胸の張りや痛み、つわり、腹痛や腰痛と妊娠初期に起きた症状が収まってくる妊娠安定期。お腹の赤ちゃんも流産の可能性が低くなり、ホッとひと息付ける時期です。中には「今だから!」と旅行や両親学級に参加とアクティブに動いている方もいます。
そこで今回の記事では体調が安定してくる妊娠安定期はいつからいつまでなのか?を中心に過ごし方について紹介をします。
妊娠安定期はいつからいつまで?
妊娠安定期と聞くと、つわりも収まってきて体も少し変化が出てくる頃というイメージだと思います。妊娠初期よりも体調は落ち着いてくるし、お腹も大きくなってくる妊娠中期と時期が被るのでそう思われているようです。では、妊娠安定期はいつからいつまでを指すのでしょう。意外な事実を含めて詳しく説明をします。
安定期の意味と時期
実は安定期という医学的用語はありません。一般的に妊娠15週目くらいになると妊婦さんの体調が落ち着いてきて、流産の危険性が下がるので安定期と呼んでいます。また、最初の戌の日に安産祈願の戌の日詣りをする風習から、この時期を安定期と呼ぶようになったという説もあるようです。もし通っているクリニックの医師が安定期という言葉を使わなくても気にしないでください。
安定期はいつまで?
医学的な定義がないため人によってさまざまです。妊娠中期である妊娠16週から28週未満を指すという人もいれば、臨月に入るまで安定期という人もいるほどバラバラです。定義がないのでご自分の体と相談しながら感覚で「この時期が安定期かな」と思っていても問題ないでしょう。ただし、安定期であっても無理は厳禁です。少しでもつらいと思ったら休息を取るようにしてください。
安定期の母子の状態
妊娠16週目(5ヶ月)に入ると子宮は大人の頭くらいまで大きくなります。妊娠初期よりも全体的に丸みを帯びた体つきになるといった変化も起きてきます。安定期にはどういった変化が起きるのか詳しく紹介します。
妊娠安定期の母体の状態
安定期に入ると胎盤を完成し、ホルモンバランスも安定しはじめます。つわりも収まり、基礎体温が下がってくるので体調も落ち着いてくる人が多く見られます。
子宮は大人の頭程の大きさになり、お腹が目立ちはじめる時期です。乳腺が発達しはじめ、バストが大きくなる人もいるので、バストサイズに合わせてブラも使ったほうがいいでしょう。肌も乾燥しやすいので保湿しておくのがおすすめです。
妊娠安定期の胎児の状態
安定期に入った頃の赤ちゃんの身長は約25cm、体重は約280gくらいです。骨が丈夫になり筋肉がつくようになります。全身に皮膚を守る胎毛が生え、薄っすらとまつげや眉毛、髪の毛も生えてくるのでエコー検査でもすぐにわかるくらいです。
動きも羊水の中で口を開けたり閉じたりしており、ママが胎動を確認できるくらい活発になってきます。
妊娠安定期の過ごし方
安定期に入った妊婦さんが充実する過ごし方をご紹介します。参考にしてご自分のマタニティライフに取り入れてくれると幸いです。
適度な運動をしよう
妊娠初期はつわりなどで体を動かすよりも休ませる方に比重をおいていたけど、安定期に入ったら赤ちゃんのためにも適度な運動をしましょう。ヨガやウォーキング、ストレッチといった軽い有酸素運動がおすすめです。血流も良くなり、ストレス発散にもなり体調も安定してきます。
妊婦の運動については以下のような指針もあるので参考にしてください。
1.母児の条件
現在の妊娠経過が正常で,かつ以下の条件を満たしている.
1)後期流産・早産の既往がないこと.
2)偶発合併症,産科合併症がないこと.
3)単胎妊娠で胎児の発育に異常が認められないこと.
4)妊娠成立後にスポーツを開始する場合は,原則として妊娠 12 週以降であること.
5)スポーツの終了時期は,異常が認められない場合には,特に制限しない.5.運動強度
1)心拍数で 150bpm 以下,自覚的運動強度としては「ややきつい」以下が望ましい.
2)連続運動を行う場合には,自覚的運動強度としては「やや楽である」以下とする.6.実施時間
1)午前 10 時から午後 2 時の間が望ましい.
2)週 2~3 回で,1 回の運動時間は 60 分以内とする.
(日本臨床スポーツ医学会 産婦人科部会「妊婦スポーツの安全管理基準(2019)より引用)
ただし、妊娠中は、仰向けになるような運動をすると、大きくなったお腹に下半身の血管が圧迫され、低血圧や仰臥位(ぎょうがい)低血圧症候群を発症する恐れがあります。仰向けの他、転倒の恐れがある運動や跳ねる、腰を捻る、走るような運動は避けてください。
※参照サイト:日本臨床スポーツ医学会 産婦人科部会「妊婦スポーツの安全管理基準(2019)
バランスの取れた食事を心がけよう
安定期はつわりが収まってくる時期です。食べられるものが限られていたり、食べづわりで食べられなかったりした時期から大きく変わっているでしょう。
安定期に入ってからはお腹の赤ちゃんのことを考えて栄養バランスが取れた食事を意識してください。厚生労働省の「妊産婦のための食事バランスガイド」では、妊娠初期と比べると安定期を迎える妊娠中期には栄養摂取量を増やした方が良いと記載されています。
主菜、副菜、果物を増やすように促しており、栄養バランスも考えながらいつもの食事に一品増やしてみましょう。
※参照サイト:厚生労働省|妊産婦のための食事バランスガイド
虫歯の治療をしておこう
妊婦の方は、一般の方に比べて唾液の量があまり多くありません。原因としては、女性ホルモンの影響、そして妊娠による不安や緊張などが挙げられます。
唾液には自浄作用といって、口内を洗い流し清潔に保つ役割があるため、妊婦の方は必然的に虫歯菌が増殖し、虫歯のリスクが高くなってしまいます。
加えて出産後は育児で忙しく、治療の時間を取るのが難しいので安定期に入ったら治療をしておくのがおすすめです。特に妊娠前から治療中の虫歯がある方、覚える場合には安定期のうちに治療しておきましょう。
※参照サイト:新潟西歯科クリニック|妊婦の方が虫歯になりやすいのはなぜ?~理由を解説します~
旅行や結婚式・マタニティフォトなどのイベントごとをやっておこう
出産すると生活の中心は子どもになるので、今のうちに友だちとの集まりといったイベントへの参加や夫婦で過ごしておくのはいいかもしれません。
授かり婚で入籍だけしたカップルの中には、お腹が大きくなる前に結婚式を挙げている方も見られます。先輩ママの中にはマタニティフォトに挑戦したり、旅行に出かけたりしている方もいます。
ただし、安定期に入ったといっても流産のリスクがなくなったわけではありません。特に旅行で飛行機に乗る場合や温泉へ行くときは、事前に産婦人科医に相談の上で計画を立ててください。宿泊施設に予約をする際も妊娠中であることを告げておくといいかもしれません。
両親学級へ参加しよう
安定期に入ったらやってほしいことの一つに両親学級への参加があります。その理由は、両親学級で妊娠中の過ごし方や出産がどのように進むのか、そして産後の赤ちゃんのお世話の方法などを学ぶことができるからです。
安定期を迎える頃に自治体や産院から両親学級の案内が届く事もあります。実際にパートナーが妊娠後期のお腹と同じ重さの「妊娠ジャケット」を着て、妊婦さんの身体の変化を体感する機会を設けているところもあります。
義務ではありませんが、二人で参加することで出産への意識が高まりますのでできるだけ参加するようにしてください。
職場や友人へ出産の報告をしておこう
安定期に入ったら職場へ妊娠の報告と産休育休の確認をしておきましょう。会社によって、産休育休の期間や休んでいる間の給与制度が違ってくるので必ず確認をしてください。
また、パートナーにも産休育休制度があるのかどうか確認をお願いしておきましょう。なぜなら2021年6月に改正された「育児・介護休業法」が、2022年4月より施行されているからです。改正された「育児・介護休業法」には、男性も子の出生後8週間以内に4週間まで育児休業を取得できるようになっており、育児休業も分割して2回まで取得が可能です。
出産報告を職場や友人へするのは、安定期まで待ったほうがいいかもしれません。妊娠初期に報告をしてしまうと、万が一流産したときに周りに気を使わせてしまいます。
一方で妊娠初期に伝えておかないと今まで体への負担がかかるという意見もあります。その場合、職場の上司に伝えて仕事量を調整してもらうのがいいでしょう。もし、体調に配慮できない環境ならば早めに周りに伝えておくのも方法の一つです。
※参照サイト:厚生労働省|育児・介護休業法について
安定期に出産報告をした先輩ママの体験談
ここでは安定期に入って出産報告をした先輩ママの体験談をご紹介します。
職場の上司には、心拍が確認された時点で先に伝えました。何かあった時や安定期までに配慮してもらうこともあるからです。しかし上司も妊婦に対して気が回らないこともあるので、気になることは自分から申告することがお互いのために大切だと感じました。上司も仕事上、気になることは言ってほしいと思います。(ムーニー|妊娠が判明したときの報告についてより引用)
一番悩んだのは会社への報告時期です。ちょうど会社の昇格時期だったこともあり、妊娠を理由に昇格が取り消されたらどうしようという不安がありました。幸い食べづわりであったため、何か口にしていれば気分は悪くならず、周りにバレることもなかったので、安定期まで黙って過ごしました。安定期に入って1週間後に迎えた昇格発表日に無事に昇格し、同時に妊娠を報告しました。とても気分が晴れやかでした。(ムーニー|妊娠が判明したときの報告についてより引用)
出産準備を済ませておこう
お腹が大きくなって動くのも大変になる前に出産の準備を済ませておきましょう。必ずやっておきたいのが出産する医院を決めておくことです。現在は、早めに予約できる病院も多く、出産するときの対応も変わってきます。
特に無痛分娩を希望される方や陣痛室と分娩室、回復室が同じ場所になっている場所での出産を希望される場合は早めに予約をしておきましょう。基礎疾患をお持ちの方は、主治医に相談をしておきましょう。症状によってはNICUがある病院での出産になるかもしれません。
また、自治体によっては出産祝い金の他にも優遇される制度があります。補助金なども出る場合があるので、お腹が大きくなる前にお住まいの役所で確認をした上で申し込みをしておきましょう。
安定期に気をつけたい病気や症状
安定期に痛みと出血を伴うおなかの張りがある場合は、医師に相談してください。妊娠22週未満までは、切迫流産・流産の恐れがあり、妊娠22~36週までに周期的な痛みと出血が伴う場合は、切迫早産・早産の可能性があるからです。
妊娠16~24週頃は、傷みや自覚症状のないまま、子宮口が開いてしまい流産や早産を引き起こす子宮頸管無力症になる恐れがあるので、定期健診は必ず受けてください。
他には妊娠糖尿病になるかもしれません。妊娠糖尿病を原因に妊娠高血圧症候群になる事があり、赤ちゃんにとっても巨大児、羊水過多、心臓の肥大、胎児脂肪などの様々な病気を引き起こす事があります。治療法は食事療法が中心です。
また、マイナートラブルとして貧血を起こしやすくなったり、頻尿や便秘になりやすかったりします。腰痛や動機・息切れがしやすかったり、皮膚トラブルがおきやすくなったりするので症状が出たら医師に相談をして過ごすようにしましょう。
妊娠安定期に注意してほしいこと
妊娠安定期になっても注意してほしい点はたくさんあります。その中でも特に気をつけてほしいことをピックアップしました。
体重増加に気を付ける
妊娠中だからといってたくさん食べてしまい、体重が増え過ぎると妊娠糖尿病になるかもしれません。先述したように妊娠糖尿病になると妊娠高血圧症候群の恐れが出てきます。赤ちゃんに成長にも悪影響を及ぼすので注意してください。
ストレスを溜めない
ストレスが溜まると筋肉が硬直してお腹が張ったり、血流が悪くなって赤ちゃんへの栄養補給が妨げられたりします。ストレスを溜めずに過ごすのは無理なので、できるだけ早くストレス発散するようにしてください。一人カラオケなんかおすすめです。
休みはしっかりと取る
安定期に入ったからといって無理は禁物です。安定期を迎える頃から多くのママがお腹の張りを自覚するようになります。張りの原因は疲労や緊張、ストレスの他下半身の冷えによる場合があります。また、胎動を感じる時期でもあるので張りを感じやすくなっています。
少しでもお腹の張りがキツいときは休みを取るようにしてください。休んでも張りが取れないときは医師に相談をしましょう。
性行為は慎重に
妊娠中の性行為は体調が良く、医師から止められていない限り行っても構いません。ただし、精液には子宮収縮を促す成分が含まれるのでコンドームの使用は必須です。
行為中はお腹に負担がかかる体位は避けるようにしましょう。特にパートナーが相手への気配りを忘れないでください。
安定期に外出するときの注意事項
妊娠中といっても出かけなくてはいけない用事が必ず出てきます。特に安定期になれば体調もよい場合が多いので今のうちに済ませて起きたいことがたくさんあるでしょう。だからといって一人の体ではないので注意しなくてはいけないポイントがありますのでご紹介します。
必ず持ち歩いてほしいもの
妊娠中に外出をするときに必ず持ち歩いてほしいのが以下の三点です。これさえあれば体調が悪くなっても何とかなります。
- ・母子手帳
- ・診察券
- ・保険証
他にも「マタニティマーク」は目立つところに付けておきましょう。もし出先で体調が悪くなってもマタニティマークがあれば、妊娠中とすぐにわかるので妊婦用の対応をしてもらえます。電車に乗っていたら席を譲ってもらえるかもしれません。季節によっては羽織る物を一枚追加で持っていって体を冷やさないようにしてください。
出かける時間帯に注意
気をつけてほしいのが満員電車です。通勤や帰宅の時間帯に出かけて体が圧迫されると赤ちゃんに悪影響を与えます。具合も悪くなりやすいので空いている時間帯に出かけるようにしましょう。
もし仕事で通院電車に乗らないといけないのならば会社と相談してください。会社が「相談に乗らない」「配慮してくれない」という場合は男女雇用機会均等法の母性保護規定違反ですので労働基準監督署に相談してください。
まとめ
ここまで妊娠安定期の期間を中心に妊娠中期でやっておきたいことなどをご紹介してきました。安定期という医学用語はないにしても、体と精神が落ち着いてきた期間になるので出産準備や旅行などに行きたくなるのは当然かもしれません。ただしマイナートラブルが起きるので無理は禁物です。無理のない範囲で準備できるものは進めていきましょう。
東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。