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つわりって薬飲んじゃいけないの?と思っている方も多いでしょう。いつまで続くのかわからない吐き気、食べてもすぐに嘔吐してしまう、などのつらいつわりの症状。吐き気から動けずに、一日中ベッドの中で過ごす妊婦さんも少なくありません。
はじめての妊娠で、つわりの症状に不安を感じている妊婦さんもいるのではないでしょうか。あまりのつらさに、つい自宅にある吐き気止めや胃薬などを飲んでしまう方もいますが、妊娠中の薬の服用には細心の注意が必要であるため、必ず主治医に相談するようにしましょう。
この記事では、つわりに処方される薬と自宅でできる5つのつわりセルフケアについてご紹介します。
つわりの症状
つわりにはさまざまな症状があります。中でも代表格といわれるのが吐き気と嘔吐で、いわゆる「吐きづわり」と呼ばれているものです。つわりがあったという妊婦さんの約7割が経験するのが、この吐きづわりです。
つわりの症状は人によって程度が違います。そのため、少し吐き気がするという程度の方もいれば、吐き気がひどくて食事もできない方もいます。
以下は、一般的によくみられるつわりの症状です。
- 消化器系の症状:吐き気、嘔吐、食欲不振、胸やけ、下痢、便秘
- 唾液に関する症状:唾液の分泌量が増加、口腔内の渇き
- そのほかの症状:全身の倦怠感、頭痛、眠気、耳鳴り
症状が重いと「妊娠悪阻」という状態になることもあり、妊婦さんや赤ちゃんの健康に悪影響が出てしまうこともあります。
つわりと妊娠悪阻の境目は?
つわりは、基本的に妊娠初期の一時的な症状です。しかし、稀につわりが重症化して妊娠悪阻と呼ばれる状態になってしまうことがあります。
妊娠悪阻になると入院が必要です。そのため、つわりの症状が重症化する前に病院を受診することが大切です。
では、どのような状態になったら妊娠悪阻なのでしょうか。以下は、妊娠悪阻の可能性がある症状の例です。
- 水分をまったく摂れない
- トイレに行っても尿が出ない、または尿の量が少ない
- 体重が妊娠前より5kg〜10kg減少した
- 常に吐き気や嘔吐がある
- めまいやふらつきがある
つらいけれどなんとか食べたり飲んだりできる場合は、つわりの症状の範囲内です。日常生活に支障が出ている場合は、医師の診断を受けましょう。
つわりに処方される薬とは
つわりは病気ではないとはいえ、吐き気や嘔吐はつらいものです。しかし、ドラッグストアなどで売られている吐き気止めなどは、赤ちゃんに悪影響が出てしまう可能性もあるため飲まないようにしましょう。
吐き気や嘔吐がつらい場合は、妊婦さんでも飲める薬を処方してもらえる可能性もあります。かかりつけの病院で主治医に相談してみるとよいでしょう。
ここでは、つわりの症状に処方される一般的な薬についてご紹介します。
吐き気止め
つわりによる吐き気の症状には、まずは食べ方の工夫などが推奨されますが、それでも改善しない場合は、吐き気止めの処方が検討されます。
もっともよく処方されるのが、「プリンペラン(メトクロプラミド)」という吐き気止めです。胃腸の働きを活性化し、食べ物の消化を助け、吐き気や嘔吐、胸やけ、食欲不振などの症状を改善します。
嘔吐で胃が荒れてしまった際に処方されるのが、「マーロックス」という胃薬です。消化器官からはほとんど吸収されないため、胎児に影響を与えず安心して服用できるのが特徴です。
つわりで処方される吐き気止めにはいくつかの種類があり、医師が妊婦さんの症状や安全性を考慮して選びます。
ビタミン剤
重いつわりの症状には、ビタミンB6などのビタミン剤が処方されることもあります。ビタミンB6は、吐き気に効果があるとされており、アメリカ産婦人科学会では強く推奨されている治療です。
実際にビタミンB6を処方されて服用した先輩ママの中には、つわりによる吐き気が改善した方もいます。服用する量は、体重や症状によって医師が調整します。
また、つわりの時期にはビタミンB1を摂取するとよいともいわれているため、マルチビタミンを処方されることもあるようです。
ビタミンB1が欠乏すると、ウェルニッケ脳症という障害を引き起こす可能性があります。意識障害や歩行困難の症状が出ることもあるため、普段から積極的に摂取しておくとよいでしょう。
漢方薬
重いつわりの治療には、漢方薬の使用も有効です。東洋医学では、つわりは主に「水」や「血」のバランスの乱れで起こると考えられています。つまり、これらを治療すればつわりの症状が改善するということです。
つわりの症状に処方される一般的な漢方薬には、以下のようなものがあります。
- 小半夏加茯苓湯:吐き気や食欲減退
- 半夏瀉心湯、乾姜人参半夏丸:激しい嘔吐、腹痛
- 五苓散、二陳湯:頭痛や口の渇き、嘔吐
- 人参湯:胃腸虚弱や唾液の増加
妊婦さんの体力や症状に合わせて、適した漢方薬が処方されます。医師の指示に従い服用するようにしましょう。
薬を服用する際の注意点
妊娠中の薬は、一人ひとりの症状や薬の種類などに応じて医師が処方した通りに服用することが大切です。
過去に処方された薬や市販の薬は、自分の判断で服用しないようにしましょう。また、家族や知り合いに安全だといわれても、勝手に服用してはいけません。
持病で薬を飲んでいる妊婦さんについては、より影響の少ない薬への変更や、薬の量や種類を減らすなどの対応をするべきか主治医とよく相談するようにしましょう。
薬を飲んでも症状が収まらないときの対処法
薬を飲んでも全員が症状が収まるわけではありません。薬が効かない方や飲んでも吐いたときに薬を戻してしまった方もいます。
もし服用している薬が効かないときは医師に相談をしてください。別の薬へ変更したり、点滴に変えたりしてくれます。
特効薬はあるのか?
つわりの症状がひどくて「特効薬があればいいのに」と思った妊婦さんはたくさんいるでしょう。このつらさを何とかしてほしいというのは妊婦さん共通の願いだと思います。
もし症状を押さえる特効薬のようなものができれば、状況が変わりますけど現状では難しいでしょう。理由はつわりの原因がはっきりしていないからです。仮に薬ができたとしても治験に参加する妊婦さんはそうはいないと思います。
自宅でできる5つのつわりセルフケア
つわりの症状は、薬を服用しなくても自分でセルフケアを行えば軽減できる場合もあります。できるだけ薬を服用しなくて済むように、まずは自宅で簡単にできるセルフケアを試してみるとよいでしょう。
ここでは、自宅でできる5つのつわりセルフケアをご紹介します。
ストレッチ
胃がムカムカする、気持ち悪いなどの症状がある妊婦さんに多くみられるのが、首筋から背中にかけてのコリです。肩甲骨の内側や鎖骨の下あたりの筋肉が緊張している方も多くみられます。
これらの筋肉の緊張をほぐすと、症状が軽減する可能性があります。以下は、背中や鎖骨付近の筋肉をほぐすストレッチの方法です。
- 正座をする
- 両手を後方へつく
- 鼻からゆっくり息を吸い、口から少しずつ息を吸う
- 3の呼吸をしながら肩甲骨を中央へ寄せつつ胸の前面を伸ばす
- この動きを数回繰り返す
このとき、気持ちよく伸びる感覚が目安です。痛みを感じる場合は無理をしないようにしましょう。
足元を温める
東洋医学の考え方では、つわりには胎熱が関係しているといわれています。上半身に熱がこもり、下半身が冷えてしまっているため、足元を温めるようにしましょう。
また、上半身は風通しをよくして涼しくすることも大切です。妊娠中は冷やしてはいけないと思っている方も多いですが、つわりの時期は温めることで悪化しないように注意が必要です。
良質の睡眠をとる
つわりによる体調不良や精神的なストレスがあるときは、しっかりと良質の睡眠をとって、毎日リフレッシュするようにしましょう。
良質の睡眠をとるためには、以下の方法がおすすめです。
- ゆっくりとぬるめのお風呂に浸かる
- お風呂上がりは暖かくして体が冷えないように温かい飲み物を飲む
- 眠くなるまでゆっくりと本や雑誌を見る
- 眠る前はスマホやパソコンを開かない
出産すると、しばらくは赤ちゃんのお世話で寝る時間をゆっくりとることが難しくなります。妊娠中の今だからこそ、なるべくゆったりと過ごして自分を甘やかしてしまいましょう。
寝る前のリラックスタイムに、カフェインレスの高価なハーブティーを飲んでプチ贅沢するのもおすすめです。
生姜を積極的に摂取する
2004年に発表された「A Randomized Controlled Trial of Ginger to Treat Nausea and Vomiting in Pregnancy」という論文によると、生姜にはつわりを軽くする効果があることが確認されています。
試験で使用した乾燥生姜の粉の量は、1日分で約1g。これは、生のすりおろし生姜小さじ1杯分に相当します。お湯にすりおろし生姜と砂糖を入れて生姜湯にするのがおすすめです。寝る前に飲むと、翌朝のつわりがひどくならずに済むかもしれません。
体を締め付けない下着にする
つわりの時期は、苦しくならないように体を締め付けない下着や衣類を着ることが大切です。ワイヤー入りブラジャーをやめて、ナイトブラなどの柔らかい素材でできた下着やマタニティー用のスパッツなどを着用することをおすすめします。
初産婦さんの中には、「こんなおばさんパンツ嫌だ!」と思う方もいるかもしれませんが、吐き気が続くよりはよいと考えましょう。
まとめ
つわりに処方される薬と自宅でできる5つのつわりセルフケアについてご紹介しました。
一般的に、つわりは妊娠5週目頃からはじまるケースが多く、遅くても妊娠20週目頃までには自然と症状がなくなっていきます。しかし稀に出産するまで症状が続くこともあるなど、個人差が大きいという特徴があります。
病院で処方される薬は、妊婦さんでも安心して飲めるものですが、できるだけ薬に頼らないようにしたいものです。つらいときは、まずは自分でできるセルフケアを試し、それでもまったく改善しない場合や逆にひどくなる場合は病院で相談するようにしましょう。