目次

骨格異形成症(こっかくいけいせいしょう)は、骨や軟骨のでき方・育ち方に生まれつきの違いがあり、低身長、手足が短い(四肢短縮)、骨の形の変化、骨の折れやすさなどが起こる病気の総称です。骨系統疾患とも呼ばれ、2023年の国際分類には771の病気と552の遺伝子が載っています[1]。見た目やレントゲンの所見が似ている病気が多く、症状だけで病名をしぼるのは簡単ではありません。このページの検査では、原因として知られる179の遺伝子を一度に調べます。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご本人の健康管理だけでなく、ご家族の検査や次の妊娠の計画を考えるときにも、ずっと役に立ちます。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
骨格異形成症(骨系統疾患)の原因として知られる179遺伝子の小さな変化と、欠失・重複を一度に調べます。軟骨無形成症、骨形成不全症、多発性骨端異形成症、点状軟骨異形成症、大理石骨病、低リン血症性くる病などの原因遺伝子が含まれます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
低身長や手足の短さ、骨の形の変化、骨折のくり返しなどがあり原因を知りたい方、ご家族に骨格異形成症の方がいて、次のお子さんの確率を知りたい方、海外でPGT-Mを考えている方です。おなかの赤ちゃんそのものを調べる検査は別にあります。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果まで3〜5週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜で、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる確率や、妊娠中の絨毛検査・羊水検査(院内)での備え方を具体的に考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /
検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。
1. 骨格異形成症とは:検査を受けるか決める前に知っておきたいこと
骨格異形成症は、骨や軟骨をつくる・育てる・保つしくみに生まれつきの違いがあり、骨の形・長さ・硬さ・数などに変化が出る病気の総称です。英語ではskeletal dysplasiaといい、国際的な分類は2023年に11回目の改訂が行われて、771の病気と552の遺伝子が載っています[1]。1つの病気の名前ではなく、とても多くの病気をまとめた呼び方です。
「骨格異形成症」「骨系統疾患」「四肢短縮症」の違い
3つの言葉は、指している範囲が少しずつ違います。骨格異形成症はskeletal dysplasiaを訳した言葉で、骨系統疾患は日本の医療や制度でよく使われる呼び方です。小児慢性特定疾病でも「骨系統疾患」という疾患群の名前が使われています(2026年10月時点、小児慢性特定疾病情報センターで確認)。この2つは、ほぼ同じ病気のまとまりを指しています。
一方、四肢短縮症は病気の名前ではなく、「手足が短い」という状態を表す言葉です。手足が短くなる原因の病気はたくさんあり、代表的なものに軟骨無形成症があります。妊婦健診で「手足が短い」と言われたときに、その原因を探す手がかりになるのが、このページの遺伝子検査です。骨系統疾患という言葉でまとめた検査については、骨系統疾患の遺伝子検査(521遺伝子パネル)もあります(違いは第2章で説明します)。
どれくらいの人に起こるか
南米の出生登録(1978〜1983年、34万9,470人の出生)を調べた研究では、骨格異形成症は出生1万人あたり2.3人で見つかり、届け出の漏れを考えると実際はその約2倍と推定されました[2]。同じ研究では、軟骨無形成症が出生1万人あたり0.5〜1.5人、致死性骨異形成症と軟骨無発生症のグループが0.2〜0.5人、骨形成不全症が0.4人でした[2]。
1つ1つの病気はまれでも、骨格異形成症全体で見ると、決してめずらしい病気ではありません。ただし、この数字は昔の南米の調査によるもので、日本の正確な統計ではありません。目安として受け取ってください。
主な症状:低身長・手足が短い・骨の形や硬さの変化
症状は病気によって大きく違いますが、次のような特徴がよく手がかりになります。いくつかが重なることも多く、どの組み合わせかによって疑う病気が変わります。
- ●低身長:体全体のつり合いはそのままで小さい場合と、手足や胴体の一部だけが短く、つり合いが違う場合があります。
- ●手足が短い(四肢短縮):体に近い部分(上腕・太もも)、真ん中の部分(前腕・すね)、手先・足先のどこが短いかで、疑う病気が変わります。
- ●骨の形の変化:背骨の形(側弯など)、胸の形、関節の変形、指の数や形の違いなどです。
- ●骨の硬さの変化:骨がもろく折れやすい病気(骨形成不全症など)もあれば、反対に骨が硬く厚くなる病気(大理石骨病など)もあります。
- ●骨以外の症状:目・耳・歯・心臓・腎臓などに症状が出る病気もあります。
いつわかる?おなかの中・生まれてから・大人になってから
重い型の多くは、妊娠中の超音波検査で胎児の大腿骨長が短い、手足が短いといった形で見つかります。生まれてすぐに体つきやレントゲンからわかる病気もあれば、成長の途中で身長の伸び方の違いから気づかれる病気、大人になってから関節の痛みや早い変形性関節症で見つかる病気(多発性骨端異形成症など)もあります。
遺伝のしかた:顕性・潜性・X連鎖と、新しく起きた変化
骨格異形成症の遺伝のしかたは、病気ごとに違います。常染色体顕性(優性)、常染色体潜性(劣性)、X連鎖のどれもあり[1]、同じ遺伝子でも病気によって遺伝のしかたが違うことがあります。遺伝のしかたの基本は遺伝形式のページで解説しています。
また、親からではなく、お子さんで新しく起きた変化(新生突然変異・de novo)による病気も多くあります。たとえば軟骨無形成症では、論文で報告された467人をまとめた研究で、家族歴がわかった385人のうち88%が、家族にほかに患者さんのいない例でした[4]。「家族に同じ病気の人がいないから遺伝の病気ではない」とは言えません。
⚠️ 「新しく起きた変化だから、次は大丈夫」とは言えません
お子さんで新しく起きたように見える変化でも、親御さんの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ同じ変化がある「性腺モザイク」のことがあります。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。血液で測った割合も、生殖細胞の割合の目安にはなりません。
2. どんな人がこの検査を受けるとよいか
骨や手足の症状があって原因を知りたい方、ご家族に骨格異形成症の方がいる方、結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。見た目やレントゲンだけでは病名をしぼりきれないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
低身長・手足の短さ・骨の形や骨折が気になるお子さん・大人
- ●低身長があり、手足や胴体のつり合いが気になる方
- ●手足が短い、骨や関節の形が気になると言われた方
- ●骨折をくり返す、骨が硬い・厚いと言われた方
- ●レントゲンで骨格異形成症(骨系統疾患)が疑われたが、病名がしぼれていない方
- ●大人になって関節の痛みや変形が早く出てきて、子どもの頃から背が低かった方
希少な病気は、診断がつくまでに時間がかかりがちです。欧州41か国の6,507人を対象にした調査では、希少疾患の診断までに平均4.7年かかっていました[5]。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。
ただし、全員に原因が見つかるわけではありません。骨の病気が疑われた543人が遺伝子パネル検査を受けた研究では、原因が確定したのは42.0%でした[3]。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)でも、全エクソームの解析を終えた5,136家系のうち、診断が確定したのは43.8%です[6]。陰性でも、次の検査という選択肢があります(第5章)。
妊婦健診で「骨が短い」「手足が短い」と言われた方へ
このページの検査は、検査を受ける方ご自身の血液・唾液・口の内側の粘膜で調べる検査です。おなかの赤ちゃんそのものを調べるには、別の方法を使います。赤ちゃんの細胞は羊水検査・絨毛検査で採り、出生前全エクソーム(WES)検査や出生前全ゲノム(WGS)検査で調べる方法があります。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。
先ほどの543人の研究では、胎児の検体のほうが、生まれたあとの検体より原因が見つかる割合が高いという結果でした[3]。超音波で骨の短さがはっきり見つかるような病気では、原因の遺伝子にたどり着きやすいことがあると考えられます。一方で、超音波で大腿骨が少し短いといわれても、骨の病気ではないこともあります。指摘を受けたら、どこまで調べるかを含めて、早めにご相談ください。
ご両親のどちらかに骨格異形成症の方がいる、前のお子さんが骨格異形成症だった、という場合は、まずご両親(または前のお子さん)の原因をこの検査で確かめておくと、妊娠中に赤ちゃんで同じ変化があるかを調べる的が決まります。
ご家族に骨格異形成症の方がいる・次のお子さんの確率を知りたい方
原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、そして次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。お子さんで新しく起きた変化だとわかれば、ご両親のせいではないこともはっきりします。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
見た目や家族歴だけでは、判断できないことがあります。当院では、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため遺伝子パネル検査を受けた方に、まったく関係のない別の遺伝子の病的な変化が、体の細胞の一部だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんに受け継がれ、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
179遺伝子パネルと521遺伝子パネル、どちらを選ぶか
当院には、骨の病気をまとめて調べる遺伝子パネル検査が2つあります。このページの179遺伝子パネルと、骨系統疾患の遺伝子検査(521遺伝子パネル)です。179遺伝子はすべて521遺伝子パネルにも含まれています。2つの検査の違いを、それぞれのページの記載から並べると次のとおりです。
🔍 179遺伝子パネルと521遺伝子パネルの違い
| 項目 | 骨格異形成症パネル(このページ) | 骨系統疾患パネル |
|---|---|---|
| 調べる遺伝子の数 | 179遺伝子 | 521遺伝子(179遺伝子をすべて含む) |
| 検査費用(税込) | 330,000円 | 330,000円 |
| 結果までの期間 | 3〜5週間 | 2〜3週間 |
| 検体 | 血液・唾液・口の内側の粘膜 | 血液・唾液・頬の内側の粘膜など |
| 遺伝カウンセリング料 | 30分22,000円(税込)※別途 | 30分22,000円(税込)※別途 |
※521遺伝子パネルの内容は、そのページの記載(2026年10月17日に確認)による。521遺伝子パネルには、結果までの期間を短くするオプションもあります。
どちらを選ぶかは、疑われている病気がどのグループか、結果をどれくらい急ぐか、どこまで広く調べたいかによって変わります。遺伝カウンセリングで、症状やレントゲンの所見、ご家族の情報をうかがったうえで、一緒に決めます。
この検査より別の検査が向いている場合
症状がはっきり特定のグループに当てはまるときや、骨以外の症状が目立つときは、次の検査のほうが向いていることがあります。比べているのは検査の種類で、どれも当院で受けられる検査です。
🧭 症状に合わせた検査の選び方
| こんなとき | 向いている検査 |
|---|---|
| 低身長が主な症状で、骨の形の変化ははっきりしない | 低身長遺伝子パネル検査 |
| 骨折をくり返す・骨密度の異常 | 骨形成不全症・骨密度異常NGS遺伝子検査パネル |
| 子どもの頃からの関節の痛み・早い変形性関節症 | 多発性骨端異形成症の遺伝子検査 |
| 頭の形(頭蓋骨の縫い目が早く閉じる) | 頭蓋骨縫合早期癒合症の遺伝子検査、FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症の遺伝子検査 |
| 強い近視・網膜剥離・難聴と関節の症状 | スティックラー症候群の遺伝子検査 |
| 骨にこぶ(外骨腫)がいくつもできる | 遺伝性多発性骨軟骨腫の遺伝子検査 |
| 背骨と肋骨の形の変化 | 脊椎肋骨異形成症の遺伝子検査 |
| くる病・血液のリンの値の異常 | 低リン血症性くる病の遺伝子検査 |
| 指の数の違い・腎臓や脳の症状もある | 繊毛病症候群の遺伝子検査、ジュベール・メッケル症候群の遺伝子検査 |
| 発達の遅れや心臓の病気など、骨以外の症状が多く、病気をしぼれない | 全エクソーム検査(WES)、全ゲノムシークエンス |
| 染色体の数や大きな構造の変化が疑われる | マイクロアレイ染色体検査(CMA) |
※どの検査が合うかは、症状・診察所見・レントゲン・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
\ 妊娠の前に知れば、選べることが増えます /
ご家族の原因がわかっていれば、妊娠したときの羊水検査・絨毛検査(院内)まで当院で続けて相談できます。
海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。
3. 調べる179遺伝子と、わかる病気
この検査では、骨格異形成症の原因として知られる179遺伝子について、遺伝子の文字の並び(塩基配列)の小さな変化と、遺伝子の一部または全体がなくなる・増える変化(欠失・重複)を調べます。病気のグループごとに主な遺伝子をまとめると、次のようになります。
病気のグループ別の主な遺伝子
🦴 病気のグループ別の主な遺伝子と、代表的な病気
| グループ | 主な遺伝子 | 代表的な病気 | 遺伝のしかた |
|---|---|---|---|
| FGFR3が原因の軟骨の病気 | FGFR3 | 軟骨無形成症、軟骨低形成症、致死性骨異形成症(タナトフォリック骨異形成症)、I型、II型、SADDAN症候群 | 常染色体顕性(新しく起きた変化が多い) |
| II型・XI型コラーゲンの病気 | COL2A1、COL11A1、COL11A2 | 先天性脊椎骨端異形成症、クニースト異形成症、軟骨無発生症II型・低軟骨形成症、脊椎骨端骨幹端異形成症ストラドウィック型、脊椎骨端異形成症スタネスク型、チェコ異形成症、扁平椎致死性骨異形成症トーランス型、脊椎末梢性骨異形成症、アルジェリア型脊椎骨幹端異形成症、軽度軟骨異形成を伴う変形性関節症、ペルテス病、家族性大腿骨頭壊死症、スティックラー症候群1型、2型、マーシャル症候群、線維軟骨発生症1型、耳脊椎巨大骨端異形成症(顕性)、(潜性) | 常染色体顕性が多い(線維軟骨発生症・耳脊椎巨大骨端異形成症などに潜性あり) |
| 多発性骨端異形成症・偽性軟骨無形成症 | COMP、MATN3、COL9A1、COL9A2、COL9A3、SLC26A2、CANT1 | 偽性軟骨無形成症、多発性骨端異形成症1型、2型、3型、5型、6型、7型、潜性型(SLC26A2)、スティックラー症候群4型、6型 | 常染色体顕性(COMP・MATN3・COL9A1〜3による多発性骨端異形成症など)/常染色体潜性(SLC26A2・CANT1による多発性骨端異形成症、COL9A1・COL9A3によるスティックラー症候群など) |
| 軟骨の硫酸化などの代謝の病気 | SLC26A2、PAPSS2、CHST3、CHST14、CANT1、B3GAT3、B4GALT7、B3GALT6、SLC35D1、CHSY1 | 捻曲性骨異形成症(SLC26A2)、デスビュケ症候群、先天性関節脱臼を伴う脊椎骨端異形成症(CHST3)など | 常染色体潜性が多い |
| 骨幹端(骨の成長する部分)の病気 | COL10A1、PTH1R、PTHLH、IHH | シュミット型骨幹端軟骨異形成症、ヤンセン型骨幹端軟骨異形成症 | 常染色体顕性 |
| 短肋骨胸郭異形成症などの繊毛病 | DYNC2H1、IFT80、WDR35、NEK1、IFT122、IFT140、EVC、EVC2、KIF7、ICK、MKS1、CC2D2A、CEP290、TMEM216、TMEM67、RPGRIP1L | ジューン症候群(窒息性胸郭異形成症)、短肋骨胸郭異形成症3型、9型、エリス・ファンクレフェルト症候群、アクロカロサル症候群、メッケル症候群1、4、6、ジュベール症候群5、9 | 常染色体潜性 |
| 点状軟骨異形成症 | EBP、ARSE、PEX7、GNPAT、AGPS、DHCR24 | X連鎖顕性点状軟骨異形成症(CDPX2)、X連鎖潜性点状軟骨異形成症1型(CDPX1)、近位肢節型点状軟骨異形成症、2型、3型、デスモステロール症 | X連鎖(EBP・ARSE)/常染色体潜性(PEX7・GNPAT・AGPS・DHCR24) |
| フィラミンの病気 | FLNB、FLNA | ラーセン症候群、アテロステオジェネシスI型、III型、ブーメラン骨異形成症、前頭骨幹端異形成症1型、耳口蓋指症候群2型 | 常染色体顕性(FLNB)/X連鎖(FLNA) |
| 骨がもろくなる病気(骨形成不全症など) | COL1A1、COL1A2、IFITM5、SERPINF1、CRTAP、P3H1、PPIB、SERPINH1、FKBP10、SP7、BMP1、PLOD2 | 骨形成不全症(総論)、1型、2型、3型、4型、5型、骨形成不全症・エーラス・ダンロス症候群複合症1、2 | 常染色体顕性(COL1A1・COL1A2・IFITM5)/常染色体潜性(SERPINF1・CRTAP・P3H1・PPIB・SERPINH1・FKBP10・BMP1・PLOD2)/常染色体顕性・潜性(SP7) |
| 骨が硬く・厚くなる病気 | CLCN7、TCIRG1、OSTM1、TNFSF11、TNFRSF11A、TNFRSF11B、CA2、CTSK、SOST、LRP4、LRP5、LEMD3、TGFB1、FERMT3、FAM20C | 大理石骨病(常染色体潜性・1型)、尿細管性アシドーシスを伴う大理石骨病3、濃化異骨症、カムラティ・エンゲルマン病1型 | 常染色体潜性が多い(CLCN7・LRP5・LEMD3・TGFB1などに顕性あり) |
| カルシウム・リンと骨の病気 | PHEX、FGF23、DMP1、ENPP1、SLC34A3、CLCN5、ALPL、CASR、GNAS、GALNT3 | X連鎖性低リン血症性くる病(ビタミンD抵抗性くる病)、低ホスファターゼ症、デント病、偽性副甲状腺機能低下症1B型、新生児重症副甲状腺機能亢進症 | X連鎖(PHEX・CLCN5)/常染色体顕性・潜性(そのほか、病気による) |
| 頭の骨・顔の骨・鎖骨の病気 | RUNX2、FGFR1、FGFR2、SH3PXD2B | 鎖骨頭蓋異形成症、骨幹端異形成・上顎低形成・短指症候群、アペール症候群、ファイファー症候群、クルゾン症候群、オステオグロフォニック異形成症、屈曲骨異形成症、アントレー・ビクスラー症候群2型 | 常染色体顕性(RUNX2・FGFR1・FGFR2)/常染色体潜性(SH3PXD2B) |
| 背骨・肋骨の病気 | DLL3、MESP2、LFNG、HES7、TBX6 | 脊椎肋骨異形成症(総論)、ジャルコ・レビン症候群、脊椎肋骨異形成症4型 | 主に常染色体潜性 |
| 手足の指・腕や脚の形の病気 | GLI3、HOXD13、SHH、LMBR1、GDF5、BMPR1B、NOG、ROR2、WNT5A、WNT7A、WNT3、TBX5、TBX3、TBX15、SALL1、SALL4、TP63、FBXW4、FMN1、GREM1、PITX1、FBLN1、ARHGAP31、SOX9、BMP2、CDH3、FGF10 | グレイグ頭蓋多合指趾症候群、パリスター・ホール症候群、後軸性多指症、軸前性多指症IV型、合多指趾症、ホルト・オーラム症候群、タウンズ・ブロックス症候群、沖広症候群、セナニ・レンツ症候群、カンポメリック異形成症(屈曲肢異形成症) | 常染色体顕性が多い(WNT7A・WNT3などに潜性あり) |
| 低身長を主な特徴とする病気 | SHOX、NPR2、ACAN、CUL7、OBSL1、PCNT、PDE4D、PRKAR1A、TRPS1、CDKN1C、SMARCAL1、RECQL4、LMNA、ZMPSTE24、FBN1、TBCE、EIF2AK3、DYM、NIPBL、ESCO2、KIF22 | レリー・ワイル症候群、ランガー中間肢異形成症、先端中間肢異形成症マロトー型、3-M症候群、原発性小人症、肢端骨形成不全症1型、毛髪鼻指節症候群I型、IMAGe症候群、シムケ免疫骨異形成症、下顎肢端異形成症、アクロミクリック異形成症、ゲレオフィジック骨異形成症2型、ケニー・キャフェイ症候群、ウォルコット・ラリソン症候群、ディグベ・メルキオール・クラウセン症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群1型、ロバーツ症候群 | 病気によって常染色体顕性・潜性・偽常染色体(SHOX)とさまざま |
| そのほかの骨・関節の病気 | TRPV4、DDR2、EXT1、EXT2、PTPN11、NOTCH2、SMAD4、HSPG2、MGP、MMP2、MMP9、MMP13、WISP3、ACP5、ANO5、ANKH、NKX3-2、LIFR、GORAB、ATP6V0A2、PYCR1、SLC39A13、TRIP11、GPC6、SULF1、MYCN、THPO、TREM2、TYROBP、PIGV、TBXAS1、HPGD、HDAC4、IDH1、IDH2、PPP3CA、MAFB、DLX3 | メタトロピック異形成症、コズロウスキー型脊椎骨幹端異形成症、短肢・異常石灰化を伴う脊椎骨端骨幹端異形成症、多発性外骨腫、メタコンドロマトーシス、ハジュ・チェニー症候群、マイヤー症候群 | 病気によって常染色体顕性・潜性とさまざま |
※グループの分け方は国際分類(2023年版)[1]を参考に、読みやすくまとめ直したものです。遺伝のしかたは病気ごとにOMIMに載っているものを示しました。同じ遺伝子でも病気によって遺伝のしかたが違うことがあるため、結果が出たら、見つかった変化ごとに遺伝カウンセリングでご説明します。
全179遺伝子の一覧
この検査で調べる179遺伝子は次のとおりです。遺伝子名をクリックすると、その遺伝子の解説ページが開きます(解説ページがある遺伝子のみ)。
ACAN, ACP5, AGPS, ALPL, ANKH, ANO5, ARHGAP31, ARSE, ATP6V0A2, B3GALT6, B3GAT3, B4GALT7, BMP1, BMP2, BMPR1B, CA2, CANT1, CASR, CC2D2A, CDH3, CDKN1C, CEP290, CHST14, CHST3, CHSY1, CLCN5, CLCN7, COL10A1, COL11A1, COL11A2, COL1A1, COL1A2, COL2A1, COL9A1, COL9A2, COL9A3, COMP, CRTAP, CTSK, CUL7, DDR2, DHCR24, DLL3, DLX3, DMP1, DYM, DYNC2H1, EBP, EIF2AK3, ENPP1, ESCO2, EVC, EVC2, EXT1, EXT2, FAM20C, FBLN1, FBN1, FBXW4, FERMT3, FGF10, FGF23, FGFR1, FGFR2, FGFR3, FKBP10, FLNA, FLNB, FMN1, GALNT3, GDF5, GLI3, GNAS, GNPAT, GORAB, GPC6, GREM1, HDAC4, HES7, HOXD13, HPGD, HSPG2, ICK, IDH1, IDH2, IFITM5, IFT122, IFT140, IFT80, IHH, KIF22, KIF7, LEMD3, LFNG, LIFR, LMBR1, LMNA, LRP4, LRP5, MAFB, MATN3, MESP2, MGP, MKS1, MMP13, MMP2, MMP9, MYCN, NEK1, NIPBL, NKX3-2, NOG, NOTCH2, NPR2, OBSL1, OSTM1, P3H1, PAPSS2, PCNT, PDE4D, PEX7, PHEX, PIGV, PITX1, PLOD2, PPIB, PPP3CA, PRKAR1A, PTH1R, PTHLH, PTPN11, PYCR1, RECQL4, ROR2, RPGRIP1L, RUNX2, SALL1, SALL4, SERPINF1, SERPINH1, SH3PXD2B, SHH, SHOX, SLC26A2, SLC34A3, SLC35D1, SLC39A13, SMAD4, SMARCAL1, SOST, SOX9, SP7, SULF1, TBCE, TBX15, TBX3, TBX5, TBX6, TBXAS1, TCIRG1, TGFB1, THPO, TMEM216, TMEM67, TNFRSF11A, TNFRSF11B, TNFSF11, TP63, TREM2, TRIP11, TRPS1, TRPV4, TYROBP, WDR35, WISP3, WNT3, WNT5A, WNT7A, ZMPSTE24(179遺伝子)
※ARSEは、現在はARSLという名前で呼ばれています。
当院のNIPTでも調べられる27遺伝子
179遺伝子のうち27遺伝子は、当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)でも、おなかの赤ちゃんに新しく起きた変化を調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。
たとえば軟骨無形成症や致死性骨異形成症の原因になるFGFR3は、両方のプランに入っています。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性の場合は羊水検査・絨毛検査で確かめます。当院では、この確定検査も院内で受けられます。NIPTで骨の病気を調べるときの考え方は、骨系統疾患はNIPTで調べられる?で詳しく解説しています。
4. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、179遺伝子の中の小さな変化と、ある程度の大きさの欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があり、調べ方の性質上、見つけられない変化もあります。
わかること
- ●遺伝子の小さな変化:179遺伝子の、たんぱく質の設計図になる部分(コード領域)と、その境目の部分(スプライシング部位)の、文字1つの変化や小さな挿入・欠失です。
- ●欠失・重複:遺伝子全体がなくなる・増える変化(血液・口の内側の粘膜の検体)と、となり合った2つ以上の区切り(エクソン)にわたる変化(血液の検体のみ)を調べます。1つのエクソンだけの欠失・重複が見つかることもありますが、いつも見つけられるわけではありません。
- ●見つかった変化の確かめ:読み取りの質が低い変化は、別の方法(サンガー法)でもう一度確かめます。見つかった欠失・重複も、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)で確かめてから報告します。
- ●読み取りの十分さ:調べる範囲の96%以上を、それぞれ20回以上くり返し読み取るように設計されています。何度も読むことで、読み間違いによる見落としを減らすためです。
わからないこと
- ●染色体の大きな変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)や、染色体の数の変化は、この検査の対象ではありません。染色体の数や一部の欠失・重複が疑われるときはマイクロアレイ染色体検査などを考えます。ただし、染色体の量が変わらない均衡型の転座・逆位は、通常のマイクロアレイ染色体検査では検出できないため、核型検査など別の方法を検討します。
- ●くり返し配列の伸び:同じ配列が何回もくり返す部分が伸びる変化は調べられません。たとえばRUNX2遺伝子のくり返し配列の伸びは評価されません。
- ●読み取りにくい場所:ACAN遺伝子の12番目のエクソンは長いくり返し配列があるため、この部分の変化を確実に見つけることはできません。
- ●遺伝子の外側や奥の部分:遺伝子の働きを調節する部分(プロモーターなど)の多くや、エクソンから20塩基より離れたイントロンの奥の変化は調べません。また、DNAのメチル化異常は、この塩基配列解析・欠失重複解析では評価できません。偽性副甲状腺機能低下症1B型などが疑われる場合は、GNAS領域のメチル化解析など、別の検査が必要になることがあります。
- ●体の一部の細胞だけの変化:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(体細胞モザイク)を見つけるようには作られていません。
- ●179遺伝子以外の原因:この検査に含まれていない遺伝子が原因の病気は見つかりません。
陰性でも否定はできない/意義がまだわからない変化(VUS)
原因が見つからなくても、骨格異形成症ではない、とは言えません。上に書いた調べられない変化や、まだ原因として知られていない遺伝子による病気の可能性が残るためです。
また、病気の原因かどうか、まだ判断できない変化(VUS)が見つかることがあります。先ほどの543人の研究では、原因が確定しなかった方の報告書の11.4%に、気になるVUSが含まれていました[3]。VUSは、それだけで診断を確定したり、ご家族の発症リスクを判断したりする根拠にはしません。ただし、その変化が病気の原因かどうかを調べるために、ご家族にも同じ変化があるかを検査することがあります。扱い方はVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いで解説しています。
5. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。原因がわかったとき・わからなかったとき・VUSのときで、次にできることが違います。
原因がわかったとき:診断・治療・合併症への備え
病名がわかると、受けるべき検査、気をつけたい合併症、使える制度(指定難病・小児慢性特定疾病、第6章)が決まります。エクソーム・ゲノム検査の研究167件をまとめた米国臨床遺伝・ゲノム学会の系統的レビューでは、95%の研究で、患者さんまたはご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告されています[7](変化の中身や大きさは研究ごとに違います)。
治療の選び方が変わる病気もあります。たとえば軟骨無形成症では、日本でも骨端線が閉じていないお子さんを対象に、ボソリチド(販売名:ボックスゾゴ)という薬が使われています(2026年10月時点、医薬品医療機器総合機構の資料で確認)。薬の詳しい内容や使い方は、軟骨無形成症のページと、専門の医療機関の主治医にご確認ください。
原因がわからなかったとき・VUSのとき
179遺伝子の中に原因が見つからなかった場合は、症状に合わせて、より多くの遺伝子を調べる521遺伝子パネルや、全エクソーム検査・全ゲノムシークエンスを考えます。研究が進めば、同じデータを解析し直して新しくわかることもあります。VUSは、ご家族の検査や今後の研究で、のちに意味がはっきりすることがあります。
ご家族への影響と、次のお子さんで同じことが起こる確率
次のお子さんで同じ病気が起こる確率は、原因の遺伝子と遺伝のしかたで大きく変わります。
- ●常染色体顕性(優性)遺伝で、親御さんが同じ変化をもつ場合:お子さん1人ごとに2分の1です。顕性遺伝の病気では、同じ変化でも症状の重さが人によって違うことがあり、「自分が軽いから子どもも軽い」とは言えない病気もあります。
- ●常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親とも保因者の場合:お子さんごとに4分の1です。ほかのお子さん(きょうだい)が将来、結婚や出産を考えるときに、保因者かどうかを知る手がかりにもなります。
- ●X連鎖の場合:お母さんが保因者かどうか、お子さんの性別で変わります。
- ●お子さんで新しく起きた変化の場合:次のお子さんの確率は低いことが多いものの、ゼロではありません。性腺モザイクの可能性があるため、確率は「最大で2分の1」と考えます(第1章)。
潜性遺伝の病気では、パートナーの方が保因者かどうかも大切です。拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子など)があり、妊娠中の方にはNIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。調べたい遺伝子が対象かどうかは、それぞれの遺伝子一覧でご確認ください。
次の妊娠に備える:絨毛検査・羊水検査とNIPT
原因の遺伝子の変化がご家族でわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。原因がわからないままでは、出生前に何を調べるかの的を決められません。
絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。ただし、その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断します。妊娠を考えている段階からご相談ください。
原因がFGFR3・COL2A1などの27遺伝子のいずれかで、赤ちゃんに新しく起きる変化を心配されている方は、当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)でも調べられます(第3章)。NIPTの結果が陽性なら、院内の絨毛検査・羊水検査で確かめます。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。軟骨無形成症のように、ご本人が大人になってご自身の子どもを持つことを考えられる骨格異形成症もあり、海外でPGT-Mを受けたいというお問い合わせを多くいただきます。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査です。
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること(可能な限り確かめておくことが勧められています)、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書(認定を受けた検査室から取り寄せることが勧められています)、③ご家族の検体、を挙げています[8]。
受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要です。指針の目安は、常染色体顕性遺伝では患者さん少なくとも1人(できれば2人)および/または発症していない方1人、常染色体潜性遺伝では患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方、X連鎖では患者さんおよび/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)です[8]。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。
血縁者がいない場合について、指針は、ご夫婦で目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法を挙げています。ただし、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。また、新しく起きた変化(de novo)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[8]。軟骨無形成症のように新しく起きた変化が多い病気では、とくに大切な点です。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
臨床遺伝専門医としての判断として、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えています。潜性遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[9]。PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。
英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。「重篤」の考え方は国や制度によって違うことが、日本・英国・西オーストラリアを比べた研究でも示されています[10]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。
結果の報告書と、二次的所見について
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
調べた目的とは別の病気の原因が見つかること(二次的所見)の扱いは、二次的所見の開示方針をご覧ください。
6. 日本の制度(2026年10月時点)
骨格異形成症のうちいくつかの病気は、指定難病や小児慢性特定疾病の対象になっています。難病情報センターの「骨・関節疾患」には、この検査で原因遺伝子を調べる病気として、次のものが載っています(2026年10月時点で確認)。
📋 指定難病(骨・関節疾患)のうち、この検査に関係する病気
※病名は難病情報センターの表記による。原因遺伝子は国際分類・OMIMにもとづいて当院でまとめたもの。
小児慢性特定疾病にも「骨系統疾患」という疾患群があり、軟骨無形成症などが含まれています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。遺伝子検査で原因が確定していることは、病名をはっきりさせる手がかりになります。
7. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは3〜5週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜から選べ、唾液・口の内側の粘膜なら、遠方の方もオンライン診療で遺伝カウンセリングを受けたあと、検体を当院にお送りいただく形で、ご来院なしで検査を受けられます。
💴 費用・日数・検体
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調べる遺伝子 | 179遺伝子(塩基配列の決定と、欠失・重複) |
| 検体 | 血液・唾液・口腔粘膜ぬぐい液 |
| 結果までの期間 | 3〜5週間 |
| 検査費用 | 330,000円(税込) |
| 遺伝カウンセリング料 | 30分22,000円(税込)※検査費用とは別 |
| オンライン診療 | 唾液・口腔粘膜ぬぐい液の場合は、オンライン診療で遺伝カウンセリングを受けたあと、検体をお送りいただく形で受けられます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。 |
| 結果の報告書 | 基本は日本語版。英語の原本が必要な方には英語版(検査の時にお申し出ください)。双方を希望される場合は追加料金5,500円 |
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
検体はご自身で勝手に採取せず、当院の案内に沿って採取してください。検体の取り違えや品質の低下を防ぐためです。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に /
臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。
8. 院長コラム
🩺 院長コラム【骨の病気の名前は、見た目だけでは決められない】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
骨格異形成症は、771もの病気がある大きなまとまりです。体つきやレントゲンの所見がよく似ていても、原因の遺伝子が違えば、遺伝のしかたも、次のお子さんの確率も、使える治療も変わります。反対に、見た目の印象が違っていても、同じ遺伝子の変化が原因ということもあります。だからこそ、病名を見た目だけで決めず、遺伝子で確かめることに大きな意味があると考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、ご本人の合併症への備えだけでなく、ご家族の検査や、次の妊娠での絨毛検査・羊水検査まで、当院で続けて支えることができます。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 骨格異形成症と骨系統疾患は違う病気ですか?
同じ病気のまとまりを指す言葉です。骨格異形成症は英語のskeletal dysplasiaを訳した言葉で、骨系統疾患は日本の医療や制度でよく使われる呼び方です。どちらも、骨や軟骨のでき方・育ち方に生まれつきの違いがある病気の総称で、2023年の国際分類には771の病気、552の遺伝子が載っています。
Q2. 四肢短縮症はいつわかりますか?
妊娠中の超音波検査で手足の骨が短いと指摘されて見つかることもあれば、生まれてから、あるいは成長の途中で身長の伸び方や手足の長さの違いから気づかれることもあります。四肢短縮症は1つの病気の名前ではなく「手足が短い」という状態を表す言葉で、原因になる病気はたくさんあります。原因を確かめるには遺伝子検査が役に立ちます。
Q3. 手足が短いのは遺伝しますか?
原因の病気によって違います。常染色体顕性(優性)遺伝の病気では、親からお子さんへ2分の1の確率で伝わります。常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では、ご両親とも保因者の場合に、お子さんごとに4分の1の確率で発症します。軟骨無形成症のように、親からではなくお子さんで新しく起きた変化が多い病気もあり、論文で報告された467人をまとめた研究では、家族歴がわかった385人のうち88%が家族にほかに患者さんのいない例でした。
Q4. 骨系統疾患は治る病気ですか?
多くの骨系統疾患では、原因そのものを治す治療はまだありません。合併症に備えた定期的な検査や、整形外科の治療などで生活を支えます。一方で、軟骨無形成症では、日本でも骨端線が閉じていないお子さんを対象に、ボソリチド(販売名:ボックスゾゴ)という薬が使われています(2026年10月時点、医薬品医療機器総合機構の資料で確認)。原因の病気がわかることが、使える治療を知る第一歩になります。
Q5. 179遺伝子パネルと521遺伝子パネルはどう違いますか?
当院には、骨の病気を調べる遺伝子パネル検査が2つあります。このページの検査は179遺伝子を調べ、結果まで3〜5週間です。骨系統疾患の遺伝子検査(521遺伝子パネル)は521遺伝子を調べ、結果まで2〜3週間です。検査費用はどちらも税込330,000円で、179遺伝子はすべて521遺伝子パネルにも含まれています。どちらを選ぶかは、疑われる病気や結果を急ぐかどうかをうかがって、遺伝カウンセリングで一緒に決めます。
Q6. この検査で原因がわかる割合はどのくらいですか?
骨の病気が疑われた543人が遺伝子パネル検査を受けた海外の研究では、42.0%で原因が確定しました。裏を返せば、半分以上の方は1回の検査では原因がわかりません。陰性でも病気が否定されるわけではなく、全エクソーム検査など次の選択肢があります。
Q7. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。なお、当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。PGT-Mの準備には、ご本人の結果に加えて、ふつうはご家族の検体も必要になります。
Q8. 妊婦健診で胎児の骨が短いと言われました。この検査で赤ちゃんを調べられますか?
このページの検査は、検査を受ける方ご自身の血液・唾液・口の内側の粘膜で調べる検査です。おなかの赤ちゃんそのものを調べるには、羊水検査や絨毛検査で赤ちゃんの細胞を採り、出生前全エクソーム検査などで調べる方法があります。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っていますので、まずご相談ください。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。骨格異形成症の原因がわかれば、ご本人の合併症への備えや治療の選び方だけでなく、ご家族の検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
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