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「結婚したら子どもが欲しい」そう思う夫婦がたくさんいるでしょうし、それが自然な感情だと思います。近年は晩婚化が進み、35歳以上の女性が初産となる「高齢出産」も珍しくありません。20代の若いときと比べて妊娠しづらくなっているため妊活が増加傾向です。 そうした背景もあるせいか「妊娠できなかったどうしよう」「妊娠しづらい体質だったらどうしよう」「妊娠しやすい体質って何?」と疑問に思う女性も多くいるようです。今回は「妊娠しやすい体質」「妊娠しづらい体質」についてご紹介するとともにセルフチェック表も男女別で作りました。妊活を始めているご夫婦に活用してもらえたら幸いです。
妊娠しやすい体の特徴
「妊娠しやすい体」というのは一言でいいますと、「卵子と精子が結合して受精卵になって着床する」一連の流れがスムーズにいくことです。「妊娠しづらい体」は一連の流れがどこがで止まってしまうことを指します。
例えば、女性の場合だと『排卵しにくい卵巣』『癒着して動きの悪い卵管』『内膜が薄くて着床しにくい子宮』といった体だと妊娠しづらい体質といえます。
男性側が原因だと射精がうまくいかない、精子の数が少ない、動きが悪いなど精子をつくる機能に障害があるのが主な原因です。 2017年の世界保健機関(WHO)の調査によると、不妊症のうち、男性のみに原因があるケースが24%、男女両方に原因がある場合が24%で、男性にも原因があるとされているので夫婦二人で取り組むのが妊活を成功させる大前提となります。
妊娠しづらくなる理由
妊娠しづらい体質になってしまったのには原因があります。どういった理由なのかを詳しく紹介します。
妊娠しづらい体質の女性
女性の場合、先天性、後天性含めて原因は多岐にわたります。例えば、卵巣の皮が厚くて排卵しにくい『多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣』、甲状腺ホルモン・女性ホルモンの異常、ストレスなどは「排卵しにくい」原因です。また、クラミジアなどの性感染症や子宮内膜症といった病気も原因となります。なぜなら、病気によっておなかの中で臓器同士がくっついて癒着が起きてしまい卵管が塞がってしまうからです。
子宮内の内膜ポリープや、おできのようなものができる『粘膜下筋腫』は、子宮への着床を邪魔してしまいますし、「黄体(おうたい)機能不全」だと子宮内膜が薄い状態のため着床できないので妊娠しづらくなります。 女性はデリケートなため妊娠しやすい体質だったのに引っ越し、転職といったライフイベントや海外旅行などの後も、自分で気付かないうちに体にストレスがかかり、『子孫を残す前にまずは自分の体を守ろう』と排卵をストップすることがあります。その場合は、ストレスの原因を取り除くと元に戻るケースが多いようです。
妊娠しづらい体質の男性
男性の場合、妊娠しづらい体質というよりも不妊症の原因となるケースがほとんどです。精巣(睾丸)で精子がつくられる過程に問題がある(造精機能障害)が82.4%となっているからです。因みに造精機能障害は以下の4つのどれか1つでも当てはまる場合です。
- ・精子数が少ない(精子減少症)
- ・運動率が悪い(精子無力症)
- ・精子減少+無力症
- ・精子がいない(無精子症)
造精障害の原因は下の表になります。この表は横浜市立大学付属・市民総合医療センターの湯村寧准教授が発表した「我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究2016」より引用したものです。
原因 | 所見 | 頻度 |
---|---|---|
1.特発性 | はっきりとした原因がない | 42.1% |
2.精索静脈瘤 | 精巣のまわりに静脈のこぶ(静脈瘤)ができる | 30.2% |
3.その他 | ・染色体・遺伝子異常 ・薬剤性 ・停留精巣 ・その他 | 7.8% |
セルフチェックで自分の体を知ろう
自分の体が「妊娠しやすい」「妊娠しにくい」のかどうかを知るのは妊活をする上でとても重要です。病院で検査を受けるのが確実ですけどご自分でも先にチェックできることがあるのでご紹介します。
女性編
以下の項目に該当するものがあるかどうかチェックしてみてください。当てはまるものが多ければ多いほど妊娠しづらい体になります。
- ・35歳以上である
- ・40歳以上である
- ・妊娠を望み1年以上夫婦生活を営んでいるが妊娠しない
- ・月経周期が安定していない
- ・生理痛は重いほうだ
- ・月経の量が少なくなったと感じる
- ・生理でもないのに出血がある
- ・乳首をつまむと白い液あるいはかす状のものが出ることがある
- ・排卵期におりものの量が増えないように感じる
- ・標準体重(BMI)数値が25以上もしくは18.5以下である *標準体重(BMI)=体重÷(身長×身長)
- ・おりものが多い、色が黄色い、また臭うことがある
- ・性器周辺にかゆみがある
- ・性器周辺が赤く腫れたり、水ぶくれができたりする
- ・性感染症(クラミジア、淋病、梅毒など)にかかったことがある
- ・子宮、卵巣の病気を患ったことがある
- ・子宮、卵管、卵巣の手術を受けたことがある
- ・月経痛が以前よりひどくなった、生理の量が増えた
- ・セックスの時に痛みがある
- ・喫煙の習慣がある、あるいはパートナーに喫煙習慣がある
- ・飲酒の習慣があり、酒量は多い方だ
- ・冷え性である
- ・夜更かし気味、または睡眠不足気味である
- ・食べ物に好き嫌いが多い方
- ・家事や仕事がきつく、いつも肉体的な疲労感が残る
- ・精神的ストレスがある
- ・異性に対して興味(性欲)を感じない
- ・メンタルケアを心療内科あるいは精神科で受けたことがある
項目が多いのは、精子と卵子を授精してから着床させる役割を担うのが女性だからです。卵子の質や数はもちろん、卵管や子宮内膜にも気をつけてないといけません。そのため生活習慣や性感染症にかかっていないかどうかまでチェックが必要です。
ただし、項目が多いからといって妊娠しにくい体だと決まったわけではありません。婦人科で検査を受けた結果を踏まえて妊活や不妊治療をどう進めていくのか決めていきましょう。
男性編
不妊症の原因の半分は男性です。女性だけではなく男性側も自分の体が妊娠しやすいのかしにくいのかを知っておかないと時間と費用の負担がかかってしまいます。
下にチェック項目がありますので自分は該当するかどうかを調べてみてください。
- ・子供の頃、耳下腺炎(おたふくかぜ)などで高熱を出したことがある
- ・成人してから高熱を出したことがある
- ・ノートブックパソコンを常に太ももの上に置いて使用する
- ・のどぼとけがない、女性のような乳房がある
- ・睾丸が小さい、あるいは1個しかないようだ
- ・睾丸、陰のうに違和感がある。大きさがおかしい
- ・スポーツや遊びで、睾丸を打撲したり、けがをしたことがある
- ・射精できない、射精しても量が少ない
- ・喫煙の習慣がある
- ・飲酒の習慣があり、酒量は多い方だ
- ・仕事が忙しく、疲労感が抜けない、ストレスが強い
- ・外食が多い
- ・食べ物の好き嫌いが多い
男性は女性ほどチェック項目は多くありませんが、女性同様に生活習慣とストレスによって精子が影響を受けます。セルフチェックだけではなく泌尿器科で精子検査を受けてみてご自分の体がどんな状態か知っておきましょう。
妊娠しやすい体作り
妊娠しやすい体にするためには女性も男性も生活習慣の見直しからスタートです。食生活や睡眠不足を減らすこと、ストレス解消などがあげられます。ここでは睡眠とストレス解消について紹介をします。
十分な睡眠がとれないと、体の疲れが取れないだけでなく、脳が休息できず、さまざまなホルモン分泌に影響を与えてしまいます。そのため十分な睡眠時間を確保しましょう。ただ、睡眠時間さえとればいつ寝ても同じではありません。睡眠は光の影響を受けるため「朝太陽の光とともに起き、暗くなったら眠る」ような生活がもっとも理想的です。しかし、現代社会ではそういった生活は不可能になるので朝起きたら窓を開け太陽の光を浴び、睡眠時は部屋を暗くしましょう。またスムーズに眠りにつけるよう就寝前には室内の照明を少し落とし、音楽を聴いたりゆったりくつろいでみるのも方法の一つです。
ストレス解消は仕事中とオフタイムでできることが違ってきます。それぞれ紹介しますので試してみてください。
- ・目を閉じて何も考えない
- ・呼吸に集中しながら深呼吸する
- ・ストレッチして身体を動かす(手足の力を抜く、背伸びをするなど)
- ・席を立って歩き回る
- ・飲み物や甘いものを口にする
1時間に数分でいいから小休止するのもおすすめです。脳が休まって気持ちがリフレッシュします。「目を閉じて何も考えない」というのは最初はハードルが高いかもしれません。もし難しいければ1から60までゆっくり数えるのから始めてください。
オフタイムでできるストレス解消方法は以下になります。
- ・心地よいと五感で感じることを楽しむ
- ・映画鑑賞や読書で泣いたり笑ったりする
- ・スポーツジムに行く
- ・創作・作業に没頭する
- ・日光浴をする
「五感(視・聴・嗅(きゅう)・味・触の五つの感覚)で感じるもの」は特におすすめです。視覚なら花や緑を眺める、聴覚なら音楽を聴く、嗅覚ならアロマを焚く、味覚ならおいしいものを食べる、触覚ならマッサージを受けるなどしてみてください。次の「泣いたり笑ったりする」は感情のアウトプットをするのが大切になります。自分の思い出から感情を出すのは、心にダメージを受けてしまうので避けた方が無難です。
「創作」は、モノをつくっていると“無”になれるので余計ことを考えずに過ごせるのがおすすめできる点です。自分の興味があるならば試してみてみてください。
そして日光を浴びると精神を安定に欠かせない脳内神経伝達物質のセロトニンが分泌されて気持ちが安定してくるので晴れた日はお散歩をしてみてください。また、日光を浴びると妊娠するために必要なビタミンDを体内に形成してくれるので妊娠しやすい体へと変化していきます。
妊活で必要な食生活については下の記事に詳細を記載していますのでご参照ください。
女性編
女性は注意する点は多いですが、食事や生活習慣については下の記事に詳しくまとめていますのでご覧ください。
妊活をするのに大切な栄養素である葉酸については下の記事をご覧ください。
男性編
男性が妊活でできることは上述したストレス解消以外にもたくさんあります。下記の記事に掲載していますのでご参照ください。
まとめ
妊娠しやすい体質になれない原因やなるための方法を詳しく紹介しました。女性は元々赤ちゃんを産む力が備わっているので先天性でなければ生活習慣の見直しや食生活で元の妊娠しやすい体へと戻っていきます。
タイミング法で不妊治療をしても妊娠できない場合は、ご自分の体が妊娠しにくくなっているかもしれません。しっかりと検査を受けて妊娠しやすい体質なのかどうかを知った上で体外受精・人工授精・顕微授精などの選択肢もあります。
男女ともに年齢を重ねていくと妊娠できる確率は低くなっていきます。子どもを授かるためにもご自分の体が妊娠しやすいのかしにくいのかを知ってから始めてみてください。