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出産が近づいてくると、いつ陣痛がくるのかとそわそわしている妊婦さんも多いことでしょう。「いつどんな風にお腹が痛くなるのかな」と思うと同時に、「破水が先に起こったらどうなるのだろう」という不安を感じているかもしれません。
しかも、破水は出る量やタイミングも人それぞれ異なります。そのため、破水しているかわからない場合は、検査が必要になることも。
検査と聞くと、お腹の赤ちゃんへの影響や検査の痛みが気になるかもしれませんが、不安に感じなくても大丈夫です。むしろ、破水しているかをいち早く知ることは、ママと赤ちゃんにとってとても重要なので、破水の可能性がある場合は早急にかかりつけの産婦人科を受診しましょう。
この記事では、破水かどうかの検査が必要なケースと検査方法、先輩ママの体験談をご紹介します。破水の検査とはどのようなものなのか知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
破水かどうかの検査が必要なケース
そもそも破水とは、胎児を包む卵膜が破れて羊水が体外へ流れ出すことです。
破水というと、自宅にいるときに突然透明な水のようなものが流れ出て、下半身がびしょびしょになるイメージをお持ちの方も多いですが、それはあくまでもほんの一例です。破水の種類も起きる状況も人それぞれ異なります。
では、破水かどうかわかりにくく、病院で検査をする必要があるのは、一体どのような場合なのでしょうか。ここでは、破水かどうかの検査が必要なケースについてご紹介します。
陣痛がくる前に破水したケース
残念ながら、破水するタイミングは自分でコントロールできるものではありません。
通常、破水は分娩時に子宮が全開大(10cm)開いた頃に胎胞が破れて起こることばかりです。これを「適時破水」と呼び、陣痛が開始してから子宮口が開ききる前に破水してしまうことを早期破水と呼びます。
それに対して分娩がはじまる前に破水してしまうことを「前期破水」と呼びます。前期破水は妊娠37週目未満の早産の時期でも起こる可能性があるため、まさかの事態にパニックになってしまうことも。
前期破水は、とくに原因がなく起こるケースも多いですが、時折膣炎による感染やくしゃみなどで急激に腹圧が上昇したことで起こるケースもあります。
卵膜が破れた箇所によって流れ出る羊水の量も違うため、破水しているかどうか見分けがつかない場合は、検査をしてきちんと診断しなければいけません。
チョロチョロと少しずつ流れ出ているケース
上述した通り、破水する際の状況や流れ出る羊水の量は、人それぞれ異なります。妊婦さん一人ひとりに出産にまつわるエピソードがあるように、一気に羊水が流れ出るケースもあれば、チョロチョロと少しずつ流れ出るケースも。
すでにおわかりかもしれませんが、破水かどうかの検査が必要になるのは、羊水が少しずつ流れ出るケースで、これを「高位破水」と呼びます。
高位破水は、卵膜の子宮口から遠い部分が破れてしまうことで起こる破水です。一気に羊水が流れ出ず、少しずつ流れ出るのが特徴です。
前期破水で起こりやすいのですが、音もせず少量ずつ流れ出るので、まさか破水しているとは思わない方も多くいます。妊娠中は、尿漏れや水っぽいおりものも多くなることから、中にはそれらと勘違いしてしまう方もおられるようです。
実際のところ、尿漏れやおりものと破水の違いは、助産師さんでもわからないことがあるため、妊婦さんが間違えてしまうのも当然のことなのかもしれません。
破水してから長時間放置してしまうと、膣から感染を起こして赤ちゃんが危険な状態になる恐れもあります。そのような事態を防ぐためにも、いち早く破水かどうかの検査を行い、適切な処置を受ける必要があるのです。
破水かどうか調べる検査方法とは
破水の疑いがある場合は、すぐにかかりつけの産婦人科へ連絡をする必要があります。一般的には、妊娠週数にかかわらず、すぐに受診することになります。
病院へ向かう際は、清潔なナプキンや尿漏れパッドを装着し、タオルなども持っておくと安心です。破水していることが確認されれば、そのまま入院することになるので、入院セットも一緒に持参するようにしましょう。
ここでは、病院到着後に行われる具体的な破水の検査方法についてご紹介します。
目視で確認する
患者さんからの自覚症状の訴えにより破水が疑われる場合、まずは医師による膣鏡診を行い、外子宮口(子宮の出口)から持続的に羊水が流れ出ているか目視で確認します。
破水の状況によっては、視診のみですぐに破水と診断できるものもありますが、そうでない場合は診断を確定するための検査を受けることになるでしょう。
超音波検査で調べる
「産婦人科診療ガイドライン」では、破水しているかどうか調べる際は羊水量の測定も行うとされています。羊水量の測定は、超音波検査(エコー検査)で行われるのが一般的です。
また、破水によって羊水量が少ないと赤ちゃんが苦しくなってしまう可能性もあるので、赤ちゃんが元気かどうかも、超音波検査で調べておく必要があります。
専用の測定キットで調べる
妊娠37週未満で破水する「前期破水」が疑われる場合は、主に羊水中に存在し、膣分泌物には含まれない胎児フィブロネクチン(fFN)やα-フェトプロテイン(AFP)、インスリン様成長因子結合蛋白-1(IGFBP-1)などを検出する専用の検査薬を使用することがあります。
よく使用されるのは、インスリン様成長因子結合蛋白-1を検出する「チェックPROM」という試薬です。
チェックPROMを使用する検査では、滅菌した膣鏡を用いて付属のスワブに膣分泌液を吸収させ、それを抽出液入りのチューブに入れてよく攪拌してインスリン様成長因子結合蛋白-1を抽出します。抽出した液に検査スティックの先端が判定部位に達するまで20秒ほど浸すと、判定できる仕組みです。
前期破水の診断において信頼性の高い検査方法ではありますが、破水後12時間以上経過している場合などは正しい結果が得られない可能性もあるため、破水が疑われるときは早めに受診するようにしましょう。
BTB試験薬などで調べる
出産予定日が近いなど、満期の破水を診断する際は、専用のキットを使用せずBTB試験紙で簡易的に破水かどうかを検査するのが一般的です。
正常な膣内は、pH4.5〜6.0の弱酸性ですが、羊水はpH7.0〜8.5の中性から弱アルカリ性を示すため、BTB試験紙を利用して膣内のpH値を調べることで破水しているかどうかを判断します。
前期破水の診断でも、他の検査と併用してこのBTB試験紙法が用いられることもあります。ただし、この方法は血液や精液、薬剤などの影響で偽陽性となる可能性もあるため、診断には十分注意を払わなければいけません。
子宮内感染が起こっていないかの検査も必要
上記でご紹介したように、破水から長時間経過すると子宮内感染を起こして赤ちゃんが危険な状態に陥る恐れもあります。
子宮内感染を起こしてしまうと、全身の感染症や肺炎、髄膜炎などの感染症にかかる恐れもあるほか、脳性麻痺や場合によっては死亡してしまう恐れもあるため、必ず適切な処置を受けなければいけません。
これらのことから、前期破水と診断された場合は、採血をして白血球数やCRP(炎症によって放出される特別なタンパク)の量を調べる検査を行う必要があります。
先輩ママの破水検査体験談
ここでは、ある先輩ママが実際に体験した破水検査にまつわる体験談をご紹介します。
もちろん、スムーズに破水かどうか診断される場合の方が多いので、ひとつの例として知っておくといざというときに役立つかもしれません。
採取した場所によっては判定できないことも
出産予定日から5日ほど前の明け方頃のこと。突然お漏らしをしたような感覚があり目を覚ましました。すかさずにおいを確認しましたが、尿漏れなのか判断できなかったので、朝まで待ってからかかりつけの産婦人科へ連絡し、受診しました。
助産師さんがリトマス試験紙のようなもので検査をしてくれましたが、判定結果は破水ではないとのこと。
「せっかく来てもらったけど、尿漏れだったのかな?」と笑われてしまいました。
しかし、その後の触診中もお漏らしのような感覚があったので、しつこく頼んでもう一度検査をしてもらうと、試験紙の色が変わって破水していることがわかりました。
私の場合、かなり高い位置でごく少量の羊水しか出てこなかったため、採取する場所によっては判定できなかったみたいです。
その後は2時間ほどで出産を終えることになったのですが、もしもあのとき再検査をお願いせず帰っていたらと思うと、ゾッとしました。
この方のように、検査を受けたとしても正しい判定結果が得られない場合もあります。
当然のことながら、医師の診断に従って対処することが第一です。しかし、検査で陰性であっても不安を感じる場合は、もう一度検査をしてもらったりきちんと説明を受けたりなど、自分自身が納得できるよう行動することも大切です。
まとめ
破水かどうかの検査が必要なケースと検査方法、先輩ママの体験談をご紹介しました。
破水というと、陣痛がきてから風船が破れるように羊水が流れ出る印象も強いですが、本来起こるべき時期よりも前に起こったり、流れ出る羊水量によっては気づかなかったりすることもあります。
破水しているかどうかを調べるには、今回ご紹介したようにいくつかの検査のうち、ひとつもしくは複数を行って診断を行うことになります。
破水したまま放置してしまうと、子宮内感染を起こして母子ともに危険な状態になることもあるので注意が必要です。
ぜひ本記事を参考に、破水が疑われるときは速やかにかかりつけの産婦人科を受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。