目次
妊活の食事で大切なのは、「これを食べれば妊娠しやすくなる」という特定の食べ物を探すことではなく、食事全体の質と体重を整え、葉酸を補い、妊娠に影響しうるものを減らすことです。特定の食品や栄養素で妊娠率が上がることは、介入試験では確かめられていません[1]。一方で、主食・主菜・副菜のそろった食事、植物性たんぱく質や魚をうまく使う食べ方、適正体重の維持は、妊娠前の体づくりとして勧められています。葉酸は「妊娠しやすくするため」ではなく、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを下げるために、妊娠を考えた時点から1日400μgをサプリメントなどで補うものです。この記事では、妊活にいい食べ物の考え方、摂りたい栄養素、避けたい食べ物と飲み物、男性の食事までを、研究とガイドラインをもとに整理します。
Q. 妊活中は何を食べればいいですか?
A. 特定の「妊娠しやすい食べ物」はありません。精製度の低い主食、魚・大豆・卵・乳製品を組み合わせた主菜、野菜の副菜をそろえ、適正体重を保つことが基本です。そのうえで葉酸を1日400μg補い、アルコール、カフェインの摂りすぎ、水銀の多い大型魚、生ハムなどの加熱していない食品、レバーやサプリによるビタミンAの摂りすぎを避けます。
- ➤食事全体 → 主食・主菜・副菜をそろえ、トランス脂肪酸や甘い飲み物を減らす
- ➤摂りたい栄養素 → 葉酸・鉄・ビタミンD・たんぱく質・亜鉛(不足を避ける)
- ➤避けたいもの → アルコール、カフェインの摂りすぎ、大型魚、加熱不足の食品、ビタミンAの過剰
- ➤男性 → 肥満・飲酒・喫煙の見直しが先。亜鉛や抗酸化サプリの効果は確認されていない
1. 妊活の食事で大切なこと|まず結論
妊活の食事は、「足りないものを補い、多すぎるものを減らし、体重を整える」という3つの考え方でとらえると整理しやすくなります。妊娠のしやすさには、年齢、排卵や卵管の状態、精子の状態など多くの要因が関わっていて、食事はその一部にすぎません。それでも、妊娠前の栄養状態は妊娠初期の赤ちゃんの発育に直接関わるため、妊娠がわかってから整えるのでは間に合わない部分があります。厚生労働省の「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」が、最初の項目に「妊娠前から、バランスのよい食事をしっかりとりましょう」を掲げているのはそのためです[2]。
「これを食べれば妊娠しやすい」食べ物はない
妊活で妊娠しやすい食べ物は?という質問に対しては、「特定の食べ物で妊娠率が上がることは確認されていない」というのが現時点での答えです。米国生殖医学会(ASRM)は、自然妊娠の可能性を高めるための見解の中で、排卵障害のない女性について、食事の違いが妊孕性(妊娠する力)を改善するという証拠は乏しいとしています。そのうえで、健康的な食事と生活習慣は全身の健康のために勧められる、という位置づけを示しています[1]。
食事と妊娠の関係を調べた研究の多くは、食事の内容を質問票で調べ、その後の妊娠や不妊治療の結果との関連をみる観察研究です[3]。観察研究では、ある食事をしている人に妊娠が多かったとしても、その人たちは体重や運動習慣、年齢など別の条件にも違いがあることが多く、食事そのものが妊娠を増やしたとは言い切れません。「相関」と「因果」は別のものです。
ざくろ、アボカド、ナッツ、豆乳などが「妊娠しやすい食べ物」として紹介されることがありますが、食べることで妊娠率が上がることを示した研究はありません。特定の食品に偏るより、食事全体を整えるほうが必要な栄養素を無理なくそろえられます。
食事を見直すのは妊娠を考え始めたときから
食事の見直しは、妊娠を考え始めた時点から始めるのが理想です。理由は2つあります。1つは葉酸です。赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる神経管は、妊娠のごく初期、多くの人がまだ妊娠に気づいていない時期に形づくられます。そのため、葉酸は妊娠の1か月以上前から補うことが勧められています[4]。
もう1つは精子です。精子は精巣の中で、もとになる細胞から段階を踏んで長い時間をかけてつくられます。放射性の目印を使って精子形成の期間を推定した古典的な研究では、およそ64日とされました[5]。その後の文献では74日前後とする記載もあり、推定値には幅があります。いずれにしても、今日の食事や生活習慣の変化が精液の状態に反映されるまでには、少なくとも2か月あまりかかると考えておくのが自然です。
ただし、「3か月続ければ卵子や精子の質が変わる」とは言えません。無理なく長く続けられる形で進めることが現実的です。
何を食べるかより先に適正体重
妊活の食事では、個々の食品よりも先に、体重(BMI)が適正な範囲にあるかを確認することが大切です。BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値で、日本では18.5未満が「やせ」、25以上が「肥満」とされています。ASRMは、極端にやせている女性と肥満の女性のどちらでも妊孕性が低下すると述べています[1]。
やせすぎの状態では、体がエネルギー不足を感じて排卵に関わるホルモンの分泌が乱れ、月経不順や無排卵につながることがあります。反対に肥満では、インスリンの効きが悪くなることなどを通じて排卵が起こりにくくなることがあり、ASRMの肥満と生殖に関する見解では、男性の肥満も精液の状態に影響しうることが示されています[6]。日本の若い女性では、肥満よりも「やせ」が多いことが課題とされており、食生活指針も妊娠前からの適正体重の維持を重視しています[2]。
体重を落とそうとして食事量を極端に減らすと、たんぱく質や鉄、葉酸などが不足しやすくなります。体重の調整が必要な場合も、食事の質を保ちながら、運動と組み合わせて少しずつ進めることが勧められます。BMIはあくまで目安で、個人の妊娠のしやすさをBMIだけで判断することはできません。
2. 妊活にいい食べ物は?食事全体で考える
妊活に効果のある食べ物は?という疑問には、「単品ではなく、食事全体の組み立てで考える」と答えるのが研究の流れに沿った答え方です。ここでは、研究で比較的よく調べられている食事のパターン、主食、たんぱく質、脂質の4つの観点から、妊活中の食事の組み立て方を説明します。いずれの研究も観察研究が中心で、「この食べ方で妊娠率が上がる」と断定できるものではない点を前提にしてください。
地中海食型の食事と妊娠の研究
地中海食型の食事と妊娠の関係については、関連を示す研究と示さない研究があり、結果は一致していません。ギリシャで初めて体外受精を受けた肥満のない女性244人を調べた研究では、地中海食への近さを点数化し、点数が最も高い群と最も低い群を比べると、臨床妊娠率は50%と29%、出生率は48.8%と26.6%でした。ただし、関連がみられたのは35歳未満の女性に限られていました[7]。
一方、イタリアで体外受精などの生殖補助医療を受けた女性474人を調べた研究では、地中海食の点数と治療の成績に明らかな関連はみられませんでした[8]。対象となった人の年齢や体格、国ごとの食習慣の違いなどが、結果の違いに影響している可能性があります。
米国の看護師を対象とした大規模な追跡研究(Nurses’ Health Study II)では、植物性たんぱく質や質のよい脂質、食物繊維の多い炭水化物、適正体重、運動習慣など、排卵障害による不妊のリスクが低い要因を多く満たす女性ほど、そのリスクが低いという関連が報告されています[9]。これらをまとめると、野菜・果物・豆類・魚・全粒穀物・オリーブ油などの植物性の油を中心にした食べ方は、妊娠のためだけでなく全身の健康のために勧められる食事と重なる、と理解するのが妥当です。
💡 用語解説:地中海食(Mediterranean diet)
地中海沿岸の国々の伝統的な食べ方をもとにした食事パターンで、野菜・果物・豆類・全粒穀物・魚・ナッツ・オリーブ油を多くとり、赤身肉や加工肉、甘い菓子を控えるのが特徴です。研究では、食事内容を質問票で調べて点数化し、その点数と健康の指標との関連を調べます。和食に置き換えると、ごはんに魚や大豆製品の主菜、野菜の副菜を組み合わせた食事に近い考え方です。
主食は精製度の低い穀物を(玄米)
主食は、白米だけでなく玄米や雑穀、全粒粉のパンなど精製度の低い穀物を取り入れると、ビタミンやミネラル、食物繊維を補いやすくなります。日本食品標準成分表(八訂)によると、炊く前の玄米100gにはビタミンB1が0.41mg、マグネシウムが110mg、食物繊維が3.0g含まれています。同じ量の精白米ではそれぞれ0.08mg、23mg、0.5gで、玄米はビタミンB1とマグネシウムが約5倍、食物繊維が約6倍になります[10]。これは、精米で取り除かれるぬか層や胚芽に、これらの栄養素が多く含まれているためです。
主食の選び方は、血糖値の上がり方にも関わります。先ほどの米国の追跡研究では、炭水化物の摂取量が最も多い群と、食事のグリセミック負荷(血糖値の上げやすさと量を掛け合わせた指標)が最も高い群で、排卵障害による不妊のリスクがそれぞれ約1.9倍になるという関連がみられました[11]。研究者は、炭水化物の量と質が排卵に関わる可能性を指摘しています。
ただし、これは炭水化物を極端に減らすべきだという意味ではありません。主食はエネルギーの大切な供給源で、食生活指針も「主食」を中心にエネルギーをしっかりとることを勧めています[2]。白米を玄米や雑穀米に置き換える、菓子パンや甘い飲み物を減らす、といった「質」の見直しから始めるのが現実的です。玄米が食べにくい場合は、胚芽米や雑穀を混ぜる方法もあります。
💡 用語解説:グリセミック負荷(GL)
食品が血糖値をどれだけ上げやすいかを示すグリセミック指数(GI)に、その食品に含まれる炭水化物の量を掛け合わせた指標です。GIが高く、たくさん食べる食品ほどグリセミック負荷は大きくなります。精製された白いパンや砂糖入りの飲み物は大きく、全粒穀物や豆類は小さい傾向があります。
たんぱく質は魚・大豆・卵・乳製品を組み合わせる
たんぱく質は、肉だけに偏らず、魚・大豆製品・卵・乳製品を組み合わせてとることが勧められます。たんぱく質は筋肉や臓器だけでなく、ホルモンや酵素、卵子や精子をつくる材料にもなる栄養素です。食生活指針も「主菜」を組み合わせてたんぱく質を十分にとるよう勧めています[2]。
たんぱく質の「種類」に注目した研究もあります。米国の追跡研究では、総エネルギーの5%分を動物性たんぱく質から植物性たんぱく質に置き換えると、排卵障害による不妊のリスクが50%以上低いという関連が報告されました[12]。動物性たんぱく質の摂取が最も多い群では、リスクが約1.4倍でした。観察研究のため肉が不妊の原因と言えるわけではありませんが、主菜の一部を大豆製品や魚に置き換えるのは取り入れやすい工夫です。
大豆製品は、低脂肪で良質なたんぱく源であり、カルシウムの供給源としても役立つ食品です[13]。豆腐、納豆、高野豆腐、枝豆などを主菜や副菜に使うと、たんぱく質を無理なく補えます。卵は1個で良質なたんぱく質がとれ、魚は後で述べるビタミンDや、からだによい脂質の供給源にもなります。
脂質はトランス脂肪酸を減らし、魚の脂を
脂質は量だけでなく種類が大切で、トランス脂肪酸を減らし、魚や植物性の油から脂質をとることが勧められます。トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングなどをつくる過程や、揚げ物用の油を高温で使う過程で生じる脂肪酸で、多くとると心臓病のリスクを高めることが知られています。
妊娠との関係では、米国の追跡研究で、総エネルギーの2%分を炭水化物の代わりにトランス脂肪酸からとると、排卵障害による不妊のリスクが約1.7倍になるという関連が示されました[14]。これも観察研究ですが、トランス脂肪酸には健康上の利点がないため、減らすことに不都合はありません。
一方で、日本人の多くは、世界保健機関(WHO)が目標とする「総エネルギーの1%未満」をすでに下回っていると評価されています[15]。日本の一般的な食生活でトランス脂肪酸を過度に心配する必要はなく、菓子パンやスナック菓子、揚げ物が多い食生活になっていないかを見直す程度で十分です。脂質は、青魚、オリーブ油やなたね油などの植物油、ナッツなどから、適量をとるように意識します。
3. 妊活中に摂りたい栄養素と食べ物
妊活中に意識したい栄養素は、葉酸、鉄、ビタミンD、亜鉛、ビタミンEなどです。このうち、サプリメントでの補充が公的に推奨されているのは葉酸だけで、それ以外は食事から必要量をとることが基本です。量の目安は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に示されています[4]。
🥗 妊活中に意識したい栄養素と多く含む食べ物
| 栄養素 | 1日の目安(18〜49歳) | 多く含む食べ物 |
|---|---|---|
| 葉酸 | 推奨量240μg。妊娠を計画する女性は、これに加えてサプリメントなどから400μg | ほうれん草・ブロッコリーなどの緑黄色野菜、枝豆、納豆、いちご |
| 鉄 | 月経のある女性10.0〜10.5mg、月経のない女性・男性7.0〜7.5mg | 赤身の肉や魚、あさり、小松菜、大豆製品 |
| ビタミンD | 目安量9.0μg(耐容上限量100μg) | 鮭・さんま・いわしなどの魚、卵黄、きのこ類 |
| 亜鉛 | 男性9.0〜9.5mg、女性7.5〜8.0mg | 牡蠣、牛肉、豚レバー、卵、ナッツ |
| ビタミンE | 目安量 女性5.0〜6.0mg、男性6.5mg(耐容上限量 女性650〜700mg、男性800mg) | 植物油、アーモンドなどのナッツ、うなぎ、かぼちゃ、アボカド |
※数値は日本人の食事摂取基準(2025年版)による[4]。年齢区分によって値が異なる栄養素は幅で示しています。
葉酸|妊娠1か月以上前から1日400μg
葉酸は、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦に、通常の食事に加えてサプリメントなどから1日400μgとることが勧められている栄養素です。日本人の食事摂取基準(2025年版)は、この目的を「胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のため」と明記しています[4]。18〜49歳の推奨量は1日240μgで、400μgはこれとは別に、通常の食品以外(サプリメントや葉酸を添加した食品)からとる量です。
サプリメントが勧められているのは、食品に含まれる葉酸は調理で失われやすく、体への吸収率も一定しないためです。サプリメントに使われる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は吸収率が高く、量を管理しやすいという特徴があります。一方、サプリメントなどからとる葉酸には、18〜29歳で1日900μg、30〜49歳で1日1,000μgという耐容上限量が定められていて[4]、多ければ多いほどよいわけではありません。
ここで誤解されやすいのが、葉酸と妊娠のしやすさの関係です。葉酸は妊娠しやすくするための栄養素ではありません。葉酸をとる目的は、妊娠が成立したときに赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを下げることです。「葉酸サプリを飲んでいるから妊娠しやすくなる」と考えるのではなく、「妊娠したときに備えて、あらかじめ体内の葉酸を十分な状態にしておく」と理解してください。葉酸を飲み始める時期と量、食べ物から葉酸をとる方法については、関連記事で詳しく解説しています。
鉄|月経のある女性は不足しやすい
鉄は、月経のある女性で不足しやすい栄養素で、推奨量は18〜29歳で1日10.0mg、30〜49歳で1日10.5mgです。月経のない女性や男性の推奨量は7.0〜7.5mgなので、月経による出血がある時期はおよそ1.4倍の鉄が必要になります[4]。
鉄は赤血球のヘモグロビンの材料で、全身に酸素を運ぶ働きを担っています。妊娠すると赤ちゃんと胎盤の発育、母体の血液量の増加のために必要量がさらに増え、妊娠中期・後期には付加量が設けられています[4]。妊娠前から鉄が不足していると、妊娠中に貧血になりやすくなります。
鉄には、赤身の肉や魚、レバーに多い「ヘム鉄」と、小松菜やほうれん草、大豆製品などに含まれる「非ヘム鉄」があり、ヘム鉄のほうが吸収されやすい性質があります。非ヘム鉄は、ビタミンCを含む野菜や果物、たんぱく質と一緒にとると吸収がよくなります。貧血が気になる場合は、自己判断で鉄剤を飲むのではなく、血液検査で貧血の有無と原因を確認することが勧められます。貧血には鉄の不足以外の原因もあるためです。
ビタミンD|魚・きのこと日光
ビタミンDは、骨や筋肉の健康に関わる栄養素で、血中濃度と不妊治療の結果との間に関連が報告されていますが、補充すれば妊娠率が上がるかどうかはわかっていません。体外受精などを受けた女性約2,700人を含む11のコホート研究をまとめた解析では、ビタミンDが充足している女性は、不足している女性に比べて出生に至る割合が高いという関連がみられました(オッズ比1.33)。臨床妊娠についても同じ方向の関連がありましたが、流産とは関連がありませんでした[16]。ただし、これは観察研究の統合で、研究者自身が因果関係を確かめるランダム化比較試験の必要性を指摘しています。
ビタミンDには、きのこ類に多い植物性のビタミンD2と、鮭・さんま・いわしなどの魚や卵黄に多い動物性のビタミンD3があります。食事摂取基準(2025年版)の目安量は1日9.0μg、耐容上限量は100μgです[4]。
ビタミンDは、日光(紫外線)を浴びることで皮膚でもつくられます。必要な日光浴の時間は季節と地域で大きく変わります。国立環境研究所の推計では、顔と両手の甲を出して正午に日光を浴びた場合、5.5μgのビタミンDをつくるのに必要な時間は、7月は札幌4.6分、つくば3.5分、那覇2.9分でした。12月は札幌76.4分、つくば22.4分、那覇7.5分と大きく延びます[17]。冬の北日本では日光だけで補うのは難しいため、魚やきのこを意識してとることが大切になります。
亜鉛|精子形成に関わる
亜鉛は、細胞分裂やたんぱく質の合成に必要なミネラルで、精巣や前立腺に多く含まれ、精子がつくられる過程にも関わっています。そのため男性の妊活では「亜鉛をとるとよい」とよく言われます。推奨量は男性で1日9.0〜9.5mg、女性で7.5〜8.0mgです[4]。
ただし、亜鉛のサプリメントで精液の状態や出生率がよくなるという根拠はありません。米国で不妊治療を受けるカップルの男性2,370人を対象に、葉酸5mgと亜鉛30mgを6か月間飲む群と偽薬の群を比べたランダム化比較試験(FAZST試験)では、出生率は34%と35%で差がなく、精液の所見もほとんど改善しませんでした。精子のDNA断片化の割合はサプリメント群でわずかに高く、腹部の不快感や吐き気もサプリメント群で多くみられました[18]。
亜鉛は、牡蠣、牛肉、豚レバー、卵、ナッツなどに多く含まれ、普段の食事で肉や魚、卵、大豆製品をとっていれば、大きく不足することはあまりありません。亜鉛は「不足しないように食事でとる」栄養素であり、サプリメントで多くとれば精子の状態がよくなる、というものではないと理解しておくことが大切です。
ビタミンE・抗酸化物質は「不足を補う」まで
ビタミンEは、細胞の膜を酸化から守る働きをもつ脂溶性のビタミンですが、通常の食事で不足することはまれで、サプリメントでとりすぎると害になることがあります。ビタミンEは体内で脂質が酸化されるのを防ぐ「抗酸化作用」をもち、植物油、アーモンドなどのナッツ、うなぎ、かぼちゃ、アボカドなどに含まれています。
「脂溶性ビタミンでもビタミンEはとりすぎの害がない」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。食事摂取基準(2025年版)では、ビタミンEに女性で1日650〜700mg、男性で800mgの耐容上限量が定められています[4]。食事だけでこの量を超えることはまずありませんが、高用量のサプリメントを重ねると近づくことがあり、出血しやすくなるなどの影響が知られています。
ビタミンEやビタミンC、コエンザイムQ10などの抗酸化物質は、「卵子や精子の老化を防ぐ」として妊活サプリメントに配合されることがあります。しかし、男性不妊に対する抗酸化サプリメントの効果を調べた研究をまとめたコクランレビューでは、90件のランダム化比較試験、10,303人を解析した結果、出生率への効果の根拠は「非常に確実性が低い」と評価されました。バイアスの大きい研究を除くと、出生率が上がるという結果はみられなくなりました[19]。抗酸化物質は、野菜や果物、ナッツを含む食事から自然にとるのが基本です。
💡 用語解説:耐容上限量
ほとんどすべての人が、健康に害を受けることなく習慣的にとれる量の上限のことで、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で栄養素ごとに示されています。これを超えてとり続けると、過剰による健康への影響が出る可能性が高まります。通常の食事で超えることはまれで、主にサプリメントや強化食品を重ねてとる場合に注意が必要になります。
🩺 院長コラム【葉酸は「妊娠しやすくするため」のものではありません】
葉酸サプリメントは妊活の定番になりましたが、目的が「妊娠しやすくするため」と受け取られていることが少なくありません。葉酸をとる目的は、妊娠が成立したときに、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを下げることです。臨床遺伝専門医としては、ここを取り違えないことが何より大切だと考えています。
同じように、亜鉛や抗酸化物質のサプリメントも、ランダム化比較試験では期待されたほどの効果は確認されていません。サプリメントを重ねるより、葉酸400μgを続け、食事全体と体重を整えることが、妊娠に備える方法としていちばん根拠がそろっていると考えています。
4. 妊活中に避けたい・控えたい食べ物と飲み物
妊活中に控えたい食べ物・飲み物は、アルコール、カフェインの摂りすぎ、水銀の多い大型魚、生ハムやナチュラルチーズなどの加熱していない食品、レバーやサプリメントによるビタミンAの摂りすぎ、トランス脂肪酸や甘い飲み物です。このうち多くは「妊娠しにくくなる」ことより、「妊娠に気づく前の時期に赤ちゃんに影響しうる」ことが理由です。妊活中は、いつ妊娠が成立してもおかしくない状態が続くため、妊娠中の注意を前倒しで意識しておくことが勧められます。
⚠️ 妊活中に避けたい・控えたい食べ物と飲み物
| 対象 | 主な理由 | 目安・具体例 |
|---|---|---|
| アルコール | 妊娠初期の赤ちゃんへの影響 | 妊娠の可能性がある時期は控える |
| カフェイン | 多量摂取と妊孕性・妊娠経過の関連 | 妊婦の目安は各国で1日200〜300mg以下 |
| 水銀の多い大型魚 | 胎児の発達への影響 | キンメダイ・メカジキ・クロマグロ等は1回80gで週1回まで |
| 加熱していない食品 | リステリア・トキソプラズマの感染 | 生ハム、ナチュラルチーズ、スモークサーモン、加熱不十分な肉 |
| ビタミンA(レチノール)の過剰 | 催奇形性 | レバーの食べすぎ、ビタミンAを含むサプリメント |
| トランス脂肪酸・甘い飲み物 | 排卵障害との関連(観察研究) | 菓子パン、スナック菓子、清涼飲料水 |
※各項目の根拠は本文で示しています。妊娠中の注意事項を妊娠の可能性がある時期に前倒しで当てはめたものを含みます。
アルコール
妊娠中はすべてのアルコール飲料を避けることが勧められていて、妊娠の可能性がある時期も同じように控えるのが安全です。食品安全委員会は、妊娠中の方に向けて、アルコール飲料を避けるよう呼びかけています[20]。妊娠初期の赤ちゃんは、体の器官がつくられる大切な時期にあり、アルコールは胎盤を通って赤ちゃんに届きます。
妊娠を計画している時期の飲酒と妊孕性の関係について、ASRMは、女性で1日2杯を超えるような多量の飲酒はおそらく避けるべきだとする一方、少量の飲酒が妊孕性を下げるという根拠は限られているとしています[1]。つまり、「少し飲んだから妊娠できなくなる」というものではありません。ただし、排卵後から次の月経予定日までは、妊娠が成立していても気づけない時期です。妊娠を目指している周期は、この時期の飲酒を控えるのが現実的な考え方です。
妊娠中の飲酒が赤ちゃんに与える影響の代表が、胎児性アルコール症候群です。妊活中のお酒の考え方と、妊娠中の飲酒のリスクについては、関連記事で詳しく解説しています。
カフェインの摂りすぎ
カフェインは、1日1〜2杯のコーヒー程度であれば妊孕性への悪影響はみられていませんが、多量の摂取は避けたほうがよいとされています。ASRMは、1日500mgを超える(コーヒー5杯を超える)ような多量のカフェインは妊孕性の低下と関連する一方、1日1〜2杯の適度な摂取では妊孕性や妊娠の経過への悪影響はみられないとしています[1]。
妊娠中の目安は国や機関によって異なります。食品安全委員会のまとめによると、世界保健機関(WHO)は1日300mgを超える妊婦に摂取を制限するよう求め、欧州食品安全機関(EFSA)は1日200mg以下なら胎児に健康リスクは生じないとし、英国食品基準庁も1日200mgまでを勧めています。カナダ保健省は、妊娠を計画している女性も含めて1日300mg以下としています。日本では、カフェインの1日摂取許容量は設定されていません[21]。
カフェインはコーヒーだけでなく、紅茶、緑茶、ウーロン茶、エナジードリンク、栄養ドリンク、コーラなどにも含まれます。妊活中から、1日の合計が多くなりすぎないよう意識し、麦茶やルイボスティー、カフェインレスのコーヒーなどを取り入れると調整しやすくなります。
水銀の多い大型魚
魚は妊活中にもとりたい食品ですが、妊娠している方や妊娠の可能性がある方は、水銀を比較的多く含む一部の大型魚の食べる量に注意が必要です。厚生労働省の注意事項では、キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチなどは1回約80gとして週1回まで、ユメカサゴ、ミナミマグロなどは週2回までが目安とされています[22]。
魚に含まれるメチル水銀は、胎盤を通って赤ちゃんに移行し、発達中の神経に影響する可能性があるため、妊娠中は量の目安が設けられています。一方、同じ注意事項は、子どもや一般の方については、通常食べる魚介類で水銀による健康への悪影響が懸念される状況ではないとしています[22]。キハダ、ビンナガ、ツナ缶、鮭、あじ、さんま、いわしなどは、通常どおり食べてかまいません[20]。
魚は、たんぱく質やビタミンD、DHAやEPAを含む食品です。水銀を心配して魚そのものを避けるのではなく、種類を選んでさまざまな魚を食べることが勧められます。
生もの・加熱不十分な肉(トキソプラズマ・リステリア)
妊娠中は、リステリア菌やトキソプラズマに感染すると赤ちゃんに影響することがあるため、加熱していない食品や加熱が不十分な肉に注意が必要です。食品安全委員会は、リステリアに注意が必要な食品として生ハム、加熱していないナチュラルチーズ、スモークサーモン、肉や魚のパテを、トキソプラズマに注意が必要な食品として加熱不十分な豚や羊などの肉を挙げています[20]。
リステリア菌は冷蔵庫の中でも増えることができる細菌で、妊娠中は免疫の働きが変化するため感染しやすいとされています。トキソプラズマは、加熱不十分な肉のほか、土いじりやネコのふんなどからも感染することがある原虫です。どちらも、母体の症状が軽くても胎盤を通して赤ちゃんに感染することがあります。
妊娠中に感染すると赤ちゃんに影響しうる感染症は、それぞれの頭文字をとってTORCH症候群とまとめて呼ばれます。妊活中から、肉は中心まで十分に加熱する、生ハムや加熱していないチーズは妊娠の可能性がある時期は控える、野菜はよく洗う、といった習慣を妊活中からつけておくと、妊娠に気づく前の時期の感染予防につながります。
ビタミンA(レチノール)の摂りすぎ
動物性のビタミンA(レチノール)を多くとりすぎると、妊娠初期の赤ちゃんに先天異常が起こるリスクが高まるため、レバーの食べすぎやビタミンAを含むサプリメントに注意が必要です。食事摂取基準(2025年版)では、ビタミンAの耐容上限量は1日2,700μgRAEとされています[4]。食品安全委員会は、焼き鳥のレバー2/3本で耐容上限量を超えうると例示しています[20]。
妊娠初期にビタミンAを多くとっていた女性では、赤ちゃんの先天異常が多かったとする研究があり[23]、ビタミンAは妊娠初期の赤ちゃんの発生に影響しうる「催奇形因子」の1つとして知られています。ただし、この研究は主にサプリメントなどからの高用量摂取を扱ったもので、個人が先天異常をもつ確率を示すものではありません。
⚠️ ビタミンAで注意が必要なのは「動物性」
注意が必要なのは、レバーやうなぎ、サプリメントなどに含まれる動物性のビタミンA(レチノール)です。にんじんやかぼちゃ、ほうれん草などの緑黄色野菜に含まれるβカロテンは、体内で必要な分だけビタミンAに変わるため、とりすぎの心配はほとんどありません。野菜まで控える必要はありません。
妊活サプリメントやマルチビタミンにもビタミンAが含まれることがあるため、重ねて飲む場合は成分表示を確認してください。
トランス脂肪酸・甘い飲み物
トランス脂肪酸や砂糖の多い飲み物は、排卵障害による不妊との関連が観察研究で報告されていて、妊活中にも控えたい食品です。前の章で紹介したとおり、トランス脂肪酸の摂取[14]や、食事のグリセミック負荷の高さ[11]が、排卵障害による不妊のリスクと関連していました。
砂糖入りの清涼飲料水や缶コーヒーは血糖値を急に上げやすく、菓子パンやスナック菓子にはトランス脂肪酸や砂糖が多く含まれることがあります。「絶対に食べてはいけないもの」ではありませんが、習慣になっていれば、水やお茶、果物、ナッツなどに少しずつ置き換えるとよいでしょう。
5. 男性の妊活と食事
男性の妊活で食事を見直すなら、特定の食べ物やサプリメントより、肥満・飲酒・喫煙の見直しを優先し、野菜や魚、全粒穀物を中心にした食事にすることが基本です。不妊の原因は女性側だけにあるわけではなく、男性側の要因も少なくありません。精液の状態は生活習慣の影響を受けるため、妊活はカップルで取り組むものと考えられています。
精子は約2か月あまりかけてつくられる
精子は、精巣の中のもとになる細胞から、細胞分裂と成熟を重ねて、およそ2か月あまりかけてつくられます。精子形成の期間を調べた古典的な研究では、およそ64日と推定されました[5]。その後の文献では74日前後とされることもあり、推定値には幅があります。
精子のもとになる細胞は、細胞分裂で数を増やし、減数分裂で染色体の数を半分にし、最後に頭部と尾部をもつ精子の形へと変化します。そのため、生活習慣を見直してから精液の状態に反映されるまでには時間がかかり、精液検査の結果を比べる場合もこの期間を考慮します。仕組みの詳細は関連記事で解説しています。
肥満・飲酒・喫煙を見直すのが先
男性が妊活中に避けるべきものとしては、特定の食べ物より先に、肥満、多量の飲酒、喫煙を見直すことが挙げられます。ASRMの見解では、男性の肥満も精液の状態に影響しうることが示されています[6]。観察研究をまとめたシステマティックレビューでは、魚、野菜、果物、全粒穀物、低脂肪の乳製品などが多い健康的な食事は精液の状態がよいことと関連し、加工肉、トランス脂肪酸、砂糖入りの飲み物などが多い食事は精液の状態が悪いことと関連していました[24]。
ただし、ここでも「食べればよくなる」とは言えません。前の章で紹介したとおり、亜鉛と葉酸のサプリメントは大規模なランダム化比較試験で精液の状態や出生率を改善せず[18]、抗酸化サプリメントの効果も確実性の低い根拠にとどまっています[19]。男性の食事は、女性と同じく、全体のバランスを整えて体重を適正に保つことを基本に考えます。
男性が妊活で取り組めることには、食事のほか、禁煙、飲酒量の見直し、精液検査を受けることなどがあります。男性の妊活全体や、男性不妊と栄養・サプリメントの考え方は、関連記事で詳しく解説しています。
6. 遺伝の専門医が伝えたい、葉酸と遺伝子検査のこと
葉酸は、妊活の栄養素の中でもっとも遺伝医療と関わりの深い栄養素です。神経管閉鎖障害、葉酸の代謝に関わる遺伝子の検査、妊娠前の準備について整理します。
葉酸と神経管閉鎖障害
神経管閉鎖障害は、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる神経管が、妊娠のごく初期にうまく閉じないことで起こる先天異常で、二分脊椎や無脳症などが含まれます。葉酸がこのリスクを下げることは、1991年に英国の医学研究審議会(MRC)が行ったランダム化比較試験で示されました。以前に神経管閉鎖障害の子どもを妊娠したことのある女性を対象に、妊娠前から葉酸を飲むことで再発が減ることが確かめられました[25]。
この結果をもとに、各国で妊娠前からの葉酸の補充が勧められるようになり、日本の食事摂取基準も「神経管閉鎖障害のリスク低減のため」に400μgの補充を勧めています[4]。ただし、神経管閉鎖障害には遺伝的な要因など葉酸以外の要因も関わるため、葉酸を飲めばすべて防げるわけではなく、「リスクを下げる」ものです。
神経管閉鎖障害の原因や、妊娠中にわかる時期、ダウン症との関係などは、関連記事で詳しく解説しています。
💡 用語解説:神経管閉鎖障害
神経管は、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる管状の構造で、妊娠のごく初期に板状の組織が丸まって閉じることでできあがります。この閉じる過程がうまくいかないと、背骨の一部が開いたままになる二分脊椎や、脳が十分に形成されない無脳症などが起こります。神経管が閉じるのは多くの人が妊娠に気づく前の時期のため、葉酸は妊娠前から補うことが勧められています。
MTHFR遺伝子検査で葉酸サプリを選ぶ必要はない
MTHFR遺伝子の型を調べて、葉酸サプリメントの種類や量を決める必要はありません。MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)は、葉酸を体内で使える形に変える働きに関わる酵素で、その遺伝子には、酵素の働きがやや弱くなる多型(c.665C>T、通称C677T)が知られています。
米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の診療指針は、MTHFRの多型検査は臨床的な有用性が乏しく、血栓症のなりやすさや反復流産の評価のために行うべきではないとしています[26]。この多型をホモ接合で持つ女性では、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクがわずかに高い(オッズ比1.6)とされていますが、葉酸の補充によってその上昇は緩和されるとしています[26]。この指針には2020年に補遺が出されています[27]。
「MTHFRの型によっては通常の葉酸が効かないので、特別な葉酸サプリメントが必要」と説明されることがありますが、ACMGの指針に照らすと、遺伝子の型にかかわらず、通常の葉酸を1日400μg続けることが基本です。遺伝子検査は「調べればよい」ものではなく、結果が診療の判断を変えるときに意味をもちます。
🩺 院長コラム【MTHFRの型で葉酸を選び分ける必要はありません】
MTHFRの多型は、特別な病気の遺伝子ではなく、多くの人がもつありふれた遺伝子の違いです。ホモ接合であっても、葉酸を通常どおり補っていれば、神経管閉鎖障害のリスクの上昇は緩和されるとされています。遺伝子の型を理由に、特別な葉酸サプリメントや高用量の葉酸が必要になるわけではないと考えています。
遺伝子検査は、結果によって診療の方針が変わるときに行う意味があります。MTHFR多型の検査はその条件に当てはまらないというのが、ACMGの判断であり、臨床遺伝専門医としての考え方です。
持病・服薬・家族歴がある人は妊娠前に相談を
持病がある方、薬を飲んでいる方、家族に遺伝性の病気がある方は、食事の見直しとあわせて、妊娠前に主治医や専門医に相談しておくことが勧められます。糖尿病や甲状腺の病気などの持病は、妊娠前から良い状態に整えておくことが大切です。薬の中には、妊娠初期の赤ちゃんに影響する可能性があるものもあり、自己判断で中止すると持病が悪化することもあります。
このように、妊娠前から健康状態を整えて将来の妊娠に備える取り組みは、プレコンセプションケアと呼ばれます。食事や体重、葉酸の補充はその中心的な内容ですが、ワクチンの接種状況の確認や、家族歴に応じた遺伝の相談なども含まれます。
家族に遺伝性の病気がある場合や、カップルが共通の遺伝性疾患の保因者であるかを知りたい場合には、妊娠前に遺伝学的な評価を行うという選択肢もあります。妊娠前・結婚前の検査の考え方については、関連記事で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 着床率を上げる食べ物はありますか?
着床率を上げることが確かめられた食べ物はありません。ビタミンDが充足している女性で体外受精の結果がよかったという関連は報告されていますが、補充によって着床率や妊娠率が上がるかどうかはわかっていません。食事全体を整え、不足や偏りを避けることが基本です。
Q2. 葉酸を飲めば妊娠しやすくなりますか?
いいえ。葉酸は妊娠しやすくするための栄養素ではありません。妊娠が成立したときに、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを下げる目的で、妊娠を計画している時期から1日400μgをサプリメントなどで補うことが勧められています。
Q3. 妊活中にヨーグルトや納豆(大豆)を食べてもいいですか?
食べてかまいません。ヨーグルトが妊活によくないという根拠はありません。乳製品と排卵障害の関係を調べた研究はありますが、観察研究で結果の解釈には限界があります。納豆や豆腐などの大豆食品は良質なたんぱく源です。ただし、妊娠の可能性がある時期に大豆イソフラボンのサプリメントを通常の食事に上乗せしてとることは推奨されていません。
Q4. 妊活中にサプリメントは必要ですか?
公的に補充が勧められているのは、妊娠を計画している女性の葉酸1日400μgです。それ以外の栄養素は、食事から必要量をとるのが基本です。亜鉛や抗酸化物質のサプリメントは、妊娠率や出生率を上げる効果が確認されていません。複数のサプリメントを重ねると、ビタミンAなどをとりすぎることもあるため注意してください。成分の考え方は妊活サプリの選び方で解説しています。
Q5. 外食やコンビニ食が多くても大丈夫ですか?
選び方を工夫すれば取り入れられます。単品の麺類や丼ものより定食形式を選ぶ、サラダや野菜の総菜、ゆで卵、焼き魚、納豆や豆腐などを組み合わせる、甘い飲み物をお茶や水に替える、といった工夫で、主食・主菜・副菜をそろえやすくなります。生ハムや加熱していないチーズ、レバーの食べすぎには注意してください。
Q6. 卵子の質を上げる食べ物はありますか?
卵子の質を上げることが確かめられた食べ物はありません。卵子の質にもっとも大きく関わるのは年齢です。食事でできるのは、栄養の不足や偏りを避け、適正体重を保つことです。
Q7. ミネルバクリニックで妊活の食事指導や不妊治療は受けられますか?
いいえ。当院では、妊活の食事指導・栄養指導や不妊治療は行っておらず、これらについてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。不妊治療は生殖医療を専門とする医療機関、食事や栄養の相談はかかりつけ医や管理栄養士のいる医療機関へご相談ください。
まとめ
妊活の食事で大切なのは、特定の「妊娠しやすい食べ物」を探すことではなく、食事全体の質と体重を整え、葉酸を補い、妊娠に影響しうるものを減らすことです。特定の食品で妊娠率が上がることは、介入試験では確かめられていません[1]。地中海食型の食事や植物性たんぱく質、質のよい脂質は妊娠との関連が報告されていますが、観察研究が中心で、結果も一致していません。
葉酸は妊娠しやすくするためではなく、神経管閉鎖障害のリスクを下げるために、妊娠を計画している時期から1日400μgを補うものです[4]。アルコール、カフェインの摂りすぎ、水銀の多い大型魚、加熱していない食品、ビタミンAの過剰は、妊娠の可能性がある時期から避けておくことが勧められます。男性は、サプリメントより先に肥満・飲酒・喫煙を見直すことが基本です。無理のない範囲で、カップルで続けられる食生活を整えていきましょう。
🏥 妊活の食事指導・不妊治療をお考えの方へ
当院では、妊活の食事指導・栄養指導や不妊治療を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
不妊治療は生殖医療を専門とする医療機関へ、食事や栄養の相談はかかりつけ医や管理栄養士のいる医療機関へご相談ください。
この記事は妊活中の食事について正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、他の診療の過程で具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。
参考文献
- [1] Optimizing natural fertility: a committee opinion. Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Fertil Steril. 2022;117:53-63. [ASRM]
- [2] 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~ 解説要領(令和3年3月). 厚生労働省. [こども家庭庁掲載PDF]
- [3] Diet and fertility: a review. Am J Obstet Gynecol. 2018. [PubMed 28844822]
- [4] 日本人の食事摂取基準(2025年版). 厚生労働省. [厚生労働省]
- [5] Spermatogenesis in man: an estimate of its duration. Science. 1963;140:184-186. [PubMed 13953583]
- [6] Obesity and reproduction: a committee opinion. Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Fertil Steril. 2021. [PubMed 34583840]
- [7] Adherence to the Mediterranean diet and IVF success rate among non-obese women attempting fertility. Hum Reprod. 2018;33(3):494. [PubMed 29390148]
- [8] Mediterranean diet and outcomes of assisted reproduction: an Italian cohort study. Am J Obstet Gynecol. 2019;221(6):627.e1-627.e14. [PubMed 31288008]
- [9] Diet and lifestyle in the prevention of ovulatory disorder infertility. Obstet Gynecol. 2007. [PubMed 17978119]
- [10] 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 穀類/こめ/[水稲穀粒]/玄米・精白米. 文部科学省. [玄米] [精白米]
- [11] A prospective study of dietary carbohydrate quantity and quality in relation to risk of ovulatory infertility. Eur J Clin Nutr. 2009;63:78-86. [DOI 10.1038/sj.ejcn.1602904]
- [12] Protein intake and ovulatory infertility. Am J Obstet Gynecol. 2008. [PubMed 18226626]
- [13] 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A. 食品安全委員会. [食品安全委員会]
- [14] Dietary fatty acid intakes and the risk of ovulatory infertility. Am J Clin Nutr. 2007;85(1):231-237. [PubMed 17209201]
- [15] トランス脂肪酸の摂取と健康への影響. 農林水産省. [農林水産省]
- [16] Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a systematic review and meta-analysis. Hum Reprod. 2018;33(1):65. [PubMed 29149263]
- [17] 体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定-札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要-(2013年8月30日). 国立環境研究所. [国立環境研究所]
- [18] Effect of Folic Acid and Zinc Supplementation in Men on Semen Quality and Live Birth Among Couples Undergoing Infertility Treatment: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2020;323:35-48. [PubMed 31910279]
- [19] Antioxidants for male subfertility. Cochrane Database Syst Rev. 2022;CD007411. [PubMed 35506389]
- [20] お母さんになるあなたと周りの人たちへ. 食品安全委員会. [食品安全委員会]
- [21] ファクトシート 食品中のカフェイン. 食品安全委員会. [食品安全委員会]
- [22] 妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項(平成17年11月2日). 厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 乳肉水産食品部会. [厚生労働省]
- [23] Teratogenicity of high vitamin A intake. N Engl J Med. 1995;333:1369-1373. [PubMed 7477116]
- [24] Dietary patterns, foods and nutrients in male fertility parameters and fecundability: a systematic review of observational studies. Hum Reprod Update. 2017;23(4):371-389. [PubMed 28333357]
- [25] Prevention of neural tube defects: results of the Medical Research Council Vitamin Study. MRC Vitamin Study Research Group. Lancet. 1991;338(8760):131-137. [PubMed 1677062]
- [26] ACMG Practice Guideline: lack of evidence for MTHFR polymorphism testing. Genet Med. 2013;15(2):153-156. [PubMed 23288205]
- [27] Addendum: ACMG Practice Guideline: lack of evidence for MTHFR polymorphism testing. Genet Med. 2020. [PubMed 32533132]





