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絨毛膜下血腫の原因とは?完全ガイド【専門医が解説】


はじめに

妊娠初期に発見される可能性のある「絨毛膜下血腫」は、多くの妊婦さんに不安を与える症状です。この記事では、絨毛膜下血腫がなぜ発生するのか、その原因と発生メカニズムについて詳しく解説します。医学的知見に基づいた情報で、あなたの不安を少しでも和らげる手助けになれば幸いです。

絨毛膜下血腫とは?

絨毛膜下血腫は、妊娠初期に絨毛膜(胎盤の外側の膜)と子宮内膜の間に血液が溜まる状態を指します。超音波検査で胎嚢周囲に無エコーまたは低エコー像として確認されることが多く、妊娠初期の出血の主な原因の一つです。

絨毛膜下血腫の発生メカニズム

絨毛膜下血腫は主に以下のプロセスで発生します:

  1. 絨毛細胞の侵入と血管損傷:絨毛細胞が子宮壁(脱落膜)に侵入する過程で血管が損傷されます
  2. 絨毛膜の部分的剥離:絨毛膜が子宮内膜から部分的に剥がれます
  3. 出血と血腫形成:剥離部位の血管から出血が起こり、その血液が絨毛膜下腔に貯留して血腫を形成します

この過程は妊娠の着床や胎盤形成という複雑なプロセスの中で起こるもので、様々な要因によって影響を受けます。

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絨毛膜下血腫の主な原因と危険因子

生殖補助技術(ART)関連の要因

  • 体外受精(IVF):体外受精を用いた妊娠では絨毛膜下血腫の発生率が自然妊娠より高いことが報告されています
  • 凍結胚移植:特にホルモン補充周期での凍結胚移植後に発生リスクが上昇します
  • ホルモン環境の変化:人工的なホルモン補充が絨毛膜の子宮内膜への接着力を低下させる可能性があります

母体に関する要因

年齢的要因

高齢妊娠:35歳以上の妊婦さんでは絨毛膜下血腫の発生リスクが上昇します。これは、加齢に伴う血管壁の弾力性低下や子宮内膜の質的変化が関連していると考えられています。特に40歳以上では、リスクがさらに高まるという研究結果も報告されています。

血管・循環器系の疾患

血管系疾患:以下のような状態はリスクを高める可能性があります:

  • 高血圧(慢性・妊娠高血圧症候群):血管への圧力が高まり、絨毛膜と子宮内膜の接合部に負担をかけます
  • 自己免疫疾患(抗リン脂質抗体症候群など):血管炎や微小血栓を引き起こし、血流障害の原因となります
  • 血液凝固異常:血栓形成傾向や出血傾向のどちらもリスク要因となり得ます
  • 静脈瘤や動脈硬化:血管の脆弱性や血流の変化をもたらします

生活習慣関連因子

生活習慣:以下の要因は血管健康に悪影響を与え、リスクを高める可能性があります:

  • 喫煙:ニコチンとその他の有害物質が血管を収縮させ、酸素供給を減少させます。妊娠中や妊娠前の喫煙は、絨毛膜下血腫のリスクを2倍近く高めるという研究もあります
  • アルコール摂取:過度の飲酒は血管機能に悪影響を与え、凝固因子のバランスを崩します
  • 薬物使用:特にコカインやアンフェタミン類は血管収縮作用が強く、急激な血圧上昇をもたらします
  • 極度のストレス:ストレスホルモンが血管に悪影響を与え、子宮血流にも影響する可能性があります
  • 過度の運動や肉体労働:妊娠初期における過度の身体的負担は、子宮内の血流変化をもたらすことがあります

婦人科・産科的既往歴

既往歴:以下のような過去の妊娠や婦人科疾患の経験はリスク因子となることがあります:

  • 反復流産:特に初期流産を複数回経験している場合、子宮内膜や血管系に何らかの問題がある可能性があります
  • 早産歴:過去の早産経験は、子宮・胎盤系の血管病変リスクと関連している可能性があります
  • 子宮手術の既往:帝王切開や筋腫核出術などの手術歴は、子宮内膜の血流パターンに影響を与えることがあります
  • 子宮内膜症:子宮内膜の状態や血管形成に影響を与え、着床過程に影響する可能性があります
  • 子宮筋腫:特に粘膜下筋腫は子宮内膜の血流や状態に影響を与えることがあります

注意点:これらのリスク因子があるからといって、必ずしも絨毛膜下血腫が発生するわけではありません。また、何のリスク因子もない方でも発生することがあります。気になる症状がある場合は、担当医に相談しましょう。

物理的要因

  • 腹部外傷:転倒や事故による腹部への衝撃
  • 子宮収縮:激しい子宮収縮が絨毛膜と子宮内膜の接合部に負担をかけることがあります

絨毛膜下血腫の診断と臨床所見

検査方法と典型的な所見

検査方法 所見 特徴
経腟超音波 胎嚢周囲の無エコー~低エコー像 最も一般的な診断方法
血液検査 絨毛性ゴナドトロピン(hCG)値の異常 血腫の存在により値が異常を示すことがある

主な症状

  • 無症状:約30%の症例では症状がなく、定期健診で偶然発見されます
  • 性器出血:茶色から鮮紅色の出血が見られることがあります
  • 腹部不快感:下腹部痛や子宮収縮感を伴うことがあります

絨毛膜下血腫のサイズと合併症リスク

血腫のサイズは予後に大きく影響します:

  • 小さな血腫:多くの場合、自然に吸収され問題なく妊娠継続できます
  • 大きな血腫(胎盤面積の50%以上):
    • 流産リスクが約2.5倍に増加
    • 早産のリスク上昇
    • 胎児発育不全の可能性
    • 絨毛膜羊膜炎などの感染症リスク

最新の研究と知見

近年の研究では、凍結胚移植周期でのプロトコール(ホルモン補充周期 vs 自然周期)が絨毛膜下血腫の発生率に影響を与えることが指摘されています。特にホルモン補充周期では発生率が高まる傾向にあり、これはエストロゲンレベルと血管脆弱性の関連が疑われています。

今後の研究課題として、妊娠初期のホルモン環境と血管状態の関係性の詳細な解明が期待されています。

対処法と治療

絨毛膜下血腫が見つかった場合の一般的な対処法には以下のようなものがあります:

  • 安静:特に大きな血腫の場合は、安静にすることが推奨されることがあります
  • 定期的な経過観察:超音波検査によって血腫のサイズや状態を定期的に確認します
  • 禁忌事項の遵守:医師から指示された場合は、性交渉や激しい運動を避けましょう

医師に相談すべき症状

以下の症状がある場合は、すぐに医師に相談してください:

  • 鮮血の出血が増加した場合
  • 強い腹痛がある場合
  • 発熱がある場合(感染の可能性)

妊婦さんへのアドバイス

絨毛膜下血腫を診断された妊婦さんへ:

診断を受けて不安に感じることは自然なことです。しかし、多くの場合、適切な管理のもとで健康な妊娠継続が可能です。ご自身の体調や赤ちゃんの状態についての不安や疑問は、遠慮なく担当医に相談しましょう。

まとめ

  • 絨毛膜下血腫は、絨毛膜と子宮内膜の間に血液が溜まる状態で、主に妊娠初期の絨毛細胞の侵入過程における血管損傷が原因とされています。
  • 生殖補助技術の利用、高齢妊娠、血管系疾患、外傷などがリスク因子となり得ます。
  • 診断には主に超音波検査が用いられ、症状として性器出血や腹部不快感が見られることがありますが、無症状のケースも少なくありません。
  • 血腫のサイズが大きいほど合併症リスクは高まりますが、多くの場合は適切な管理によって正常な妊娠継続が可能です。

医療機関での適切な診断と定期的な経過観察が重要です。絨毛膜下血腫の症状が疑われる場合は、必ず担当医に相談しましょう。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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