目次
生理前のおりものは、排卵期の透明でよく伸びるおりものから変わり、白〜クリーム色に濁って粘り気が強くなるのが一般的です。生理の直前には、古い血液が少し混じって茶色やピンク色になり、そのまま生理につながることもあります。においは、ヨーグルトのような酸っぱいにおいなら正常の範囲です。一方で、生臭いにおい、黄緑色や泡状のおりもの、強いかゆみ、生理と関係のない出血が続く場合は、婦人科を受診する目安になります。この記事では、生理周期とホルモンの働きからおりものが変わる仕組みを説明し、色や状態ごとの見分け方をまとめます。
Q. 生理前の茶色いおりものは、何日前から出るものですか?
A. 生理が始まる直前の数日間に出て、そのまま生理になることがあります。はがれ始めた子宮内膜から出た少量の血液が、時間がたって茶色く見えているもので、多くは心配いりません。日数に決まりはありませんが、毎周期2日以上続く場合や、生理と関係なく出る場合、性交後に出血する場合は、婦人科で相談してください。
- ➤生理前の特徴 → 白〜クリーム色で粘り気が強い。黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きによる変化
- ➤茶色・ピンク → 生理の直前なら古い血液が混じっていることが多い
- ➤におい → 酸っぱいのは正常。鉄のにおいは血液、生臭いにおいは腟炎のサインのことがある
- ➤妊娠との関係 → おりものだけでは判断できない。生理予定日の約1週間後に妊娠検査薬で確認
1. 生理前のおりものはどう変わる?色・量・粘り・におい
生理前のおりものは、「白く濁る」「粘り気が出る」「量は人によって増えたり減ったりする」「酸っぱいにおいを感じやすい」の4点が主な特徴です。おりもの(医学的には帯下〈たいげ〉)は、子宮の入り口にある子宮頸管から出る粘液に、腟の壁からしみ出る液や、はがれ落ちた細胞が混ざったものです。腟の中を酸性に保って細菌が増えるのを防ぐ働きと、排卵期には精子を子宮へ通しやすくする働きがあります。
日本産婦人科医会は、健康なおりものを「やや水様で白色を帯び、ヨーグルトのようなにおい」と説明しています[1]。この「ふだんの状態」が生理周期に合わせて少しずつ変わるため、生理前になると、いつもと違うように感じて不安になる方が少なくありません。まず、生理前によく見られる変化を、色・量・粘り・においに分けて見ていきます。
色:白〜クリーム色に濁る
排卵期のおりものは、卵白のように透明でよく伸びます。排卵が終わって黄体期に入ると、おりものは白〜クリーム色に濁った、不透明なものに変わります。下着についたあと乾くと、薄い黄色っぽいしみに見えることもあります。
色が変わるのは、頸管粘液の性質がホルモンで変わるためです。排卵の前はエストロゲン(卵胞ホルモン)が多く、粘液は水分が多く透明です。排卵後はプロゲステロン(黄体ホルモン)が増え、粘液は濃く、量が少なく、不透明になると説明されています[2][3]。はがれ落ちた腟の細胞が多く混ざることも、白く見える理由のひとつです。
生理の直前には、子宮内膜がはがれ始めることで少量の血液が混じり、ピンク色や茶色になることがあります。これについては第3章で詳しく説明します。
量:排卵期より減る人も、直前に増えたと感じる人もいる
1周期のうちでおりものが最も多いのは排卵期で、排卵が終わると量はいったん落ち着くのが一般的です。ところが「生理前におりものが増える」と感じる方も多く、検索でもよく調べられています。
量の感じ方に差が出る理由はいくつかあります。生理の直前には子宮内膜からの分泌物や血液が加わること、粘り気が強いおりものは下着に残りやすく「多い」と感じやすいこと、体質やホルモンの量に個人差があることなどです。反対に、生理前に「おりものが減った」「ほとんどない」と感じる方もいます。どちらも生理周期の範囲内の変化であることが多く、量だけで病気や妊娠を判断することはできません。妊娠との関係は第6章で説明します。
ただし、ナプキンが必要なほど水っぽいおりものが毎日続く、においや色の変化を伴う、という場合は別に考える必要があります(第5章)。
粘り:ドロッと・ネバネバ・塊になる理由
生理前のおりものは、ドロッとして伸びにくく、ときに鼻水のような塊や、ポロッとした白いかたまりになって出ることがあります。これはプロゲステロンが頸管粘液を濃くし、伸びにくくする働きによるものです[2]。排卵期の粘液が精子を通す「通り道」になるのに対し、黄体期の粘液は子宮の入り口をふさぐ「栓」のような性質に変わります。
かゆみや強いにおいがなく、白〜クリーム色で、生理が来ると元に戻るのであれば、生理前の正常な変化と考えてよいことがほとんどです。一方、酒粕やカッテージチーズのようなボロボロした塊に強いかゆみを伴う場合は、カンジダ腟炎の可能性があります(第5章)。
💡 用語解説:頸管粘液(けいかんねんえき)
子宮の入り口にあたる子宮頸管の細胞が出す粘液のことで、おりものの主な成分です。エストロゲンが多い排卵前は水分が多く透明で、糸を引くほどよく伸び、精子が子宮へ進みやすい状態になります。排卵後にプロゲステロンが増えると、量が減って濃くなり、伸びにくくなります。生理前のおりものが白く粘るのは、この性質の切り替わりによるものです。
におい:酸っぱいにおいは正常の範囲
ヨーグルトや酢のような酸っぱいにおいは、健康な腟の状態を表すにおいです。腟の中には乳酸桿菌(にゅうさんかんきん:ラクトバチルス)という細菌が多く住んでいて、乳酸を作って腟の中を酸性に保っています。健康な腟内はpH4.5未満の酸性とされ[4]、乳酸桿菌が優位な女性で実際に測定すると、平均pH3.5前後、乳酸の濃度は約1%だったという報告もあります[5]。この乳酸が、酸っぱいにおいのもとです。
生理前は、おりものの量や粘り気の変化で、においを強く感じることがあります。においの感じ方には個人差があり、「少し強くなった」程度であれば心配いりません。においの原因と、受診したほうがよいにおいについては、第4章で詳しく説明します。
2. 生理前のおりものはいつから変わる?生理周期4つの時期
生理前のおりものの変化は、排卵が終わった直後、つまり次の生理のおよそ2週間前から始まります。生理周期を、生理が終わってから排卵までの卵胞期、排卵期、排卵後から生理までの黄体期、生理直前の4つに分けると、おりものの変化が理解しやすくなります。
卵胞期・排卵期・黄体期・生理直前のおりもの
卵胞期は、生理が終わってから排卵までの時期です。生理直後のおりものは量が少なく、サラッとしています。生理の出血が少し残って、茶色っぽいおりものが出ることもありますが、数日でおさまれば心配いりません。排卵に近づくにつれて量が増えていきます。
排卵期は、卵巣から卵子が出る前後の数日間です。おりものは1周期で最も多くなり、透明で、指でつまむと糸を引くほどよく伸びます。においはほとんどありません。妊娠を考えている方にとっては、この変化が排卵日の目安になります。排卵期のおりものの見分け方は「排卵日のおりもの」で詳しく解説しています。
黄体期は、排卵後から次の生理までの約2週間です。卵巣に残った黄体からプロゲステロンが分泌され、子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整えます。おりものは白く濁って粘り、量は排卵期より落ち着きます。プロゲステロンには体温を上げる作用もあるため、この時期は基礎体温が高温期になります。生理前の基礎体温の変化は「生理前の基礎体温はいつ頃から変化するの?」で解説しています。
生理直前は、妊娠が成立しなかったことでプロゲステロンが急に減り、子宮内膜がはがれる準備に入る時期です。少量の血液が混じって、おりものがピンク色や茶色になることがあります。
ホルモンで見る仕組み(エストロゲンとプロゲステロン)
おりものの変化を動かしているのは、主に2つの女性ホルモンです。エストロゲンは排卵の前に増え、頸管粘液の弾力やたんぱく質の組成を変えて、精子が通りやすい細い通り道をつくります。プロゲステロンは排卵後に増え、粘液を濃くして伸びにくくし、精子が通りにくい状態にします[2]。
このように、排卵の前後で粘液の性質が正反対に切り替わることが、「透明でよく伸びる」から「白く濁って粘る」への変化の正体です。排卵後はプロゲステロンの影響で頸管粘液の粘稠度が高まり、排卵期と比べて精子が通過しにくい性状になります。
ただし、おりものの変化には個人差があり、毎周期同じように変わるとは限りません。ストレスや睡眠不足、体重の変化、ピルなどのホルモン剤の使用でも変わります。生理周期を通じて自分のおりもののパターンを何周期か見ておくと、いつもと違う変化に気づきやすくなります。
3. 生理前の茶色・ピンクのおりものは何日前から?
生理前の茶色いおりものは、生理が始まる直前の数日間に出て、そのまま生理につながることがあります。何日前から出るという決まった日数はなく、前日から出る人もいれば、数日前から少しずつ出る人もいます。多くは、はがれ始めた子宮内膜から出た少量の血液が混じったもので、心配いりません。
生理の直前に茶色くなるのはなぜ
血液が赤く見えるのは、赤血球中のヘモグロビンによるものです。出血した血液が子宮や腟の中にしばらくとどまると、ヘモグロビンの酸化や分解が進み、赤から茶色、こげ茶色へと見え方が変わっていきます。少量の出血がおりものに混じって、時間がたってから外に出てくると、真っ赤ではなく茶色に見えるのはこのためです。
量がごく少なく、新しい血液が少し混じっただけの場合は、ピンク色に見えます。生理の直前にピンク色や茶色のおりものが出て、その後ふつうの生理が始まるのであれば、生理の始まりの一部と考えてよいでしょう。生理の終わりごろに茶色いおりものが数日続くのも、同じ理由です。
生理前の茶色い出血が毎回2日以上続くとき
一方で、生理の前に茶色い出血(少量の不正出血)が毎周期のように何日も続く場合は、少し注意が必要です。不妊症の女性を対象にした研究では、生理前の少量出血が2日以上ある人は、子宮内膜症が確認される割合が89%で、ない人の26%より高かったと報告されています[6]。
この研究は不妊症で検査を受けた女性を対象にしたもので、生理前の茶色いおりものがある人の多くが子宮内膜症という意味ではありません。それでも、毎周期2日以上続く、生理痛が年々強くなっている、妊娠しにくいといった状況が重なる場合は、婦人科で相談するきっかけにしてください。子宮内膜症については「子宮内膜症の症状とメカニズム」で解説しています。
着床出血・妊娠初期の出血との違い
生理予定日の前後に出る茶色やピンクの少量出血には、妊娠の初期に起こる「着床出血」が含まれていることもあります。着床出血は、受精卵が子宮内膜にもぐりこむときに起こるとされる少量の出血で、生理予定日のころに重なることが多く、見た目だけでは生理前の茶色いおりものと区別がつきません。
見分けるときは、そのあとにふつうの量の生理が来るかどうかが手がかりになります。茶色いおりもののあと生理が来ない、量が少ないまま終わった、という場合は、生理予定日の約1週間後に妊娠検査薬で確認してください。着床出血の時期や特徴は「着床出血はいつ?生理との違い」で詳しく解説しています。
生理と関係なく茶色いおりものが続くとき
生理の前後以外の時期に茶色やピンクのおりものが続く場合や、性交のあとに出血する場合は、子宮の入り口や子宮の中から出血していることがあります。原因としては、子宮頸管ポリープ、子宮腟部びらん、子宮頸がん、子宮体がん、ホルモンバランスの乱れなどが考えられます。
たとえば子宮頸管ポリープは、子宮の入り口にできるやわらかい良性のできもので、女性の2〜5%に見られます。約3分の2は症状がありませんが、性交後の出血や、生理以外の出血、おりものの増加の原因になることがあります。ほとんどは良性ですが、0.1〜0.2%に悪性が見つかるとされ、取り除いたポリープは病理検査で確認します[7]。詳しくは「子宮ポリープ」で解説しています。
生理以外の出血がどのくらい続いたら受診すべきかについては、「不正出血はどのくらい続いたら病院へ行くべき?」もあわせてご覧ください。
4. 生理前のおりものの匂い|酸っぱい・鉄の匂い・生臭い
おりもののにおいは、腟の中の細菌のバランスと、血液が混じっているかどうかで変わります。酸っぱいにおいは乳酸桿菌が優位な酸性環境でみられることがあり、鉄のようなにおいは血液が混じったとき、生臭いにおいは細菌性腟症などでみられることがあります。ただし、においだけで原因を確定することはできません。
おりものが鉄の匂いになるのはなぜ
おりものが鉄のような、金属っぽいにおいになるのは、血液が少し混じっているためです。血液に由来する揮発性成分などによって、金属様のにおいとして感じられることがあります。生理の直前や終わりごろは、目で見て色がつかないほど少ない血液でも、においで気づくことがあります。
生理の前後に鉄のにおいがして、生理が来れば元に戻るのであれば、心配はいりません。一方、生理と関係のない時期に、ピンク色や茶色のおりものと一緒に鉄のにおいが続く場合は、第3章で説明した不正出血の原因が隠れていることがあるため、婦人科を受診してください。
生理前に匂いが強くなる理由
生理前から生理中にかけて、においが気になりやすくなるのには理由があります。血液はpH7.4前後の弱アルカリ性で、腟の中の酸性に比べるとかなり中性寄りです。経血や少量の血液が腟に入ると、腟の中のpHが上がり、乳酸桿菌が働きにくく、ほかの細菌が増えやすい環境になります。
実際に、毎日の腟内細菌を調べた研究では、月経中に乳酸桿菌の優位性が一時的にくずれ、細菌性腟症に関わるガードネレラなどの細菌が増える変化が繰り返し観察されています。多くの人では生理が終わると元の状態に戻りますが、そのまま戻らない人もいたと報告されています[8]。生理の前後ににおいが強くなりやすいのは、こうした細菌のバランスの揺れによるものです。
💡 用語解説:乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)と腟内pH
乳酸桿菌は、腟の中に多く住んでいる善玉菌です。腟の細胞に蓄えられた糖を分解して乳酸を作り、腟の中をpH4.5未満の酸性に保ちます。酸性の環境では、病気の原因になる細菌が増えにくくなります。腟の中を洗いすぎたり、抗菌薬を使ったり、経血でpHが上がったりすると、乳酸桿菌が減ってバランスがくずれ、においやかゆみの原因になります。
受診したい匂い(生臭い・腐ったような)
魚のような生臭いにおいは、細菌性腟症の特徴です。細菌性腟症は、乳酸桿菌が減って、ほかの細菌が増えすぎた状態です。米国疾病予防管理センター(CDC)の診療指針では、診断の目安として、腟の壁を薄くおおう乳白色の均一なおりもの、pHが4.5を超えること、魚のようなにおい、顕微鏡で特徴的な細胞が見られることの4項目を挙げ、このうち3つ以上がそろうと細菌性腟症と判断します[9]。生理の直後や性交のあとに、においが強くなりやすいのも特徴です。
黄緑色で泡立つような、強いにおいのおりものは、トリコモナス腟炎の可能性があります。トリコモナス腟炎は性感染症のひとつで、CDCは、においの強い黄緑色のおりものが出ることがある一方、感染している人の70〜85%は症状がほとんどないか、まったくないとしています[10]。症状が軽くてもパートナーと一緒に治療する必要があるため、においと色の変化に気づいたら婦人科を受診してください。
腐ったような強いにおいがする場合は、腟の中にタンポンなどの異物が残っていることや、子宮の病気が原因のこともあります。生臭いにおいや腐ったようなにおいは、市販のケア用品でごまかさず、婦人科で原因を確かめることが大切です。
🩺 院長コラム【においには理由がある】
おりもののにおいは、とても話しにくい悩みです。ただ、酸っぱいにおいは乳酸、鉄のにおいは血液、生臭いにおいは細菌のバランスの変化というように、においの多くには体の中で起きていることに対応した理由があります。理由がわかると、必要以上に怖がらずに済むと考えています。
反対に、においを消そうとして腟の中まで洗ったり、香りの強い製品を使ったりすると、乳酸桿菌が減ってかえってにおいが強くなることがあります。においが気になるときは、隠す方向ではなく、なぜそのにおいなのかを確かめる方向で考えることが大切だと考えています。
5. 色・状態別:生理前のおりものの見分け方
生理前のおりものは、白〜クリーム色で粘り気があり、においが軽く、かゆみがなければ、正常の範囲であることがほとんどです。色や状態ごとの目安を表にまとめました。
🩺 生理前のおりもの 色・状態別の目安
| 色・状態 | 考えられること | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 白〜クリーム色・粘る | 黄体期の正常な変化 | かゆみ・強いにおいがなければ不要 |
| 茶色・ピンク(生理直前) | 少量の古い血液が混じっている | 生理につながれば不要。毎周期2日以上続くなら相談 |
| 薄い黄色(下着のしみ) | 白いおりものが乾いて黄色っぽく見える | においやかゆみがなければ不要 |
| 黄色〜黄緑色・泡状・悪臭 | トリコモナス腟炎、細菌感染 | 受診 |
| 灰白色・薄い・生臭い | 細菌性腟症 | 受診 |
| 酒粕・カッテージチーズ状・強いかゆみ | カンジダ腟炎 | 受診 |
| 水っぽく量がとても多い | 子宮腟部びらん、感染症など | 続く場合や出血を伴う場合は受診 |
| 黒っぽい茶色が生理と関係なく続く | 不正出血(ポリープ、がんなど) | 受診 |
※目安であり、おりものの見た目だけで病気を確定することはできません。
黄色・黄緑色・泡状のおりもの
生理前の白いおりものが下着について乾くと、薄い黄色っぽく見えることがあります。においやかゆみがなく、色が薄い黄色にとどまるのであれば、多くは正常な変化です。
一方、はっきりした黄色〜黄緑色で、泡立つ、膿のように濃い、においが強いといった場合は、感染症のサインのことがあります。日本産婦人科医会も、嫌なにおい、黄色っぽい色、泡状、膿状のおりもので、かゆみや痛みを伴う場合は腟炎の可能性があるとしています[1]。トリコモナス腟炎のほか、クラミジアや淋菌などの性感染症でおりものが増えたり色が変わったりすることがあり、放っておくと炎症が子宮や卵管へ広がることもあります。
水っぽいおりもの・量がとても多いとき
生理前のおりものは粘り気が強いのが一般的ですが、水っぽいおりものが出ることもあります。排卵が遅れた周期や、ホルモンの変動が大きい周期では、生理前でも排卵期のような水っぽいおりものが出ることがあり、それだけでは異常ではありません。
においの変化がなく、量だけが多い状態が続く場合に考えられるのが、子宮腟部びらんです。名前から病気のように聞こえますが、子宮頸管の内側をおおう粘液を出す細胞が、子宮の入り口の外側まで広がって見えている状態で、性成熟期の女性に見られる正常な範囲のものとされています。症状で最も多いのはおりものの増加で、性交後の出血が5〜25%に見られます。症状が日常生活に影響しなければ、治療は必要ありません[11]。
ただし、水っぽいおりものがナプキンが必要なほど毎日続く、においや出血を伴う、という場合は、細菌性腟症などの感染症や、子宮の病気がないか確かめるために受診してください。子宮筋腫や子宮体がんなどでも、おりものが増えることがあります。詳しくは「子宮筋腫」「子宮体がん」で解説しています。
💡 用語解説:子宮腟部びらん(しきゅうちつぶびらん)
子宮の入り口(子宮腟部)が赤くただれたように見える状態のことです。実際には傷やただれではなく、子宮頸管の内側にある粘液を出す細胞が外側に広がって見えているだけで、性成熟期の女性ではよく見られる正常な範囲の状態です。粘液を出す細胞が外から見える面積が広いため、おりものが多くなったり、性交で出血しやすくなったりします。
白い塊・酒粕状でかゆいとき
生理前の白いおりものが塊になって出ること自体は珍しくありません。注意したいのは、酒粕やカッテージチーズのようにボロボロした白いおりものに、強いかゆみや外陰部のヒリヒリ感を伴う場合で、カンジダ腟炎の可能性があります。カンジダは、もともと腟の中にいることのある真菌(カビ)の一種で、増えすぎると症状が出ます。
CDCは、外陰部のかゆみ、腟の痛み、性交痛、排尿時の外陰部の痛み、異常なおりものをカンジダ腟炎の典型的な症状として挙げ、女性の約75%が一生に一度は経験するとしています。細菌性腟症やトリコモナス腟炎と違い、腟内のpHは正常範囲(4.5未満)であることが多いのも特徴です[4]。疲れや抗菌薬の服用、妊娠、糖尿病などで起こりやすくなります。
市販のカンジダ治療薬は、過去に医師からカンジダ腟炎と診断・治療を受けたことがある人の再発に限って使えるもので、初めての症状の場合はまず医師の診断を受けるよう定められています[12]。初めてかゆみが出たときや、市販薬で治らないときは婦人科を受診してください。
黒っぽい茶色が続くとき
生理の直前や終わりごろに黒っぽい茶色のおりものが出るのは、古い血液によるもので、多くは心配いりません。ただし、黒っぽい茶色のおりものが生理と関係なく続く場合は、子宮頸がんや子宮体がん、ポリープなどによる出血の可能性があります。子宮頸がんは初期にはほとんど症状がなく、進むと不正出血や性交後の出血、おりものの異常があらわれることがあります。
6. 生理前と妊娠初期のおりものの違い
生理前と妊娠初期のおりものは、見た目がよく似ていて、おりものだけで妊娠かどうかを見分けることはできません。どちらも排卵後にプロゲステロンが増えている時期のおりもので、変化の向きが同じだからです。
生理前と妊娠初期のおりものの比較
🩺 生理前と妊娠初期のおりもの
| 項目 | 生理前 | 妊娠初期 |
|---|---|---|
| ホルモン | プロゲステロンが生理前に急に減る | エストロゲン・プロゲステロンが高いまま続く |
| 量 | 排卵期より落ち着く(直前に増えたと感じる人も) | 増えると感じる人が多いが個人差がある |
| 色・性状 | 白〜クリーム色、粘る | 白〜クリーム色、水っぽいと感じる人も |
| その後 | 数日以内に生理が来る | 生理が来ない |
※個人差が大きく、おりものだけで妊娠かどうかを判断することはできません。
妊娠が成立すると、エストロゲンとプロゲステロンが高いまま保たれ、生理前のように急に下がることがありません。そのため、生理予定日を過ぎてもおりものが続いたり、量が増えたと感じたりする人がいます。ただし、この変化は人によって差が大きく、量が変わらない人も、むしろ減ったと感じる人もいます。妊娠超初期のおりものの特徴については「妊娠超初期のおりものはどんな状態?」で詳しく解説しています。
生理前におりものが減った・ない=妊娠?
「生理前におりものが減った」「ほとんど出ない」ことを、妊娠のサインではないかと考える方もいますが、おりものの量の増減で妊娠の可能性を判断することはできません。黄体期はもともとおりものの量が落ち着く時期で、生理前に減ったと感じるのは、妊娠していない場合でもよくあることです。反対に、増えたからといって妊娠しているとは限りません。
妊娠の初期には、おりものの変化のほかに、基礎体温の高温期が続く、胸が張る、眠い、だるいといった変化が出ることがありますが、これらも生理前の症状とよく似ていて、決め手にはなりません。妊娠超初期の症状については「妊娠超初期の症状」で解説しています。
確かめるのは生理予定日の約1週間後の妊娠検査薬
妊娠しているかどうかを確かめるには、妊娠検査薬を使うのが確実な方法です。ドラッグストアで買える一般的な妊娠検査薬は第2類医薬品で、生理予定日のおおむね1週間後から検査できるとされています[13]。それより早く使うと、妊娠していても陰性になることがあります。
生理が遅れているときに何日目で検査すればよいかは、「生理3日・1週間遅れは妊娠?検査の目安」で解説しています。妊娠検査薬で陽性になった場合は、正常な位置に妊娠しているかを確かめるために、産婦人科を受診してください。
7. 婦人科を受診する目安
生理前のおりものの変化の多くは、生理周期による正常な変化です。ただし、次のような場合は、周期の変化だけでは説明しにくく、婦人科で原因を確かめることをおすすめします。
⚠️ 婦人科を受診したいおりもののサイン
・生理と関係なく、茶色やピンクのおりもの、出血が続く
・性交のあとに出血する
・生臭いにおい、腐ったような強いにおいがする
・黄緑色、泡状、膿のよう、酒粕状など、いつもと明らかに違う
・強いかゆみ、ヒリヒリ感、排尿時の痛みがある
・下腹部の痛みや発熱を伴う
・生理前の茶色い出血が毎周期2日以上続く
婦人科では、おりものの状態を確認し、必要に応じて腟内pH、顕微鏡検査、細菌や性感染症の検査などを行い、原因に合わせて治療します。生理中でも受診はできますが、おりものの検査をしたい場合は、生理が終わってからのほうが正確に調べられることがあります。受診のときは、いつから、どんな色やにおいのおりものが出ているか、生理周期のどのタイミングか、かゆみや痛みがあるかをメモしておくと、診察がスムーズです。
症状がなくても子宮頸がん検診を
子宮頸がんは、初期にはほとんど症状がありません。おりものの異常や不正出血が出たときには進んでいることもあるため、症状がないうちに見つけるための検診が大切です。
国の指針にもとづく子宮頸がん検診では、20歳以上の女性は2年に1回、細胞診(子宮頸部の細胞を採って顕微鏡で調べる検査)を受けることが勧められています。また、30〜60歳では、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を調べるHPV検査単独法を取り入れている自治体もあり、この場合、陰性なら5年に1回の受診となります[14]。お住まいの自治体の方法を確認し、定期的に受けてください。そのうえで、気になる症状があるときは、検診の時期を待たずに婦人科を受診しましょう。子宮頸がんについては「子宮頸がんは予防・発見しやすいがん」で詳しく解説しています。
🩺 院長コラム【おりものは「怖がる」より「比べる」】
おりものは、生理周期に合わせて色も量もにおいも変わります。1回見ただけで判断するより、ふだんの自分のパターンと比べることが大切だと考えています。生理の直前の茶色いおりものや、少し強くなる酸っぱいにおいは、多くの場合この周期の範囲に入ります。
一方で、生理と関係なく続く出血、生臭いにおい、強いかゆみ、性交後の出血は、周期の変化では説明しにくいサインです。こうしたときは様子を見続けずに婦人科で確かめること、そして症状がなくても子宮頸がん検診を定期的に受けることが、自分の体を守るうえで欠かせないと考えています。
生理前のデリケートゾーンのケア
生理前は、おりものの量や粘り気が増えたと感じやすく、蒸れやにおいが気になる時期です。ケアの基本は、腟の中の乳酸桿菌を減らさないことです。
外陰部は、ぬるま湯や低刺激の石けんでやさしく洗い、強くこすらないようにします。腟の中まで洗う、ビデを頻繁に使う、香りの強い製品を使うといったことは、乳酸桿菌を減らして、かえってにおいや腟炎の原因になることがあります。おりものシートを使う場合は、こまめに取り替えて蒸れを防ぎます。下着は通気性のよい綿などの素材を選び、締めつけの強い服を長時間着るのは避けましょう。
ケアをしてもにおいやかゆみが続く場合は、ケアの不足ではなく、腟炎などの病気が原因のことがあります。その場合は、ケア用品を増やすのではなく、婦人科で原因を確かめてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 生理前の茶色いおりものは何日前から出る?
生理が始まる直前の数日間に出て、そのまま生理になることがあります。何日前からという決まった日数はありません。多くは少量の血液が混じったもので心配いりませんが、毎周期2日以上続く場合、生理と関係なく出る場合、性交後に出血する場合は、婦人科で相談してください。
Q2. おりものが鉄の匂いがするのはなぜ?
血液が少し混じっているためです。血液のヘモグロビンに含まれる鉄が、鉄さびのようなにおいとして感じられます。生理の直前や終わりごろなら多くは心配いりませんが、生理と関係なく、ピンク色や茶色のおりものと鉄のにおいが続く場合は、婦人科を受診してください。
Q3. 生理前はおりものの匂いが強くなる?
強く感じることがあります。おりものの量や粘り気の変化に加え、生理の前後は少量の血液で腟の中のpHが上がり、細菌のバランスが揺れやすいためです。ヨーグルトのような酸っぱいにおいなら正常の範囲です。生臭いにおい、腐ったようなにおい、かゆみを伴う場合は、腟炎の可能性があるため婦人科を受診してください。
Q4. 生理前のおりものが黄色いのは異常?
白いおりものが下着について乾くと、薄い黄色に見えることがあり、においやかゆみがなければ多くは正常です。はっきりした黄色〜黄緑色で、泡状、膿のよう、においが強い、かゆみや痛みがある場合は、トリコモナス腟炎などの感染症の可能性があるため受診してください。
Q5. 生理前に水っぽいおりものが増えるのはなぜ?
生理の直前に子宮内膜からの分泌物が加わることや、ホルモンの変動で排卵期のような水っぽいおりものが出ることがあります。においや色の変化がなければ多くは心配いりません。毎日ナプキンが必要なほど続く、においや出血を伴う場合は、感染症や子宮の病気がないか婦人科で確かめてください。
Q6. 生理前におりものが減ったら妊娠の可能性がある?
おりものの量で妊娠の可能性を判断することはできません。黄体期はもともとおりものの量が落ち着く時期で、妊娠していなくても減ったと感じることはよくあります。妊娠しているかどうかは、生理予定日のおおむね1週間後に妊娠検査薬で確認してください。
Q7. 生理前と妊娠初期のおりものは見分けられる?
おりものだけで見分けることはできません。どちらもプロゲステロンが増えている時期のおりもので、白〜クリーム色で粘り気があるなど、よく似ています。妊娠初期は量が増えたと感じる人もいますが個人差が大きいため、生理予定日の約1週間後に妊娠検査薬で確認してください。
まとめ:生理前のおりものは周期で変わる
生理前のおりものは、排卵後に増えるプロゲステロンの働きで、白〜クリーム色に濁り、粘り気が強くなるのが一般的です[2]。生理の直前には少量の血液が混じって、茶色やピンク色になり、そのまま生理につながることがあります。酸っぱいにおいは乳酸桿菌による正常なにおい、鉄のにおいは血液が混じったサインです。
一方で、生臭いにおい、黄緑色や泡状、酒粕状のおりもの、強いかゆみ、生理と関係のない出血、性交後の出血は、婦人科を受診する目安です。また、おりものの量や色で妊娠かどうかを見分けることはできないため、生理予定日の約1週間後に妊娠検査薬で確認してください。ふだんの自分のおりもののパターンを知っておくことが、いつもと違う変化に早く気づくための基本になります。
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参考文献
- [1] 公益社団法人 日本産婦人科医会. おりものについて教えてもらえますか?(思春期のQ&A) [日本産婦人科医会]
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