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子宮痛いのはなぜ?原因として考えられる疾患と受診の目安

女性には子宮や卵巣など、お腹に特有の臓器があります。それらは時にさまざまな痛みを伴い、女性を悩ませることも。

近年、結婚や出産年齢の上昇などにより女性特有の臓器にトラブルが生じるケースも増えてきていますが、心配のないものもあればなんらかの疾患のサインである可能性もあります。

「子宮痛い‥」「骨盤より下が痛い‥」とお悩みの方は、真っ先に婦人科系の原因が考えられますので、気になる方は早めに医療機関を受診しましょう。

この記事では、子宮が痛い原因として考えられる疾患と受診の目安についてご紹介します。

子宮が痛い原因として考えられる疾患

子宮とは、女性の下腹部にある袋状の器官で、洋梨を逆さまにしたような形をしているのが特徴です。子宮内膜と子宮筋層、漿膜という3つの層でできており、その中でも子宮筋層は平滑筋という丈夫な筋肉であることから、子宮は臓器の中でも非常に丈夫だと考えられます。

ご存知の通り、子宮は胎児を育てる部屋になる重要な部分です。両サイドに位置する卵巣から排出された卵子と、膣から侵入した精子が卵管で結合し、子宮内膜に着床して妊娠が成立します。

妊娠が成立しなかった場合は、子宮内膜が剥がれ落ちて月経となりますが、それに伴って月経痛が生じることもあるため、子宮に痛みを感じることもあります。

女性は毎月の月経で子宮の痛みに慣れている方も多いことから、少しの痛みであれば放置してしまうケースも少なくありません。しかし、なんらかの疾患が関係していることもあるので注意が必要です。ここでは、子宮が痛い原因として考えられる疾患をご紹介します。

子宮の左側や右側など片方のみに痛みを感じる場合

「子宮の左側が痛い‥」「子宮の右側がチクチクする‥」など、子宮のどちらか片側のみに痛みを感じる方は、以下のような疾患の可能性もあるので注意しましょう。

クラミジア菌や淋菌などによる性感染症が原因の骨盤腹膜炎

クラミジア菌や淋菌、結核菌、その他の細菌感染が原因となり、子宮や卵管、その周辺組織が骨盤内腹膜炎を発症している恐れがあります。

骨盤内腹膜炎になると、徐々に下腹部痛が増し、慢性期には鈍痛が生じやすいのも特徴です。20代前半の若い女性に多い疾患で、腹痛以外には発熱やおりものの増加、腰痛や倦怠感、吐き気、不正出血などの症状がみられます。

排卵痛など生理に関連する痛み

卵巣は、子宮の両サイドにひとつずつあり、卵子を育て排出する器官です。

排卵日になると卵巣の壁を突き破って卵子を排出するため、破れた卵巣から卵胞液と血液が流れ出して痛みを感じることも。この卵巣からくる痛みを、子宮の痛みと勘違いしているケースもあります。

チクチクしたり引きつったりするような痛みが特徴で、左右どちらかの卵巣に生じるケースがほとんどです。

卵巣腫瘍

卵巣の痛みを子宮の痛みだと勘違いするケースには、排卵痛だけでなく卵巣腫瘍もあります。

卵巣腫瘍はその90%近くが良性であるため、腫瘍=悪性ではありません。初期の段階ではほとんど自覚症状はありませんが、何かの拍子に卵巣腫瘍の付け根がねじれたり腫瘍が破裂したりすると、突然激しい腹痛に襲われることもあります。

通常、左右どちらか片側のみに発生し、腹痛の他に吐き気や嘔吐、腹水によるお腹の膨らみ、便秘や頻尿などの症状が現れる可能性もあります。

骨盤内うっ血症候群

子宮あたりに痛みを感じるが、鎮痛剤を服用してもあまり効果がなかったり、身体の異常を調べても原因が分からなかったりする場合、骨盤内うっ血症候群を発症しているかもしれません。

あまり聞き慣れない病名ですが、原因不明の下腹部痛がある方の多くはこれに当てはまるといわれています。

痛みを感じる部位には左右で差があり、多くの場合左側が痛むようです。寝ているときや起きた直後など、長時間体を動かさないときに痛むことが多いこともわかっています。

子宮全体に痛みを感じる場合

基本的に、子宮自体が痛むときはどちらか片側ではなく全体に痛みを感じます。

月経時に痛みを感じる方も多いですが、月経痛がひどい場合はなんらかの疾患が隠れている恐れもあるので気をつけなければいけません。また、それ以外のときでも子宮が痛むときは、とくに注意が必要です。

以下は、子宮全体に痛みを感じる場合に考えられる原因です。

子宮腺筋症

子宮腺筋症とは、子宮内膜によく似た組織が、子宮平滑筋のなかにできる疾患のことをいいます。40代の女性にもっとも多くみられ、とくに経産婦さんに多いようです。

ひどい月経痛や月経過多、月経時以外の腹痛や腰痛などの症状がある場合は、子宮腺筋症の可能性もあります。

子宮内膜症

婦人科の代表的な疾患である子宮内膜症は、本来子宮の内側だけにあるはずの子宮内膜が、子宮の内側以外の場所にできてしまう疾患です。月経のサイクルと連動して増殖と出血を繰り返していますが、それを体外へ排出できないため、月経のたびに炎症を起こします。

発症する場所によって痛みや症状はそれぞれ異なりますが、ひどい月経痛や生理以外の下腹部痛、排便痛や性交痛などの症状がある場合は、子宮内膜症の可能性があるので注意しましょう。

子宮筋腫

子宮内膜症とならび、婦人科の疾患としてよく知られている子宮筋腫は、子宮壁にコブのような良性腫瘍で、筋肉が異常増殖した状態です。30〜40代に多く、閉経後は女性ホルモンの減少とともに小さくなる傾向にあります。

ひどい月経痛やレバーのような出血などが子宮筋腫の代表的な症状ですが、仰向けになると下腹部に圧迫感がある場合やお腹がつかえるような感じがする場合、頻尿や月経期間が長い場合なども、子宮筋腫の可能性があります。

子宮頸がん

子宮頸がんとは、その名の通り子宮頸部に発生するがんのことです。

多くの場合、性交渉によるヒトパピローマウイルスへの感染が関係しているといわれ、30代後半〜40代に多く発症します。

初期の段階ではほとんど自覚症状はありませんが、進行すると下腹部痛や腰痛、背部痛が生じることもあります。

出血性黄体嚢胞

出血性黄体嚢胞とは、排卵後に卵巣の腫れが生じ、出血が起こる疾患です。

排卵日から月経開始までに起こり、寝ていても目が覚めてしまうほどの強い痛みが特徴ですが、とくに治療の必要はなく、自然治癒していきます。

婦人科系の疾患以外で考えられる原因

以下は、婦人科系の疾患以外で子宮周辺が痛む原因として考えられるものです。

  • 便秘
  • 蠕動痛
  • 過敏性腸症候群
  • ピルや便秘薬などの服用

子宮周辺の下腹部が痛むのは、便秘や蠕動痛のいずれかであることが多いです。とくに女性はホルモンバランスの影響で便秘になりやすいうえ、月経前から月経時にかけて蠕動痛も生じやすくなります。

また、なんらかのきっかけにより子宮や膣周辺に締め付けられるような、痛いような感覚が生じることもあり、これを「子宮がうずく」と表現することも。

子宮がうずく瞬間は人それぞれ異なるため一概にはいえませんが、性的な刺激を受けたり母性本能を感じたりしたときや、月経前や月経時に感じるという方もいるようです。

受診の目安

上記でご紹介したように、子宮が痛む原因として考えられる疾患にはさまざまなものがあります。

子宮は妊娠や出産にかかわる女性にとって非常に大切な臓器ですが、トラブルが生じる可能性も高く、進行するまで自覚症状がない場合もあるため、子宮に痛みを感じる場合は医療機関を受診しなければいけません。

そこでここでは、子宮の痛みで受診する目安についてご紹介します。

早急に受診すべきケース

以下は、子宮の痛みで早急に受診すべきケースの例です。

  • 月経以外のときに多量の出血がある
  • 急激に痛みが強まった
  • 痛みが徐々に強くなる
  • 嘔吐や下痢の症状がある
  • 38度以上の発熱
  • 子宮付近を押したときや押していた手を急に離したときに痛みが強まる
  • 妊娠している可能性があり、継続した痛みやお腹の張りがある

夜間や休日などで医療機関があいていない場合などは、状況に応じて救急車の要請も検討する必要があります。どうしても救急車を呼びたくない、もしくは受診できない場合は、翌朝すぐに外来を受診しましょう。

近日中の受診を検討すべきケース

以下は、子宮の痛みで近日中の受診を検討すべきケースの例です。

  • 我慢できるくらいの痛みが1週間以上続いている
  • 不正出血や月経不順など、腹痛以外にも症状がある
  • 日常生活に支障をきたすほど月経痛がひどい

上記のような場合は、翌日から近日中に一度婦人科を受診することをおすすめします。日常生活に支障がない場合でも、月経に伴う痛みがあるときは健診を受ける感覚で受診してみるとよいでしょう。

まとめ

子宮が痛い原因として考えられる疾患と受診の目安についてご紹介しました。

子宮やその付近が痛む原因には、子宮自体の疾患や卵巣など子宮の付属器の疾患、それ以外があります。場合によっては、重篤な疾患である可能性もあるので、子宮が痛いと感じたり月経周期や量、痛みが普段と違うと感じたりしたときは迷わず受診しましょう。

その際は、いつから痛いのか、どのように痛むのか、どのようなときに痛むのかなど痛みの特徴をしっかりと覚えておくことをおすすめします。

また、子宮などの疾患は婦人科健診などで偶然発見されることも多くあります。普段から定期的に受診し、自分の体をチェックしてもらうことも大切です。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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