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先天性鏡像運動(鏡像運動症)の遺伝子検査|片手を動かすと反対の手も動く原因を9遺伝子で調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

先天性鏡像運動(鏡像運動症)の遺伝子検査|片手を動かすと反対の手も動く原因を9遺伝子で調べる

鏡像運動とは、片方の手を動かすと、反対の手も鏡に映したように同じ動きをしてしまう状態です。右手でグーを作ると左手も勝手に握ってしまう、ピアノやキーボードで両手を別々に動かしにくい、という形で気づかれます。小さいころから続き、大人になっても変わらない「先天性鏡像運動」には、遺伝子が関わっていることがあります。「なぜ自分の手はこう動くのか」という長年の疑問に、遺伝子検査で原因の名前がつくことがあります。このページでは、鏡像運動の原因、発達障害との関係、お子さんへの遺伝のしかた、そして原因遺伝子(DCC・RAD51・NTN1など9遺伝子)をまとめて調べる遺伝子検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

片手を動かすと反対の手も動く「先天性鏡像運動」の原因を調べます。主な原因遺伝子のDCC・RAD51・NTN1を含む9遺伝子と、鏡像運動を伴うことがあるカルマン症候群・クリッペル・ファイル症候群の遺伝子を、一度に調べます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

小さいころから鏡像運動が続いている方、ご家族にも同じ手の動きがある方、結婚や妊娠を考えていて、お子さんへの遺伝が気になる方です。発達障害との関係が気になる方にも、原因を知る手がかりになります。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、常染色体顕性(優性)遺伝の場合、お子さんに変化が受け継がれる確率は2分の1です。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 長年の「なぜ?」に、遺伝子から答えを /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

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1. 鏡像運動とは|右手を動かすと左手も動くのはなぜ?

鏡像運動(ミラームーブメント、英語でmirror movements)とは、体の片側を自分の意思で動かしたときに、反対側の同じ場所が、意思とは関係なく鏡に映したように動いてしまう現象です。「両手が一緒に動いてしまう」「右手を動かすと左手も動く」と表現されることもあります。

遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、生まれつきの鏡像運動(先天性鏡像運動、鏡像運動症とも呼ばれます)は、乳児期から幼児期の早いうちに始まり、主に腕、とくに手や指に出ます。大人になっても続き、ほかの神経の症状を伴わないのが特徴です。多くの方では、勝手に動くほうの手の動きは、意思で動かしている手より小さめです[1]。

子どもの鏡像運動は何歳まで普通?

幼い子どもでは、軽い鏡像運動は成長の途中でふつうに見られます。GeneReviewsは、こうした生理的な鏡像運動が7歳を過ぎても続く場合を病的としています[1]。一方、健康な子どもでも10歳ごろまで見られることがあるとする総説もあり[8]、年齢の区切りは資料によって少し違います。

年齢だけで決めるより、「乳幼児期からはっきりした鏡像運動がある」「年齢が上がっても弱まらない」「書字や両手の作業に困っている」といった様子が、先天性鏡像運動を考える手がかりになります[1]。

生まれつきの鏡像運動と、大人になってから出る鏡像運動の違い

大人になってから新しく鏡像運動が出てきた場合は、生まれつきの鏡像運動とは別に考えます。鏡像運動は、脳卒中で片側の手足が動きにくくなった方、パーキンソン病、大脳皮質基底核症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、本態性振戦など、あとから起こる脳や神経の病気でも報告されています[8]。

このページの遺伝子検査で調べるのは、子どものころから続いている先天性鏡像運動の原因です。大人になってから出てきた鏡像運動や、ほかの神経の症状を伴う場合は、まず神経内科での診察を受けてください。

日常生活で困ること

先天性鏡像運動は、片手だけを使う動作や、両手で別々の動きをする動作が苦手になります。GeneReviewsは、学校では試験時間の延長や手書きの量を減らすといった配慮を挙げ、両手を複雑に使う動作や、同じ手の動きを長く続ける作業が多い仕事は避けるよう勧めています。両手の作業を長く続けると、腕の痛みにつながることもあります[1]。

  • ●字を書いていると、反対の手も一緒に動いてしまう
  • ●ピアノ・ギターなどの楽器、キーボード入力で、左右の手を別々に動かしにくい
  • ●手作業を長く続けると、腕が疲れたり痛くなったりする

GeneReviewsは、子どもや10代の方がこの手の動きのせいで周りから誤解されたり、教育の機会を失ったりしないよう配慮すること、親や先生に「知的障害を伴うのがふつうではない」ことを伝えることも大切だとしています[1]。原因に名前がつくことは、学校や職場で配慮をお願いするときの説明のしやすさにもつながります。

どれくらいまれな病気か

GeneReviewsは、希少疾患のデータベースOrphanetの数字として、先天性鏡像運動の有病率を100万人に1人未満としています。ただし、軽い方は診断されていないことが多く、実際はもっと多い可能性があるとも書いています[1]。「自分の手の動きはくせだと思っていた」という方が、大人になってから原因を調べることもあります。

2. 鏡像運動の原因|脳の配線と遺伝子

先天性鏡像運動の原因として、脳の神経の線維が正しい道筋をたどるための「道案内」にかかわる遺伝子が見つかっています。代表がDCCとNTN1で、ネトリン-1というたんぱく質と、その受け手(受容体)であるDCCの組み合わせです[2][4]。

脳の中で何が起きているのか

手を動かす命令は、脳の運動の中枢から、皮質脊髄路という神経の通り道を通って手足に届きます。この通り道は、ふつう脳の下のほうで左右が入れ替わる(交差する)ため、右の脳は左手を、左の脳は右手を動かします。

ネトリン-1は、発生の途中で神経の線維(軸索)が体の真ん中(正中線)を越えるかどうかを調節する、道案内の分子として見つかったたんぱく質です[4]。この道案内のしくみを軸索誘導といい、ネトリン-1とその受容体のDCCについてはネトリン・DCC受容体で解説しています。先天性鏡像運動では、この道案内がうまく働かず、片側の脳からの命令が左右両方の手に届いてしまうことで鏡像運動が起こると考えられています。

💡 用語解説:軸索誘導(じくさくゆうどう)

神経の細胞は、軸索という長い線維を伸ばして、離れた場所に信号を届けます。胎児のうちに軸索が正しい相手のところまで伸びていけるよう、まわりの細胞が「こちらへ」「こちらへは来ないで」という目印の分子を出しています。ネトリン-1はその目印の1つで、DCCはその目印を受け取る側のたんぱく質です。

鏡像運動と発達障害・脳梁欠損の関係

先天性鏡像運動の多くは鏡像運動だけで、知的障害を伴うのはふつうではありません[1]。ただし、原因がDCCの場合は、左右の脳をつなぐ太い線維の束(脳梁)がない、または一部しかない「脳梁欠損・形成不全」を伴うことがあります。DCCの変化をもつ方では、鏡像運動はなく脳梁欠損だけがみられることもあります[1][6]。

GeneReviewsは、DCCの変化をもつ方で、注意や学習などの神経心理の面で困りごとがみられることがあり、その程度には幅があるとしています。脳梁欠損がない方でも、わずかな困りごとがある可能性が指摘されています。また、DCCの変化を受け継いだ人のうち、男性では鏡像運動が、女性では脳梁欠損だけが、それぞれ出やすい傾向が報告されています[1]。

つまり、「鏡像運動があるから発達障害がある」とは言えませんが、原因の遺伝子がわかると、脳梁を含めた脳の状態を確かめる、学習面の様子に早めに気づいて支える、といった見通しを立てやすくなります。発達の遅れや学習の困りごとが中心で、原因をもっと広く調べたい場合は、発達障害の遺伝子検査のページも参考にしてください。

3. 鏡像運動の原因遺伝子と、このパネルで調べる9遺伝子

この検査では、先天性鏡像運動の原因として知られるDCC・RAD51・NTN1・DNAL4と、鏡像運動を伴うことがある病気の原因遺伝子ANOS1・FGFR1・GDF3・GDF6・MEOX1の、合わせて9遺伝子を調べます。遺伝子の小さな変化を、次世代シークエンサーでまとめて読み取ります。

🧬 先天性鏡像運動パネルで調べる9遺伝子と、関係する病気

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
DCC 鏡像運動1型(脳梁欠損を伴うこともある)。2つのアレルの両方に変化があると、発達性分割脳症候群という別の重い病気になる 常染色体顕性(優性)。発達性分割脳症候群は常染色体潜性(劣性)
RAD51 鏡像運動2型 常染色体顕性(優性)
NTN1 鏡像運動4型 常染色体顕性(優性)
DNAL4 鏡像運動3型(原因として示唆されているが、まだ確定していない) 常染色体潜性(劣性)とされる(1家系の報告)
ANOS1(旧名KAL1) X連鎖カルマン症候群(HH1)。においがわかりにくい・思春期が来ないなどの症状に、鏡像運動を伴うことが多い X連鎖
FGFR1 カルマン症候群(HH2)。ほかに三角頭蓋1型・オステオグロフォニック異形成症などの骨の病気 常染色体顕性(優性)
GDF6 クリッペル・ファイル症候群1型(首の骨がくっついて生まれる病気) 常染色体顕性(優性)
GDF3 クリッペル・ファイル症候群3型 常染色体顕性(優性)
MEOX1 クリッペル・ファイル症候群2型 常染色体潜性(劣性)

※対象遺伝子は当院の検査内容による(2026年10月確認)。病名・遺伝のしかたはOMIMとGeneReviews[1]、各遺伝子の報告[2][3][4][7]による。FGFR1は当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)の対象遺伝子にも含まれますが、鏡像運動の主な原因であるDCC・RAD51・NTN1はNIPTの対象ではありません。

主な原因:DCC・RAD51・NTN1

GeneReviewsは、DCCを先天性鏡像運動のいちばん多い原因としています[1]。DCCは2010年に先天性鏡像運動の原因遺伝子として報告され[2]、2012年にRAD51[3]、2017年にNTN1[4]が続きました。

RAD51は、もともと傷ついたDNAを直す働き(DNA修復)で知られる遺伝子です。RAD51の働きが半分に減ること(ハプロ不全)で先天性鏡像運動が起こると報告されています[3]。DNAL4は、細胞の中で物を運ぶモーターたんぱく質のダイニンの部品をつくる遺伝子で、近親婚の1家系で報告されていますが、GeneReviewsは原因として「示唆されているが確定していない」としています[1]。

GeneReviewsは、これらの遺伝子で原因が見つからない方も多く、まだ見つかっていない原因遺伝子があると考えられるとしています[1]。

ほかの病気に伴う鏡像運動:カルマン症候群とクリッペル・ファイル症候群

鏡像運動は、それだけで起こる場合のほかに、別の病気の症状の1つとして出ることがあります。GeneReviewsは、鏡像運動と見分ける病気として次を挙げています[1]。

  • ●X連鎖カルマン症候群(ANOS1):においがわかりにくい(嗅覚低下)、思春期が来ない・遅れる(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)病気です。ANOS1が原因の方の約75%に鏡像運動がみられるとされています。
  • ●クリッペル・ファイル症候群(GDF3・GDF6・MEOX1など):首の骨(頸椎)の一部がくっついて生まれる病気です。鏡像運動を伴うのは一部の方とされています。

このパネルにANOS1・FGFR1・GDF3・GDF6・MEOX1が入っているのは、こうした病気による鏡像運動も見分けられるようにするためです。においや思春期の遅れが中心で、カルマン症候群をくわしく調べたい場合は、カルマン症候群の遺伝子検査が向いています(第5章の表)。

このパネルに入っていない遺伝子(ARHGEF7)は追加できます

2024年に80人の先天性鏡像運動の方を調べた研究では、関係する遺伝子としてDCC・RAD51・NTN1・ARHGEF7・DNAL4の5つが挙げられています[5]。このうちARHGEF7は、このパネルに入っていません。

このパネルに入っていないARHGEF7遺伝子も、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください(カスタマイズ遺伝子パネル検査)。症状が鏡像運動だけでなく広い範囲にわたる場合は、約2万の遺伝子をまとめて調べる全エクソーム検査(WES)という選択肢もあります。

4. 鏡像運動は遺伝する?お子さんへの確率と家族

先天性鏡像運動は、多くの場合、常染色体顕性(優性)遺伝で親から子へ伝わります。原因の遺伝子の変化をもつ方のお子さんは、1人ごとに2分の1の確率でその変化を受け継ぎます[1]。ただし、受け継いだ方が必ず鏡像運動になるわけではありません。

常染色体顕性(優性)遺伝:お子さんへは2分の1

常染色体顕性(優性)遺伝では、対になった2本の遺伝子のうち1本に原因の変化があれば症状が出うるため、親から子へ伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です。男の子か女の子かには関係しません。上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。

GeneReviewsによると、先天性鏡像運動の方の多くは、親から変化を受け継いでいます。その親御さんには症状がある場合も、ない場合もあります。一部には、ご本人の代で新しく起きた変化(新生突然変異)の方もいますが、その割合はわかっていません[1]。

なお、遺伝子によって遺伝のしかたは違います。DNAL4・MEOX1は常染色体潜性(劣性)、ANOS1はX連鎖とされています(第3章の表)。どの遺伝子の変化かがわかると、ご家族ごとに確率を考えられるようになります。

家族の中でも出方が違う:浸透率は42%という推定も

GeneReviewsは、DCC・RAD51・NTN1のいずれでも、変化をもっていても鏡像運動が出ない人がいるとしています。DCCの変化をもつ人で鏡像運動が出る割合(浸透率)は42%と推定されています[1]。DCCで脳梁欠損だけがみられる家族の報告でも、浸透率が100%ではないことが示されています[6]。

同じ変化でも、症状がはっきり出る人、軽い人、まったく出ない人がいます(表現型の多様性)。そのため、「家族に鏡像運動の人がいない」ことは、遺伝していないことの証明にはなりません。症状のない親御さんが、実は同じ変化をもっていたとわかることもあります[1]。

⚠️ 「自分は軽いから、子どもも軽い」とは言えません

同じ家族の中でも、鏡像運動の強さや、脳梁欠損があるかどうかは人によって違います[1]。親御さんが軽い症状で気づいていなかったり、症状がまったくなかったりしても、同じ変化を受け継いだお子さんで症状がはっきり出ることがあります。だからこそ、症状の印象だけで決めず、知ったうえで計画することに意味があります。

家族に鏡像運動の人がいる方へ:結婚・妊娠を考えるとき

結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。先天性鏡像運動は、GeneReviewsでは進行せず、ほかの神経の症状が新しく加わることも通常ないとされています[1]。それでも、「子どもにも同じ苦労をさせたくない」「脳梁のことが気になる」と考える方がいるのは自然なことです。

ご自身が原因の変化をもっているかどうかを知っておくと、お子さんへの確率を具体的に考えられ、妊娠したときにどうするかを前もって決めておけます。鏡像運動があること自体が、結婚や妊娠をあきらめる理由になるわけではありません。知ったうえで選べることを増やすのが、この検査の役割です。

5. どんな人がこの検査を受けるとよいか

小さいころから鏡像運動が続いている方、ご家族に同じ手の動きがある方、結婚や妊娠を前にお子さんへの遺伝を知りたい方に向く検査です。手の動きや家族歴を見ただけでは、原因の遺伝子も、遺伝しているかどうかもわかりません。

検査を考えるとよい場面

  • ●乳幼児期から、片手を動かすと反対の手も動く状態が続いている
  • ●年齢が上がっても鏡像運動が弱まらず、書字・楽器・キーボード入力などに困っている
  • ●MRIで脳梁欠損・脳梁の形成不全を言われ、鏡像運動もある
  • ●親・きょうだい・お子さんにも同じ手の動きがある
  • ●結婚や妊娠を考えていて、お子さんに遺伝するかを知っておきたい

遺伝子検査は、やってみないとわからないことが多い検査です。家族に同じ症状の人がいなくても変化が見つかることがあり、反対に、症状があっても既知の遺伝子に原因が見つからないこともあります。だからこそ、「調べてはじめて、次の計画が立てられる」と考えています。

この検査より別の検査が向いている場合

鏡像運動が中心の症状なら、まずこの検査です。症状によっては、ほかの検査のほうが向いていることがあります。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
小さいころからの鏡像運動が中心 このページの検査(9遺伝子)。必要ならARHGEF7を追加(カスタマイズ遺伝子パネル検査)
においがわかりにくい・思春期が来ない(鏡像運動があってもなくても) カルマン症候群の遺伝子検査
MRIで脳の形の異常(滑脳症・異所性灰白質など)を言われた 神経細胞遊走障害NGSパネル遺伝子検査
手の動きの異常が、ねじれる・くねるなどの別の不随意運動 ジストニア・ジスキネジア遺伝子検査
発達の遅れや知的障害が中心で、病気をしぼれない 発達障害の遺伝子検査・全エクソーム検査(WES)
大人になってから鏡像運動が出てきた 遺伝子検査の前に、まず神経内科での診察(脳卒中・パーキンソン病などの確認)

※どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ あなたの1回の検査が、ご家族が自分のことを知る手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因の変化がわかれば、症状のないご家族も同じ場所だけを調べられます。妊娠したときの羊水検査・絨毛検査も院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、9つの遺伝子の中にある、病気の原因となる小さな変化(1文字の置き換わりや、小さな欠けや入り込み)です。遺伝子のまとまった欠失・重複も調べます。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●陰性でも否定はできません:先天性鏡像運動には、まだ見つかっていない原因遺伝子があると考えられています[1]。原因が見つからなくても、先天性鏡像運動ではない、ということにはなりません。
  • ●パネルにない遺伝子:ARHGEF7などパネルに入っていない遺伝子は調べません(追加はご相談ください)。
  • ●見つけにくい変化:染色体の一部の入れ替わり(転座・逆位)、同じ配列のくり返しが伸びる変化(リピート伸長)、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や遺伝子の奥深く(エクソンから20塩基より離れた場所)の変化は、この検査では見つけられません。1つのエクソンだけの欠失・重複も、見つからないことがあります。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけるようには作られていません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の研究ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。GeneReviewsも、VUSは診断を確定することも否定することもできないとしています[1]。
▶ 検査の精度について(くわしく知りたい方へ)

調べる遺伝子の99%以上の場所を、20回以上くり返し読み取ります(カバレッジ:≥99% at 20x)。同じ場所を何回も読むほど、読み間違いを見分けやすくなります。読み取りの質が十分でなかった変化は、別の方法(サンガー法)で読み直して確かめます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。

遺伝子のまとまった欠失・重複は、頬の粘膜と血液の検体では遺伝子1つ分の大きさのものを、血液の検体では2つ以上続くエクソンの大きさのものまで見つけられます。よく似た配列(偽遺伝子など)があると、まれに判定が難しくなることがあります。

7. 病的変異が見つかったら、次にできること

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因の変化(病的変異)が見つかった場合に、何ができるかを、立場ごとにまとめます。

① ご本人(鏡像運動がある方)

  • ●原因の名前がつく:どの遺伝子の変化による鏡像運動かがわかります。カルマン症候群やクリッペル・ファイル症候群の遺伝子で見つかった場合は、においや思春期、首の骨など、その病気に合わせた確認につながります。
  • ●脳と学習面の見通し:DCCの変化なら、脳梁欠損を伴うことがあるため、脳のMRIをまだ撮っていなければ主治医と相談できます。学習面の困りごとがあれば、神経発達の専門家への相談が勧められています[1]。
  • ●学校・仕事での工夫:試験時間の延長や手書きの量を減らすなどの配慮、手を長く使う作業を減らして腕の痛みを防ぐ工夫、日常生活に支障があればリハビリテーションの専門家への相談が挙げられています[1]。
  • ●治療について:鏡像運動そのものを治す治療は確立していません。ボツリヌス毒素の注射で改善した方の報告はありますが、手の力が弱くなるリスクが利益を上回ることが多いため、ふつうは勧められていません[1]。当院は治療を行っていないため、治療やリハビリは専門の医療機関でご相談ください。

② 症状のないご本人(家族歴があって受けた方)

症状がなくても原因の変化をもっている場合があります(浸透率が100%ではないため)[1]。ご自身の健康で特別な見張りが必要になることは少ないと考えられますが、お子さんへは常染色体顕性(優性)遺伝なら1人ごとに2分の1の確率で受け継がれます。潜性(劣性)遺伝の遺伝子(DNAL4・MEOX1)で変化が1つ見つかった場合は、パートナーが同じ遺伝子に変化をもっているかが大切になります。なお、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の一覧には、このパネルの9遺伝子は含まれていません(2026年10月確認)。パートナーをどの検査で調べるかは、遺伝カウンセリングでご相談ください。

③ お子さんを持つときの選択肢

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんに同じ変化があるかを調べることができます。GeneReviewsも、家族の病的変異がわかっていれば出生前の検査は可能としたうえで、検査を使うかどうかについては考え方が分かれ、その人自身の判断になる部分が大きいとしています[1]。

絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。先天性鏡像運動は、多くの場合ほかの神経の症状を伴わない病気です[1]。出生前診断を行うかどうかは、病気の見通しや国内の指針を踏まえて個別に考えるため、妊娠を考えている段階からご相談ください。出生前診断を受けずに出産することも、もちろん大切な選択肢の1つです。当院では、どの選択も尊重します。

④ ご家族(親・きょうだい・お子さん)

ご本人で原因の変化がわかると、ご家族は同じ場所だけをピンポイントで調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます(既知の変異検査)。症状のない方の検査は、ご本人の同意のうえで行います。症状のない親御さんが同じ変化をもっているとわかった場合は、常染色体顕性(優性)遺伝の場合、その方のほかのお子さん(ご本人のきょうだい)にも2分の1の確率で受け継がれている可能性があり、きょうだいの方が自分のことを知る手がかりにもなります。

⑤ 当院でのその後

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、ご本人とご家族が次にどうするかを一緒に考えます(遺伝カウンセリング料は第8章)。結果の伝え方や、調べた目的と別の病気の原因が見つかったときの扱いについては、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。

陰性だったとき・VUSだったとき

原因が見つからなかった場合も、先天性鏡像運動が否定されるわけではありません(第6章)。症状に合わせて、ARHGEF7の追加や、全エクソーム検査などを考えます。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取唾液・頬粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 先天性鏡像運動パネル検査の費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 ANOS1, DCC, DNAL4, FGFR1, GDF3, GDF6, MEOX1, NTN1, RAD51(9遺伝子)
調べる内容 遺伝子の配列(料金に含む)/欠失・重複(料金に含む)
検査費用 税込330,000円
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります):55,000円/VUS除外(意義がまだわからない変化を報告に含めない):無料
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出DNA(3μg)、頬の内側の粘膜、唾液
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれも可能(血液は全国の提携医療機関で採血)

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。遺伝カウンセリングについては遺伝カウンセリングとはもご覧ください。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

9遺伝子を一度に調べ、結果は2〜3週間。唾液・頬の粘膜ならオンライン診療で全国から受けられます。

お問い合わせはこちら | 遺伝子を追加して調べたい方へ

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「くせ」だと思ってきた手の動きにも、理由がある】

先天性鏡像運動は、命に関わる病気ではなく、進行もしないとされています。そのため、「子どものころからのくせ」「不器用なだけ」と片づけられ、原因を調べないまま大人になる方も少なくないと考えています。けれども、なぜ自分の手がこう動くのかがわからないまま過ごすのと、原因の名前を知ったうえで過ごすのとでは、学校や職場での説明のしやすさも、将来の計画の立て方も変わってきます。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

先天性鏡像運動は、同じ変化をもっていても症状が出ない人がいる病気です。だからこそ、「家族に同じ人はいないから」「自分は軽いから」という印象だけで判断しないでほしいと考えています。遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の生活の工夫だけでなく、結婚や妊娠の計画、ご家族が自分のことを知る手がかりとして、この先ずっと使える情報になります。知ったうえでどうするかは、どの選択も尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 鏡像運動とは何ですか?右手を動かすと左手も動くのは病気ですか?

鏡像運動とは、片方の手を動かすと、反対の手も意思とは関係なく鏡に映したように動いてしまう現象です。幼い子どもでは成長の途中でふつうに見られますが、遺伝性疾患の解説書(GeneReviews)は7歳を過ぎても続く場合を病的としています。小さいころから続き、大人になっても変わらないものを先天性鏡像運動といい、遺伝子が関わっていることがあります。

Q2. 鏡像運動は発達障害と関係がありますか?

先天性鏡像運動の多くは鏡像運動だけで、知的障害を伴うのはふつうではありません。ただし、原因がDCC遺伝子の場合は、左右の脳をつなぐ脳梁がない・小さいことがあり、注意や学習などの面で困りごとがみられることもあります。原因の遺伝子がわかると、脳や学習面の見通しを立てやすくなります。

Q3. 鏡像運動は治りますか?治療法はありますか?

先天性鏡像運動は生涯続くことが多いものの、悪くなることはなく、ほかの神経の症状が新しく加わることも通常ないとされています。鏡像運動そのものを治す治療は確立していません。学校での試験時間の延長や手書きの量を減らす配慮、手を長く使う作業を減らす工夫などが勧められています。ボツリヌス毒素の注射は、手の力が弱くなるリスクのため、ふつうは勧められていません。

Q4. 鏡像運動は子どもに遺伝しますか?確率は?

先天性鏡像運動は多くの場合、常染色体顕性(優性)遺伝で、原因の変化をもつ方のお子さんは1人ごとに2分の1の確率でその変化を受け継ぎます。ただし、受け継いでも鏡像運動が出ない人がいて、DCCの変化では鏡像運動が出る割合は42%と推定されています。どの遺伝子の変化かによって遺伝のしかたは違うため、遺伝子検査で確かめることが大切です。

Q5. 家族に鏡像運動の人がいなくても、遺伝していることはありますか?

あります。原因の変化をもっていても症状が出ない人がいるため、症状のない親御さんが同じ変化をもっていることがあります。また、ご本人の代で新しく起きた変化の場合もあります。家族に同じ症状の人がいないことは、遺伝していないことの証明にはなりません。

Q6. このパネルに入っていない遺伝子も調べられますか?

はい。先天性鏡像運動との関係が報告されているARHGEF7遺伝子は、このパネルに入っていませんが、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。

Q7. 検査は唾液でも受けられますか?オンライン診療はできますか?

はい。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも検査でき、どれもオンライン診療で受けられます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金のお支払い後にお送りします。

Q8. 鏡像運動があると、結婚や妊娠に差し支えますか?

鏡像運動があること自体が、結婚や妊娠をあきらめる理由になるわけではありません。ご自身が原因の変化をもっているかを知っておくと、お子さんへの確率を具体的に考えられ、妊娠したときにどうするかを前もって決めておけます。当院では、絨毛検査・羊水検査による胎児の出生前診断も院内で行っていますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。先天性鏡像運動の原因がわかれば、学校や仕事での工夫、脳や学習面の見通しだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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