目次
ダウン症の確定診断とは?
NIPT陽性後の検査とリスクを専門医が解説
Q. NIPTで「ダウン症の可能性あり」と言われました。確定診断とは何ですか?
A. ダウン症(21トリソミー)を確定させるには、羊水検査や絨毛検査といった「出生前の確定診断」が必要です。
NIPTはスクリーニング検査であり、陽性=確定ではありません。確定診断では、胎児の染色体を直接調べます。
- ➤確定診断の意味と、NIPTとの違い
- ➤羊水検査・絨毛検査の具体的な内容
- ➤流産リスクの実際
- ➤出生前診断と出生後診断の違い
1. ダウン症の「確定診断」とは何か
「陽性でした」と言われた瞬間、頭が真っ白になる方も少なくありません。まずお伝えしたいのは、NIPT陽性は“確定”ではないということです。
【結論】確定診断とは、胎児の染色体を直接調べて、21トリソミー(ダウン症)であるかどうかを医学的に確定させる検査のことです。
出生前の確定診断は、羊水検査・絨毛検査です。ここで初めて「診断」という言葉が使えます。
ダウン症はどのように診断されるのか(染色体の仕組み)
「なぜダウン症とわかるのですか?」と聞かれることがあります。ここを理解すると、確定診断の意味がよりはっきりします。
【結論】
ダウン症(21トリソミー)は、21番染色体が通常2本のところ3本存在することで診断されます。
私たちの細胞には、通常46本(23対)の染色体があります。21番染色体が1本多い状態を「21トリソミー」と呼びます。羊水検査や絨毛検査では、この染色体の本数を直接確認します。
補足:ダウン症には、標準型(トリソミー型)、転座型、モザイク型があります。確定診断では、その型まで含めて評価されます。
このように、確定診断は「可能性」ではなく、染色体を直接見て判断する検査です。ここがNIPTとの本質的な違いです。
2. NIPT陽性後の流れ
陽性と聞いたら、すぐに何か決断しなければいけないような気持ちになりますよね。でも、医療は段階的に進みます。
基本的な流れ:
① 遺伝カウンセリングで結果の意味を整理
② 出生前の確定診断(羊水検査または絨毛検査)
③ 必要に応じて羊水検査+CMA
羊水検査+CMAは、Gバンド法では検出できない微小欠失を確定診断可能です。学会指針では原則として超音波で構造異常がある場合などが対象とされています。
確定診断は急いで決めるものではありません。情報を整理し、納得できる状態で次に進むことが大切です。
確定診断を「受けない」という選択も医学的に間違いではありません。検査を受けることも、受けないことも、どちらも尊重されるべき意思決定です。
3. ダウン症の確定診断の方法(羊水検査・絨毛検査の違い)
確定診断の方法は?
方法は大きく2つ、羊水検査と絨毛検査です。どちらも胎児由来の細胞を直接調べる検査です。
| 検査 | 時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 羊水検査 | 妊娠15週以降 | 最も一般的な出生前確定診断 |
| 絨毛検査 | 妊娠11〜13週頃 | 妊娠早期に実施できる出生前確定診断 |
どちらも「出生前の確定診断」です。違いは主に実施できる妊娠週数と、採取する組織(羊水か絨毛か)です。どちらを選ぶかは妊娠週数や医学的背景によって異なり、遺伝カウンセリングで丁寧に整理していきます。
妊娠週数によっては、絨毛検査が可能な時期、羊水検査が可能な時期が異なります。時間的な制約も含めて整理することが重要です。
4. 流産リスクはどれくらいあるのか
確定診断を考えるとき、多くの方が最も心配されるのが流産リスクです。「検査で赤ちゃんに何か起きたらどうしよう」と感じるのは当然のことです。
【結論】羊水検査・絨毛検査には流産の可能性はゼロではありませんが、近年は手技や管理体制の向上により、そのリスクは低下していると報告されています。
文献上はおおよそ0.1〜0.3%前後とされることが多いですが、施設や症例背景によって変わります。数字だけで判断するのではなく、ご自身の状況でどう解釈すべきかを一緒に考えることが大切です。
文献ではおおよそ0.1〜0.3%前後と報告されることが多いですが、施設や症例背景によって異なります。
🩺 院長コラム【数字の裏にある「心の重さ」】
0.1%という数字は、医学的には低いと説明されることがあります。でも、妊娠中のご家族にとっては「0か100か」に感じられるものです。
だからこそ私は、単に「低いですよ」とは言いません。あなたがその数字をどう受け止めるかを一緒に考えることが、遺伝カウンセリングの本質だと思っています。
私は臨床遺伝専門医として30年以上医療に携わり、のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきました。確定診断という言葉の重みを、現場で何度も見てきました。
5. 出生前診断と出生後診断を分けて考える
「今、妊娠中に診断しなければならない」と思い込むと、心はとても追い詰められます。けれども、診断には出生後という選択肢もあります。
出生前診断
- ➤NIPT(スクリーニング)
- ➤羊水検査・絨毛検査(確定診断)
- ➤必要に応じて羊水検査+CMA
出生後診断
- ➤血液による染色体検査
- ➤CMAによる微小欠失の評価
- ➤診断後の医療・支援体制の整備
出生前に知ることにも意味がありますし、出生後に診断して支援を整える道もあります。どちらが正しいというものではありません。決定はご家族のものです。
出生前診断の全体像(NIPT・羊水検査・絨毛検査の違い)を整理したい方は、出生前診断の総論ページもあわせてご覧ください。
確定診断後の選択肢について
確定診断が出たあと、「これからどうすればいいのか」と強い不安に襲われる方が少なくありません。ここで大切なのは、選択肢は一つではないということです。
【重要】
医師は決定者ではありません。どの選択をするかは、常にご家族の意思によって決まります。
- ➤妊娠を継続し、出産後の医療・支援体制を整える
- ➤専門施設での分娩準備を行う
- ➤ご家族で十分に話し合い、医学的・社会的支援を踏まえて方向性を決める
確定診断は「ゴール」ではなく、情報がそろった状態から考え始めるための出発点です。
どの選択をしても、医療は支えます。ひとりで抱え込まず、遺伝カウンセリングで整理しながら進んでいきましょう。


