InstagramInstagram

眼瞼裂狭小・知的発達障害症候群(BIS)とは?SMARCA2遺伝子による顔つきの特徴と発達の遅れ、ニコライデス・バライツァー症候群との違いを遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

お子さんの目の開きが狭い、まぶたの様子がほかの子と少し違う、そして発達がゆっくりだと指摘され、その2つがつながっているのか不安に感じておられるかもしれません。眼瞼裂狭小・知的発達障害症候群(BIS)は、SMARCA2という遺伝子の変化によって、目の開きの狭さ(眼瞼裂狭小)と発達の遅れがともに起こる、近年になって新しく確立されたまれな病気です。この病気は世界でもまだ報告例が限られる希少疾患ですが、その原因遺伝子SMARCA2は、細胞が遺伝子を読み書きする土台を整える「クロマチンを開く装置」の一部であり、同じ遺伝子の別の場所の変化はニコライデス・バライツァー症候群(NCBRS)という別の病気を起こします。ですからBISを理解することは、発達に関わる遺伝子の仕組み全体を理解することにもつながります。本記事では、BISの原因と特徴、そっくりな病気との見分け方、遺伝の考え方や検査の進め方までを、臨床遺伝専門医の視点からやさしく整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
🧬 SMARCA2・眼瞼裂狭小・発達の遅れ
臨床遺伝専門医監修

Q. BIS(眼瞼裂狭小・知的発達障害症候群)とはどんな病気ですか?まず結論だけ知りたいです

A. BISは、SMARCA2遺伝子に生まれつきの変化が起きることで、目の開きが狭くなる特徴的な顔つきと、発達の遅れ・知的障害が一緒に現れるまれな病気です。同じSMARCA2が原因のニコライデス・バライツァー症候群(NCBRS)とは、変化が起きる「場所」が違うため別の病気として区別されます。大部分は親から受け継いだものではなく、お子さんに新しく生じた変化(新生突然変異)によって起こります。

  • 中核となる特徴 → 眼瞼裂狭小(目の横幅・縦幅が狭い)+発達の遅れ・知的障害。目の開きの狭さと発達の遅れがセットで現れる
  • 原因 → SMARCA2遺伝子の病的バリアント。クロマチンを開くBAF複合体の一部が正しく働けなくなる
  • NCBRSとの違い → 変化の起きる場所(ヘリカーゼドメインの内か外か)と、DNAメチル化の「指紋」が異なる
  • 診断の進め方 → 遺伝子検査(パネル・エクソーム)で確定。意義がはっきりしない場合はEpiSign(メチル化解析)が役立つ
  • 遺伝カウンセリングの要点 → 多くは新生突然変異。ただし親の精子のモザイクがあると次子の再発リスクが上がることがある

🧬 BIS(眼瞼裂狭小・知的発達障害症候群)の基本情報

項目 内容
疾患名 眼瞼裂狭小・知的発達障害症候群/Blepharophimosis-impaired intellectual development syndrome/略称 BIS
原因遺伝子 SMARCA2(9番染色体短腕・9p24.3)。BAF(SWI/SNF)複合体の触媒サブユニット「BRM」をコードする
遺伝形式 常染色体顕性(優性)遺伝。報告されている大部分はお子さんに新しく生じた変化(新生突然変異/de novo)による
OMIM表現型番号 #619293
頻度・報告例数 オルファネットの推計で100万人に1人未満。最初の系統的報告では18家系20名のうち14名がBISの特徴を示した
主な症状 眼瞼裂狭小・内眼角贅皮などの顔つきの特徴、全体的な発達遅滞と知的障害、著しい言語の遅れ、乳児期からの筋緊張低下、自閉スペクトラム症様の行動や過度な親和性
診断の決め手 SMARCA2の病的バリアント(ヘリカーゼドメインの外側・エクソン8/9/19付近に集中)の同定。判定に迷う変化ではEpiSign(メチル化アレイ)が有用
鑑別すべき疾患 ニコライデス・バライツァー症候群(NCBRS)、ヘルスモールテル・ファンデルアー症候群(HVDAS/ADNP)、眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・逆内眼角贅皮症候群(BPES/FOXL2)、コフィン・シリス症候群、SBBYSS症候群(KAT6B)
再発率・保因者 多くは新生突然変異で、次子の再発リスクは一般に約1%未満と説明される。ただし親の生殖細胞系列(精子)モザイクがあると、この数字より高くなることがある
検査上の注意 NCBRSと同一遺伝子のため、変化の位置とエピシグネチャーで区別する。血液を用いた遺伝子パネル・エクソームで検出でき、SMARCA2は当院インペリアルプランの対象に含まれる

各項目の根拠と詳しい解説は、本文の該当セクションをご覧ください。

1. BISとはどんな病気か ─ 目の開きの狭さと発達の遅れが結びつくまれな症候群

BISは、目の開きが狭くなる特徴的な顔つき(眼瞼裂狭小)と、発達の遅れ・知的障害がともに現れる、近年になって独立した病気として確立されたまれな神経発達症候群です。原因はSMARCA2という1つの遺伝子の変化で、その大部分はお子さんに新しく生じたものです。

「BIS」は Blepharophimosis-impaired intellectual development syndrome の頭文字をとった呼び名で、日本語では眼瞼裂狭小・知的発達障害症候群といいます。眼瞼裂狭小とは、上下・左右のまぶたで囲まれた目の開き(眼裂)が、横にも縦にも小さくなっている状態を指します。BISでは、この目の所見と、乳児期からの全体的な発達の遅れ・知的障害とが一緒に現れることが、診断上の大きな手がかりになります[1]。有病率はオルファネットの推計で100万人に1人未満とされ、世界的にも報告例が限られる希少疾患です[5]

この病気が「新しく確立された」と表現されるのには理由があります。原因遺伝子であるSMARCA2は、長いあいだニコライデス・バライツァー症候群(NCBRS)という別の病気の唯一の原因として知られてきました。ところが次世代シーケンシング(NGS)という網羅的な遺伝子解析が普及すると、NCBRSの典型には当てはまらないのに、眼瞼裂狭小と知的障害を示す一群の患者さんが見つかってきました[1]。2020年、Cappuccioらを中心とする国際研究チームは、次世代シーケンシングで18家系20名のSMARCA2の変化を調べ、そのうち14名が、内眼角贅皮・眼瞼裂狭小・下向きの鼻先といった共通の特徴をもつことを見いだし、これをBISと名づけました[1]。公的データベースOMIMにも、SMARCA2(9p24)のヘテロ接合性変化によって起こる病気として #619293 が登録されています[2]

ご家族にとって大切なのは、「目の所見」と「発達の遅れ」が別々の偶然ではなく、1つの原因でつながっている可能性があるという視点です。診断名がつくことは、それ自体が治療を意味するわけではありませんが、今後どんな合併症に注意すればよいか、どんな支援が役立つか、そして次のお子さんにどう関わるかを一本の筋道で考える出発点になります。名前がつくことで、同じ病気のご家族とつながり、経験や情報を共有できるようになる、という意味もあります。

2. 原因遺伝子SMARCA2とBAF複合体 ─ クロマチンを「開く」装置の設計図

SMARCA2は、遺伝子を読み書きするために必要な「クロマチンを開く装置」の一部をつくる遺伝子です。この装置がうまく働かないと、脳の発生に必要な多くの遺伝子のオン・オフが乱れ、発達や顔つきに影響が及びます。

細胞の核のなかで、長いDNAはヒストンというタンパク質に巻きついてヌクレオソームという単位をつくり、さらにぎゅっと折りたたまれています。この折りたたまれた状態のままでは、転写因子やRNAポリメラーゼが必要なDNAに近づけず、遺伝子は読み取られません。そこで登場するのが、ATP(細胞のエネルギー通貨)を使ってヌクレオソームを動かし、必要な場所のクロマチンを「開いた」状態に切り替える装置です。これをクロマチンリモデリングと呼び、その中心となるのがSWI/SNF複合体(BAF複合体)です[6]

💡 用語解説:BAF複合体とSMARCA2(BRM)

BAF複合体は、十数個のタンパク質が集まってできた大きな「機械」で、その中で実際にATPを使ってヌクレオソームを動かすエンジン役(触媒サブユニット)が、SMARCA2(別名BRM)またはよく似たSMARCA4(BRG1)です。SMARCA2は、DNAをほどく働きをもつヘリカーゼの仲間に分類されます。BAF複合体を構成する部品の遺伝子が変化して起こる一連の神経発達障害は、まとめて「BAFopathy(BAF異常症)」と呼ばれ、BISもNCBRSもコフィン・シリス症候群も、この大きな仲間に含まれます[6]

この装置は、脳の神経がつくられていく過程や、細胞がそれぞれの役割へ分かれていく過程で、特に重要な働きをしています。ですからSMARCA2の変化は、体の一部だけでなく、脳の発達・顔の形づくり・全身のさまざまな器官にまたがって影響を及ぼしうるのです。ご家族にとってこの点が意味するのは、BISが「まぶただけの病気」でも「知能だけの病気」でもなく、発達の土台に関わる仕組みの問題であるということです。一見ばらばらに見える所見が1つの原因で説明できると分かると、見通しが立てやすくなります。

SMARCA2の変化が特徴を生むまで(遺伝子から始まる流れ)

SMARCA2の
病的な変化
BAF複合体の結合・
標的化の乱れ
クロマチンの
開閉が乱れる
神経発生の
転写プログラム異常
発達・知的・
顔つきの特徴

どこか1か所の乱れが下流の多くの遺伝子に波及するため、まぶた・発達・全身と広い範囲に影響が出ます。

3. なぜ同じ遺伝子でNCBRSとBISに分かれるのか ─ 変化の「場所」が病気を決める

NCBRSとBISはどちらもSMARCA2の変化で起こりますが、変化が起きる「場所」がタンパク質の別々の部分に集まっているため、別の病気になります。この場所の違いが、顔つきやDNAメチル化の違いにそのまま反映されます。

NCBRSを起こす変化の大部分は、SMARCA2タンパク質の中央にあるヘリカーゼ(ATPase)ドメインという、DNAをほどくエンジンそのものに集中しています。エクソン15から25にコードされる領域で、ここが傷つくと触媒活性(ATPを使ってヌクレオソームを動かす力)そのものが直接損なわれると考えられています[1]

これに対してBISを起こす変化は、このエンジンの「外側」にだけ集まっているのが決定的な特徴です。具体的には、エクソン8・9・19付近にコードされる領域で、ここはBAF複合体をつくる他の部品タンパク質と手をつなぐ相互作用面(PPIインターフェース)にあたります[1]。OMIMも、BISの変化が触媒的なATPaseヘリカーゼドメインの外側の2つの領域に集まっていると記しています[2]。つまりBISの本質は「エンジンが壊れること」ではなく、複合体のなかで正しく組み合わさり、正しい場所へ運ばれることの障害にあると考えられています。実際、酵母を使った実験でも、NCBRS型の変化とBIS型の変化は細胞への影響が明確に区別されました[1]

同じSMARCA2でも、変化の「場所」で病気が分かれる

ヘリカーゼ(ATPase)ドメインの内側
エクソン15〜25・エンジン本体
NCBRS
ヘリカーゼドメインの外側
エクソン8・9・19付近・相互作用面
BIS

同じ設計図でも、傷つく部品がエンジン本体か「連結部」かで、異なる症候群になります。

ご家族にとって、この「場所の違い」を知っておくことには実用的な意味があります。検査でSMARCA2に変化が見つかったとき、その変化がタンパク質のどこにあるかによって、想定される病気の像(NCBRS寄りかBIS寄りか)が変わるからです。診断名の確定には、後で述べるDNAメチル化の解析が組み合わされることも多く、遺伝の専門家はこれらを総合して判断します。「同じ遺伝子だから同じ病気」ではない、という点が、この病気を理解するうえでの鍵になります。

4. 顔つきと体の特徴 ─ 診断の手がかりになる所見

BISでもっとも診断価値が高いのは顔つきの特徴で、目の開きの狭さ(眼瞼裂狭小)が中心になります。体のほうにも、指や骨格・哺乳や泌尿生殖器などにいくつかの特徴が現れることがあります。

目の所見としては、もっとも目立つ眼瞼裂狭小に加えて、目頭を覆うひだ(内眼角贅皮)がみられます。ここで臨床的に重要な鑑別点があります。眼瞼裂狭小を伴う代表的な症候群であるBPES(眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・逆内眼角贅皮症候群)とは異なり、BISでは眼瞼下垂(まぶたが下がる)の合併はまれで、逆内眼角贅皮(目頭のひだが下から上に向かう特徴的なひだ)もみられません[1]。このほか、まつげが異常に長い、あるいは逆に眉毛やまつげが疎、眉毛がつながる(synophrys)といった所見も報告されています[5]

鼻や口まわりでは、広い鼻の付け根、鼻先が下を向いた短い鼻が特徴的です。開いた口もと、薄い上くちびる、上くちびるのテント状の形、大きな正中離開(前歯のすきま)などがみられることがあります。耳の形の違いや、後ろに回旋した低い位置の耳を伴うこともあります[5]。骨格では、末節骨(指先の骨)の短縮、第5指(小指)の斜指、先細りの指、関節がやわらかい、側弯、扁平足・内反足などが報告され、頭のかたち(斜頭)や骨年齢の遅れを伴うこともあります[5]。乳児期には哺乳の難しさや胃食道逆流がみられ、体重の増えにくさにつながることがあります。男の子では停留精巣や尿道下裂、尿路感染をくり返しやすい傾向も指摘されています[5]

ご家族にとって知っておいていただきたいのは、これらの所見は「あれば手がかりになる」ものであって、すべてがそろうわけでも、そろわなければ否定されるわけでもないという点です。顔つきは診断のきっかけにはなりますが、最終的な確定は遺伝子検査によります。写真だけ、見た目だけで確定したり否定したりできるものではないため、気になる所見があるときは、次に述べる発達の様子とあわせて専門的に評価してもらうことが大切です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「顔が似ている」から一歩踏み込むために】

顔つきの特徴は、まれな症候群を疑ううえでとても大切な入口です。ただ、私は「顔が似ているから、この病気に違いない」という考え方には慎重でありたいと考えています。眼瞼裂狭小をきたす病気はいくつもあり、見た目だけで区別しきれない場面が少なくないからです。

大切なのは、顔つきという手がかりを、発達の様子・体の所見・そして遺伝子やメチル化の解析と重ね合わせて総合的に読み解くことだと考えています。ひとつの所見に飛びつかず、複数の情報を突き合わせていく。その積み重ねが、正確な診断と、ご家族にとって納得のいく説明につながると思っています。

5. 発達・知的・行動の特性 ─ 本人と家族の生活に直結する部分

BISでは、乳児期からの全体的な発達の遅れがみられ、知的障害の程度は中等度から重度であることが多いとされています。とりわけ言語の遅れが目立ち、運動発達や行動面の特性も生活に影響します。

発達面では、乳児期からの全体的な発達遅滞がみられます。知的障害の程度には個人差がありますが、中等度から重度であることが多いと報告されています[1]。とくに言語の障害は深刻で、ことばの獲得が大きく遅れるだけでなく、一部の方は生涯にわたり意味のあることばをもたないこともあります[5]。運動面でも乳児期からの強い筋緊張低下(体がやわらかい)を認め、歩きはじめが遅れたり、自力での歩行が難しいこともあります。

行動面には特徴的なプロファイルがあります。自閉スペクトラム症(ASD)のような社会的コミュニケーションの困難や反復的な行動を示すことがある一方で、初対面の人にも極端に馴れ馴れしい「過度な親和性」や、多動・衝動性・注意の持続の難しさといった特性がみられる方もいます[1]。睡眠の問題や、自傷・他害を伴う行動がみられる場合もあり、こうした症状には専門的な支援が役立ちます。NCBRSで特徴的な早期発症の難治性てんかんは、BISでもリスクをゼロとはいえないため、けいれんが疑われる場合は神経学的な評価が行われます[3]

💡 ここは大切な視点:「重度」という言葉の受け取り方

医学の記述では、知的障害の程度を「中等度」「重度」といった言葉で表します。これは支援の量を見積もるための目安であって、その子の価値や、これからの成長の可能性を決めるものではありません。BISは個人差が大きく、同じ診断名でも、できることや必要な支援は一人ひとり異なります。数字や程度の言葉に一喜一憂しすぎず、目の前のお子さんの得意・不得意に合わせて支援を組み立てていく、という姿勢が役に立ちます。

ご家族にとって、発達や行動の特性を早く把握することには前向きな意味があります。診断がつくことで、療育・言語のサポート・行動面の支援を早い段階から始めやすくなるからです。次章以降で述べるように、原因の理解が進むほど、似た病気との区別も、次のお子さんへの備えも、より具体的に考えられるようになります。

6. エピシグネチャーという「指紋」─ HVDASとの共通点とVUSの再評価

BISには、血液から読み取れる特有のDNAメチル化の「指紋」(エピシグネチャー)があり、診断や意義不明の変化の再評価に役立ちます。さらにこの指紋は、まったく別の遺伝子ADNPによる病気(HVDAS)の一部と共有されていることが分かってきました。

エピジェネティクスとは、DNAの文字そのものを変えずに遺伝子の働きを調節するしくみのことです。クロマチンリモデリング因子のような遺伝子に変化があると、ゲノム全体にわたって特有のDNAメチル化のパターンが生じます。この再現性のあるパターンをエピシグネチャーと呼び、患者さんの末梢血から検出できます。BISとNCBRSは同じSMARCA2の病気でありながら、遺伝子発現のパターンもDNAメチル化の指紋も明確に異なることが示されており、これは両者が別の分子病態であることの強い証拠になっています[1]

💡 用語解説:EpiSign(メチル化解析)とVUS

遺伝子検査では、見つかった変化が病気の原因かどうかはっきりしない意義不明変異(VUS)に出会うことがあります。このとき、患者さんの血液のメチル化パターンがBISの指紋と一致するかどうかを調べるEpiSign(メチル化アレイ解析)が、判定の強力な助けになります。指紋が一致すれば、その変化が本当に病気に関係していると考える根拠になり、「意義がはっきりしない」から「病的である」への再分類を後押しします[1]

BISの研究でとりわけ驚きをもって受け止められたのが、BISのメチル化の指紋が、まったく別の遺伝子ADNPによる病気であるヘルスモールテル・ファンデルアー症候群(HVDAS)の一部と強く共有されているという発見です[4]。ADNPの変化は位置によってメチル化のパターンが異なり、クラスIとクラスIIに分けられます。このうちクラスIIの変化をもつHVDASの一部の患者さんは、狭い眼裂などBISによく似た顔つきを示すことが注目されていました。2024年のSarliらの研究は、BISを起こすSMARCA2変異をもつ15名と、クラスIIのADNP変異をもつHVDAS患者12名のあいだで、完全に重なり合う特有のエピシグネチャー(BIS-HVDASエピシグネチャー)が共有されていることを示しました[4]

この現象の背後には、きれいな分子のしくみが見えています。ADNPタンパク質は、自身の一部を使ってBAF複合体の構成要素であるSMARCA2・SMARCA4・SMARCC2と直接結びつくことが知られています[4]。つまり、ADNP側(つなぎに行く側)の変化と、SMARCA2側(つなぎを受ける側)のヘリカーゼ外ドメインの変化は、結果として「同じ手のつなぎ目(相互作用面)が壊れる」という同一の事態を引き起こしている可能性が高いのです。だからこそ、まったく別の遺伝子の変化でありながら、同じメチル化の乱れと、眼瞼裂狭小という似た顔つきが生まれると考えられます。異なる遺伝性疾患のあいだで、表現型に特異的なエピシグネチャーが共有されることを示した初めての例であり、分子病因論の重要な進展とされています[4]

なぜ違う遺伝子で「同じ指紋・似た顔つき」になるのか

SMARCA2(ヘリカーゼ外)の変化
=BIS
ADNP(BNL・クラスII)の変化
=HVDASの一部
同じ相互作用面
(つなぎ目)の破綻
同じメチル化の指紋+
似た顔つき

ご家族や当事者にとって、この話は少し専門的に感じられるかもしれません。けれど実用的な意味は明快です。遺伝子検査で答えがはっきりしなかったときでも、メチル化の指紋を調べることで診断に近づける道があるということ、そして似た顔つきの背景に複数の遺伝子が関わりうるため、原因を1つに決めつけず幅広く調べる姿勢が大切だ、ということです。

7. 似ている病気との見分け方 ─ BPES・コフィン・シリス・SBBYSSとの鑑別

眼瞼裂狭小や知的障害を示す病気はいくつもあり、それぞれに決め手となる違いがあります。初期は顔つきや発達の評価で見当をつけ、最終的には遺伝子検査(必要ならメチル化解析)で確定します。

重度の知的障害と眼瞼裂狭小をあわせもつお子さんに出会ったとき、かつて中心だったBPESだけでなく、BIS・HVDAS・KAT6B関連疾患まで視野に入れた幅広い遺伝子スクリーニングを行うことが、早い確定診断につながります[1]。主な鑑別のポイントを表にまとめます。

疾患(原因遺伝子) BISと重なる点 見分ける決め手
NCBRS(SMARCA2) 重度知的障害、発達遅滞、言語障害 眼瞼裂狭小は通常みられず、粗な顔つき、早期発症の難治性てんかん、極端に疎な頭髪、皮下脂肪の喪失による指関節の突出が特徴。変化はヘリカーゼドメイン内で、エピシグネチャーも異なる[1]
HVDAS(ADNP) 一部で眼瞼裂狭小、ASD、知的障害、発達遅滞 クラスII変異の一部はBISと顔つき・エピシグネチャーが酷似するが、HVDAS全体としては突出した前頭部や高い生え際が特徴。原因遺伝子の同定で区別する[4]
BPES(FOXL2) 眼瞼裂狭小、内眼角贅皮 名前のとおり顕著な眼瞼下垂と逆内眼角贅皮が必須(BISではまれ)。女性では早発卵巣不全を伴うことがあり、通常は知的障害を伴わない[1]
コフィン・シリス症候群(ARID1B等) 知的障害、粗な顔つき、筋緊張低下、言語遅滞 同じBAF異常症だが眼瞼裂狭小は主徴でない。第5指(小指)または足趾の爪の欠損・低形成、末節骨の低形成が特徴的[1]
SBBYSS症候群(KAT6B) 眼瞼裂狭小、知的発達障害、発達遅滞 内転した母指、生殖器の異常、甲状腺機能低下症、先天性心疾患などを高頻度に合併する点で区別される[5]

なお、コフィン・シリス症候群ではARID1Bのほか、SMARCA4SMARCB1など複数の遺伝子が関わり、SBBYSSゲニトパテラー症候群と同じKAT6Bから生じます。ご家族にとって大切なのは、似た顔つきでも原因遺伝子が違えば、合併症や遺伝の仕方も変わるという点です。だからこそ、見た目だけで結論を急がず、遺伝子とメチル化を組み合わせて確実に区別することが、その後の見通しを正確にします。

8. 遺伝の仕方と再発リスク ─ 新生突然変異でも「精子のモザイク」がありうる

BISの大部分は、親から受け継いだものではなく、お子さんに新しく生じた変化(新生突然変異)で起こります。次子の再発リスクは一般に低いとされますが、親の精子や卵子の一部に変化が潜む「生殖細胞系列モザイク」があると、そのリスクは想定より高くなることがあります。

BISは常染色体顕性(優性)遺伝の形をとりますが、報告されている多くは、両親のどちらにも変化がなく、お子さんに初めて生じた新生突然変異(de novo)によるものです[3]。両親の血液を調べて変化がなければ、古典的には「次のお子さんへの再発リスクはおよそ1%未満」と説明されてきました。

しかし近年、深く読み込むシーケンシング技術の発展により、外見上は完全に健康な親の精子や卵子の一部に、病的な変化が潜んでいることがあると分かってきました。これを生殖細胞系列モザイクと呼びます。SMARCA2についても、遺伝カウンセリングの前提を見直すべき重要な報告があります。Panらの2021年の報告では、健康な同じ両親から、SMARCA2のミスセンス変化(c.553C>G, p.Gln185Glu)を共有する重い神経発達障害のお子さんが続けて生まれた家系が示されました[7]。詳しく調べると、父親の血液や唾液からは変化がまったく検出されなかったのに、精子のなかにおよそ2.8%の割合でモザイクが存在していたのです[7]。この変化はタンパク質のQLQドメインという、これまで報告の少なかった場所にありました。

(父親由来の遺伝子変異が子へ伝わるイメージ)

💡 用語解説:生殖細胞系列モザイクとは

受精卵から体ができていく初期に変化が生じると、その変化は体の一部の細胞にだけ存在する「モザイク」の状態になります。もしこのモザイクが精子や卵子をつくる細胞(生殖細胞系列)に及んでいると、親自身は発症していなくても、その変化を次のお子さんへ受け渡す可能性が生まれます。血液に変化がなくても精子には潜んでいることがある、という点が重要で、その場合の再発リスクは「1%未満」ではなく、精子中の割合に応じて実質的に高くなります[7]

この視点は、より大きな研究でも裏づけられています。2025年に報告された精子の網羅的な解析では、父親由来の新生変異のうち一部が精子中に検出可能なモザイクとして存在し、その割合(VAF)は0.24%から14.7%と幅広く、全体としては約5%の変化が「1%を超える高めの再発リスク」に分類されました[8]。つまり、精子を直接調べることで、個々の家系ごとに再発リスクをより正確に見積もれる時代に入りつつあります[8]

「新生突然変異」でも再発しうるしくみと備え

見かけ上は
新生突然変異
実は父の精子に
低頻度モザイク
次の妊娠で
再発しうる
出生前診断・
PGT-Mで備える

「1度きりのde novoだから安心」と言い切れない例があるからこそ、次の妊娠の相談には意味があります。

ご家族にとって、この知見の意味は2つあります。第一に、「新生突然変異だから次は大丈夫」とは限らないため、次の妊娠を考える際には遺伝カウンセリングで再発リスクをていねいに整理する価値があるということ。第二に、リスクが気になる場合には、妊娠してから絨毛検査羊水検査で調べる方法のほか、体外受精を前提に胚の段階で調べる着床前遺伝学的検査(PGT-M)という選択肢が正当化されうる、ということです[3]。PGT-Mは実施施設や適応の審査に条件があり、連鎖解析などの準備にも時間がかかるため、時間に余裕をもって相談されることをおすすめします。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「1%未満」という言葉を、どうお伝えするか】

新生突然変異のお子さんについて、「次の妊娠での再発は1%未満です」とお伝えすることは、長らく標準的な説明でした。けれども精子モザイクの研究が進んだいま、私はこの数字を、断定ではなく「多くの場合に当てはまる目安」として、幅をもってお伝えすべきだと考えています。

大切なのは、数字を小さく見せて安心させることでも、大きく見せて不安にすることでもありません。今わかっている限界も含めて正確にお渡しし、そのうえで出生前診断やPGT-Mといった選択肢を、ご夫婦が自分たちの価値観で選べるように整理すること。それが、次の妊娠に向き合うご家族に対して私たちができる支援だと考えています。

9. 診断・検査とNIPT ─ どこで何を調べるか

BISの確定診断は、遺伝子検査でSMARCA2の病的バリアントを見つけることによります。生まれた後は血液で調べ、判定に迷う場合はメチル化解析を加えます。妊娠中に関わる場面もあり、SMARCA2は当院のインペリアルプランの対象に含まれています。

出生後の診断では、生まれたお子さんの血液からDNAを取り出し、次世代シーケンシングによるマルチ遺伝子パネル検査や全エクソーム解析(WES)でSMARCA2を含む多くの遺伝子を調べます[3]。見つかった変化の意義がはっきりしない(VUS)場合には、前章で述べたEpiSign(メチル化アレイ)が診断を確定させる決め手になります[1]

妊娠中に関わる場面としては、超音波でまぶたや顔つきの特徴が示唆されたり、ご家族に同じ病気の方がいる場合が考えられます。ここで大切なのは、一般的なNIPT(新型出生前診断)は、染色体の数の変化などを調べる検査であり、SMARCA2のような単一遺伝子の変化をすべて広く調べるものではないという点です。当院では、単一遺伝子疾患まで対象を広げたインペリアルプランの対象遺伝子にSMARCA2が含まれています。ただし、確定診断が必要な場合には、絨毛検査羊水検査で胎児由来の細胞を直接調べることになります。羊水・絨毛検査の費用や流れもあわせてご確認ください。父親の年齢が高い場合に増える新生変異の考え方については、父由来の新生変異とNIPTのページも参考になります。

当院では、こうした検査の前後で臨床遺伝専門医遺伝カウンセリングを行います。話し合うのは、検査で何が分かり何が分からないのか、結果がご本人やご家族にとってどんな意味をもつのか、そして結果を受けてどんな選択肢があるのか、といった点です。検査を受けるかどうかを含め、決めるのはご本人・ご家族であり、私たちは中立の立場で判断材料を整理する役割を担います。ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が運営し、終始責任をもって支援します。

10. 療育とケア ─ 今できる支援

現時点でBISの原因そのものを治す根本的な治療法はありませんが、生活の質を高め、合併症を予防・管理するための支援は多くあります。多職種が連携し、乳幼児期からの早期支援を続けることが柱になります。

支援の中心は、生涯にわたる多職種連携による対症療法とサポートです[3]。具体的には、乳幼児期からの早期療育(理学療法や作業療法で姿勢保持や運動の発達を支える)、言語・コミュニケーションの支援(言語聴覚療法や、絵カード・タブレットなどの代替手段の活用)、栄養と消化器の管理(哺乳の困難や胃食道逆流への対応)、行動・精神面の支援(睡眠や行動の問題に対する療育的アプローチと、必要に応じた薬物療法)などが挙げられます。就学に際しては、個々の力に合わせた個別の教育計画を立て、最適な環境を整えることが役立ちます[5]。停留精巣・尿路感染・側弯などの合併症は、小児科・整形外科・泌尿器科などによる定期的なフォローで早めに見つけ、対応していきます。

💡 これから期待される方向

BISとHVDASで共通して乱れている下流の遺伝子群が今後さらに特定されれば、特定の経路を標的としたエピジェネティックな治療(ヒストン修飾に関わる薬など)を、BAF異常症全体に共通する形で開発できる可能性が期待されています[4]。ただし、これは今後の研究に委ねられた段階であり、現時点で確立した治療ではありません。「いま何が分かっていて、何がこれからか」を区別して受け止めることが大切です。

ご家族にとって、療育とケアの意味は「病気を治す」ことだけにあるのではありません。お子さんが今もっている力を伸ばし、家族の負担を軽くし、日々の生活を穏やかにするための具体的な手立てが、確かに存在します。診断は、こうした支援につながるための入口です。ひとりで抱え込まず、専門職や同じ病気の家族とつながりながら、少しずつ見通しを立てていっていただければと思います。

よくある誤解

誤解①「同じSMARCA2だからNCBRSと同じ病気」

原因遺伝子は同じでも、変化の起きる場所が違えば別の病気になります。NCBRSはヘリカーゼドメインの内側、BISはその外側に変化が集まり、DNAメチル化の指紋も顔つきも異なります。同一遺伝子でも「別物」として区別されます。

誤解②「新生突然変異だから次子は絶対に大丈夫」

多くは再発リスクが低いのは事実ですが、親の精子や卵子に低頻度のモザイクが潜むことがあり、その場合は再発リスクが上がります。「絶対に大丈夫」ではなく、次の妊娠は遺伝カウンセリングで個別に評価する価値があります。

誤解③「NIPTを受ければBISも分かる」

一般的なNIPTは主に染色体の数の変化を調べる検査で、単一遺伝子の変化をすべて広く調べるものではありません。SMARCA2は当院のインペリアルプランの対象ですが、確定診断には絨毛・羊水検査など胎児細胞を直接調べる方法が必要です。

誤解④「遺伝子検査で異常なしなら否定できる」

パネルやエクソームで変化が見つからなくても、それだけで完全に否定できるとは限りません。臨床的に強く疑われる場合は、メチル化解析(EpiSign)や再解析によって診断に近づけることがあります。結果の解釈は専門的な評価と組み合わせることが大切です。

このページを読んだあなたへ

お子さんがBISと診断された方、これから遺伝子検査を検討している方、あるいは似た顔つきや発達の遅れを指摘されて情報を探している方まで、状況はさまざまだと思います。次に確認しておくと役立つのは、次のような観点です。

よくある質問(FAQ)

Q1. BIS(眼瞼裂狭小・知的発達障害症候群)とはどんな病気ですか?

BISは、SMARCA2という遺伝子の変化によって、目の開きが狭くなる特徴的な顔つき(眼瞼裂狭小)と、全体的な発達の遅れ・知的障害がともに現れる、近年になって確立されたまれな神経発達症候群です。有病率はオルファネットの推計で100万人に1人未満とされています。SMARCA2は同じくニコライデス・バライツァー症候群(NCBRS)の原因遺伝子でもありますが、変化が起きる場所とDNAメチル化のパターンが異なるため、BISは別の病気として区別されます。

Q2. 同じSMARCA2が原因なのに、なぜNCBRSと別の病気になるのですか?

変化が起きるタンパク質の場所が違うためです。NCBRSを起こす変化は、DNAをほどくエンジンにあたるヘリカーゼ(ATPase)ドメインの内側(エクソン15〜25)に集まります。一方、BISを起こす変化は、そのドメインの外側(エクソン8・9・19付近)で、他の部品と手をつなぐ相互作用面に集まります。この場所の違いによって、影響の出方も、DNAメチル化の指紋も、顔つきの特徴も変わるため、同じ遺伝子でも別の病気として区別されます。

Q3. BISは遺伝しますか?次の子どもにも起こる可能性はありますか?

報告されている多くは、両親のどちらにも変化がなく、お子さんに新しく生じた新生突然変異によるもので、その場合の次子の再発リスクは一般に約1%未満と説明されてきました。ただし近年、外見上は健康な親の精子や卵子の一部に変化が潜む「生殖細胞系列モザイク」があると、再発リスクがこの数字より高くなることが分かってきました。実際にSMARCA2でも、父親の精子にモザイクが見つかり、続けて2人のお子さんに同じ変化が伝わった家系が報告されています。次の妊娠を考える際は、遺伝カウンセリングで個別に再発リスクを整理することをおすすめします。

Q4. BPESとはどう違うのですか?どちらも「眼瞼裂狭小」とありますが。

どちらも目の開きが狭い所見を含みますが、原因遺伝子も特徴も異なります。BPES(眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・逆内眼角贅皮症候群)はFOXL2という遺伝子が原因で、名前のとおり顕著な眼瞼下垂と逆内眼角贅皮が必須の所見であり、通常は知的障害を伴いません。女性では早発卵巣不全を伴うことがあります。一方BISはSMARCA2が原因で、眼瞼下垂の合併はまれ、逆内眼角贅皮はみられず、発達の遅れ・知的障害を伴います。この違いから、身体所見である程度の絞り込みができます。

Q5. 遺伝子検査で「意義不明」と言われました。どうすればよいですか?

見つかった変化が病気の原因かどうかはっきりしない場合、意義不明変異(VUS)と判定されます。このとき役立つのが、患者さんの血液のDNAメチル化のパターンがBISに特有の指紋と一致するかを調べるEpiSign(メチル化アレイ解析)です。指紋が一致すれば、その変化が病気に関係していると考える強い根拠になり、「意義がはっきりしない」から「病的である」への再分類を後押しします。VUSと言われた段階であきらめず、メチル化解析や再解析の可能性について、臨床遺伝専門医にご相談ください。

Q6. HVDAS(ADNP症候群)と顔つきが似ていると聞きました。関係があるのですか?

BISと、ADNP遺伝子によるHVDASの一部(クラスIIの変化をもつ患者さん)は、DNAメチル化の指紋と眼瞼裂狭小という顔つきを共有することが2024年に報告されました。ADNPタンパク質は、BAF複合体のSMARCA2などと直接結びつくため、ADNP側の変化とSMARCA2側の変化が「同じつなぎ目の破綻」を引き起こし、結果として同じメチル化の乱れと似た顔つきが生まれると考えられています。異なる遺伝子の病気のあいだで、表現型に特異的なエピシグネチャーが共有されることを示した初めての例で、鑑別には原因遺伝子の同定が必要です。

Q7. 妊娠中にBISを調べることはできますか?NIPTで分かりますか?

一般的なNIPTは主に染色体の数の変化を調べる検査で、単一遺伝子の変化をすべて広く調べるものではありません。当院では、単一遺伝子疾患まで対象を広げたインペリアルプランの対象遺伝子にSMARCA2が含まれています。ただし、確定診断が必要な場合には、絨毛検査や羊水検査で胎児由来の細胞を直接調べることになります。ご家族に同じ病気の方がいる場合や超音波で所見が疑われる場合は、臨床遺伝専門医と相談のうえで検査計画を立てることをおすすめします。

Q8. BISに治療法はありますか?これからよくなる可能性はありますか?

現時点で、原因そのものを治す根本的な治療法は確立されていません。支援の中心は、生活の質を高め合併症を管理するための多職種連携によるケアで、早期療育・言語やコミュニケーションの支援・栄養や行動面のサポート・定期的な合併症のチェックなどが行われます。研究面では、BISとHVDASで共通して乱れている経路を標的とした治療の可能性が期待されていますが、これは今後の課題であり、現時点で確立した治療ではありません。今できる支援を早く始めることが、お子さんの力を伸ばし、ご家族の負担を軽くすることにつながります。

🏥 発達の遅れ・遺伝性疾患の遺伝子診断のご相談

眼瞼裂狭小・知的発達障害症候群(BIS)をはじめとする
遺伝性疾患の遺伝子検査と遺伝カウンセリングは
臨床遺伝専門医が運営するミネルバクリニックにご相談ください。

参考文献

  • [1] De novo SMARCA2 variants clustered outside the helicase domain cause a new recognizable syndrome with intellectual disability and blepharophimosis distinct from Nicolaides-Baraitser syndrome. Genet Med. 2020. [PubMed 32694869]
  • [2] OMIM #619293. BLEPHAROPHIMOSIS-IMPAIRED INTELLECTUAL DEVELOPMENT SYNDROME; BIS. Johns Hopkins University. [OMIM 619293]
  • [3] SMARCA2-Related Nicolaides-Baraitser Syndrome. GeneReviews®. [NBK321516]
  • [4] Blepharophimosis with intellectual disability and Helsmoortel-Van Der Aa Syndrome share episignature and phenotype. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2024. [DOI 10.1002/ajmg.c.32089]
  • [5] SMARCA2-related blepharophimosis-intellectual disability syndrome. Orphanet. [Orphanet 637013]
  • [6] Retrospective analysis of a clinical exome sequencing cohort reveals the mutational spectrum and identifies candidate disease-associated loci for BAFopathies. 2022. [PMC8957292]
  • [7] Low-level germline mosaicism of a novel SMARCA2 missense variant: Expanding the phenotypic spectrum and mode of genetic transmission. Mol Genet Genomic Med. 2021. [PubMed 34296532]
  • [8] Parental germline mosaicism in genome-wide phased de novo variants: Recurrence risk assessment and implications for precision genetic counselling. PLoS Genet. 2025. [PMC11990764]

関連記事

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

お電話での受付可能
診療時間
午前 10:00~14:00
(最終受付13:30)
午後 16:00~20:00
(最終受付19:30)
休診 火曜・水曜

休診日・不定休について

クレジットカードのご利用について

publicブログバナー
 
medicalブログバナー
 
NIPTトップページへ遷移