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妊娠中期は、赤ちゃんの成長とともに子宮も大きくなり、腰痛などのさまざまなマイナートラブルが発生しやすい時期です。
ママも胎動を感じたり、妊婦さんらしい体型になってきたりするため、お腹に新しい命が宿っていることを実感すると同時に、つらい腰痛にお悩みの方もいるのではないでしょうか。
腰痛は妊娠後期によくある症状として知られていますが、妊娠中期から腰痛が出てしまうと、出産が近づくにつれて激痛で安眠できなくなってしまうことも。
また、痛みが出る場所やその他の症状によっては妊娠に伴う腰痛ではなく切迫流産や切迫早産、内臓面などに問題がある可能性もあるので、ただの腰痛と甘くみてはいけません。
この記事では、妊娠中期の腰痛の原因と危険な症状、腰痛がひどいときに試したい5つの方法についてご紹介します。
妊娠中期の腰痛の原因とは
妊娠中期に腰痛で苦しんだという妊婦さんは、少ないようで意外と多くいらっしゃいます。
妊娠後期にお腹が大きくなったことで腰痛が発生するのであれば、なんとなく原因もわかりますが、お腹の膨らみがやっと目立つようになってきた、妊娠5か月から妊娠7か月までに腰痛を感じるのはなぜなのでしょうか。
ここでは、妊娠中期の腰痛の原因についてご紹介します。
重心の変化
妊娠中期、とくに後半に差し掛かるにつれて腰痛を訴える方が多くなる傾向にあります。
なぜなら、妊娠中期は急激にお腹の赤ちゃんが大きくなる時期だからです。個人差はありますが、妊娠中期の後半になると子宮は25cmほど、赤ちゃんの身長は約30〜35cm、体重は約600g〜1kgになります。
そのため、赤ちゃんと子宮の重みで体の軸やバランスが変わり、動くたび腰に余分な負荷がかかってしまうのです。
ホルモンの作用
妊娠すると、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンが多く分泌されますが、妊娠3か月頃になると「リラキシン」というホルモンも大量に分泌されます。
リラキシンは、骨盤や恥骨結合部を柔軟にして産道を広げる役割を担っており、出産時には全身の靭帯結合を緩ませて、赤ちゃんがスムーズに出てこられるようにサポートします。よく月経の前に軽度の腰痛が起こる方もいますが、これもリラキシンの分泌量が増えて経血を排出しやすくするためです。
リラキシンの影響により骨盤や恥骨結合部が緩むと、骨盤周辺の関節が不安定になり、周囲の筋肉にも大きな負担がかかることで腰痛も起こりやすくなります。
一般的には、妊娠後期にこのような症状が起こりやすくなりますが、ホルモンの分泌量には個人差があるため、妊娠中期から腰痛が現れる方もいるようです。
反り腰
徐々にお腹が大きくなってくる妊娠中期にありがちなのは、腰を反った姿勢、いわゆる反り腰になることで腰痛が現れるケースです。
反り腰によって腰痛が出ている場合、仰向けで寝ると腰が浮いた状態になってしまうという特徴があります。立っているときでも背中から腰にかけて常に負担がかかっている状態となるため、筋肉が緊張して腰痛がひどくなることも。
反り腰が癖になると、産後も治らずに腰痛が継続したりお腹が出たりなどのリスクも高まってしまうでしょう。
筋力の低下
妊婦さんは、妊娠初期からつわりがひどくて運動できなかったり、流産などを心配して安静にしたりするケースも多く、運動不足になりがちです。
一般的に、妊娠中期はママと赤ちゃんも安定している時期だといわれています。運動をはじめるのにベストだといわれていますが、つわりが治らない場合などはなかなか運動する気にはなれないことでしょう。
運動不足が続き筋力も低下してしまうと、少ない筋肉で頑張って動作しようとします。すると筋肉への負担も大きくなったり、血流が悪化して冷えにつながったりすることで、腰痛を悪化させる可能性もあるでしょう。
妊娠中期に注意したい危険な腰痛とは
妊娠中期は、以下のようなケースでも腰痛が発生する可能性があります。
- 切迫流産、切迫早産
- 常位胎盤早期剥離
- 腎盂腎炎 など
妊娠中期は安定している時期ではあるものの、流産や早産のリスクもゼロではありません。腰痛とともに出血や下腹部痛があるときは、妊娠が継続する可能性を高めるためにも、早めにかかりつけの産婦人科を受診しましょう。
また、妊娠中期の腰痛で右側、左側のどちらか一方だけに激痛がある場合は、腎盂腎炎の可能性もあります。腎臓は左右それぞれにありますが、とくに右側に多く出るようです。
妊娠中期に入り急激に子宮が大きくなることで、膀胱や尿管などの泌尿器系の器官を圧迫し、排泄がスムーズにいかず炎症を引き起こしてしまう可能性も高くなってしまうのです。
これらのケースでは、早急に病院を受診し治療に専念する必要があるので注意しましょう。
妊娠中期の腰痛がひどいときに試したい5つの方法
妊娠中期の腰痛は、妊娠や出産に必要な身体の変化によるものがほとんどです。痛みがひどくて歩けない、寝られないなどの状態が続いてしまうと、母子の健康に影響を及ぼす可能性も。
原因そのものを根本的になくすことはできませんが、痛みを少しでもやわらげたり悪化を防いだりするためにも、これからご紹介する5つの方法を試してみるとよいでしょう。
座り方を変える
重心バランスや体型が変化すると、ママは無意識のうちに腰痛を引き起こすような座り方をしている可能性があります。とくに注意したいのが、椅子に浅く座り背もたれにもたれかかる「尾てい骨(仙骨)座り」や、いわゆる「お姉さん座り」「人魚座り」と呼ばれる座り方です。
これらの座り方は、骨に余計な圧力がかかったり、骨盤の歪みを引き起こしたりします。
椅子に座るときは、骨盤を座面に垂直に立てることを心がけ、背もたれはできるだけ使わない方がよいでしょう。また、床に座るときはできれば正座をし、短時間で立ち上がるなどして工夫することをおすすめします。
ストレッチをする
妊娠中期の腰痛改善には、緊張した筋肉をほぐすストレッチが効果的です。医師から安静にするよう指示がない場合は、適度に体を動かして腰痛を改善しましょう。
以下は、妊娠中期の腰痛におすすめのストレッチです。
- 背中はまっすぐなまま膝を90度くらいに曲げて四つん這いになる
- 息を吐きながらおへそを見るように背骨を丸めて背中側を伸ばす
- 息を吸いながら目線は斜め上を見るように背骨を反らせてお腹側を伸ばす
- 2と3をなめらかに10回繰り返す
2の動作をするときは徐々に肛門を引き締め、3の動作をするときは肛門を緩めていきます。その間に背中をまっすぐにすることを意識しましょう。
骨盤ベルトをする
腰痛の場合、骨盤ベルトを巻いている方も多いですが、骨盤ベルトとして販売されているものの多くは、ボーンが入っていたり硬すぎたりして妊婦さんにはあまり向いていません。
そんな妊婦さんにおすすめなのが、市販の骨盤ベルトよりもやわらかく肌に直接巻けるようなものです。一般的には、膝用サポーターや、ふくらはぎ用のバンデージなどとして売られているものがよいでしょう。
それを裸のお尻の下に敷いて横になり、腰を少し上げるように子宮を胸側に押し上げていきます。脚の骨が左右にもっとも出ている、付け根部分の少し上にベルトがくるように巻くと圧迫感がないうえにしっかりと骨盤を支えてくれます。
シムス位で寝る
腰痛で寝付けなかったり息苦しく感じたりするときは、シムス位という体位で寝るのがおすすめです。
シムス位とは、妊娠中でもリラックスして眠れる姿勢のことで、腰痛対策としても有効です。特別な道具を必要としないので、誰でも簡単に行うことができます。
以下は、シムス位の手順です。
- 身体の左側を下にして横向きに寝る
- ややうつ伏せ気味になり、下の左足を楽な位置まで伸ばす
- 上側の右足は太ももの付け根から曲げて左足よりも前に出して安定させる
- 右手は曲げて前に出し、楽な位置で安定させる
- 左手は身体の後ろで自然に伸ばす
上記は左側を下にする手順ですが、右側を下にして同じように行ってもよいでしょう。寝姿勢には好みもあるため、この姿勢を基本に自分がもっとも楽だと感じる姿勢を見つけることをおすすめします。
激痛のときは病院へ
家事や仕事、上の子のお世話などにまで支障が出るほどの激痛が出たら、早めに病院を受診し担当の医師に相談しましょう。
腰痛というと、接骨院や整形外科にかかりがちですが、妊婦さんの場合は産婦人科が第一選択肢となります。
とくにはじめての妊娠の場合は、腰痛がどこからきているのかわからないことも多く、切迫流産や切迫早産の兆候を見逃してしまうことも。そのため、まずは産婦人科にかかり、妊娠トラブルではないことを確認したうえで医師の指示に従いましょう。
まとめ
妊娠中期の腰痛の原因と危険な症状、腰痛がひどいときに試したい5つの方法についてご紹介しました。
妊娠中期は一般的に安定期と呼ばれ、体調が良いママも多いです。しかしその反面、腰痛やその他のマイナートラブルに悩まされているママが多いのも事実で、安定期ということで周囲の理解も得られにくくつらい思いをしている方もいるようです。
妊娠中期の腰痛は、出産に向けて身体が準備をしていることによるものも多いですが、中にはすぐに受診すべき危険なものもあります。
「腰痛くらいそのうち治るだろうと思っていたら、思わぬトラブルの兆候だった」という可能性も否定できないため、腰痛があるときは早めにかかりつけの産婦人科で相談するとともに、今回ご紹介した方法を試してみるようにしましょう。