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卵巣を押すと痛い!原因となる可能性のある疾患と受診の目安

胃や腸の痛みではない、女性特有の下腹部の痛みを感じたことのある女性は意外と多いようです。

下腹部に感じる痛みの代表には、便秘や生理痛などがあります。卵巣の痛みについては、普段あまり気にすることはありませんが、痛む場所を探っていて、その場所が卵巣の付近であると気づくことも。

「卵巣のあたりを指で押すと痛い」「なんだか下腹部の片側だけ押すと痛む」など、ふとしたときに痛みに気づくと、「卵巣の病気なのかな‥」と不安になってしまうことでしょう。

そこでこの記事では、卵巣の位置、卵巣の痛みの原因となる可能性のある疾患、受診の目安についてご紹介します。下腹部が押すと痛む、気になるという方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

卵巣の位置はどこ?

医師と子宮・卵巣

卵巣は、沈黙の臓器ともいわれ、悪性化してもほとんど自覚症状が出ません。そのため、身体になんらかの症状が現れる頃には進行していることも多く、体調不良で受診したら卵巣の疾患が見つかるケースも少なくないのです。

そもそも卵巣とは、お腹のどのあたりにあるのかご存知ですか?

女性の下腹部には、洋梨を逆さまにしたような形をした袋状の子宮があります。子宮は骨盤のほぼ真ん中に位置しており、成人女性で鶏卵くらいの大きさです。

具体的には重さが約40〜50gで長さは7〜9cm、幅は4cmほどの大きさで、卵巣はその子宮の両サイドにあり、排出された卵子を運ぶ卵管と繋がっています。

卵巣は、通常の場合3〜4cmの大きさの親指大の臓器です。骨盤の奥に位置にあるので、腫れても気づきにくく症状も現れにくいのが特徴です。

そのため、普段から定期的に検診を受けることが重要ですが、指で押すと痛いなどの症状がある場合は、検診の時期を待たず早急にかかりつけの婦人科へ相談するようにしましょう。

卵巣の痛みの原因となる可能性のある疾患とは?

卵巣の辺りがチクチクと痛んでお腹を押さえている女性

卵巣は、赤ちゃんのもとになる卵子を育てたり女性ホルモンを分泌したりと、女性にとって非常に大切な臓器です。

骨盤に大事に守られているため、症状がわかりにくいケースも多く、腸や膀胱の痛みと間違えてしまうこともあるため、痛みの原因がなかなかわからずに発見が遅れてしまう可能性も。

そこでここでは卵巣の痛みの原因となる可能性のある疾患についてご紹介します。

排卵痛

生理ではない時期に下腹部が痛む原因の多くは、「排卵痛」と呼ばれるものです。

排卵痛は、生理と生理のちょうど真ん中あたり、次の月経がくる約2週間前の数日間でどちらかの卵巣に生じる可能性があります。

以下は、排卵痛の特徴です。

  • チクチクする痛み
  • 引きつるような痛み
  • 突っ張ったような痛み
  • どちらか片側に生じる場合が多い

排卵後は、卵巣全体が少し腫れたような状態になることから、お腹の張りや痛みが出やすくなります。痛みの感じ方や程度には個人差があるため一概にはいえませんが、片側の卵巣付近を押したときに痛みを感じることも。

ストレスがある場合などは、これまで排卵痛がなかった方でも急に感じることもあるので注意しましょう。

卵巣出血

卵巣出血とは、排卵期に卵胞が裂けて出血している状態です。次の月経がはじまる2週間前くらい(黄体期)に発症するケースが多く、突然起こる下腹部痛が初発症状です。女性の体の構造上、左側に起こる可能性が高く、腹痛の程度は出血量により個人差があります。

以下は、卵巣出血の主な症状です。

  • 黄体期の性交渉後に腹痛が起こる
  • 卵巣が破裂することでお腹の中へ出血する
  • お腹を押すと痛みがある
  • 嘔吐や吐き気、下痢

出血量が少量の場合は自然とよくなりますが、出血量が多い場合や腹痛などの症状が強い場合は、手術による止血と血液の除去が必要となるので注意が必要です。

卵巣過剰刺激症候群

卵巣過剰刺激症候群とは、不妊治療に用いる排卵誘発薬によって引き起こされるといわれている疾患です。

軽度の場合は自然と治ることもありますが、重症化するとさまざまな合併症を引き起こし、危険な状態になる恐れもあるので、早期発見し対応する必要があります。

卵巣が腫れるため、お腹を押すと痛みを感じたりお腹が張ったりすることもあります。他にも、吐き気や急な体重増加、尿量の減少などがみられる場合は、早急に医師の診察を受けるようにしましょう。

卵巣過剰刺激症候群については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

卵巣炎

卵巣炎とは、腟が細菌感染を起こし、膣炎から卵巣まで炎症が広がった状態です。卵の物質が体内に残ることでも発症する可能性があります。

さらに炎症が広がると骨盤腹膜炎の可能性や、慢性化して周囲の臓器と癒着することで卵管が狭くなったり塞がったりして、不妊症の原因になる可能性も。

以下は、卵巣炎の症状です。

  • 下腹部を押すと強い痛みを感じる
  • 腹部の膨満感
  • 38〜39度の発熱
  • 吐き気
  • 出血や黄色い膿のようなおりもの

卵巣炎は、最初から熱もなく局所的に軽度の痛みがある程度の場合も多く、自覚症状が認められないケースもあります。気づいたときにはすでに慢性化し、手術が必要になる恐れもあるため、定期検診などで早期に発見することが重要です。

卵巣嚢腫

卵巣嚢腫とは、卵巣にできる腫瘍のうち約8割を占めるといわれている疾患です。さらにその9割が良性だといわれており、卵巣内に液体や脂肪がたまった状態のことを指します。

初期の段階ではほとんど症状はありませんが、卵巣が肥大してくると腹部の膨満感や下腹部痛、頻尿などの症状が現れます。

場合によっては、腫瘍が破裂したりお腹の中で腫瘍が捻れる「卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん)」が生じたりする恐れもあり、強い下腹部痛が起こることも。完全にねじれてしまうと、卵巣に血液が届かなくなり、壊死してしまうので手術が必要になります。

ちくちく、ジンジンする痛み、押すと痛む、違和感がある場合は早めに受診しましょう。

卵巣がん

卵巣がんは、初期の段階では自覚できる症状がほとんどありません。そのため、痛みを感じるようになってしまうと、腹水が溜まっているか、腫瘍が大きくなり周囲の臓器と癒着したり圧迫したりしている可能性があります。

この場合、消化器官の働きが低下してガスがたまることでも痛みが発生するので、腸の異常と勘違いされる方もおられるようです。

さらに進行すると、がんが消化器官と癒着して腸閉塞の状態になり、ガスや便が出にくくなることで激しい痛みが生じることもあります。

女性器に関係する疾患の症状としてイメージしやすい不正出血は、卵巣がんではほとんど見られません。不正出血がないから婦人科系の疾患ではないと思われる方もいますが、腹痛などの気になる症状がある場合は、早急に病院を受診し、正しい診断を受けるようにしましょう。

妊娠初期に感じる卵巣の痛みについて

妊娠初期も、卵巣を押すと痛い場合があります。これは、ホルモンの影響で卵巣が腫れるために起こります。左右どちらかだけが痛む場合もあれば両方が痛む場合もあり、その症状はさまざまです。

妊娠週数が進むにつれ、徐々に卵巣の腫れも引いてくるため、卵巣痛もなくなっていきます。基本的に治療する必要はありませんが、妊娠中期になっても痛みが治まらない場合は、担当の医師に相談しましょう。

妊娠超初期に感じる下腹部痛については、こちらの記事で詳しくご紹介しているのでぜひ参考になさってください。

卵巣に痛みを感じたときの受診の目安

卵巣の症状について女性医師から説明を受けている女性

下腹部痛は、さまざまな原因によって生じます。とくに女性は、生理痛だけでなく子宮や卵巣、卵管などの疾患から起こる可能性も考えられます。

しかし押すと卵巣が痛いと感じた場合でも、生理に伴うものなのか、卵巣の疾患によるものなのか、その違いを判断することは難しいでしょう。

そこでここでは、卵巣に痛みを感じたときの受診の目安、受診時の問診で聞かれることと検査方法についてご紹介します。

受診の目安

卵巣に痛みを感じたときは、さまざまな疾患を早期発見し治療するためにも、一度婦人科の受診を検討しましょう。

とくに以下のような症状がある場合は、早急に受診することをおすすめします。

  • 生理でない時期でも下腹部に痛みを感じる
  • 生理痛が重い
  • お腹にしこりが触れる
  • 不正出血がある
  • 急にお腹周りが大きくなった
  • 下腹部が張る

下腹部の痛みの原因を自己判断するのは危険です。生理による痛みが原因だと思われる場合は、体を温めて血行が良くなるようにしたり、リラックスする時間を作ったりして、痛みが緩和されるか試してみましょう。

しかしそれでも痛みが続く場合は、なんらかの疾患が隠れている可能性もあるので、我慢せずに受診することが大切です。

受診時の問診で聞かれることと検査方法

婦人科では、下腹部痛で受診された場合は以下のようなことを聞かれます。

  • 急激に痛みが生じたのか、徐々に痛むようになったのか
  • 全体的に痛むのか、局所的に痛むのか
  • 妊娠の可能性
  • 月経周期と関係しているかどうか
  • 食事や便秘、排尿と関係しているかどうか
  • 不正出血やおりものの異常、血尿や血便などの症状があるか

卵巣の疾患が疑われる場合、触診や内診、膣からの超音波検査が行われます。また、初診では検尿も行われる可能性が高いです。

性体験がない方や経膣検査が苦手な方には、直腸内やお腹の上からの超音波検査を行ってくれる病院もあるので、問診の際に相談してみましょう。

これらの検査で気になることがあれば、採血で腫瘍マーカーを測定したり、MRIで詳しい検査を行ったりします。

まとめ

卵巣の位置、卵巣の痛みの原因となる可能性のある疾患、受診の目安についてご紹介しました。

卵巣を押すと痛い場合、排卵痛や卵巣出血の他に、卵巣がんや卵巣嚢腫の可能性もあるため、婦人科の受診をおすすめします。とくに痛み以外の症状がある場合は、すでに症状が進行している恐れもあるので、早急にかかりつけの医師に相談すべきです。

とはいえ、それらの症状があるからといって過度に心配せず、きちんと医療機関を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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