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妊娠・出産費用の内訳は?自己負担を減らす方法や助成金まで徹底解説

妊娠が発覚すると嬉しい反面、妊娠期の過ごし方や出産、その後の育児についての悩みが後を尽きません。そして経済的負担(金銭的な自己負担)について不安を持つ方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では経済的負担について以下の内容をお伝えします。

  • ・妊娠・出産費用の内訳
  • ・マタニティ・ベビー用品の準備費用
  • ・妊娠・出産に関する助成金

妊娠出産に関する経済的負担への不安を解消するのに、この記事をご活用ください。

【徹底解説】妊娠・出産費用の内訳

高額になることが予測される妊娠・出産費用ですが、実際何にどれくらいのお金が必要なのかの内訳を知っておくことが大切です。

そこで以下の3つの内訳について徹底解説します。

  • 1.妊婦健診の費用
  • 2.出産費用
  • 3.マタニティ・ベビー用品の準備費用

正しく内訳を理解していると無駄な出費を抑えられるだけでなく、計画的なお金の工面ができるようになるので、ぜひご活用ください。

 

1. 妊婦健診の費用

妊婦健診の費用は特殊な検査が追加になる場合を除いて、一般的には受診1回につき3,000〜7,000円が相場です。

大きなトラブルなく出産を迎えることができる人なら妊婦健診はおよそ15回であるため、単純計算で45,000〜105,000円の計算になります。健診の内容は、医師による診察や採血・エコー検査(超音波検査)などが行われます。

また妊娠は病気ではないため基本的には保険適応外である一方で、は国からの助成金を受けることもできます。補助金を活用すると妊婦健診に必要な費用は実質30,000〜50,000円前後になり、経済的な負担を減らせます。

 

2. 出産費用

入院する医療機関にもよりますが、出産にかかる費用はおよそ50万円です。

具体的に必要な費用は、以下の通りです。

  • ・入院費
  • ・分娩費
  • ・新生児管理保育料
  • ・出産後の検査・処置費
  • ・薬剤費

出産費の全体平均は46万217円(公的病院:44万3777円、私的病院48万1766円)です。一方で、厚生労働省の定める出産一時金は原則42万円になります。

つまり、出産一時金を活用すれば自己負担金額は4万円前後であることが分かります。公的な補助金を活用しつつ、出産費用の負担を軽減できるようにしましょう。

※参考資料
厚生労働省/出産育児一時金について
厚生労働省/第136回社会保障審議会医療保険部会資料 P3

 

3. マタニティ・ベビー用品の準備費用

マタニティ・ベビー用品の準備費用については、揃える物や量や購入場所により大きく異なります。その上でおよそ10〜15万円程度の費用が必要になると想定しておきましょう。

マタニティ用品とは、出産前後のマタニティウェアやナプキン、睡眠グッズなどお母さんが安楽に妊娠生活を送れるグッズ全般を示します。

ベビー用品とは、哺乳瓶オムツ、サークル枕など育児に必要なもの全般を示します。特に第一子は育児の経験がないため、一から十まですべて買い揃えてしまうため、出費も多くなる傾向です。

個人で購入する物や量を調整できるだけに、上下を決めておかないと思った以上に出費して後悔するケースもあります。事前に育児の経験がある人に、不要だったものを教えてもらっておくと無駄な出費をせずに済むでしょう。

また里帰りをするなら数ヶ月間に渡り生活拠点を移すため、身の回りの生活用品も必要になるでしょう。妊娠から出産までは様々なものが必要になるため、計画的に購入することが重要になります。

妊娠・出産費用は高い!自己負担を減らす2つの方法

高額な妊娠・出産費用の自己負担を少しでも減らすために、以下の2つの方法を活用しましょう。

  • ・出産場所の検討
  • ・おさがりを活用

特に1つ目の出産場所により費用の違いはあまり知られていません。そのため、かかりつけ医を決めていない方は、今後の自己負担のことも考えて参考にしていただけると幸いです。

 

方法①:出産場所の検討

出産場所によって出産・入院費は異なります。

例えば、公的・私的病院により数万円単位の差額があるため、初めて産婦人科を受診する前に下調べしておくことが重要になるでしょう。

具体的な出産費用の違いについては、以下の表をご覧ください。

速報値

(※厚生労働省/第136回社会保障審議会医療保険部会資料 P3より画像引用)

最も低額なのは助産院や公的機関であり、次いで個人・私的病院になります。中でも公的機関は人気であるため、早めの受診や相談をしておくことが重要です。

また助産院や個人病院(クリニックを含む)は妊婦健診のみ扱っており、入院・出産ができない施設もあるため注意が必要です。

そして助産院は医療行為が許可されていないため、帝王切開が必要になると医療機関へ搬送されることも合わせて知っておきましょう。

※参考資料:厚生労働省/第136回社会保障審議会医療保険部会資料 P3

 

方法②:おさがりを活用

兄弟や知人からおさがりをもらい、再生可能資源の活用で賢く節約しましょう。

マタニティやベビー用品は一から揃えると高額になります。特に第一子の両親は不要なものを買ったり、良いものだけで揃えたりして出費がかさむケースがほとんどです。また、兄弟で性別が異なると揃えるものも変わるため、必要以上にお金がかかる可能性があります。

そこで、服やおもちゃなどおさがりでも代用できそうなものは、譲ってもらいましょう。妊娠のゴールは出産ではありません。出産後は育児費など様々な場面でお金がかかることが予測されるため、妊娠中から計画的に工面することが大切になります。

妊娠・出産前後で受給できる助成金7選【知らないと損】

世の中には妊娠や出産を支援する様々な助成金があります。しかしその多くは自ら申請が必要であり、知らない人が損をしてしまう可能性があるのです。

そこでこの章では、妊娠・出産前後に受給できる助成金について、以下の8つを解説します。

  • 1.出産育児一時金
  • 2.医療費控除
  • 3.高額療養費
  • 4.出産手当金
  • 5.傷病手当金
  • 6.児童手当
  • 7.乳幼児医療費

出産後に焦って申請をしないためも、妊娠中から助成金について考える参考にしていただけると幸いです。

 

助成金①:出産育児一時金

出産育児一時金とは、入院や分娩にかかる高額費用の負担を軽減するために、健康保険や国民健康保険から支払われる支給される助成金のことです。

厚生労働省により原則42万円と定められており、健康保険や国民健康保険の被保険者またはその被扶養者に該当する人に支給されます。

また子供1人あたり42万円であるため、多胎妊娠の場合は42万円を人数分支給されます。支給方法は入院した病院へ健康保険から直接払われる「直接支払制度」が一般的です。出産費用と入院費用を足して、42万円を引いた差額が退院時に請求されることになります。

※参考資料
厚生労働省/出産育児一時金について
厚生労働省/出産育児一時金の支給額・支払方法について

 

助成金②:医療費控除

確定申告で医療費控除の申請を行うと、払い過ぎたお金が返ってくることがあります。

医療控除とは家族全員の1年間にかかった医療費の総額が10万円を超えた場合に、払い過ぎた税金分の払い戻しをしてもらえる申告のことです。

医療控除の対象となる医療費は、以下の通りです。

  • ・妊婦健診や通院のための交通費
  • ・入院費
  • ・分娩費など

領収書やレシートなど医療費の証明を残しておく必要があるため、申請できるかどうか迷ったものはすべて残しておきましょう。

※参考資料:国税庁/医療控除を受ける方へ

 

助成金③:高額療養費

高額療養費とは、健康保険の適応範囲内で1ヶ月の医療費が上限を超えた場合に払い戻しされる助成金のことです。

自然分娩は医療保険の適応外です。一方帝王切開や出産後の重症な悪阻、切迫流産などは医療行為が必要となるため、医療費の対象となります。

そして払い戻しの金額は申請者個人の所得により変動するため、まずは健康保険被保険者証(健康保険証)に記載されている管轄の協会けんぽ支部に確認しましょう。

※参考資料:全国健康保険協会/高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)

 

助成金④:出産手当金

出産手当金とは産前42日から産後56日までの期間で、休業中に通常3分の2の給料が健康保険から支払われる助成金のことです。

具体的な支給額は、以下の計算式で求めます。

出産手当金=(支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額)÷30日×(2/3)

ただし、休業中にも関わらず会社から給料が支払われていると受給資格がなくなるため注意が必要です。申請や相談については、健康保険組合もしくは協会けんぽにて確認しましょう。

※参考資料
全国健康保険協会 協会けんぽ/出産手当金について
厚生労働省/産前・産後休業中、育児休業中の経済的支援

 

助成金⑤:傷病手当金

傷病手当金とは、病気休業中に被保険者やその家族の経済的負担を軽減するための助成金のことです。

病気や怪我の状況により出勤できない期間が3日(待機期間)以降の日数に応じて支払われます。支給期間は令和1年度から1年6ヶ月に設定されました。

具体的な支給金額は、以下の計算で求めます。

傷病手当金=(支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額)÷30日×(2/3)

ただし休業期間中に会社から支給金額を上回る金額が支給されていると、受給資格がなくなるため注意しましょう。

※参考資料:全国健康保険協会 協会けんぽ/傷病手当金

 

助成金⑥:児童手当

児童手当とは、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の期間で、育児による経済的負担を軽減することが目的で支給される助成金のことです。対象は育児をする親になります。

具体的な支給金額は、内閣府の以下の表をご覧ください。

児童の年齢

2・6・10月に前月までの月数分の支給がされます。例えば、10月の支給なら6〜9月までの期間分が一括で振り込まれることになるということです。育児にはお金がかかるため、コンスタントに支給される助成金があると嬉しいですよね。

※参考資料:内閣府/児童手当制度のご案内

 

助成金⑦:乳幼児医療費

乳幼児医療費とは、各地方公共団体が支給する乳児・幼児の通院・入院に対する保険診療医療費を一部負担するための助成金のことです。

以下の表は、内閣府による各地方公共団体の助成金の詳細です。

補助金

支給金額は地方公共団体ごとで設定できるため異なります。そのため最新の詳細は、お住まいの地域の市役所に連絡して確認しましょう。

出産後は赤ちゃんの迎え入れや育児で何かとバタつきます。しかし出生後に両親のどちらかが市役所へ申請する必要があること、申請には時間がかかることを考えて、早めに手続きを済ませることをおすすめします。

※参考資料:内閣府/自治体における乳幼児医療費助成事業一覧

医療控除を受けるために必要な確定申告の方法

医療控除を受けるためには確定申告に関して知っておく必要があります。

そこでこの章では、確定申告に関する以下の内容をお伝えします。

  • ・医療控除を受けるとどれくらいの金額が戻ってくるの?
  • ・医療控除を受けるのに必要な確定申告とは?
  • ・確定申告の申請期間
  • ・確定申告に必要なもの

経済的負担を少しでも軽減するためにも、医療控除の申請で払い過ぎた税金を返してもらいましょう。

 

医療控除を受けるとどれくらいの金額が戻ってくるの?

医療控除とは1年間に支払った医療費を確定申告ですることで、払い過ぎた金額が返ってくるものです。妊娠・出産を通して出費が多いため、確定申告で経済的負担を減らさせられるメリットがあります。

  • ・対象期間:妊娠・出産した年の1月1日〜12月31日
  • ・申請期間:翌年2月16日〜3月15日(確定申告の期間)

対象医療費の有無については、以下の表をご覧ください。

対象となる医療費 対象とならない医療費
胎児精密超音波検査
入院費用・出産費
赤ちゃん(未熟児など)での入院費
通院・入院での交通費
産後健診・通院
不妊治療
妊娠検査薬
里帰り出産のための交通費
入院中の生活用品の購入費
入院中の追加オプション費(エステなど)
育児用品の購入費

つまり、妊娠・出産をするために必要となる医療費が医療控除の対象となります。反対に医療機関以外もしくは購入の有無は個人の裁量で変わるものは、対象外となることに注意しましょう。

また5年ほど遡って申請もできるため、出産後に焦って申請する必要はありません。医療費を支払った証拠(領収書やレシートなど)を残しておき、落ち着いてから整理しましょう。

具体的な金額は、以下の計算式で求められます。

医療控除(上限200万円)=(医療費の合計)−(保険や助成金)−10万円

そして、所得により課税率や還付金が異なります。所得別に見た課税率は、以下の表をご覧ください。

所得額 課税率
〜195万円 5%
195〜330万円 10%
330〜695万円 20%
695〜900万円 23%
900〜1,800万円 33%
1,800〜4,000万円 40%
4,000〜万円 45%

例えば、以下の条件だと医療控除の申請で「2万4,000円」の還付金があります。

  • ・所得:400万円
  • ・出産・入院費用:58万円(42万円は出産育児一時金)
  • ・出産後の健診や乳腺外来などの通院費用:6万円
  • (医療控除の対象金額)=(58万円+6万円)-42万円-10万円=12万円
    (還付金)=12万円×20%=2万4,000円

    このように医療費を確定申告することで還付金を受けられるため、妊娠中の時間に余裕がある時から申請の準備をしていくと良いでしょう。

     

    医療控除を受けるのに必要な確定申告とは?

    確定申告とは税務署に対して払い過ぎた税金を申告することで、所得に応じた還付金を受け取れる制度のことです。会社勤めなら給与から所得税が差し引かれて支給されるため、個人事業主以外は馴染みのある人も少ないでしょう。

    ただし医療控除の申告は会社勤めでも自分で行う必要があるため、年度末になるとご自身で調整する必要があります。

    ※参考資料:国税庁/医療費控除を受ける方へ

     

    確定申告の申請期間

    通常、確定申告の申請期間は、申告したい年の翌年2/16〜3/16の間で行います。ただし、医療費控除は、申告したい年の翌年1/1から5年間の申請が可能なので、出産後に焦って準備する必要はありません。

    前年度(1/1〜12/31)の所得と税金の計算を行い、国税庁が定める所定の用紙に記入して申請を行いましょう。

    また、近年e-TAX(インターネットにて申告書類の提出ができる仕組み)が導入されたため、育児で忙しく税務署に行けない方でも簡単に申請ができるようになりました。

    申告期間に余裕がある一方で後回しにすると申請を忘れてしまうため、申請期間があることを頭の片隅に置いておきましょう。

    ※参考資料:国税庁/所得税の申告

     

    確定申告に必要なもの

    確定申告に必要なものは、以下の通りです。

  • ・本人確認書類
  • ・マイナンバーカードの控え
  • ・源泉徴収票
  • ・確定申告書A(第一表、第二表)および医療費控除の明細書
  • ・医療費の明細書
  • ・医療費の領収書
  • ・健康保険の医療費通知
  • 普段見慣れない書類が多く、初めて申請する方は戸惑う可能性もあります。そこでインターネットで申請できるe-TAXなら必書類や記入事項が一目で分かるため、申請漏れを予防できます。

    インターネットでの申請で分からない方は、近くの税務署に相談しながら申告書類の作成をしましょう。

    ※参考資料
    国税庁/医療費控除が変わります!!!
    国税庁/医療費控除を受けられる方へ

    まとめ: 出産・育児費用の負担軽減は計画的に!

    以上、 妊娠・出産費用の経済的負担の軽減方法について詳しく解説しました。

    妊娠中は妊婦健診やベビー・マタニティ用品の購入など何かと出費が多いことがわかりましたね。出産・入院費も高額であることをイメージできたのではないでしょうか。

    そこで妊娠から育児までの経済的負担を軽減するために、以下の方法がありました。

    • ・助成金の活用
    • ・出産場所の検討
    • ・おさがりの活用
    • ・医療控除の申請

    助成金や医療控除には申請が必要であり、普段馴染みのない書類の提出を行わなければいけません。そしてこれらの制度はすべて自己申請しなければならず、申告漏れがあると助成金や還付金を受け取れないのです。

    そのため妊娠初期などで身体的・時間的な余裕がある時に準備しておきましょう。

    この記事があなたの妊娠や出産の経済的負担の軽減をするための参考になれば幸いです。

    プロフィール

    この記事の筆者:仲田洋美(医師)

    ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

    仲田洋美のプロフィールはこちら

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