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18トリソミー症候群とは|症状・確率・治療法を解説

新生児が持つ先天性疾患の一つである18トリソミー症候群は別名でエドワード症候群と言われています。ダウン症候群と同様に生まれてくる赤ちゃんの染色体が異常となっている疾患です。新型出生前診断(NIPT)の基礎検査にも含まれており、妊婦さんの中でも認知度が急速に高まっている疾患の一つですが、どういった病態なのか意外と知られていません。疾患の詳しい中身を知らないと不安な思いを抱いている妊婦さんもいることでしょう。今回の記事では「どういった症状なのか?」「長生きはできるのか?」といった疑問にお答えできる内容をなっており、しかも発症確率や長生きした事例の紹介もしています。ぜひ最後までご覧ください。

18トリソミー症候群とは

お医者さん
人間にある23の染色体のうち、18番目が3本あることで様々な合併症状を併発させる障害です。別名エドワーズ症候群と呼ばれています。通常は2本であるはずの染色体が、3本になっている染色体異常の一種です。多くの場合、先天性の心臓の疾患(90%)、消化管の疾患、口唇口蓋裂など、複数の治療が必要なほど重篤な合併症を発症させます。出生児3,500~8,500人に1人の頻度で見られ、女児に多い(男:女=1:3)のが特徴です。

現在は、NIPT(新型出生前診断)の基本検査である三つの染色体で調べられるので早期発見がしやすくなっています。日本医師会に認可されている病院でも無認可施設のクリニックでも検査項目として入っていますのでご安心ください。因みに検査の精度は99%となっています。

18トリソミー症候群が起きる原因

18番染色体が2本ではなく3本になってしまう原因として考えられるのは、減数分裂の失敗や体細胞分裂の失敗です。滅数分裂とは、赤ちゃんの素となる受精卵を作るため、精子や卵子が持つ染色体を減らすことを言います。自分の子孫を産み出すための細胞分裂であり、正確にゲノムDNAを子孫に渡せるよう通常は厳密にコントロールされています。減数分裂が正しく行われない原因は不明です。

卵子と精子は減数分裂をして染色体の数を減らしていきますが、2本から1本にするときに失敗をしてしまい受精卵に3本の染色体を持ってしまう状態になるのが原因です。この症状が23ペアあるうちの18番目の染色体に起きてしまったので18トリソミー症候群という名前なのです。

18トリソミーについてはこちらのページもご参照ください。
関連記事:染色体数が多い場合に発症する3つの症候群と検査方法を紹介

18トリソミー症候群の主な特徴

18トリソミー症候群の赤ちゃんは生まれてくると見た目でわかる身体的な特徴と身体の中で起きるさまざまな重篤な症状を持っているのが特徴です。

18トリソミー症候群の身体的な特徴

18トリソミー症候群(エドワード症候群)の子どもは見た目にもはっきりとわかる身体的な特徴があります。

  • ・手指の重なり
  • ・短い胸骨
  • ・揺り椅子状
  • ・耳の位置が低い
  • ・後頭部がせり出している
  • ・首が短い

上記が主に現われる特徴です。他にも肋骨が短い・骨盤が狭い、顎が小さいなどの異常が見られます。しかも複数の症状が出てくるのも珍しくありません。他に特徴として身体が小さく筋肉が正常な子よりも発達しにくいのが特徴です。泣き声も弱々しく身体がグッタリしているように見えます。

妊婦健診のときに超音波検査では手足の形で判断する場合もあります。なぜなら18トリソミー症候群(エドワード症候群)の赤ちゃんは指が重なり合っていたり、足の親指が短く上に曲がっていたり、拳を握りしめたような「グーの形」をしていることが多いからです。足の場合、足や足首が内向きになる「内反足」や足の裏がロッキングチェアの脚のように丸い「揺り椅子状足底」といった症状が見られるのが特徴です。

18トリソミー症候群の主な疾患

18トリソミー症候群の赤ちゃんは先天性疾患を含めて多くの重篤な病気にかかりやすくなっています。症状別にまとめていますのでご覧ください。

【先天性心疾患】
心室中隔欠損(VSD)
心房中隔欠損(ASD)
動脈管狭窄
両大血管右室起始 など

【肺疾患および呼吸器系合併症】
肺高血圧(PH)
横隔膜弛緩症
上気道閉塞
無呼吸発作 など

【消化器系合併症】
食道閉鎖
鎖肛
胃食道逆流

【泌尿器系合併症】
馬蹄腎
水腎症
そけいヘルニア

【筋骨格系合併症】
多指症
合指症
橈側欠損
関節拘縮
側弯症 など

上記以外にも難聴、悪性腫瘍(Wilms腫瘍、肝芽腫)など数多くの合併症を抱えて生まれてきます。特に先天性疾患や呼吸に関する病変は生命を維持できるかどうか予測にも大きな影響を与えるほどなので出産直後から常に医師や看護師がチェックできる体制に入ります。生まれてすぐに人工呼吸器を付けて過ごすことも珍しくありません。

18トリソミー症候群の検査方法

18トリソミー症候群(エドワード症候群)のは、出生前検査で調べられます。種類としては非確定検査と確定検査の二つです。非確定検査とは、「母体血清マーカー検査」「コンバインド検査」「新型出生前診断(NIPT)」「超音波(エコー)検査」の4つです。非確定検査よりも精度が低いため確定検査の前に行われています。ただし、血液検査をして判定をする新型出生前診断(NIPT)の精度は99%とかなり高いのが特徴です。

確定診断は「羊水検査」「絨毛検査」の二つです。この二つの検査で18トリソミー症候群と診断されたら確定となります。出生前検査の流れとしては非確定検査を受けて陽性の結果が出たら確定検査を受ける形です。

出生前検査の一つ「絨毛検査」は妊娠10~13週の間に絨毛採取をして検査可能なのが利点ですが、すぐに絨毛検査を受けることはできません。羊水穿刺(エコーで胎児を見ながら針で妊婦さんのお腹を刺して羊水を採取すること)をしてチェックをする羊水検査も同様です。

まずは超音波エコーを使った検査でスクリーニングをして様子を見ます。以下の症状が出てきたら18トリソミー症候群(エドワード症候群)の可能性があると判定されます。

  • 羊水過多
  • 胎動不良
  • 胎児発育不全
  • 心臓の異常
  • 脳内嚢胞
  • 単一臍帯動脈

単一臍帯動脈とは、通常2本あるはずの臍帯動脈が1本しかないことです。診断されても、多くの場合はそのまま出産できますが、他の奇形があるので医師から詳しくお話を聞いてください。

超音波検査新型出生前診断(NIPT)を受検する際は、遺伝カウンセリングを受けてから血液検査をしたりして結果を待つことになります。

18トリソミー症候群の治療法

残念ながら根本的な治療法はありません。18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)によって引き起こされる合併症についての対症療法を行っていく形です。手術が必要だとしても、体が耐えられないなど症状によって治療ができない場合があります。そうした状況であれば、無理に治療をせず痛みを和らげるだけで終わりというケースは珍しくありません。

現在では、NICU(新生児集中治療)や心臓手術、食道閉鎖手術など医療の進歩により出生してすぐに亡くなるケースは減少しています。また、生存する限り、ゆっくりとした発達をしているので親子で何かしらの交流が可能です。

退院後、自宅で療養する場合は医療と福祉によるサポート体制の構築が必須です。病気によっては人工呼吸器を付けたまま過ごす赤ちゃんもいます。療育や訪問医療などの環境が地域や家族によって格差が生じているのも問題点としてあります。社会がどれだけ受け入れる環境を作れるのかがカギになるでしょう。

18トリソミー症候群が発症する確率

18トリソミー症候群が発症する確率については以下の表の通りです。参考としてダウン症候群を発症する確率も一緒に入れています。

母体年齢(出産時) 18トリソミー発生率 21トリソミー(ダウン症)発生率
20歳 1/10000 1/1441
25歳 1/8300 1/1383
30歳 1/7200 1/959
35歳 1/3600 1/338
36歳 1/2700 1/259
37歳 1/2000 1/201
38歳 1/1500 1/162
39歳 1/1000 1/113
40歳 1/740 1/84
41歳 1/530 1/69
42歳 1/400 1/52
43歳 1/300 1/37
44歳 1/250 1/38
45歳   1/30

ご覧のように年齢が上がれば上がるほど確率は高くなります。そうなる理由として先述したように18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)は、卵子が形成される際の減数分裂が失敗して起きるのが原因です。高齢出産になると卵子の質が落ちてしまい、染色体の異常が起きやすくなると考えられているためです。

こうした現実も考慮した上で生まれてくる赤ちゃんが正常なのかどうかを調べたいと希望される高齢出産の妊婦さんが増えてきており、新型出生前診断(NIPT)を受けた方は増加傾向です。

18トリソミー症候群で長生きした例

以前は、1歳まで生きることが困難だと言われていた18トリソミー症候群(エドワード症候群)ですが、最近では、NICU(新生児集中治療室)での標準的新生児集中治療、心臓手術、食道閉鎖手術などの積極的な治療によって生存率が高まってきています。現在では、1歳までどころか1年以上の生存例が 9%程度存在するとの報告もされているほどです。6か月まで生存することができた18トリソミーのお子さんでは10年生存率は60.0%にまで高まっているのを見ると以前と比べて全体的に寿命が延びているのは間違いありません。

中には20歳近くまで過ごしているお子さんもおられるほどです。他にも一例だけですが、20歳から24歳の間まで生きてきたお子さんもいらっしゃいます。

寿命が延びてきた理由としてはやはり出産直後の積極的な治療が大きいのですが、そのために早めに深刻な予後(生命、神経学的)を医療者と家族が共有し、新生児にとってより良いケアや治療を提供することが不可欠です。また、お子さんがご両親やご家族と何らかの交流をし続けていくと親は子育てに前向きになっていくようです。そのためゆっくりでも成長している姿を見続けるのが肝要といえます。

18トリソミー症候群と診断されたら

もしお腹の中にいる赤ちゃんが18トリソミー症候群(エドワード症候群)だったら中絶をするにしても出産をするにもしてご夫婦二人とも心の準備が必要です。気持ちが落ち着かないとご夫婦の判断に新型出生前診断(NIPT)で遺伝カウンセリングを実施している病院やクリニックであれば、遺伝子の専門家である臨床遺伝専門医によるカウンセリングが受けられるのでより状態を詳しく知ることができます。そのため難しい決断を迫られたときの一助になるでしょう。可能であれば、臨床遺伝専門医によるカウンセリングを受けた上で判断するのがいいかもしれません。

出産して無事に生きられたとしても医療以外にも福祉・社会の整備が不可欠です。なかなか一朝一夕ではいかないケースもありますけど、18トリソミー児の親御さんと家族を支援する「Team18」という団体が写真展を開催したりするなど支援の輪は少しずつ広がってきています。さまざまな思いを持った方同士での交流を通じて、懸命に生きているお子さんのことを社会全体で考える時期にきているのは間違いありません。そうした環境ができあがっているのも考慮して判断するのもいいかもしれません。

まとめ

妊婦さん

18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)について紹介をしてきました。現在は積極的な治療によって寿命が延びてきておりいえ、ご両親にとっては重い決断を迫られるのは間違いありません。NIPT(新型出生前診断)によって早めにわかるようになったからこそ医療側による「包み込むような支援」が提案できるのかが重要です。どういった判断をするにせよ気持ちの整理をしてから決定するようにしましょう。

東京の「ミネルバクリニック」は、遺伝子の専門家である臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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