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NIPT陽性羊水検査せず中絶|羊水検査まで待てない

NIPTでは陽性の結果は確定できません。羊水検査をしないといけないのですが。羊水検査を受けずに中絶を選んだ人たちがいます。まずは6週間を一人で待つのは辛い、という理由でケースレポートしたいと思います。

夫が単身赴任中。上のお子さんをワンオペ育児。

ダウン症候群(トリソミー21)の陽性例が出ました。。

NIPTの特徴は、陰性的中率の高さですが。T21(ダウン症候群)の陽性的中率は、妊婦さんの年齢で上がりますので、40歳くらいだと95%となります。(第3世代スーパーNIPTでは21トリソミーの陽性的中率は100%となっています。この症例は第1世代、ベリナタの検査でした。)

陽性の結果をパーソナルサイトで受け取ったら、必ず電話をしてくださいといっているので電話をいただいて。お近くの方は、来ていただいているので。きて話をしました。

ガイドライン的には、陽性の患者さんに対しては侵襲的な確定検査を必ずすすめるべきだ、とされていて。まずはしゃくし定規に対応します。

上のお子さんがまだ小さくて、双方のご実家も遠くて、旦那様が単身赴任でいなくて。そんな状況で16週までまって羊水検査をして、そこからFISHで1週間?それから中絶?あと8週間なんて待てない。

彼女はずっとそう言っていました。

わたしは、専門医の仕事はガイドラインをしゃくし定規に押し付けることではないと思います。科学的な根拠はこうなっている、とお示ししたうえで、そこから先をどう選ぶかの自己決定権は患者さん側に一方的にある、と思っています。

彼女にとっては、羊水検査して結果が出るまでの6週間を、毎日をお子さんと二人だけで過ごす、一人でこの問題と向き合わないといけないことが耐えられなかったんです。

なので。わたしは言いました。

そうね。
推奨されていることを説明してきたけど、実際のところ、もっと若い人たちでも今までT21で偽陽性、うちでは一人もいないのですよ。
だからね。アラフォーの人たちに必ず羊水検査受けてね、っていって
18週くらいになって確認出来てやっぱ中絶します、っていうのもどうなのかなってわたしも悶々としてしまうのが実際です。
一方で、ダウン症(21トリソミー)のお子さんってかわいいんですよ。とっても。
天使ちゃんって感じでね。
だけどやっぱり、重症度が事前に予測できないので。
難しい問題ですよね。

いいですよ。わたしは。
羊水検査を強制することはできません。
誰もあなたに何を強要することもできません。
わたしたちはただ、陽性になってもこれで確定できない理由を説明して受けることを促すことはしないといけないのですが、それであなたを追い詰めることもまたできません。
6週間の間、毎日不安なあなたをわたしはそばにいて支えてあげられるわけではない。
あなたの意思が固い場合、仕方ないかなと思います。
世の中には 欲しくなかったのにできたから と中絶される子たちも大勢いるので。
欲しくてできたんだけどダウン症(21トリソミー)の疑いがあるから産みたくない、という選択をいまあなたがすることを責める道理は私たちにはありません。。。。。
超音波検査はうけたんだったっけ?
そうね。異常なかったのよね。
でも。いいわ。
あなたを尊重しましょう。
でも。旦那様には帰ってきていただかないとね。
だって、中絶するには旦那様の同意書が必要なのよ。

彼女はこういいました。

よかった。
先生にどうしても羊水検査するように言われたら拒否できなかったと思うけどすごくつらかったと思う。追い詰められて。

そして彼女はすごく安心して表情が和らぎました。

その安心した彼女の顔を見て。これ以上、羊水検査をうけないとっていって、追い詰めなくてよかったって思いました。

どんな選択をしても彼女の心は重たいですから。

だったら、担当医である私の役割は彼女が楽になるように支援することだと思います。

たとえそれが日本中の遺伝専門医を敵に回すこととなったとしても。

やー。でも。こんなことネットに書くと、学会から怒られるんだろうな、ってドキドキしますけどね!専門医はく奪されたらどうしよう?!とか。

でも、わたしの患者さんを担当医師であるわたしが守らなくてどうするんでしょうか?!

(といいつつ、わたしも専門医としての葛藤は抱えているのですが。。。

こうやって生命倫理の現場で患者さんと一緒に葛藤を抱えて
毎日悪戦苦闘して
少しずつ医者として成長できているのかな。

でも。わたし、付き合いますよ。
また笑ってる顔が見たいから。
あなたの重たさや葛藤を少し一緒に背負いましょう。

そして彼女は笑顔で帰っていきました。

やっぱ、ガイドラインがどうなっていても、医療って個別具体的な事情を勘案して
最後は症例ごとに話し合って決めるしかないですね

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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