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NIPTによる22q11.2欠失症候群検査を受ける前に知っておきたい5つの重要ポイント

NIPTによる22q11.2欠失症候群検査を受ける前に知っておきたい5つの重要ポイント | ミネルバクリニック

NIPTによる22q11.2欠失症候群検査を受ける前に知っておきたい5つの重要ポイント

この記事でわかること

  • 22q11.2欠失症候群の基本的な知識と症状
  • 従来のNIPT検査における陽性的中率の問題点
  • 偽陽性が引き起こす「診断の連鎖」とその影響
  • 最新のCOATE法による検査精度の向上
  • 適切な検査選択のための重要なポイント

はじめに

妊娠中の出生前検査として広く普及しているNIPT(非侵襲的出生前検査)。ダウン症候群などの主要な染色体異常に対しては高い精度を誇るこの検査ですが、近年注目を集めている22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)の検査においては、いくつかの重要な課題があることをご存知でしょうか。

この記事では、NIPTによる22q11.2欠失症候群検査の現状と問題点について、最新の研究データを基に詳しく解説します。

22q11.2欠失症候群とは

22q11.2欠失症候群は、22番染色体の長腕11.2領域の微小な欠失によって引き起こされる遺伝性疾患です。出生頻度は約2,000~4,000人に1人とされ、ダウン症候群に次いで2番目に多い発達遅延の原因となっています。

主な症状

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心臓奇形

ファロー四徴症、大動脈弓離断など生命に関わる心疾患が約80%の患者に見られます。

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口蓋裂・言語障害

口蓋裂や軟口蓋閉鎖不全により、言語・構音障害や摂食困難が生じることがあります。

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免疫不全

胸腺低形成による感染症リスクの増加、免疫系の発達異常が見られます。

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発達・学習障害

軽度の知的障害や学習障害、精神疾患(統合失調症、自閉スペクトラム症、ADHD)のリスクが高まります。

重要なポイント:約90%の症例は新規発生(de novo)であり、母体の年齢はリスク因子ではありません。つまり、どなたにでも起こりうる疾患です。

NIPTによる22q11.2欠失検査の深刻な問題点

1. 極めて低い陽性的中率(PPV)

最も重要な問題は、陽性的中率の低さです。

多くのNIPTクリニックでの22q11.2欠失症候群の陽性的中率は52.6~53%程度にとどまっています。これは陽性結果の約半分が偽陽性であることを意味します。

染色体異常の種類 陽性適中率(PPV) 偽陽性率
21トリソミー(ダウン症候群) 95%以上 5%未満
18・13トリソミー 70-80%以上 20-30%
22q11.2欠失症候群 52.6-53% 約47%

2. 偽陽性が引き起こす「診断の連鎖」

低い陽性的中率は、以下のような深刻な問題を引き起こします:

不必要な侵襲的検査の増加

  • 偽陽性結果により、確定診断のための羊水検査や絨毛検査を受ける方が増加
  • これらの検査には流産リスク(羊水検査:約0.2%、絨毛検査:約0.3-0.5%)が伴います

深刻な心理的負担

陽性結果を受けた妊婦様とご家族は、確定診断を待つ間に極度の不安と精神的苦痛を経験します。研究では「新しく、恐ろしく、胸が張り裂けそうな」感情に直面することが報告されています。

3. 偽陽性の主な原因

胎盤限局性モザイク現象(CPM)

胎盤の染色体構成が胎児と異なる場合、NIPTは胎盤の異常を検出するものの、胎児は実際には正常である可能性があります。

母体由来DNAの影響

母体自身のモザイク現象や染色体異常、腫瘍などが胎児の異常として誤って検出されることがあります。

技術的限界

微小欠失のサイズや胎児DNAの割合の低さにより、検出精度に限界があります。

バニシングツイン症候群

初期に双胎だったが一方が流産した場合、消失した胎児のDNAが結果に影響することがあります。

確定診断の重要性とその課題

スクリーニング検査と診断検査の違い

NIPTはあくまで「スクリーニング検査」であり、確定的な「診断検査」ではありません。陽性結果が出た場合には、以下の確定診断が必須となります:

  • 羊水検査(通常妊娠15週以降)
  • 絨毛検査(通常妊娠10~13週)
  • 染色体マイクロアレイ解析(CMA)
  • FISH法

確定診断への移行における障壁

  1. 時間的制約:確定診断までに要する時間が意思決定に影響
  2. 専門施設へのアクセス:高度な遺伝子検査を実施できる施設の限界
  3. 地域・経済格差:居住地域や経済状況による医療格差

検査技術の進歩とCOATE法

近年、NIPT検査技術は著しく進歩しており、様々な新しい手法が開発されています。例えば、ミネルバクリニックでは2024年に発売されたCOATE法によるNIPT検査を導入し、22q11.2欠失の陽性的中率は100%と報告されています。

検査技術による違い

  • 胎児DNA比率(FF)の測定技術
  • 次世代シーケンシング技術の精度
  • 品質管理システムの厳格さ
  • 解析アルゴリズムの精度
  • 新しい解析手法の導入

ミネルバクリニックの特徴

ミネルバクリニックは非認証施設で唯一、2025年6月より産婦人科を併設し、確定検査(羊水・絨毛検査)を自院で行えるようになりました。より安心してNIPTを受けていただけるように頑張ってます。

? COATE法採用

最新の次世代NIPT技術により、22q11.2欠失症候群の陽性的中率100%を実現(従来検査の70%台から飛躍的向上)

?‍⚕️ 臨床遺伝専門医常駐

専門医による遺伝カウンセリングで、検査前後のサポートを充実

? オンライン対応

全国どこからでも受検可能。遠方の方も安心してご利用いただけます

? 24時間サポート

陽性時の手厚いフォロー体制で、不安な時期もしっかりサポート

? 確定検査対応

2025年6月より陽性時の確定検査を自院で実施。NIPTから確定検査までワンストップで対応

? 4Dエコー

2022年11月よりNIPT前の4Dエコーで胎児の当日の状態を確認。より安心して検査を受けられます

よくある質問(FAQ)

Q1. 22q11.2欠失症候群はどのくらいの頻度で起こりますか?

約2,000~4,000人に1人の頻度で発症します。ダウン症候群に次いで2番目に多い染色体異常による発達遅延の原因です。約90%は新規発生で、母体年齢に関係なく起こります。

Q2. 従来のNIPTで陽性が出た場合、どのくらい正確ですか?

多くのNIPTクリニックでは22q11.2欠失症候群の陽性的中率は52.6~53%程度です。つまり、陽性結果の約半分が偽陽性である可能性があり、必ず確定診断が必要です。

Q3. COATE法とはどのような技術ですか?

COATE法は2024年に発売された最新のNIPT技術で、胎児DNA比率の増幅技術を含む高精度な解析手法です。ミネルバクリニックでは、この技術により22q11.2欠失症候群の陽性的中率100%を達成しています。

Q4. 陽性結果が出た場合、どうすれば良いですか?

まず専門的な遺伝カウンセリングを受けることが重要です。その後、羊水検査や絨毛検査などの確定診断を検討します。ミネルバクリニックでは2025年6月より確定検査も自院で実施可能になりました。

Q5. 検査費用はどのくらいかかりますか?

検査費用は医療機関や検査内容により異なります。また、陽性時の確定検査についても費用が発生しますが、ミネルバクリニックでは互助会による確定検査費用のフルカバー制度があります。詳しくはお問い合わせください。

NIPTと遺伝カウンセリングのご相談はミネルバクリニックへ

ミネルバクリニックでは、NIPT(新型出生前診断)を専門に提供しています。検査前後の遺伝カウンセリングでは、検査の内容や意味、結果の解釈について詳しくご説明します。不安やご質問があれば、専門医にご相談ください。

まとめ:適切な選択のために

NIPTによる22q11.2欠失症候群の検査を検討される際は、以下の点を十分にご理解いただくことが重要です:

1. 検査の限界を理解する

多くのNIPTでは陽性的中率が約50%程度と報告されており、偽陽性の可能性があることを理解する

2. 検査技術の違いを認識する

医療機関によって検査技術や精度に違いがあることが報告されており、検査方法や品質管理体制について事前に確認することが重要

3. 包括的なサポート体制の確認

検査前後の遺伝カウンセリングの実施体制と確定診断への適切な連携体制を確認する

4. 十分な情報に基づいた意思決定

検査の性質と限界について十分な理解を得て、ご自身の価値観に基づいた自律的な判断を行う

最後に

22q11.2欠失症候群の早期発見は、出生後の適切な医療管理と介入を可能にし、お子様の予後改善に大きく貢献する可能性があります。しかし、それは適切な検査技術と十分なサポート体制があってこそ実現されるものです。

NIPTを検討される際は、単に検査を受けるだけではなく、検査の精度や実施体制について十分に確認し、専門的なカウンセリングを受けられる医療機関をお選びいただくことが、皆様とお子様にとって重要な検討点となります。

ミネルバクリニックでは、常に患者さんのことを考えて、一歩一歩できることを増やしています。最新のCOATE法による高精度な検査から、陽性時の確定検査まで、安心してお任せいただける体制を整えております。

参考文献・関連リンク

  1. 22q11.2欠失症候群(指定難病203)– 難病情報センター www.nanbyou.or.jp/entry/5318
  2. GRJ 22q11.2欠失症候群 grj.umin.jp/grj/22q11_2.htm
  3. 22q11.2欠失症候群とは | 22q-pedia 22q-pedia.net/about/
  4. NIPT 微小欠失の陽性的中率について | ミネルバクリニック minerva-clinic.or.jp/nipt/column/nipt-microdeletion-ppv/
  5. 22q11.2欠失症候群 – 遺伝性疾患プラス genetics.qlife.jp/diseases/22q11-2-deletion



プロフィール

この記事の筆者:仲田 洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。


仲田洋美の詳細プロフィールはこちら

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