目次
- 1 ダウン症とは
- 2 エコーでダウン症は指摘されない?
- 3 ダウン症のエコーでわかる特徴|1.項部透過像(NT)
- 4 21トリソミーのエコーでわかる特徴|2.脈絡叢襄胞
- 5 ダウン症のエコーでわかる特徴|3.口唇裂および口蓋裂、口唇口蓋裂
- 6 21トリソミーのエコーでわかる特徴|4.鼻が低い(鼻骨低い形成、欠損)
- 7 ダウン症のエコーでわかる特徴|5.巨舌症
- 8 ダウン症のエコーでわかる特徴|6.小耳症
- 9 21トリソミーのエコーでわかる特徴|7.嚢胞性ヒグローマ
- 10 ダウン症のエコーでわかる特徴|8.肺低形成
- 11 ダウン症のエコーでわかる特徴|9.胸水
- 12 ダウン症のエコーでわかる特徴|10.心奇形
- 13 ダウン症のエコーでわかる特徴|13.食道閉鎖
- 14 ダウン症のエコーでわかる特徴|14.十二指腸閉鎖
- 15 ダウン症のエコーでわかる特徴|14.高輝度腸管像
- 16 ダウン症のエコーでわかる特徴|15.臍帯ヘルニア
- 17 ダウン症のエコーでわかる特徴|16.停留精巣
- 18 ダウン症のエコーでわかる特徴|17.非免疫性胎児水腫
- 19 ダウン症胎児のエコーでわかる特徴|18.軽度脳室拡大
- 20 ダウン症胎児のエコーでわかる特徴|19.心腔内輝点
- 21 ダウン症胎児のエコーでわかる特徴|20.腎盂拡大
- 22 ダウン症胎児のエコーでわかる特徴|21.四肢短縮
- 23 まとめ
ダウン症(21トリソミー)は妊婦検診や胎児ドックのエコー写真でわかることがあります。この記事ではダウン症に特徴的な超音波検査所見をご紹介して妊娠中のいつからわかるのかをお伝えしていきます。
YouTubeチャンネルでは、エコー検査、絨毛検査、羊水検査、そしてNIPT検査で「ダウン症がいつ(妊娠何週)からわかるか」について、院長がわかりやすく解説しています。検査時期とリスクについて関心のある方はぜひ動画も参考にしてみてください。
ダウン症とは
ダウン症とは正常では2本1組しかないはずの第21番染色体が3本増えてしまうことにより身体に様々な症状がでるトリソミー症候群という病気をいいます。歴史的に産婦人科の妊婦健診では超音波検査と母体血清マーカー検査を組み合わせたコンバインド検査などを開発して出生前検査をしてきました。トリソミーなどの染色体異常は奇形(外から見てわかる形態異常)を伴うため、妊婦検診のエコーや胎児ドック(より精密な胎児超音波検査)で発見することも場合によっては可能で、出生前診断の最もよい対象となります。
エコーでダウン症は指摘されない?
答えは「はい」です。エコーでダウン症は指摘されないと思ったほうが良いです。妊婦健診のエコーのしかたと、胎児異常を発見しようと思って行う胎児ドックとは、時間のかけ方、医師の修練度など全く異なっています。ダウン症がエコーで指摘されないからこそ、実はダウン症を出産するママの8割が35歳未満という事実があります。「異常があれば先生が指摘してくれるはず」と、妊婦健診のエコーを過信しないようにしましょう。
最近では4dエコー検査といって、赤ちゃんを立体的な動画で見ることができる超音波検査を実施してくれるクリニックも増えましたので、ここに記載してある所見は見つかりやすくなったかもしれませんが、概して超音波検査ではっきりした所見が見つかるのは妊娠中期以降です。
NIPTでは6~10週という早期の段階でダウン症の有無を検査できますが、ダウン症はエコーで指摘されない可能性のほうが大きいので、妊婦健診のエコー検査で十分だという考えは間違いでしょう。ミネルバクリニックではNIPTにて21トリソミー陽性、その後、確定した方の9割以上はエコーで異常を指摘されませんでした。また、21週を超えてからダウン症候群の特徴的な所見を告知された妊婦さんもいます。エコーは確実ではないことと、感度特異度がNIPTに比べて圧倒的に低いことを知っておいたほうがいいでしょう。
また、妊婦健診のエコーの役割は、赤ちゃんが週数に応じて大きくなっているかなどをチェックすることですので、ダウン症の発見が目的ではなく、このためか生まれてから初めてダウン症と言われるケースが今も多いです。
ダウン症のエコーでわかる特徴|1.項部透過像(NT)
(新潟大学より引用)
項部透過像(NT)とは、はやければ妊娠12週ごろからという妊娠初期に見られる赤ちゃんの首のうしろのむくみ(浮腫)で、NTそのものは正常所見の一つです。通常を大きく上回る肥厚が見られたときは、ダウン症候群、18トリソミーをはじめとする染色体異常などが疑われます。
21トリソミーのエコーでわかる特徴|2.脈絡叢襄胞
脈絡叢(みゃくらくそう)は左右の側脳室、第三脳室、第四脳室にある血管が豊富な組織のことで、脳やせき髄を保護する脳脊髄液を産生しています。英語ではchoroid lexuscystといい、CPCと略します。
脈幅が2mm以上ある明らかな嚢胞が脈絡叢にあると、脈絡叢嚢胞といいますが、実は妊娠中期では多い報告だと3%くらいでみられるものです。自然に消失することもあり、脈絡叢嚢胞がどうしてできるのかという原因については明らかになっていません。脈絡叢嚢胞は染色体異常では特に18トリソミーとの関連が注目されてきました。脈絡叢嚢胞があると21トリソミーの可能性が約1.9倍となります。しかし、脈絡叢嚢胞自体は正常胎児でも1%くらいで認められるもの(所見)です。
ダウン症のエコーでわかる特徴|3.口唇裂および口蓋裂、口唇口蓋裂
口唇裂・口蓋裂・口唇口蓋裂は顔面裂の一つで、奇形の中でも発生率が高く、日本では500人に一人と報告されています。白人では1000人に一人なのに日本人では倍になっていることも注目される点ですが理由はよくわかっていません。
口唇裂があると1/3で口蓋裂を合併するといわれています。 口蓋裂の頻度は意外に高いのですが、口唇裂の口唇裂・口蓋裂に合併する奇形としては小顎症、心奇形、耳奇形に注意が必要で、13トリソミー(パトウ症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、21トリソミー(ダウン症候群)といった染色体異常に口唇裂・口蓋裂が合併することが多いことから羊水穿刺(羊水検査)の上、染色体検査を行う必要があります。
ダウン症における顔面裂(口唇裂口蓋裂などの顔面の裂をいいます)の合併は約2%とされています。
21トリソミーのエコーでわかる特徴|4.鼻が低い(鼻骨低い形成、欠損)
鼻の異常はいつから見つかりやすくなるのは妊娠中期以降です。なぜならエコーで顔を描出しやすくなるのが妊娠中期になるからです。特に横顔を見るのが必要になるような赤ちゃんは羊水過多を伴っていることが多く、見つけるのに苦労するということはあまりありません。最近では三次元超音波診断装置が普及していますので、以前に比べてより描出しやすくなっています。
鼻骨の長さを調べて異常を検出する研究は白人でよく行われているため、そういうデーターをもともと鼻が低い日本人にそのまま適応するのは困難です。
鼻の奇形がは18トリソミー、21トリソミー、三倍体(23本の染色体セットが3つある)などの染色体異常に合併しやすいと報告されています。
ダウン症のエコーでわかる特徴|5.巨舌症
巨舌症とはその名の通り舌が異常に大きい事です。巨舌症は以前は出生後の赤ちゃんで開いた唇の間から舌
が外に出ている状態でした。いつからエコーで胎児の舌が大きいかどうか評価できるのかというと大体14週~26週となります。舌は超音波画像診断で描出しやすい臓器です。
巨舌症はBeckwith-Wiedemann症候群、先天性甲状腺機能低下症、21トリソミーとの関連が指摘されています。巨舌症13例の報告では9例がダウン症だったと報告されています。
ダウン症のエコーでわかる特徴|6.小耳症
小耳症はその名前の通り、耳が小さいという状態です。
胎児の耳の大きさ(耳介長)は妊娠週数とともに大きくなります。耳介の長さは妊娠週数とは無関係に頭の最大横径(大横径)の約1/3だと報告されています。耳が小さい小耳症は、さまざまなお奇形症候群に合併するのですが、特に13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーなどの染色体異常(数的異常)では小耳症を合併する頻度が高いという報告が数多くなされています。外耳長計測値/妊娠週数標準値が0.8以下のときは21トリソミーの可能性が高まります。
21トリソミーのエコーでわかる特徴|7.嚢胞性ヒグローマ
嚢胞性ヒグローマはリンパ管系に発生する奇形で、とくに頚部に多いものです。妊娠のいつから見られるようになるのかというと、大体早ければ妊娠12週頃から赤ちゃんの首のうしろ(項部、うなじ)に認められるようになります。一番おおいのはTumer(ターナー)症候群ですが、他の染色体異常である13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーなどのトリソミーに合併して見られることが多いのも特徴です。嚢胞性ヒグローマの約4割がダウン症です。
ダウン症のエコーでわかる特徴|8.肺低形成
肺の形成が悪い、という症状は13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーなどの奇形症候群で認められます。いつからこの所見がみえてくるのかというと、妊娠後期となります。
ダウン症のエコーでわかる特徴|9.胸水
胎児の胸腔の心臓の入っている縦隔以外のところ、つまり肺と胸郭のあいだのスペースに液体がたまった状態を胎児胸水症といいます。胸水の存在はそれだけで異常ですが、赤ちゃん1/15000と少ないものではあります。赤ちゃんに胸水を合併する異常としては、胎児水腫、先天性嚢胞性疾患、横隔膜ヘルニア、染色体異常(21トリソミー・ターナー症候群)、感染症、Noonan(ヌーナン)症候群などの症候群などたくさんあります。胎児水腫の25~40%には心奇形などの奇形が見られ、ダウン症、ターナー症候群、ヌーナン症候群などでは胎児胸水だけが胎児超音波検査の異常所見として見つかることがありますので注意が必要です。
ダウン症のエコーでわかる特徴|10.心奇形
胎児に心奇形を認めた場合には、染色体異常の可能性が高まります。ダウン症では50%に心臓の奇形を認めます。ダウン症に合併する心奇形としては心房中隔欠損、心室中隔欠損、心内膜欠損、ファロー四徴症(心室中隔欠損+肺動脈狭窄+大動脈騎乗+右室肥大)、大動脈縮窄(だいどうみゃくしゅくさく)などがあります。
心内膜床欠損症
心内膜床という心臓の内部を形成するのに欠かせない組織が不完全に発達することにより左右の心房を隔てる心房中隔、左右の心室を隔てる心室中隔がきちんと形成されないという先天奇形です。心内膜床欠損症の約50%は染色体異常と関連があり、とりわけその染色体異常の半数以上がダウン症です。
実は心室というのは心房を隔てる中隔から発生するため、典型的な心内膜床欠損ではでは心房中隔欠損をきたし、心内膜床からの心室中隔も形成されず、大きな心室中隔欠損を認めることになります。心房と心室の間で逆流しないようにするための弁で左心系には僧帽弁、右心系は三尖弁と言われる大事な弁たちがありますが、こうした房室弁も共通房室弁となるという奇形が伴います。両心室の形成されるバランスがわるくて、一方の心室が低形成となる場合もあります。
心内膜床欠損症は不整脈も来します。心臓の「収縮しなさい」という指令(刺激)は心房から心室へと順番に伝わります。互いに勝手に収縮したり拡張したりすると心臓の一番大事なポンプ機能が果たせません。ポンプは中身がいっぱいになったタイミングで押さないと(収縮しないと)空うちになって無意味ですよね。心内膜床欠損症では心房から心室に順番に伝わるはずの刺激を伝導する繊維の形成もうまくいかないため、房室ブロック(心房と心室の間で信号がブロックされる)という重篤な不整脈を合併します。
心内膜床欠損だけが心奇形としてあり、胎児水腫の合併がない場合、生後に心臓の手術をするなどの治療により85~90%以上の生存率が期待できます。どちらかの心室の低形成があったり、大動脈、肺動脈どちらかの動脈が極端に細い場合は根治術は大変困難となります。
大動脈縮窄症
大動脈弓の一部分に狭窄した部分ができる疾患です。できやすい部位としては動脈管の近くで、左鎖骨下動脈と動脈管の間です。大動脈縮窄症(coarctationofaorta :CoA)には他の心内奇形を伴わない単純型と、他の心内奇形を伴う複合型がありますが、複合型の胎児のほうが多いとされています。大動脈縮窄には、大動脈二尖弁を85%で伴います。本来、左心室と大動脈を隔てる大動脈弁は三尖弁なのですが、これが1枚足らなくて二尖弁となるものです。
心房中隔欠損
心房中陥欠損が単独の心奇形である赤ちゃんでは胎内にいる間も出生直後にも症状がでることはまれで、自然閉鎖もよくあります。
心室中隔欠損
心室中隔欠損は心奇形のなかで30%を占める最も多いものです。
胎児の間は左右の心室の圧が同じなので、左右の心室を隔てる中隔に欠損があっても、他の心奇形を合併していなければなんの症状もありません。大きな欠損がある場合は、生後には左心室は全身に血液を送り出して届けないといけなくなり、圧が左心室>>右心室となるため、圧力が低い右心室に、圧力が高い左心室から欠損口を通って血液が流れてしまい(左右シャントといいます)、この量がおおいと生後早期に心不全を起こすことがあります。
心室中隔欠損が単独の場合には染色体異常との関連性はそれほど高くありませんが、心室中陥欠損に心臓以外の部位の奇形を合併した場合には、染色体異常の確率は40%と高くなります。
3㎜未満の欠損口であれば自然閉鎖も見られます。
ファロー四徴症
ファロー四徴症とは心室中隔欠損、肺動脈狭窄、大動脈騎乗。右室肥大を合併した奇形ですが、胎児のときには肺に送らないといけない血液が少ないので右室肥大はほとんどありません。大動脈と肺動脈はらせん状の隔壁ができて分かれるのですが、そのらせん中隔のねじれが足らないため、大動脈のはじまりが心室中隔の上にまたがってしまうのです。Fallot四徴症は18トリソミーや21トリソミーに多い心奇形です。21q1.2微小欠失症例でFallot四徴症が認められたという報告もあります。
肺動脈の形成が悪すぎる赤ちゃんでは胎児水腫に進行することがあります。胎児水腫さえなければ分娩方法は児が成熟していれば自然分娩で問題ありません。
ダウン症のエコーでわかる特徴|13.食道閉鎖
食道閉鎖もまたダウン症にみられる先天異常ですが、食道閉鎖がいつから赤ちゃんのエコーで評価できるようになるのかというと、妊娠18週以降です。このころになると赤ちゃんが飲み込む羊水が食道を通って胃や十二指腸に到達し、胃の内容物ができるため、胃が膨らんだり、胃の内容物が十二指腸に押し出されて胃が小さくなったりするのが見えるようになってきます。
食道閉鎖もまた染色体異常の合併が多いエコーの異常所見で、染色体異常の種類としては18トリソミーと21トリソミーがあります。食道閉鎖も合併する場合は21トリソミーの可能性が高くなります。
ダウン症のエコーでわかる特徴|14.十二指腸閉鎖
十二指腸閉鎖の30%にダウン症を合併するのですが、これは新生児の場合なので胎児の場合はもっと高率この所見がエコーでいつから見つかるのかというと、早ければ妊娠14週あるいは15週、大体は妊娠第3三半期(後期)にいたって初めて明らかになるのが通常です。ミネルバクリニックでも以前、妊娠23週で食道閉鎖を指摘されて赤ちゃんのダウン症の可能性を知りたいとNIPTを受けた方がいて、やはり、21トリソミーでした。
完全型十二指腸閉鎖は超音波検査では横断像(赤ちゃんの横切り画面)で上腹部にdouble bubbleと呼ばれる2個の明らかな嚢胞像を示すため、発見は容易でしょう。上の画像はdouble bubble signを示す胎児のものです。十二指腸閉鎖は心奇形の合併する確率が約40%と高く、十二指腸閉鎖にダウン症と心奇形の両方を合併することも15%程度と言われています。
また、染色体異常がなくて合併奇形もない単独の十二指腸閉鎖の予後(医学上の見通し)がよさそうな赤ちゃんで突然n子宮内胎児死亡した例も報告されています。原因としては食道・冑・十二指腸の壁が過度に引き延ばされることで迷走神経の働きが強くなってしまい、高度の徐脈や心停止をおこすことが考えられます。一見問題が小さそうな単純型十二指腸閉鎖が意外に注意が必要だとおいうことがわかります。
ダウン症のエコーでわかる特徴|14.高輝度腸管像
輝度というのは、エコーの強さのことです。エコー画面はカラーでなければ白黒で表示されていますが、輝度が高いというのは、白が強いということです。妊娠中期は胎児の小腸内腔が狭く、かつ羊水自体は14週ごろから赤ちゃんが飲み込む(嚥下する)ようになるのですが、嚥下される羊水量もこの時期はそう多くないため、胎便は濃くなりがちで、このため妊娠中期は腸管のエコー像が高輝度になりがちと考えられています。それでは、どれくらいの輝度だと高いというのかという疑問が出てくると思いますが、大体は赤ちゃんの骨と同じくらいの強さだと「高輝度」と判定します。
高輝度腸管像がみられる確率は全妊娠の約0.5%とされています。胎児に染色体異常、腸閉塞、先天性子宮内感染症、子宮内胎児発育遅延、子宮内胎児死亡、嚢胞性線維症などの疾患や状態があると高輝度腸管像がみられることが多くなります。骨と同じくらいの輝度が腸管にみられる赤ちゃんでは、約1/4にダウン症がみられます。
ダウン症のエコーでわかる特徴|15.臍帯ヘルニア
臍帯ヘルニアは実は最初は赤ちゃん全員が持っています。妊娠第1三半期(初期)では生理的膳帯ヘルニアと呼ばれる現象があるからです。妊娠7週末から8週、中腸(腸をつくるもとになります)が急速に発育してループを形成し、臍帯の付着部位から臍帯内へと脱出してヘルニアを必ず生じます。この時点では肝臓と腎臓が赤ちゃんのお腹のほとんどの部分を占めているため、腸が入るスペースがないからわざとヘルニアという形で外に出しているのです。それではいつから腸が腹腔内に収まっていくのかというと、妊娠12週ころになります。したがって、異常な臍帯ヘルニアをエコーで評価できるのは少なくとも13週以降となります。
しかし、生理的ヘルニアは径7mmより大きくなることはないので、妊娠8~12週でも病的な臍帯ヘルニアの診断は可能です。上の画像も7ミリを超えているので、異常な臍帯ヘルニアだと判断できます。
臍帯ヘルニアはよく染色体異常を合併することが知られていますが、染色体異常の合併する確率は40%と報告されています、臍帯ヘルニアの合併する染色体異常は18トリソミーがもっとも多く、次に13トリソミーとなります。
ダウン症のエコーでわかる特徴|16.停留精巣
停留精巣はエコーで見える陰嚢の中に精巣が描出されないことで明らかになります。精巣は妊娠末期にならないと下降しないこともあります。殆どの停留精巣は単独、つまり停留精巣だけが赤ちゃんに存在する、という状態ですが、停留精巣を合併する症候群には、prune-belly症候群、Noonan症候群、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーなどがあります。
ダウン症のエコーでわかる特徴|17.非免疫性胎児水腫
胎児水腫はこれだけで何かを意味するものではない、つまり非特異的なものです。皮膚や皮下組織に浮腫があるだけでは胎児水腫とは言いません。
胎児水腫の分類
胎児水腫には免疫性と非免疫性の2種類があります。
免疫性胎児水腫
免疫性胎児水腫は、母親がRhマイナスの血液型で赤ちゃんがRhプラスというRh血液型不適合妊娠など同種免疫(ヒトとヒトとかブタとブタとか生物の種類が同じ2つの個体のあいだでおこる免疫反応をいいます)が原因でみられるものを言います。Ph不適合妊娠があると、母胎胎盤から赤ちゃんのPhプラスの赤血球を壊す抗体がどんどん移行してしまい、赤ちゃんの赤血球がどんどん破壊されてしまいます。このため、あかちゃんはどんどん赤血球を作らないと酸素が体に足らなくなるため、赤血球をつくるもとになる赤芽球が以上に増加するという胎児赤芽球症を引き起こします。赤芽球などの血球が血管の中で増えると血液がねばねば(粘調)になってしまい、流れが悪くなることで胎児水腫がおこります。
非免疫性胎児水腫
免疫性以外の原因でおこる胎児水腫をこういいます。Rh不適合妊娠の妊娠管理が行き届いたため、現在では胎児水腫の9割は非免疫性です。発生頻度(発生する確率)は、3千~4千分娩に1人です。非免疫性胎児水腫の原因疾患は非常に多く、原因が分からない場合も多くなっています。心臓血管系の異常が約20%、染色体異常が約15%、胎児の胸部に何らかの異常がある症例が10%程度、子宮内胎児感染が約10%、双胎間輸血症候群が約5%、原因が分からない特発性が約20%となっています。
染色体異常は妊娠18週までにみられる胎児水腫では特に頻度が高くなり、なかでもダウン症と関連があります。胎児水腫を発症しやすい染色体異常にはダウン症のほかにもターナー症候群、18トリソミー、13トリソミー、三倍体(染色体23本のセットが3つある)などがあります。
ダウン症胎児のエコーでわかる特徴|18.軽度脳室拡大
側脳室の幅が10mmあると脳室拡大を疑います。軽度の側脳室拡大は正常な赤ちゃんでも200人に一人に認められます。染色体異常があると、20人に一人以上となるのでダウン症をはじめとする染色体異常のリスクが増します。21トリソミー胎児では約5%で脳室拡大を認めます。
頭蓋骨の横幅を表すBPD(Biparietal Diameter)と頭蓋骨の縦幅を表すFOD(Front Occipital Diameter)の2つの数字を使って測定します。エコー検査の場合はBPD(Biparietal Diameter)で判別をします。BPDやFODが平均値より10%以上解離があるとダウン症の疑いがあります。下の表に通常の胎児のBPDを妊娠週数で区切っていますので参考にしてください。
妊娠週数 | 平均的な胎児のBPD |
---|---|
8~11週 | 15~20mm |
12~15週 | 15~35mm |
16~19週 | 25~55mm |
20~23週 | 40~60mm |
24~27週 | 55~75mm |
28~31週 | 65~80mm |
32~36週 | 75~90mm |
37~41週 | 80~98mm |
ダウン症胎児のエコーでわかる特徴|19.心腔内輝点
輝度が高い、はエコーで白くキラキラ見えることを言います。心腔内輝点は文字通り心臓のなかに輝度の高い点が認められるという所見です。
心腔内輝点は正常胎児よりも染色体異常児に多くみられるのですが、正常胎児でも妊娠中期に30人に一人くらいでみられる割と一般的な所見です。アジア人では3倍頻度が高くなるため、日本人の胎児では10人に一人みられることになります。
ダウン症胎児のエコーでわかる特徴|20.腎盂拡大
腎盂とは腎臓に動静脈・尿管が入ったり出たりする出入口のことで、軽度の腎盂の拡大)は妊娠中期に行われる妊婦検診の普通の超音波胎児検査で比較的よく見つかる所見です。しかし、染色体異常、とくに21トリソミーのハイリスク所見でもあります。単独、つまりほかに胎児にエコー上の異常所見がない場合はリスクは高くならないという意見も多いのですが、ミネルバクリニックの患者さんの中にはこの「腎盂拡大」つまり胎児の水腎症しかなくて、実際にはダウン症だった方もいます。
ダウン症胎児のエコーでわかる特徴|21.四肢短縮
ダウン症児は短躯(体幹が短い)で近位長管骨(大腿骨・上腕骨)の短縮が見られるのが特徴とされています。大腿骨・上腕骨の短縮は、多くの産婦人科病院で胎児の染色体異常の可能性がある所見として検査の対象となっています。
また、21トリソミーの児には斜指もよくみられます。斜指は指の3つある骨の真ん中の部分、つまり中節骨が短くて、親指側に曲がっていることが多い特徴があります。またダウン症児では骨盤角拡大(左右の腸骨のあいだが開く)などの特徴的所見がありますが、同じ骨の異常でもこれらが妊娠中期の超音波検査で積極的に指摘されることは殆どありません。
まとめ
ダウン症(21トリソミー)はNIPT(新型出生前診断)の対象でもあり、また、先天異常の中では最も多いことからその認知度はもともと高いものでしょう。NIPTとは赤ちゃんの胎盤(絨毛)から母親の血液に流れるDNAの断片を検査することで赤ちゃんの染色体異常や遺伝子疾患を知ることができる検査です。NIPTで陽性になると羊水検査や絨毛検査などの確定的検査が必要となります。
ダウン症にみられる代表的なエコーでわかる特徴的な所見を網羅的に述べてみました。このページをみたみなさんは、エコーでみられる特徴的な異常所見の出現する時期が、NIPTよりだいぶ遅いことがわかると思います。
ダウン症などの染色体異常はNIPTなどの出生前診断で出産前に検査することができるため、妊娠初期の段階で検査を受けて、出産に向けて準備を進めることが可能です。また、出生前診断につながる検査はしっかりと家族で話し合って受ける必要があります。陽性になったとき、きちんとバックアップを受けられる体制で受けないと、特に家族に内緒で受けて陽性になったりすると混乱を招くからです。
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