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出産が近づくにつれて気になるのが、「破水」。
破水するタイミングは人それぞれで、妊娠している状況などによっても変化します。
とくに、陣痛が始まる前に起こる「前期破水」は、出産可能な週数に達していないときに起こってしまうとお腹の中の赤ちゃんに影響が出ることもあるので、「もしも自分が前期破水になってしまったら……」と心配になる方も少なくありません。
今回は、前期破水を起こしやすい行動や原因、破水の基礎知識や破水した時の対処方法などを、詳しく解説していきます。
破水とは
妊娠中、お腹の中の胎児は卵膜の中で羊水と一緒に包まれている状態ですが、その卵膜が破れ中の羊水が外に流れ出ている状態が「破水」です。
もう少し詳しく説明すると子宮口が開くことで子宮の壁と卵膜にズレが生じ、卵膜が剥がれ、羊水が下に流れます。
卵膜が羊水によって膨らむと胎胞が作られますが、この胎胞が陣痛時に子宮内圧が上昇したり胎児の頭に押されたりすることで破裂して破水が起こるのです。
通常破水は、陣痛が始まり子宮口が全開になると起こりますが、破水が起こるタイミングは妊娠時の状態などによって変わるので、個人差があります。
また、破水が起こる位置によって「低位破水」と「高位破水」に分類できます。
低位破水(ていいはすい)
低位破水は、子宮口付近での破水で完全破水とも呼ばれます。
低位破水の場合は、中の羊水が一気に外に流れ出すので破水したことに気づきやすく、妊娠している人の多くは定位破水を起こします。
高位破水(こういはすい)
高位破水は、子宮口から離れた位置で、卵膜が破れた時の破水です。
低位破水のように一気に羊水が外に流れ出ず、少ない量がチョロチョロと出てくるので、高位破水を起こしていても気づかずに、尿もれと勘違いしてしまう妊婦さんも少なくありません。
破水の種類
破水は、破水するタイミングによって、3種類に分けられます。
適時破水(てきじはすい)
適時破水は、その名の通り、出産の準備が整い破水に適しているタイミングで起きた破水のことです。
陣痛が起こり、子宮口が全開になっている時に発生するため破水が原因で問題が起こる可能性はほぼありません。
早期破水(そうきはすい)
早期破水は、陣痛が始まっていても子宮口が全開ではない時に起こる破水です。
陣痛がすでに始まった後の破水なので、適時破水と同様に、破水後すぐに出産できるので、破水が原因で問題が起こることはまずありません。
前期破水(ぜんきはすい)
適時破水や早期破水とは異なり、気をつけなければならないのが前期破水です。
前期破水は、陣痛が始まる前に起こってしまう破水のことで、何かしらの原因によって子宮内の圧力が上昇し、卵膜がもろくなってしまうことで引き起こされます。
前期破水は、妊娠37週を過ぎた妊婦に多く見られますが、妊娠期間中いつでも前期破水を起こす可能性があるので注意しなければなりません。
前期破水が引き起こされる原因として、下記が挙げられます。
- 転倒や重い荷物を持つなど、お腹に必要以上の負荷がかかった
- 絨毛膜羊膜炎などの感染症を発症している
- 羊水過多や多胎妊娠
- 子宮奇形
- 羊水検査の合併症
前期破水は子宮に必要以上の圧力がかかることで引き起こされるので、お腹に負荷がかかる行動をするだけではなく、羊水の量が多いと診断された方や双子などの多胎児を妊娠している方も、子宮への負担が大きくなりやすく前期破水を引き起こす可能性が高くなります。
また子宮奇形の場合は子宮の形が正常な子宮と異なることで、胎児の成長に子宮が耐えられなかったり、早産の原因と言われている絨毛膜羊膜炎などの感染症を発症したりすることも、前期破水を起こしてしまう理由の一つです。
そして、前期破水は妊娠何週で起こったかによってもリスクが変わります。
妊娠37週以降での前期破水の多くは破水後24時間以内に陣痛が開始されるため、とくに問題がなく分娩を開始できますが、妊娠37週より前、とくに34週未満であると早産となるため胎児に合併症などのリスクを伴う可能性があります。
妊娠34週未満で前期破水をした場合は、胎児の成長や健康状態によって妊娠37週まで分娩を待つのか、もしくは週数を待たずに分娩を早めに誘発させるのか、医師がさまざまな角度から診断し判断をします。
注意したい!前期破水しやすい2つの行動とは
破水のタイミングはご自身で決めることはできませんが、他の破水よりもリスクが高くなる前期破水を予防する方法はあるのでしょうか。
ここからは、前期破水が起きやすい行動を2つ、解説していきましょう。
お腹に力が入る行動はNG!
前項でも解説しましたが、破水は子宮内の圧力が上昇することで起こるため、普段以上にお腹に負荷がかかる行動は前期破水を促しやすくなります。
たとえば、重い荷物を持ち上げることやお腹に負荷がかかる運動や姿勢をとる、また、せきやくしゃみもお腹に力が入るのでお腹が大きくなってきている方はとくに注意が必要です。
そして、妊娠期間中に性行為をする場合も、お腹に負荷をかけず力が入りすぎないように浅め挿入で、なおかつ短時間で終えるようにパートナーと協力しあいましょう。
感染症予防をする
妊娠中はとくに、性器周辺を清潔に保つ必要があります。
性器の感染症は、妊娠期間中ももちろん感染するリスクがあり、感染してしまうと前期破水や早産などのリスクを高めます。
とくに早産の原因でもある絨毛膜羊膜炎は、妊娠中期以降に発症する方が多く、胎児へのリスクも考えられます。
妊娠期間中に性行為をする場合は、必ずコンドームを着用し膣や子宮頸管の感染症予防に努めましょう。
破水してしまった時に覚えておきたい5つのポイント
もしも、病院以外で破水してしまった場合は、どう対処すればいいのでしょうか。
突然、破水した場合に慌てないためにも、覚えておきたいポイントを5つご紹介します。
かかりつけの病院に連絡
破水したと感じたら、必ずかかりつけの病院に連絡をして指示を仰ぎましょう。
低位破水の場合は、羊水がしっかりと出るのでわかりやすいですが、高位破水の場合は尿もれと勘違いして破水していることに気づかない場合があります。
そして、高位破水であり、なおかつ陣痛がきていない場合だとより破水していることに気づきづらくなります。
破水は妊娠初期でも起こるため、高位破水と気づかずに病院を受診しないでいると、早産や流産を引き起こしてしまう可能性があるのです。
また、感染症のリスクも高めるため、破水した確信はなくても違和感が少しでもある場合は、必ずかかりつけの病院を受診しましょう。
尿もれでないか確認する
低位破水は、弾ける感覚や外に出てくる羊水の量が多いことから破水したと気づきやすいですが、高位破水は出てくる羊水の量が少ないため破水か尿もれか判断しづらいことがあります。
破水か尿もれか見分けるポイントは、下記になります。
- 尿はアンモニア臭だが、羊水は無臭、もしくは生臭い
- 尿もれはお腹に力を入れたら止まるが、破水は少量であっても出続ける
- 破水は透明か白濁しており、血が混ざっている時もある
ただし、高位破水の場合は、上記の見分けるポイントを当てはめたとしても破水と自覚するのが難しいので、少しの変化や違和感でも医師の診断を仰ぐことが大切です。
安静にする
破水したら病院に行くまで、必ず安静な状態で待機します。
破水をすると羊水が出続けるため、必要以上に動き回らず横になって安静にすることで、羊水を過度に減らしすぎないように心がけます。
お風呂には入らない
破水をすると感染症のリスクが上がるため、入浴はもちろん、シャワーも控えなければなりません。
羊水を受け止めるためにも、大きめの生理用ナプキンをつけてバスタオルを下半身に巻いて安静に過ごしましょう。
タクシーや車で移動
かかりつけの病院までの移動は安静にしなければならないため、、必ずタクシーか車を利用しましょう。
タクシー会社の中には「陣痛タクシー」といって、妊婦が病院までの送迎を頼める専用の回線を設けているところがあります。
陣痛タクシーは事前にかかりつけの病院やご自宅の住所を登録しておくことで、突然破水や陣痛が起きた場合も慌てずに連絡ができます。
またタクシー内のシートにはビニールシートが敷いてあったりバスタオルが準備されていたりするので、破水した状態でもシートを汚す心配もなく乗車することが可能です。
妊婦健診や出産後に病院からご自宅までの送迎にも活用できるので、出産が近づいてきたら登録しておくと安心です。
まとめ
今回は、前期破水しないための行動や、破水した場合の対処方法などを詳しく解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
妊娠37週以上で破水した場合はとくに問題なく出産できますが、34週未満であると胎児へのリスクも高まります。
前期破水を完全に予防するのは難しいですが、前期破水の可能性を少しでも減らすためには、妊娠中の行動に気をつけることが大切です。
また、前期破水に限らず、破水かな?と少しでも違和感があったら、必ずかかりつけの病院にすぐに連絡し医師や看護師の指示を仰ぎましょう。