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葉酸の過剰摂取とリスク|取りすぎによる副作用で胎児に影響?

葉酸は胎児の成長に重要な栄養素で、妊娠初期は特に多くの葉酸を摂取するよう推奨されています。しかし「特定の栄養素を大量に摂取するのは、むしろ良くないのでは」と心配する人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では葉酸の過剰摂取について、原因やリスクを解説します。本記事を読むことで、過剰摂取は不用意に恐れる必要はなく、サプリメントを適切に使用すれば避けられることがわかります。

葉酸の過剰摂取とは

葉酸の過剰摂取が問題となるのは、主にサプリメントの使用下においてです。サプリメントは摂取が容易で吸収効率も高いため、必要以上の葉酸を摂取する場合があります。厚生労働省が定めるところでは、過剰摂取となるのは「1000㎍(1mg)/ 日です。継続的に1000㎍を超えて摂取をすると、後述するように母子にさまざまな影響を与えます。

「葉酸の1日の摂取量|妊娠期の推奨量とおすすめの食品」では、妊活期~授乳期の各期間における最適な葉酸摂取量と方法を解説しています。過剰摂取をならないためにも、ぜひ参考にしてください。

過剰摂取の原因

葉酸サプリのイメージ画像
過剰摂取の原因は、サプリメントによるものがほとんどです。以下の見出しで紹介するように、通常の食事で葉酸を摂り過ぎる心配はありません。そのため、過剰摂取を避けるにはサプリメントを適切に使用することが重要となります。

ただし、健康障害が現れるのは継続的に過剰摂取した場合です。一度用量をオーバーしてしまったとしても、心配する必要はありません。この点を理解したうえで、以下の見出しを読み進めてください。

サプリメントでの摂取がメイン

先述したとおり、過剰摂取の原因の多くはサプリメントにあります。なぜなら、サプリメントに含まれる合成葉酸は吸収効率が高く(摂取量の85%)、容易に推奨量に達するためです。

一方で通常の食品に含まれる天然葉酸の吸収効率は合成葉酸の2分の1しかありません。また、葉酸は調理法によっても減少します。たとえば水溶性である葉酸は、ゆでると水に溶け出します。よって、普段の食事から天然葉酸を過剰摂取する心配はありません。

うっかり飲みすぎる

1日の推奨摂取量を勘違いしたり、サプリメントごとの含有量の違いに気付かなかったりすると飲みすぎてしまい、過剰摂取の原因となります。

特にタブレットタイプの場合、何粒で1回分かは商品によって異なる点に注意しましょう。たとえば、400㎍を摂取するために1粒で十分な商品もあれば、7粒必要な商品もあります。「うっかり」による飲みすぎを避けるためにも、記載された用量を確認し、特別な理由がない限り同じサプリメントを使いましょう。

また、葉酸の含有量が表示されたサプリメントを選ぶことも重要です。一部の健康食品では、「葉酸」の記載がないにもかかわらず、1粒400㎍前後の葉酸が含まれている場合があります。特に、「マルチビタミン」などの表示があるものについては注意が必要です。判断に迷った場合は独断で決めず、医師と相談しましょう。

摂取量を守らない

葉酸は胎児にも母体にも良い影響を与えると思って、推奨摂取量を無視して飲んでしまう場合もあります。

葉酸の推奨摂取量は妊娠の時期ごとに変わります。妊娠1ヶ月前~8週目までは神経管の形成に大量の葉酸が必要ですが、以降の妊娠中期・後期では徐々に葉酸を減らしていかなければならないことを頭に入れておきましょう。

葉酸の過剰摂取リスク

葉酸の過剰摂取によるリスクには、主に以下の4つが挙げられます。

  • アナフィラキシー症状(葉酸過敏症)
  • 肝機能への影響
  • 肺がんリスクの上昇
  • ビタミンB12欠乏症の診断が困難

アナフィラキシー症状(葉酸過敏症)には次のような症例があります。妊娠中の一時期、継続的に葉酸を摂取していた女性(当時40歳)が2年経過後に葉酸を含むサプリを摂取したところ、2時間後にじんましん・呼吸困難などの症状が現れました。

葉酸と肺がんリスクの関係性が示唆されているのは男性のみです。女性においては現在のところ、葉酸摂取と肺がんリスクの関連は確認されていません。

葉酸の過剰摂取によってビタミンB12欠乏症の診断が困難になるのは、葉酸がビタミンB12と同じビタミンB群に属するためです。ビタミンB12が欠乏すると、手足のしびれや神経障害、貧血などが起こります。

なお、葉酸摂取の副作用については以下の記事にも詳しく書かれているのでご興味のある方はぜひご覧ください。
「葉酸摂取の副作用はある?摂りすぎリスクやサプリの注意点」

過剰摂取で自閉症になる?

自閉症の女のことテディベア
葉酸の過剰摂取と自閉症の因果関係は現在のところ明確ではありません。ただし、アメリカ・ボルチモアの自閉症学会で発表された研究では、分娩時の母体の葉酸値またはビタミンB12濃度が高い場合、正常値の母体よりも2~3倍の確率で自閉症の子どもが生まれていることがわかりました。

In the study, mothers who had very high blood levels of folate at delivery were twice as likely to have a child with autism compared to mothers with normal folate levels.
引用元:HealthDay News 「Too Much Folic Acid in Pregnancy Tied to Raised Autism Risk in Study」

しかし葉酸の過剰摂取と自閉症の関係を恐れるあまり、葉酸の摂取を怠ってはなりません。なぜなら適切な葉酸摂取はむしろ、自閉症のリスクを下げる可能性も示唆されているためです。自閉症学会での発表も、過剰摂取の危険性を報告すると同時に葉酸摂取の重要性も強調しています。

Use of prenatal folic acid supplements around the time of conception was associated with a lower risk of autistic disorder in the MoBa cohort. Although these findings cannot establish causality, they do support prenatal folic acid supplementation.
引用元:Association between maternal use of folic acid supplements and risk of autism spectrum disorders in children

以上の研究報告から、「用量を守って適切に葉酸を摂ることが大切」といえます。

ビタミンB12の過剰摂取にも注意は必要?

ビタミンB12は葉酸とともに赤血球中のヘモグロビン生成を助ける栄養素です。水溶性のビタミンで、動物性食品に多く含まれます。妊婦がビタミンB12を欠乏していると、悪性貧血や新生児の神経障害、早産および低出生体重児のリスク上昇などを引き起こす可能性があります。

一方でビタミンB12の過剰摂取は基本的に問題となりません。なぜなら過剰に摂取したとしても、必要な分を利用したら残りは尿として排出されるためです。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でも、ビタミンB12の過剰摂取による健康上のリスクは報告されていないとしています。

ただし先に紹介したアメリカ・ボルチモアの自閉症学会での発表のように、ビタミンB12の濃度の高さが自閉症のリスクを上昇させる可能性を示唆する研究があることも事実です。

以上を踏まえると、ビタミンB12の過剰摂取のリスクは不用意に恐れる必要はないものの、適切な量を守るべきといえます。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では妊婦におけるビタミンB12の推奨摂取量は「2.8㎍ / 日」とされているので、この量を目安に食事・サプリメントを摂るよう心がけましょう。

まとめ

サプリを摂る妊婦さん
葉酸の過剰摂取が問題となるのは、サプリメントに含まれる合成葉酸を摂取する場合です。合成葉酸は摂取効率が高いので、用量をよく確認して摂取するようにしましょう。葉酸が胎児に良い影響を与えることは確かですので、過剰摂取によるリスクに過敏にならず適切に摂取することがポイントとなります。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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