目次
- 1 ダウン症はいつわかる?出生前・出生後の違いと診断の流れ
- 1.1 1. まず結論:ダウン症は「いつ・どうやって」わかる?
- 1.2 2. 出生前にダウン症が「わかる」場合:NIPT→確定診断という流れ
- 1.3 3. ダウン症が生まれてから「わかる」場合:出生後診断の流れ
- 1.4 4. 出生前と出生後の違いの本質:変わるのは「時間」と「準備」です
- 1.5 5. 検査の見取り図:NIPT・羊水検査・CMAを混同しない
- 1.6 6. 精度と解釈:NIPTが陰性でも「後からわかる?」の答え方
- 1.7 7. いつから受けられる?検査の流れと「判定不能」への備え
- 1.8 8. 陽性・判定不能の次にすること:確定検査とカウンセリング
- 1.9 9. ミネルバクリニックの体制:正確性と心の安全を最優先
- 1.10 まとめ|出生前と出生後、どちらも「準備の形」が違うだけ
- 1.11 よくある質問(FAQ)
- 1.12 関連記事
- 1.13 参考文献
ダウン症はいつわかる?
出生前・出生後の違いと診断の流れ
Q. ダウン症はいつわかりますか?出生前と出生後で何が違いますか?
A. 妊娠中はNIPTなどで「可能性(リスク)」として評価し、出生前の確定診断は羊水検査・絨毛検査です。出生後は赤ちゃんの血液検査で確定診断します。
違いは「検査の名前」ではなく、心の準備・医療の準備・意思決定の時間がどう変わるかにあります。本記事では、出生前にわかること・わからないこと、生まれてからわかるケース、そして迷ったときの考え方を専門医の視点で整理します。
- ➤出生前でわかる → NIPTはスクリーニング、確定診断は羊水・絨毛検査
- ➤出生後でわかる → 血液検査で確定診断、支援の設計へつなぐ
- ➤わかる/わからない → 出生前に未来を断定できない領域の扱い
- ➤陰性でも後から? → 結果の意味を取り違えないためのポイント
- ➤迷ったとき → 「受ける/受けない」を誘導せず整理する視点
1. まず結論:ダウン症は「いつ・どうやって」わかる?
「ダウン症はいつわかるの?」と検索するとき、多くの方が本当は“いつわかるか”より、“その後どうなるか”が不安なのだと思います。まず、医学的に混同しやすいポイントを整理します。
【結論】妊娠中はNIPTなどでダウン症(21トリソミー)の「可能性(リスク)」を評価できます。出生前の確定診断は、羊水検査・絨毛検査などです。生まれてからは、赤ちゃんの血液検査で確定診断します。
スクリーニング検査は「可能性(リスク)」を評価する検査です。結果が陽性でも確定ではなく、陰性でも医学的にゼロを保証するものではありません。一方で確定診断は、検査結果として「診断(確定)」を行うものです。NIPTはスクリーニング、羊水検査・絨毛検査は出生前の確定診断、出生後は血液検査で確定診断という位置づけになります。
2. 出生前にダウン症が「わかる」場合:NIPT→確定診断という流れ
出生前にわかる、という言葉は便利ですが、実際には段階があります。まずNIPTで評価し、必要があれば出生前の確定診断へ進みます。ここで大切なのは、検査は結論を強制するものではないということです。
出生前にわかることの利点は、医療面だけでなく心の準備・家族での話し合い・支援体制の確認など「時間を使えること」です。一方で、結果を待つ期間や情報の解釈が心理的負担になることもあります。だからこそ、遺伝カウンセリングは「結論を出す場」ではなく、意思決定を支える場であることが大切です。
当院では、短期間で結果を出すことよりも正確性を最優先に考えています。生涯に関わる検査だからこそ、結果の数字だけで心が揺れないよう、解釈と次の一手まで一緒に整理します。
🩺 院長コラム【「早さ」より「正確性」を優先する理由】
妊娠中の不安は、数字が1つ増えただけでも増幅します。だから私は、検査の世界では「速さ」よりも正確性を大切にしたいのです。誤った陽性(偽陽性)も、見逃し(偽陰性)も、ご家族の心に深い傷を残します。
当院が目指しているのは「結果を出すこと」ではなく、結果を受け止める時間と、受け止めた後の支えまで含めた医療です。どんな結果でも、孤独にしない。そのために遺伝カウンセリングを大切にしています。
3. ダウン症が生まれてから「わかる」場合:出生後診断の流れ
ダウン症は、生まれてから顔貌の特徴や筋緊張の低下、合併症の評価などをきっかけに疑われ、検査で確定診断されることがあります。出生後診断は、妊娠中の検査がなかったから「遅い」「悪い」という意味ではありません。選択肢の取り方と、準備の順番が変わるだけです。
出生後は、出生時〜新生児期に身体所見や合併症の評価から疑われることがあります(妊娠中に指摘がなくても、出生後に気づくことは珍しくありません)。確定診断は、赤ちゃんの血液で染色体検査を行います。一般にGバンド法で染色体の全体像を確認し、必要に応じてCMA(染色体マイクロアレイ)でより細かい欠失・重複(CNV)を評価します。Gバンド法では微小欠失の検出が困難なことが多い点も重要です。
出生後に診断がついた場合、意思決定の中心は「検査を受けるかどうか」から、「医療的なフォロー」「合併症の評価」「支援の設計」へ移ります。ここで大切なのは、診断名よりも支援にアクセスすることです。
4. 出生前と出生後の違いの本質:変わるのは「時間」と「準備」です
出生前にわかる場合と、生まれてからわかる場合で大きく変わるのは、病気そのものではなく“時間の持ち方”です。
| 観点 | 出生前にわかる | 生まれてからわかる |
|---|---|---|
| 情報の順番 | 妊娠中にリスク評価→必要なら出生前の確定診断 | 出生後に疑い→血液検査で確定診断 |
| 家族の時間 | 準備・相談・情報整理の時間を確保しやすい | 準備は後追いになりやすいが、現実に沿った支援へ移りやすい |
| 心理的負担 | 待ち時間と不確実性が負担になることがある | 突然の情報で混乱しやすいが、次の行動が具体化しやすい |
| 医療の動き方 | 確定診断の選択肢、妊娠経過中の支援、出産に向けた準備 | 合併症評価・医療フォロー・支援制度の設計 |
💡 大切な視点:出生前診断には「知る権利」と同じだけ「知らないでいる権利」があります。どちらが正しい、という話ではありません。医師は決定者ではなく、情報提供者・意思決定支援者です。選択は常にご家族に委ねられます。
5. 検査の見取り図:NIPT・羊水検査・CMAを混同しない
ここは誤解が起きやすいので、丁寧に整理します。NIPTは出生前の検査ですが、診断(確定)ではありません。確定診断は別の検査です。
| 分類 | 検査 | 方法 | 位置づけ | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| スクリーニング | NIPT | 採血 | 確定診断ではない | 結果は「可能性」。陽性は出生前の確定診断へ |
| 超音波(エコー)など | エコー | スクリーニング | 所見の有無で評価。染色体の確定診断はできません | |
| 確定診断(出生前) | 羊水検査 | 穿刺 | 出生前の確定診断 | Gバンド法で全体像、必要に応じCMA |
| 絨毛検査 | 穿刺 | 出生前の確定診断 | 妊娠早期に実施されることが多い | |
| 羊水検査+CMA | 穿刺+解析 | 確定診断 | Gバンド法では検出できない微小欠失を確定診断可能。学会指針では原則として超音波で構造異常がある場合などが対象 |
💡 用語解説:CMA(染色体マイクロアレイ)とCNV
CMA(Chromosomal Microarray Analysis)は、染色体の欠失や重複などのコピー数変化(CNV)を検出しやすい検査です。表現型(症状)の幅が広い所見も含まれるため、結果の意味づけには専門的な解釈が必要です。国際的にも、生命予後に直結しない所見をどこまで出生前に検出すべきかは議論が続いています。
6. 精度と解釈:NIPTが陰性でも「後からわかる?」の答え方
「NIPTで陰性なら安心できますか?」という質問は、とても自然です。ただ、ここで一番危険なのは数字の意味を取り違えたまま心を預けてしまうことです。
【結論】陰性は「その条件でダウン症のリスクが低い」という評価であり、医学的にゼロを保証する意味ではありません。
一方で、必要以上に怖がる必要もありません。大切なのは、結果を“どう解釈し、次に何をするか”です。
臨床現場でよく起きる誤解は、「陰性=絶対に大丈夫」と受け止めてしまうことです。たとえば、健診の超音波で気になる所見が出たときに「でもNIPTは陰性でした」と一人で抱え込み、相談が遅れてしまうケースがあります。陰性は“安心材料”にはなりますが、その後の情報(超音波所見・妊娠経過)と合わせて整理することが大切です。
補足(必要な方へ):陽性的中率(PPV)は「事前確率(母体年齢や背景リスク)」の影響を強く受けます。事前確率が低いほど、同じ検査精度でも偽陽性の割合が相対的に増えるため、数字は必ず個別条件で解釈します。
当院では、検査精度の根拠を可能な範囲で公開し、解釈も含めて説明しています。
スーパーNIPTのエビデンスはこちら、COATE法(ダイヤモンド/NEWプレミアム)に関するエビデンスはこちらをご参照ください。
- ➤NIPTは確定診断ではありません(陽性でも確定ではなく、出生前の確定診断は羊水検査・絨毛検査です)
- ➤胎盤由来DNAを解析するため、胎盤モザイクなどで解釈が難しいことがあります
- ➤「不安を小さくするための情報整理」を遺伝カウンセリングで一緒に行います
7. いつから受けられる?検査の流れと「判定不能」への備え
妊娠中の検査を考えるとき、現実的に気になるのが「何週から」「結果はいつ」「判定不能は?」という点だと思います。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 検査開始時期 | 一般的に妊娠9〜10週以降(当院は妊娠6〜8週の早期NIPTを臨床研究として実施することがあります) |
| 結果 | 通常は採血から約1〜2週間 |
| 出生前の確定診断(実施時期) | 一般に、絨毛検査は妊娠初期(施設により異なります)、羊水検査は妊娠中期以降に行われることが多い検査です。実施可能な時期や方法は妊娠週数・体調・施設の体制で異なるため、詳しくは羊水検査・絨毛検査の解説をご確認ください。 |
| 判定不能(再検査) | 胎児分画(胎児ゲノム率)が低い場合などに起こり得ます。当院のスーパーNIPT/ダイヤモンドプラン/NEWプレミアムプランは必要最低胎児分画は3%です。 |
💡 用語解説:胎児分画(胎児ゲノム率)
母体血のcfDNAのうち、胎児(胎盤)由来の割合を指します。胎児分画が低いと解析が難しくなり、判定不能や再検査となることがあります。数字だけに振り回されず、状況を一緒に整理していきましょう。
8. 陽性・判定不能の次にすること:確定検査とカウンセリング
結果を待つ時間は、想像以上に長く感じます。まずお伝えしたいのは、次に取れる行動は必ずあるということです。
【結論】NIPTの陽性は「確定」ではありません。出生前の確定診断は羊水検査・絨毛検査です。微小欠失・重複の確定診断は「羊水検査+CMA」で行い、Gバンド法では検出できない微小欠失を確定診断可能です。ただし学会指針では、原則として超音波で構造異常がある場合などが対象とされています。
💡 「確定検査」の前に大切なこと
- ➤検査結果は“情報”であり、結論を迫るものではありません
- ➤知る権利・知らないでいる権利を含め、選択は常にご家族に委ねられます
- ➤医師の役割は、情報提供者であり意思決定支援者です(非指示的支援)
出生前の確定診断について詳しく知りたい方は、羊水検査・絨毛検査の解説ページをご参照ください。
9. ミネルバクリニックの体制:正確性と心の安全を最優先
日本には認証施設(大学病院中心)と非認証施設(民間主体)があります。非認証=質が低い、という誤解も根強いのですが、実際には体制と専門性の中身が重要です。
当院は非認証施設ですが、臨床遺伝専門医が最初から最後まで担当し、遺伝カウンセリングからNIPT判定、陽性後の対応まで一貫して行う体制を整えています。さらに2025年6月から確定検査(羊水・絨毛検査)も院内で実施できる体制を整えました。国内でも限られた医療機関にしかない体制として、転院が不要な分、不安の“空白の時間”を短くできることが大きなメリットです。
🧬 臨床遺伝専門医が一貫担当
臨床遺伝専門医(2011年取得)が、30年以上の医師経験の中でのべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた経験を踏まえ、情報提供と意思決定支援を行います。
🏥 院内で確定検査まで
羊水検査・絨毛検査を院内で実施可能です。転院による不安時間を短くし、必要な医療へつなぎます。
🔬 検査技術の違いを前提に説明
同じNIPTでも、技術や解析体制の違いで精度は変わり得ます。だからこそ当院では、正確性と、結果後のフォロー(心理的・医学的ケア)を重視します。
💰 互助会制度による費用面の備え
互助会制度(互助会費8,000円)はNIPT受検者全員に適用され、万一陽性となり出生前の確定診断が必要になった場合の羊水検査費用が全額補助(上限なし)されます。詳細は互助会の案内ページをご確認ください。
🩺 院長コラム【「話を聞いてから決める」ための時間】
当院ではお一人あたり1.5時間の枠をお取りし、検査前に十分な遺伝カウンセリングを行います。検査の意味、結果の解釈、陽性だった場合の選択肢など、不安なまま検査を受けることがないように、丁寧に整理します。
どの検査を選ぶかは、ご家族の価値観と優先順位によって変わります。私は医師として誘導しません。「理解したうえで選べる状態」を作ることが、私の仕事です。
一人で抱え込まないでください
「出生前に知る」か「生まれてから向き合う」か。どちらの道でも、
正しい情報を整理し、心を守るための準備が必要です。
※ご相談は可能ですが、当院受検者へのサポートを優先します
まとめ|出生前と出生後、どちらも「準備の形」が違うだけ
- ➤出生前にわかる:NIPTでリスク評価し、必要なら出生前の確定診断へ
- ➤生まれてからわかる:血液検査で確定診断し、支援を整えていく
- ➤わからないこと:出生前に生活や発達を断定することはできません
- ➤大切なのは、結果や情報を一人で抱え込まないことです
出生前診断を「受けるべきかどうか」に正解はありません。大切なのは、ご家族が納得できるだけの情報を持った上で選ぶことです。迷ったときは、まず「理解できる状態」を作るところから始めてください。
よくある質問(FAQ)
🏥 不安を、ひとりで抱えないために
出生前診断は「検査」ですが、実際には「人生の意思決定」の入口になることがあります。
だからこそ、私たちは正確性と心の安全を最優先にします。
関連記事
参考文献
- [1] ACOG. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities (Practice Bulletin No. 226). [ACOG]
- [2] Gil MM, et al. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for fetal aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2017. [PubMed]
- [3] ISPD. Guidance/Position Statements on cfDNA screening. [ISPD]
- [4] ACMG. Clinical practice resources and policy statements (prenatal screening/testing). [ACMG]
- [5] NIH/MedlinePlus. Down syndrome. [NIH]
- [6] ACMG. Chromosomal microarray standards and clinical utility. [PubMed]
- [7] 厚生労働省「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」[公式サイト]


