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これって妊娠線?原因やでき始めの兆候、具体的な予防方法を解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

妊娠線は、お腹が急に大きくなる妊娠中期から後期にかけて、皮膚の深いところにある真皮が伸びに追いつけずにできる線状の跡です。でき始めは赤〜赤紫色の細い線で、かゆみやつっぱり感を伴うことがあります。妊婦さんの50〜90%にできるとされ[1]、できやすさには体重の増え方だけでなく、家族歴などの体質も関わっています[2]。一方で、クリームやオイルで妊娠線を確実に防げるという質の高い根拠は、今のところありません[1]。この記事では、妊娠線のでき始めの見た目と兆候、原因とできやすい人、予防を始める時期と方法、できてしまった後の対処までを解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🤰 妊娠線・でき始め・予防
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 妊娠線のでき始めはどんな見た目ですか?

A. お腹や胸、太ももなどに、赤〜赤紫色の細い線が皮膚の伸びる方向と直角に現れます。かゆみや乾燥、つっぱり感が先に出ることもありますが、自覚症状のないままできることも多いです。産後は時間とともに白っぽく、目立ちにくくなりますが、跡は完全には消えません。

  • ➤いつから → 多くは妊娠中期の後半から後期。早い人は20週前後から
  • ➤できやすい人 → 若い年齢での妊娠、家族に妊娠線がある、体重が多い・増え方が大きい、赤ちゃんが大きい
  • ➤予防 → 塗り薬の予防効果は確かめられていない。体重の増え方を目安内に保ち、保湿でかゆみと掻き壊しを防ぐ
  • ➤正中線との違い → 正中線は色素が増えた線で、皮膚が裂けたものではない
  • ➤注意したいかゆみ → 妊娠線に沿った強いかゆみのブツブツ、手のひら・足の裏まで広がるかゆみは産婦人科へ

妊娠線とは

お腹にできた妊娠線を見せる女性

妊娠線とは、妊娠中に体型が急に変わり、皮膚が引き伸ばされることでできる線状の跡です。いわゆる「肉割れ」の一種で、医学的には妊娠線条(にんしんせんじょう)、英語ではストレッチマーク(striae gravidarum)と呼ばれます。妊娠以外でも、思春期の急な成長や体重の増加でできるものは皮膚線条(線状皮膚萎縮症)と呼ばれ、同じ仕組みでできます。

見た目は時期によって変わります。でき始めは赤〜赤紫色で、少し盛り上がって見えることもあります。時間がたつと色が抜けて白〜銀白色になり、皮膚が薄くへこんで、細かいしわのような質感になります。産後は目立ちにくくなりますが、跡そのものは完全には消えません。

🔍 妊娠線の見た目の変化

時期 色・見た目 感じ方
でき始め(妊娠中) 赤・ピンク・赤紫色の細い線。少し盛り上がったり、ミミズ腫れのように見えたりする かゆみ、乾燥、つっぱり感。何も感じないことも多い
妊娠後期〜産後しばらく 線が太く、長く、数が増えることがある。色は赤紫〜茶色っぽく見える かゆみが続くことがある
産後数か月〜数年 白〜銀白色になり、皮膚がやや薄くへこんだ線として残る 症状はほとんどない

※色の出方は肌の色によって異なり、色黒の方では茶色〜紫がかって見えることがあります。

妊娠線ができる原因

妊娠線ができる主な原因は、次の2つが重なることです。

  • お腹や胸が短い期間で大きくなり、皮膚が強く引き伸ばされる
  • 妊娠中のホルモンの変化で、皮膚を支える線維がこわれやすくなる

皮膚は体の表面から「表皮」「真皮」「皮下組織」の順に重なっています。いちばん外側の表皮はある程度伸びることができますが、その下の真皮は、コラーゲン線維と、ゴムのように伸び縮みする弾性線維(エラスチンやフィブリリンでできた線維)が網目のように組み合わさってできています。お腹が急に大きくなって真皮の伸びが追いつかなくなると、この線維の網目がこわれ、表から見ると線状の跡になります[2]。

妊娠中は、副腎から出るコルチゾール(ステロイドホルモンの一種)の血中濃度が上がり、エストロゲンやリラキシンなど、組織をやわらかくするホルモンも増えます。コルチゾールには、真皮の線維をつくる細胞(線維芽細胞)の働きを弱める作用があります。ステロイドの薬を長く使った人や、コルチゾールが多くなる病気の人にも同じような線ができることから、ホルモンの影響も妊娠線のできやすさに関わっていると考えられています。

妊娠線ができやすい人の特徴

妊娠線についての研究をまとめた総説では、次のような人に妊娠線ができやすいことが示されています[2]。

  • 若い年齢で妊娠した
  • 母親や姉妹に妊娠線がある(家族歴)、本人に思春期の肉割れがある
  • 妊娠前の体重が多い、妊娠中の体重の増え方が大きい
  • 生まれる赤ちゃんの体重が大きい
  • 双子などの多胎妊娠、羊水が多いなど、お腹が大きくなりやすい

以前は「高齢妊娠だと妊娠線ができやすい」と書かれることがありましたが、研究ではむしろ若い年齢での妊娠のほうがリスクが高いと報告されています[2]。年齢とともに皮膚の性質が変わることが関係していると考えられていますが、はっきりした理由はわかっていません。また、乾燥肌やアトピー性皮膚炎がある方は、かゆみで掻き壊しやすいので、保湿をこまめにしておくとよいでしょう。

家族歴が重要な要因になっているのは、妊娠線のできやすさに遺伝的な体質が関わっているためです。妊娠線を含む皮膚線条について、多くの人の遺伝情報を調べたゲノムワイド関連解析(GWAS)では、弾性線維の主成分であるエラスチンをつくるELN遺伝子の近くなど、真皮の弾性線維(微細線維)にかかわる領域との関連が報告されています[3]。同じように体重が増えても、妊娠線がたくさんできる人とほとんどできない人がいるのは、こうした皮膚の線維の「もともとの強さ」の違いが一因です。

なお、弾性線維にかかわるフィブリリン(FBN1遺伝子)の変化で起こるマルファン症候群など、結合組織の遺伝性の病気では、妊娠や体重の変化と関係なく皮膚線条がみられることがあります。ただし、妊娠線は妊婦さんの半数以上にできるごくふつうの変化なので、妊娠線があるだけで病気を心配する必要はありません。背が高く手足が長い、目の水晶体がずれていると言われたことがある、家族に若くして大動脈の病気になった人がいる、といった特徴が重なる場合に考える病気です。

妊娠線ができやすい方は、妊娠初期のうちから次のような対策をしておくと、かゆみや掻き壊しを防ぐのに役立ちます。

  • 保湿ケアを習慣にする
  • 肌あたりのよい、締め付けの少ない衣類を選ぶ
  • 掻いて傷をつけないよう、爪を短く切っておく

妊娠線ができやすい場所

妊娠線がもっともできやすいのはお腹で、とくにおへその周りから下腹部にかけてです。そのほか、胸、太もも、お尻、腰まわり、二の腕にもできます。共通しているのは、妊娠中に急に大きくなる場所や、脂肪がつきやすい場所であることです。胸は妊娠中から授乳に向けて乳腺が発達して大きくなるため、妊娠線ができやすい部位のひとつです。

気をつけたいのは、下腹部の下のほうや太ももの裏、お尻など、自分では見えにくい場所です。妊娠線は痛みもなくできることが多いため、お腹が大きくなって下が見えにくくなる妊娠後期に、産後になって初めて気づく方も少なくありません。ときどき鏡で確認するか、家族に見てもらうとよいでしょう。

妊娠線ができ始める時期

妊娠線ができ始めるのは、多くは妊娠中期の後半から後期にかけてです。お腹がはっきり大きくなる時期に重なるためで、早い人では妊娠20週前後から現れます。お腹がいちばん大きくなる臨月に、短期間で一気に増えることもあります。妊娠中期がいつからいつまでかは妊娠中期はいつからいつまで?で解説しています。

つわりが落ち着く妊娠中期以降は、食欲が戻って体重が増えやすくなる時期でもあります。ただし、妊娠中は赤ちゃんの成長のために体重が増えるのが自然なことです。妊娠線を気にするあまり食事を極端に減らすと、赤ちゃんの発育に影響するおそれがあるので、やめてください。

妊娠線と正中線との違い

妊娠線と間違われやすいのが、お腹の真ん中に縦に現れる茶色い線、「正中線(せいちゅうせん)」です。正中線はホルモンの影響で皮膚の色素(メラニン)が増えて濃く見えるようになったもので、皮膚の線維が裂けてできる妊娠線とは成り立ちが違います。正中線は産後、時間をかけて薄くなっていきます。

正中線ができる仕組みや、乳首・脇など同じ理由で黒くなる部位については、妊娠中に乳首が黒くなるのはなぜ?で詳しく解説しています。

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こんな症状があれば注意!妊娠線でき始めの症状

お腹の皮膚の状態を確かめる女性

妊娠線ができ始めるときには、次のような変化に気づくことがあります。

  • お腹や胸、太ももの皮膚のかゆみ
  • 皮膚の乾燥、つっぱり感
  • 赤〜ピンク色の細い線がうっすら見える

ただし、妊娠線は何の症状もなくできることがほとんどです。皮膚が引き伸ばされると、かゆみやチリチリとしたむずがゆさを感じる人もいますが、症状の有無で妊娠線ができるかどうかは判断できません。かゆいときに掻くと皮膚が傷つき、色素沈着や湿疹の原因になります。かゆみを感じたら、掻かずに保湿をして、肌あたりのよい服を選んでください。

⚠️ 妊娠線のかゆみと区別したい症状

妊娠線に沿って強いかゆみのある赤いブツブツが出て、お腹から太ももや腕へ広がる場合は、妊娠性多形疹(にんしんせいたけいしん)という皮膚の病気のことがあります。妊娠後期の初めての妊娠に多く、妊娠線の部分から始まるのが特徴です。また、発疹がないのに手のひらや足の裏までかゆくなる、夜に眠れないほどかゆい場合は、肝臓の病気(妊娠性肝内胆汁うっ滞症)との区別が必要です。どちらもかかりつけの産婦人科に相談してください。

知らないと後悔|妊娠線予防を始める時期

妊娠線のケアは、お腹がふくらみ始める妊娠中期(14週ごろ)より前、妊娠初期の終わりごろから習慣にしておくのが目安です。体重の増え方は妊娠の最初から積み重なるので、体重の管理は妊娠がわかったときから意識しておきます。

ここで知っておいてほしいのは、「早く始めれば妊娠線を防げる」と確かめた研究があるわけではないことです。それでも早めの習慣をすすめるのは、妊娠線の大きな要因である体重の増え方は、後から取り戻すのが難しいためです。また、保湿はかゆみや乾燥を和らげ、掻き壊しによる色素沈着を防ぐ点で、どの時期から始めても役に立ちます。

妊娠初期はつわりで体調がすぐれない時期でもあります。無理をせず、体調のよい日に入浴後の保湿から始めれば十分です。すでに妊娠線ができ始めている場合も、そこからの保湿や体重の管理は無駄にはなりません。

妊娠線に対する6つの予防方法

お腹に保湿クリームを塗る妊婦

妊娠線を防ぐために、よく紹介される方法は次の6つです。

  • 予防法①:体重・体型コントロール
  • 予防法②:保湿&マッサージ
  • 予防法③:適度な運動
  • 予防法④:栄養バランスの良い食事を心がける
  • 予防法⑤:腹帯を使う
  • 予防法⑥:リラックスして過ごす

ただし、これらの効果の確かさには差があります。体重の増え方は妊娠線と関連することがわかっていますが[2]、塗り薬については、6つの臨床試験(800人)をまとめたコクランレビューで、妊娠線の予防に効果があるという質の高い根拠は見つかりませんでした[1]。それぞれの方法で期待できることと、できないことを分けて見ていきます。

予防法①:体重・体型コントロール

妊娠線のリスクとしてはっきりしているのが、妊娠前の体重と妊娠中の体重の増え方です[2]。体重が短期間に大きく増えると、皮膚が急に引き伸ばされるためです。ただし、体重が増えること自体は悪いことではありません。妊娠中は赤ちゃん、胎盤、羊水、増える血液、授乳に備えた脂肪などで、体重が増えるのが自然です。

体重の増え方の目安は、妊娠前のBMI(体重kg÷身長m÷身長m)で決まります。日本産科婦人科学会は2021年に、下の表の目安を示しました[4]。以前の目安より幅が広く、学会は「個人差を考慮したゆるやかな指導を」と添えています。

⚖️ 妊娠前のBMI別・妊娠中の体重増加の目安

妊娠前の体格 BMI 体重増加の目安
低体重 18.5未満 12〜15kg
普通体重 18.5以上25未満 10〜13kg
肥満(1度) 25以上30未満 7〜10kg
肥満(2度以上) 30以上 個別に対応(上限5kgまでが目安)

※日本産科婦人科学会「妊娠中の体重増加の目安について」(2021年)[4]、厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」[5]による。

大切なのは、目安の幅の中で、急な増え方を避けることです。妊娠線を防ぎたいからといって、食事を極端に減らしたり激しい運動をしたりすると、赤ちゃんの発育に影響するおそれがあり、本末転倒です。時期ごとの増え方や、増えない・増えすぎのときの考え方は妊娠中の体重増加の目安で詳しく解説しています。

予防法②:保湿&マッサージ

妊娠線予防といえば保湿クリームやオイルが思い浮かびますが、塗り薬で妊娠線を防げるという質の高い根拠はありません。コクランレビューでは、オリーブオイルやココアバター、ビタミンEやヒアルロン酸を含む製品などを調べた試験をまとめても、妊娠線ができる人の割合にはっきりした差はみられませんでした[1]。妊娠線の主な原因は真皮の線維がこわれることで、肌の表面に塗ったものが真皮の深いところまで届いて線維を強くするとは考えにくいためです。

それでも保湿をすすめるのは、妊娠中の皮膚は乾燥してかゆみが出やすく、掻き壊すと湿疹や色素沈着が残るからです。保湿は「妊娠線を防ぐもの」ではなく、「かゆみを抑え、肌のトラブルを防ぐもの」と考えてください。入浴後、肌が湿っているうちに塗ると効果的です。

マッサージの効果も十分には確かめられていません。行う場合は、保湿剤をなじませる程度に、お腹をやさしくなでるようにしてください。お腹を強く押したり、長時間こすったりする必要はありません。マッサージの途中でお腹の張りを感じたら、すぐにやめてください。

予防法③:適度な運動

運動そのものが妊娠線を防ぐという研究はありませんが、体重の増え方をゆるやかにするのに役立ちます。妊娠中にすすめられるのは、ウォーキングやマタニティスイミング、マタニティヨガなど、会話ができる程度の強さの運動です。

筋トレで皮膚の伸び縮みが強くなるわけではありません。皮膚の線維の強さは筋肉とは別のものです。運動は健康づくりと体重の管理のために行うものと考え、転倒しやすい運動やお腹を打つおそれのある運動は避けてください。切迫早産と言われている方や、お腹の張りが多い方は、運動を始める前にかかりつけの産婦人科に相談してください。

予防法④:栄養バランスの良い食事を心がける

特定の食べ物で妊娠線を防げるという根拠はありませんが、主食・主菜・副菜をそろえた食事は、体重の急な増加を防ぎ、皮膚を含めた体全体の健康を保つ基本になります。量のわりにエネルギーの多い甘い飲み物やお菓子、揚げ物を控えるだけでも、体重の増え方はゆるやかになります。

つわりで思うように食べられない時期は、栄養のバランスよりも、食べられるものを食べられるときにとることを優先してかまいません。つわりが落ち着いてから、少しずつ食事を整えていけば十分です。

予防法⑤:腹帯を使う

腹帯(妊婦帯)が妊娠線を防ぐという根拠はありません。お腹の大きさは赤ちゃんや羊水の量で決まるので、外から巻いても皮膚が伸びる量は変わらないためです。

一方で、腹帯や妊婦帯には、大きくなったお腹を支えて腰の負担を軽くしたり、お腹の冷えを防いだりする目的で使う人もいます。使う場合は、締め付けすぎないものを選び、苦しさやかゆみを感じたら外してください。マジックテープ式やベルト式など、着け外しの簡単なものもあります。

予防法⑥:リラックスして過ごす

ストレスがかかると副腎からコルチゾールが出ることはよく知られていますが、日常のストレスの大きさと妊娠線のできやすさの関係は、直接は確かめられていません。妊娠中のコルチゾールの増加は、主に胎盤のはたらきなど妊娠そのものによるもので、気持ちの持ち方で大きく変えられるものではありません。

それでも、十分な睡眠をとり、ストレスをためないように過ごすことは、食べすぎを防いだり、体調を整えたりするうえで役立ちます。仕事や家事、上のお子さんのお世話などは、パートナーや家族に協力してもらいながら、無理のない範囲で調整してください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【妊娠線ができても、ケアが足りなかったわけではありません】

妊娠線について、「毎日クリームを塗ったのにできてしまった」と自分を責める声を耳にします。けれども、塗り薬の予防効果ははっきり確かめられておらず、妊娠線のできやすさには、家族歴に表れるような生まれつきの皮膚の線維の性質が大きく関わっています。同じケアをしても、できる人とできない人がいるのは自然なことだと考えています。

妊娠中にできることは、体重の増え方を目安の範囲に保つことと、保湿でかゆみや掻き壊しを防ぐことです。それ以上を求めて食事を減らしたり、高価な製品を次々に試したりする必要はありません。妊娠線は赤ちゃんを育てている体の変化のひとつで、医学的に心配のいらないものです。

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妊娠線予防|セルフケアにおすすめの3種類の保湿剤

マットの上でマタニティヨガをする妊婦

保湿の目的は、乾燥とかゆみを防いで、掻き壊しによる肌トラブルを避けることです。市販の保湿剤は大きく次の3タイプに分けられます。「妊娠線予防」をうたう製品でも、ふつうの保湿剤でも、目的は同じなので、使い心地と続けやすさで選んでかまいません。

  • クリームタイプ
  • オイルタイプ
  • ローションタイプ

クリームタイプ

乾燥しやすい方や、空気が乾燥する季節に向いているのがクリームタイプです。油分と水分の両方を含み、保湿力が高く、塗った後のうるおいが長く続きます。もともと乾燥肌の方や、アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアが弱い方に向いています。

一方で、汗をかきやすい夏場はベタつきが気になることがあります。オイルやローションに比べて伸びが悪く、広い範囲に塗ると量が多く必要になる点も知っておきましょう。

オイルタイプ

少ない量で広い範囲に伸ばせるのがオイルタイプです。肌の表面に膜をつくって、水分が逃げるのを防ぐはたらきがあります。オイル自体には水分がないため、入浴後の肌が湿っているうちに塗るか、ローションやクリームの後に重ねて使うと効果的です。

天然由来をうたう製品も多いですが、植物由来の成分でもかぶれることはあります。また、香りの強いものは、つわりの時期に気分が悪くなる原因になることがあります。初めて使うものは、腕の内側などに少量塗って、肌に合うか確かめてから使ってください。

ローションタイプ

さらっとした使い心地で、ベタつきが苦手な方に向いているのがローションタイプです。少量でも広い範囲に塗れて、汗をかきやすい夏場や、出かける前のケアに使いやすいのが特徴です。保湿力はクリームよりやや劣るため、乾燥が強い場合はローションの後にクリームやオイルを重ねるとよいでしょう。

💡 妊娠中は避けたい成分

ニキビや肌のハリの改善をうたう製品の中には、トレチノインなどのレチノイド(ビタミンAの仲間)を含むものがあります。レチノイドの飲み薬には赤ちゃんの形の異常を起こす作用があるため、妊娠中・授乳中は、塗り薬でも使わないのが原則です。皮膚科で処方された外用薬を使う場合も、妊娠中であることを必ず伝えてください。

予防していたにも関わらず妊娠線ができた時の対処法

妊娠線は、どれだけ丁寧にケアしていてもできることがあります。前に述べたとおり、できやすさには体質が大きく関わっているためで、ケアが足りなかったからではありません。

妊娠中にできてしまった場合も、保湿は続けてください。赤い妊娠線はかゆみが出やすく、掻くと色素沈着が残ったり、湿疹になったりします。保湿でかゆみを抑え、掻かないようにすることが、跡を目立たせないためにできることです。体重の増え方を目安の範囲に保つことも、妊娠線がそれ以上増えたり広がったりするのを抑えることにつながります。

妊娠線は、産後の時間の経過とともに赤みが引いて白っぽくなり、目立ちにくくなっていきます。妊娠中に跡を消そうとして、刺激の強い成分を使ったり、強くこすったりする必要はありません。

妊娠線を完全に消すことは可能?妊娠線の治療

腹部の皮膚にレーザー治療を行っている様子

一度できた妊娠線を、治療で完全に消すことは難しいのが現状です。ただし、医療機関での治療によって、色や凹凸を目立たなくすることはできます[2]。主な治療法は次のとおりです。

🏥 妊娠線の主な治療法

治療法 しくみ 向いている時期
フラクショナルレーザー(炭酸ガスなど) 皮膚に細かい点状の傷をつくり、治る過程でコラーゲンが再生するのを促す 白くなった妊娠線にも用いられる
色素レーザーなど 赤い妊娠線の血管に反応して、赤みを目立たなくする 赤みが残っている時期
マイクロニードル(ダーマペンなど) 細い針で皮膚に小さな穴を開け、真皮の再生を促す 赤い妊娠線・白い妊娠線とも

※効果には個人差があり、複数回の治療が必要になることが多いです。

一般に、赤みのある新しい妊娠線のほうが、白く落ち着いた古い妊娠線より治療に反応しやすいとされています。治療は皮膚科や形成外科で行われ、病気の治療ではないため、基本的には自費診療です。費用は医療機関や回数によって大きく異なるので、事前に確認しておきましょう。

治療を考える場合は、出産後、授乳の状況も含めて担当の医師と相談してください。妊娠中は皮膚が伸び続けているうえ、使える薬や治療に制限があるため、治療は産後に検討するのが一般的です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 妊娠線のでき始めはどんな見た目ですか?

お腹や胸、太ももなどに、赤・ピンク・赤紫色の細い線が現れます。少し盛り上がって見えたり、かゆみやつっぱり感を伴ったりすることもありますが、何も感じないままできることも多いです。時間がたつと白〜銀白色の、少しへこんだ線に変わります。

Q2. 妊娠線は何週からできますか?

多くは妊娠中期の後半から後期にかけてできます。早い人では妊娠20週前後から現れ、お腹がいちばん大きくなる臨月に急に増えることもあります。

Q3. 妊娠線予防クリームを塗れば防げますか?

クリームやオイルで妊娠線を防げるという質の高い根拠はありません。6つの臨床試験をまとめたコクランレビューでも、塗り薬を使ったグループと使わなかったグループで、妊娠線のできやすさにはっきりした差はみられませんでした。保湿はかゆみや乾燥を抑え、掻き壊しを防ぐために続ける価値があります。

Q4. お腹の真ん中の茶色い線は妊娠線ですか?

お腹の真ん中に縦に現れる茶色い線は正中線で、ホルモンの影響で色素が増えたものです。皮膚の線維が裂けてできる妊娠線とは別のもので、産後は時間をかけて薄くなっていきます。

Q5. 妊娠線は産後に消えますか?

赤みは時間とともに引いて白っぽくなり、目立ちにくくなりますが、跡そのものは完全には消えません。気になる場合は、産後に皮膚科や形成外科でレーザーなどの治療を相談する方法があります。治療で目立たなくすることはできますが、完全に消すことは難しく、基本的に自費診療です。

Q6. 妊娠線ができやすい体質はありますか?

あります。母親や姉妹に妊娠線がある方、思春期に肉割れができた方は、妊娠線ができやすいことがわかっています。皮膚の弾性線維にかかわる遺伝的な体質が関係していると考えられています。若い年齢での妊娠、妊娠前の体重が多いことや妊娠中の体重の増え方が大きいことも、リスクとして報告されています。

まとめ: 妊娠線予防のカギは「早い時期から始めること」

ベッドに横たわりお腹を見つめる妊婦

妊娠線は、お腹が急に大きくなる妊娠中期の後半から後期にかけて、真皮の線維が伸びに追いつけずにこわれることでできます。でき始めは赤〜赤紫色の細い線で、かゆみや乾燥を伴うことがありますが、自覚症状がないままできることも多いです。妊婦さんの50〜90%にできる、ごく一般的な変化です[1]。

できやすさには、若い年齢での妊娠、家族歴、体重、赤ちゃんの大きさが関わっており[2]、皮膚の弾性線維にかかわる遺伝的な体質も報告されています[3]。塗り薬で確実に防ぐ方法はまだありませんが[1]、妊娠の早い時期から体重の増え方を目安の範囲に保ち[4]、保湿でかゆみや掻き壊しを防ぐことは、どの時期から始めても役に立ちます。妊娠線に沿った強いかゆみのブツブツや、手のひら・足の裏まで広がるかゆみがあるときは、かかりつけの産婦人科に相談してください。

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妊娠線は体の変化のひとつで、赤ちゃんの健康状態を表すものではありません。赤ちゃんの染色体について調べたい方には、妊婦さんの血液で調べるNIPTがあります。ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医が検査前後の遺伝カウンセリングを担当し、結果の意味や、確定検査が必要な場合の流れまでご説明します。妊娠経過の症状については、かかりつけの産婦人科にご相談ください。

参考文献

  • [1] Brennan M, Young G, Devane D. Topical preparations for preventing stretch marks in pregnancy. Cochrane Database Syst Rev. 2012;11:CD000066. doi:10.1002/14651858.CD000066.pub2. [PubMed 23152199]
  • [2] Farahnik B, Park K, Kroumpouzos G, Murase J. Striae gravidarum: Risk factors, prevention, and management. Int J Womens Dermatol. 2017;3(2):77-85. doi:10.1016/j.ijwd.2016.11.001. [PMC5440454]
  • [3] Tung JY, Kiefer AK, Mullins M, Francke U, Eriksson N. Genome-wide association analysis implicates elastic microfibrils in the development of nonsyndromic striae distensae. J Invest Dermatol. 2013;133(11):2628-2631. doi:10.1038/jid.2013.196. [DOI]
  • [4] 公益社団法人日本産科婦人科学会. 妊娠中の体重増加の目安について(令和3年6月). [日本産科婦人科学会]
  • [5] 厚生労働省. 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針(2021年3月改定)の概要. [こども家庭庁]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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