多発性外骨腫は、軟骨の帽子をかぶった骨のこぶ(骨軟骨腫)が、手足の長い骨を中心に、いくつもできる遺伝性の病気です。こぶは良性の腫瘍で、多くは子どものうちに見つかり、骨の成長が止まるころに大きくなるのも止まります[1]。
呼び名が3つあるのはなぜ?
「外骨腫」と「骨軟骨腫」は、同じこぶを指す言葉です。そのため、この病気は「多発性外骨腫」「遺伝性多発性骨軟骨腫(HMO:hereditary multiple osteochondromas)」「遺伝性多発性外骨腫(HME:hereditary multiple exostoses)」など、いくつもの名前で呼ばれています。日本の小児慢性特定疾病では「多発性軟骨性外骨腫症」という名前が使われています。どの名前で説明を受けていても、同じ病気のことです。
なお、骨のこぶが1つだけできる「単発性の骨軟骨腫」は、人口の1〜2%にみられるよくある良性腫瘍です[1]。こぶが1つだけで、ご家族にも同じような方がいない場合は、多発性外骨腫とは分けて考えます。
何人に1人の病気か
米国ワシントン州の46家系・113人の患者さんを調べた研究では、有病率は少なくとも5万人に1人と推定されました[2]。GeneReviewsでは、ヨーロッパでは約10万人に1人、グアムの小さな集団では100人に1人と高い推計もあるとされ、地域や調べ方によって数字が違います[1]。
日本では、小児慢性特定疾病情報センターの解説(2017年作成)が、国内の患者さんを約1,000人、そのうち約750人が大人と推計しています。全国の正確な統計ではないため、目安として受け取ってください。
原因:EXT1・EXT2と、ヘパラン硫酸を作るしくみ
多発性外骨腫の多くは、EXT1遺伝子かEXT2遺伝子の変化によって起こります。GeneReviewsによると、原因の65〜70%がEXT1、30〜35%がEXT2です[1]。
EXT1とEXT2が作るたんぱく質は、2つが組になって、ヘパラン硫酸という長い糖の鎖を作る酵素(ヘパラン硫酸ポリメラーゼ)として働きます。多発性外骨腫は、この働きが失われる変化(機能喪失)によって起こるとされています[1]。こぶの成長は、骨が伸びる場所(成長板)が閉じる思春期以降に止まります。
💡 用語解説:骨軟骨腫(外骨腫)
骨の表面から外側に向かって飛び出す、軟骨の「帽子(軟骨帽)」をかぶった骨のこぶです。骨の成長とともに大きくなり、骨の成長が止まると大きくなるのも止まります[1]。
病気のしくみや治療の研究についてさらに詳しく知りたい方は、多発性外骨腫(HME/HMO)の疾患解説もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
2. 症状と経過:いつ気づき、いつ止まるか
こぶは生まれたときにはほとんどなく、子どものうちに増えていきます。診断される年齢の中央値は3歳で、こぶが見つかる人の割合は、生まれたときの約5%から、12歳では96%に増えます[1]。
こぶができやすい場所
こぶは手足の長い骨にできやすく、骨盤・肩甲骨・肋骨・背骨にもできます。GeneReviewsによると、こぶができやすい骨は次のとおりです[1]。
🦴 こぶができやすい骨(GeneReviewsより)
※文献[1]による。首の骨(頸椎)のこぶで脊髄が圧迫された報告もあります[1]。
骨の変形・低身長・痛み
こぶがあることで、骨がまっすぐ伸びにくくなることがあります。ワシントン州の研究では、前腕の変形が39%と最も多く、脚の長さの差が10%、膝の変形が8%、足首の変形が2%にみられました[2]。GeneReviewsは、前腕や脚の曲がり(角度の変形)は40〜74%、脚の長さの差は10〜50%と、研究によって幅があるとしています[1]。
身長は、少なくとも40%の方で低めになるとされ、67%の方が身長の50パーセンタイル(同じ年齢・性別の真ん中)を下回っていたという報告があります[1]。痛みを感じる方は多いものの、GeneReviewsは「ほとんどの方は活動的で健康的な生活を送っている」としています[1]。
痛みや変形があるときは手術を考えます。痛むこぶは、軟骨帽を含めて切り取ることで多くは症状がよくなるとされ、前腕・脚・足首の変形にはそれぞれに合った手術があります[1]。手術の回数は、ワシントン州の研究では平均2回でしたが[2]、患者さん757人へのウェブ調査では平均7.3回で[3]、調べ方によって大きく違います。
骨の成長が止まると
こぶは骨の成長が止まると大きくならなくなり、その後に新しいこぶはできません[1]。ただし、子どものうちに残った骨の変形は、大人になってからも影響します。小児慢性特定疾病情報センターの解説は、脚の骨の並びのずれが残ると、大人になってから体重のかかる関節の変形性関節症のリスクになるとしています。足首に変形がある方では、42歳までに早く関節症が起こるリスクが最大19%とされています[1]。
男性と女性で違いはある?
GeneReviewsでは、男性のほうが女性より症状が重い傾向があるとされています[1]。ただし、女性なら必ず軽い、というわけではありません。
3. 悪性化(軟骨肉腫)のリスクと、大人になってからの見守り
GeneReviewsでは、こぶが軟骨肉腫などの悪性腫瘍に変わる生涯のリスクは約2〜10%と推定されています[1]。患者さん757人へのウェブ調査では2.7%で、悪性化した平均年齢は28.6歳でした。この調査は、参加者の集まり方のために高めに出ている可能性があると、著者自身が述べています[3]。
悪性化は、骨盤・肩甲骨・肋骨・背骨など、体の中心に近い骨のこぶで起こりやすいとされています[1]。
⚠️ 大人になってからの「急に大きくなる」「痛みが増す」は早めに受診を
骨の成長が止まったあとに、こぶが急に大きくなる、痛みが強くなるのは、悪性化のサインとされています[1]。MRIやCTで軟骨帽の厚さが2〜3cmを超えていると、軟骨肉腫が強く疑われます[1]。小児慢性特定疾病情報センターの解説も、軟骨帽が2cmを超える場合や、大人になって急に大きくなる場合は注意が必要としています。気になる変化があれば、早めに整形外科で調べてもらってください。
定期的な画像検査は必要?
GeneReviewsは、決まった検査の間隔はまだないとしたうえで、大人で骨盤や肩甲骨にこぶがある方は、2〜3年ごとの画像検査が「妥当と思われる」としています。また、診断のときに全身のMRIを一度撮っておくことを勧める意見もあります。一方で、症状のない方に定期的なMRI検査を行うことの効果を確かめた研究はまだない、とも書かれています[1]。どの頻度で見守るかは、こぶの場所や数をふまえて、整形外科の主治医と決めていきましょう。
治療薬の研究としては、パロバロテンという薬の臨床試験が行われましたが、骨の成長板が早く閉じる心配から中止されています[1]。2026年10月時点で、こぶができるのを防ぐ薬はありません。
4. 遺伝のしかた:お子さんへは2分の1
多発性外骨腫は常染色体顕性(優性)遺伝で、親が多発性外骨腫の場合、お子さん1人あたり2分の1の確率で原因の変化を受け継ぎます[1]。性別には関係しません。上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。
受け継いだら必ず症状が出る?
原因の変化を受け継いだ方のうち、症状が出る割合を「浸透率」といいます。多発性外骨腫の浸透率は、女性で96%、男性で100%と推定されています[1]。ワシントン州の研究では、原因を受け継いでいるはずの26人のうち、症状がなかったのは1人でした[2]。
受け継いだ場合はほぼ症状が出ますが、こぶの数・変形の程度・手術が必要になるかは、人によって大きく違います(表現型の多様性)[1][2]。GeneReviewsは、全体としてEXT1のほうがEXT2より症状が重い傾向があるとしつつ、一人ひとりの見通しに使えるほどの遺伝子型と症状の関係はまだわかっていないとしています[1]。
⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません
同じ変化を受け継いでも、症状の重さは人によって違います。親御さんのこぶが少なく、手術を受けたことがなくても、お子さんが同じ程度で済むとは限りません。また、男性のほうが重い傾向があるとされています。ご家族の誰かに多発性外骨腫があるときは、症状の印象だけで判断せず、知ったうえで計画することに意味があります。
家族に同じ病気の人がいないとき
多発性外骨腫の約90%は親から受け継いだもので、約10%はご本人の代で新しく起きた変化(de novo変異)によるものです[1]。
ご家族に同じ病気の方がいない場合でも、親御さんのどちらかが、体の一部の細胞にだけ変化をもつ「モザイク」のことがあります。GeneReviewsは、モザイクの親御さんは症状がごく軽いかほとんどないことがあり、血液の検査ではモザイクを見つけきれないことがあるとしています[1]。
親御さんの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)に変化がある「性腺モザイク」の場合、変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。「新しく起きた変化だから、次のお子さんは大丈夫」と小さく見積もらないことが大切です。
5. どんな人がこの検査を受けるとよいか
骨のこぶが複数あると言われた方やそのお子さん、ご家族に多発性外骨腫の方がいる方、結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。見た目やレントゲンの印象、ご家族の話だけでは判断しきれないことも多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
骨のこぶが複数ある・お子さんに見つかった方
GeneReviewsは、レントゲンで骨のこぶが複数見つかった方や、ご家族に同じ病気の方がいる方で、多発性外骨腫を疑うとしています。診断は、特徴的なレントゲン所見か、EXT1またはEXT2の病的な変化が見つかることでつきます[1]。
レントゲンで診断がついている方でも、遺伝子の検査で原因がはっきりすると、病名が確定するだけでなく、どちらの遺伝子の変化かがわかり、ご家族が同じ場所を調べられるようになります。病名がわかると、受けるべき見守りの検査、使える制度(小児慢性特定疾病)が決まり、次の一手が考えやすくなります。
ご家族に多発性外骨腫の方がいる方
あなたの1回の検査結果が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知る手がかりになります。ご家族の中で原因の変化がわかっていれば、ほかのご家族は同じ場所を調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。お子さんを検査するかどうか、いつ検査するかは、遺伝カウンセリングで一緒に考えます。
結婚・妊娠を考えている方
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。多発性外骨腫の当事者の方にとっても、きょうだいに多発性外骨腫の方がいる方にとっても、妊娠の前に原因の変化を確かめておけば、選べることが増えます。ご家族の原因がわかっていれば、出生前検査も着床前の検査も可能とされています[1]。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で受けられます(第8章)。
この検査より別の検査が向いている場合
骨のこぶが多発し、ほかに目立つ特徴がなければ、まずこの検査です。一方、GeneReviewsは、見分けるべき病気として、ランガー・ギーディオン症候群、ポトキ・シャッファー症候群、メタコンドロマトーシス、進行性骨化性線維異形成症などを挙げています[1]。骨のこぶのほかに症状がある場合や、骨の病気だが型をしぼれない場合は、次の検査が向いていることがあります。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、症状・レントゲン所見・ご家族の情報で変わります。比べているのは検査の種類です。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
6. この検査で調べる遺伝子
この検査では、多発性外骨腫の原因として知られているEXT1とEXT2の2つの遺伝子を、一度に調べます。以前のように、EXT1を調べて変化がなければ次にEXT2を調べる、という順番待ちはありません。
🧬 遺伝性多発性骨軟骨腫NGSパネル検査で調べる遺伝子(2遺伝子)
※対象遺伝子は当院の検査内容による。割合はGeneReviews[1]による。
どんな変化を調べるか
次世代シークエンサー(NGS)で、2つの遺伝子のたんぱく質を作る部分(コード領域)と、そのつなぎ目(スプライス部位)の文字(塩基)の並びを読みます。あわせて、遺伝子の一部や全体がまとまって欠けたり増えたりしている変化(欠失・重複、コピー数の変化)も調べます。どちらも検査料金に含まれています。
欠失・重複を調べることは大切です。GeneReviewsによると、EXT1の病的な変化の7〜12%、EXT2の10%未満は、配列を読むだけでは見つからない欠失・重複です[1]。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
💡 検体によって調べられる欠失の範囲が違います
遺伝子1つ全体が欠ける変化は、血液でも口の内側の粘膜でも調べられます。一方、遺伝子の一部分(連続する2つ以上のエクソン)がまとまって欠ける変化は、血液の検体でだけ調べられます。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることはありますが、ふだんの検査では調べる対象になっていません。どの検体で受けるかは、遺伝カウンセリングでご相談ください。
専門的な情報:読み取りの精度(カバレッジ)
検査する遺伝子の領域の99%以上を、同じ場所を20回以上読み取る深さ(20x以上)で解析します。同じ場所を何度も読むほど、読み間違いと本当の変化を見分けやすくなります。品質の基準に届かない部分や、確かめが必要な変化は、サンガー法という別の方法で読み直して確かめます。
7. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、EXT1・EXT2の文字の並びの変化と、遺伝子の欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●調べていない場所:遺伝子の働きを調節する部分(プロモーター)や、つなぎ目から離れたイントロンの奥の変化、染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)は、この検査では見つかりません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけるようには作られていません。親御さんのモザイクの確認には限界があります。
- ●こぶ(腫瘍)の組織:この検査は生まれ持った遺伝子を調べるもので、手術で取ったこぶの組織を調べる検査ではありません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因の変化が見つからなくても、この検査で検出できない変化が残っている可能性や、別の病気の可能性があります。レントゲンで多発性外骨腫と診断されていれば、その診断と見守りは続けます。
8. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
陽性だったとき:診断の確定と、見守りの計画
EXT1かEXT2に病的な変化が見つかると、多発性外骨腫の診断が確定します。GeneReviewsは、診断がついたら、こぶの場所・関節の動き・変形をくわしく確かめること、全身のMRIを一度撮ること(悪性化しやすい体質の方にはCTよりMRIが望ましい)を勧める意見があること、遺伝の専門家による遺伝カウンセリングを受けることを挙げています[1]。整形外科での見守りの計画を立てるときにも、原因がはっきりしていることが土台になります。
ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき
原因の変化がわかると、ご両親・きょうだい・お子さんも同じ変化をもっている可能性を考えられるようになります。ご家族は、同じ場所を調べることで受け継いでいるかどうかを確かめられます。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
陰性だったとき
変化が見つからなかった場合は、この検査では見つからない種類の変化(第7章)、モザイク、あるいは別の骨の病気の可能性を考えます。症状に合わせて、骨系統疾患のパネル検査や全エクソーム検査を検討します(第5章の表)。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。扱い方はVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いで、結果の伝え方の方針は二次的所見の開示方針でご覧いただけます。
妊娠を考えている方:出生前診断の相談
GeneReviewsは、ご家族で多発性外骨腫の原因となる変化がわかっていれば、出生前検査は可能としています[1]。反対に、原因がわからないままでは、妊娠中に何を調べればよいかが決まりません。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております(羊水検査・絨毛検査、2025年6月から産婦人科を併設)。妊娠を考えている段階から、出生前診断の計画をご相談いただけます。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。「海外でPGT-Mを受けたい」というお問い合わせは多く、当院では、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査です。
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書(認定を受けた検査室のもの)、③ご家族の検体が求められています[4]。
ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で、変化をもつ染色体を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[4]。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要で、多発性外骨腫のような常染色体顕性遺伝の病気では、患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人が目安とされています[4]。
血縁者がいない場合について、指針は、ご夫婦で目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法を挙げています。ただし、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。また、新しく起きた変化(de novo)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[4]。多発性外骨腫の約10%はde novoなので[1]、この点は前もって確かめておく必要があります。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。
臨床遺伝専門医としての判断をお伝えすると、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。また、海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。くわしくは海外でPGT-Mを考えている方へ(必要な遺伝子検査・家族の検体・英語の検査結果)と、PGT-Mはなぜ本人だけでは検査できないのかで解説しています。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[5]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる疾患では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています(2026年10月に学会の公式ページで確認)。
PGT-Mの対象になる病気は、国によって違います。日本では症例ごとに学会が審査し、審査が続いている申請も多くあります(学会の2026年9月の発表では、2025年7月〜2026年6月に審査した73件のうち37件が審査継続中)。英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国には、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[6]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。
9. 日本の制度(2026年10月時点)
多発性軟骨性外骨腫症(多発性外骨腫)は、小児慢性特定疾病の対象です。厚生労働省の小児慢性特定疾病の医療意見書(2025年版)で、骨系統疾患(告示番号8)の「多発性軟骨性外骨腫症」として確かめました。医療費の助成を受けるには、認定の基準を満たし、申請する必要があります。くわしくは、小児慢性特定疾病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
一方、難病情報センターの指定難病の一覧には、2026年10月時点で多発性軟骨性外骨腫症(多発性外骨腫)は載っていません。小児慢性特定疾病は子どもを対象とした制度なので、大人になってからの医療費の扱いは、早めに窓口で確かめておきましょう。障害者手帳の対象になるかは、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
当院のこの遺伝子検査は自費診療で、保険は使えません。
10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。血液・唾液・口の内側の粘膜で受けられ、オンライン診療にも対応しています。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取お支払い後にキット
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。決められたキットと手順で採らないと、検体の取り違えや品質の不足で、正しい結果が出せなくなるためです。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
11. 院長コラム
🩺 院長コラム【「レントゲンでわかっているから」で終わらせない】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
多発性外骨腫は、レントゲンで診断がつくことの多い病気です。だからこそ「もう病名はわかっているのに、遺伝子まで調べる意味があるの?」と思われるかもしれません。けれども、病名がわかることと、ご家族が同じ変化をもっているかを確かめられることは、別のことです。原因の変化がわかってはじめて、ご家族の検査、妊娠したときの出生前診断、海外でのPGT-Mの準備といった、次の選択肢が具体的になります。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。そして、同じ変化を受け継いでも、症状の重さは人によって違います。「自分はこぶが少なかったから」「手術をしなくて済んだから」という印象だけで、お子さんの将来を決めてしまわないでほしいと考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 多発性外骨腫の原因は何ですか?
多くはEXT1遺伝子かEXT2遺伝子の変化が原因です。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、EXT1が65〜70%、EXT2が30〜35%を占めます。2つの遺伝子は、ヘパラン硫酸という糖の鎖を作る働きをもっています。この検査では、EXT1とEXT2の2つを一度に調べます。
Q2. 多発性外骨腫は指定難病ですか?
2026年10月時点で、難病情報センターの指定難病の一覧に、多発性軟骨性外骨腫症(多発性外骨腫)は載っていません。一方、小児慢性特定疾病には、骨系統疾患の「多発性軟骨性外骨腫症」として含まれています。医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たして申請する必要があります。
Q3. 多発性外骨腫は何人に1人の病気ですか?
米国ワシントン州の研究では少なくとも5万人に1人、ヨーロッパでは約10万人に1人と推定されています。日本では、小児慢性特定疾病情報センターが国内の患者さんを約1,000人と推計しています。なお、骨のこぶが1つだけできる「単発性の骨軟骨腫」は、人口の1〜2%にみられるよくある良性腫瘍で、多発性外骨腫とは別に考えます。
Q4. 子どもに遺伝する確率はどれくらいですか?
多発性外骨腫は常染色体顕性(優性)遺伝で、親が多発性外骨腫の場合、お子さん1人あたり2分の1の確率で原因の変化を受け継ぎます。受け継いだ場合に症状が出る割合(浸透率)は、女性で96%、男性で100%と推定されています。症状の重さは人によって違い、親の症状が軽くてもお子さんが軽いとは限りません。
Q5. 悪性化(がん化)する確率はどれくらいですか?
GeneReviewsでは、軟骨肉腫などへの悪性化の生涯リスクは約2〜10%と推定されています。患者さん757人へのウェブ調査では2.7%で、悪性化した平均年齢は28.6歳でした。骨の成長が止まった大人で、こぶが急に大きくなる、痛みが強くなるといった変化があれば、早めに整形外科で調べてもらうことが大切です。
Q6. 多発性外骨腫は放置しても大丈夫ですか?
症状のないこぶは、すぐに手術が必要になるとは限りません。痛み・骨の変形・脚の長さの差・神経の圧迫などがあれば、手術を考えます。骨の成長が止まると新しいこぶはできなくなりますが、大人になってからの急な増大や痛みは悪性化のサインのことがあるため、自己判断で放置せず、整形外科で経過をみてもらいましょう。
Q7. 出生前診断はできますか?
ご家族で多発性外骨腫の原因となる遺伝子の変化がわかっていれば、出生前検査は可能とされています。原因の変化がわからないままでは、何を調べればよいかが決まりません。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。妊娠を考えている段階からご相談ください。
Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。ご家族の検体が必要になることが多いため、くわしくは海外でPGT-Mを考えている方向けのページをご覧ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていませんが、PGT-Mのあとの妊娠で確かめるための、絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。
Q9. 唾液や口の中の粘膜でも検査できますか?
はい。この検査は、血液のほか、唾液・口の内側の粘膜(頬粘膜スワブ)でも受けられ、オンライン診療にも対応しています。ただし、遺伝子の一部分(連続する2つ以上のエクソン)がまとまって欠けている変化は、血液の検体でだけ調べられます。どの検体がよいかは、遺伝カウンセリングでご相談ください。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。多発性外骨腫の原因がわかれば、大人になってからの見守りの計画だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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