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子宮位置異常ってどんな病気?原因や治療方法、妊娠へのリスクを詳しく解説

皆さんは、「子宮位置異常」という病気をご存知ですか?

あまり聞き慣れない病名ではありますが、実は、女性がかかりやすい病気の一つで、症状が出にくく婦人科検診などで突然発覚することがある病気なのです。

子宮位置異常を診断された方の多くは、治療をせずに経過観察をするだけなので、手術を必ずしなければならない病気ではありません。

しかし、違和感を持ちつつ放置してしまうと、生活する上で不便を感じるような症状が出てきてしまう子宮位置異常もあるのです。

そこで今回は、子宮位置異常とはどのような病気であるのか、原因や種類、治療方法などを含めて解説していきます。

また、子宮の病気で一番心配される、妊娠へのリスクについても詳しく解説します。

子宮位置異常とは

子宮の位置は前傾前屈が正常ですが、何らかの原因で子宮の位置がずれてしまい元の位置に戻ることができない状態を「子宮位置異常」と言います。

子宮は、前方にある膀胱や後方の直腸が充満することでも位置が移動してしまうほど、可動性が高い臓器ですが、生理的に稼働できる範囲を超えてしまっている場合、子宮位置異常と診断されます。

子宮は、子宮の周りにある靭帯や筋肉によって支えられていますが、その靭帯や筋肉が緩むことで子宮を支えきれない時や、子宮自体が他の臓器と癒着してしまうことで子宮位置異常を引き起こします。

子宮位置異常の代表的なものが、前方に傾いているはずの子宮が後方に傾いてしまう「

子宮後傾後屈症」、子宮を支えきれず位置が膣に向かって下がってしまう「子宮下垂」などがあります。

子宮位置異常は無症状であるケースが多く、婦人科検診などで検査を受けた時に偶然発見されることも少なくありません。

しかし、子宮の位置によっては、月経痛などの痛みや違和感、腰痛や便秘、排尿のしづらさといった、子宮だけではなく子宮以外の部分でも症状が出ることがあるのです。

原因

子宮位置異常の原因は主に先天性と言われていますが、子宮周辺の炎症などが起こることで後天的に発症することもあります。

例えば、妊娠や出産、加齢などが原因で子宮を支えている靭帯や筋肉が伸びてしまったことや、子宮内膜症といった子宮に疾患を抱えてしまい、子宮の後ろにある直腸などと癒着することで、子宮の位置がずれ子宮位置異常を発症します。

診断方法

子宮位置異常は、内診や超音波検査で確認することができます。

内診だけでも子宮位置異常を確認することができ、膣に指を入れ子宮の位置だけでなく、大きさや硬さ、周囲と癒着しているかどうかを確かめていきます。

そして、子宮位置異常だと疑われる時や診断された場合は、より詳しく検査をするために超音波検査を行うのが一般的です。

また、子宮位置異常は他の疾患を併発している可能性があり、子宮内膜症などを併発していないか確認することが必要です。

万が一、他の疾患も疑われる場合は、血液検査やCT、MRI検査、病理検査など、追加で検査を行う場合もあります。

子宮位置異常の種類

子宮位置異常は位置によって、種類や病名が異なります。

子宮後傾後屈症

子宮は通常、骨盤の中心辺りに位置しており、前傾前屈といっておなか側の方へ傾いています。

しかし、何らかの原因で子宮が背中側、いわゆる後方に傾いている後傾後屈の状態になっていると子宮後傾後屈症、もしくは、子宮後転症と診断されます。

子宮後転後屈症は、「可動性」と他の臓器と子宮が癒着している「癒着性」に分けることができます。

可動性は無症状であることが多いですが、癒着性の場合は子宮内膜症や骨盤腹膜炎などの子宮の炎症や病気によって引き起こされている可能性が高くなり、性交痛や排便痛といった痛みを伴う症状を感じる場合があります。

子宮下垂・子宮脱

子宮下垂は子宮が通常の位置よりも膣に向かって下がっている状態で、子宮下垂が進み子宮が膣から一部、もしくは全て脱してしまう状態を子宮脱と呼びます。

子宮下垂や子宮脱は、子宮を支える筋肉や靭帯の疲労や伸びが主な原因で、妊娠や出産だけではなく、加齢による女性ホルモンの低下や肥満なども子宮下垂や子宮脱を引き起こしやすくなります。

子宮下垂や子宮脱は女性がかかりやすい病気の一つですが、軽度のものであれば症状を感じにくく、検診などで発見されても治療を行わずに済むことが多いです。

子宮下垂や子宮脱の症状は、下腹部が張っているように感じたり股の部分になにか当たっているような感じがしたりと、子宮の位置が下がるにつれて違和感が生じやすくなります。

また、子宮は膀胱や直腸といった他の臓器と近い位置にあるため、子宮下垂や子宮脱になると他の臓器も一緒に膣の方へ下がってきてしまうだけではなく、子宮と一緒に膣外に脱してしまう可能性があります。

そのように、子宮脱だけではなく、他の臓器まで脱してしまうと骨盤臓器脱と診断されます。

子宮下垂や子宮脱が悪化したり、他の臓器も子宮と共に下垂し骨盤臓器脱を起こしていたりすると、子宮以外の部分で症状を感じやすくなります。

例えば、膀胱が下がると頻尿や失禁、排尿が困難になる可能性があり、直腸が下がると排便が困難になり残便感があるなど、生活する上で不便さを感じる症状が出てきます。

子宮位置異常の治療方法とは

子宮位置異常で無症状の場合は、特に治療をしないことが多いですが、痛みなどの症状がある場合は、どの子宮位置異常かによって行う治療方法が異なります。

ここからは、子宮位置異常の種類ごとに行う治療方法について解説していきましょう。

子宮後傾後屈

子宮後傾後屈は、症状がなく他の臓器との癒着がない場合は、治療を行わずに経過観察を行います。

しかし、他の臓器との癒着がある場合は、子宮内膜症などといった子宮周辺で炎症を起こしている可能性があるので、癒着の原因となっている子宮位置異常以外の疾患の治療を優先して行います。

原因となる疾患を治療しても子宮の位置が改善されない場合は、手術によって治療を行うこともあります。

子宮下垂・子宮脱

子宮下垂や子宮脱は、根本的な改善は手術での治療になりますが、症状が軽い場合や手術前までの治療法として用いられるのが、リング状のペッサリーと呼ばれる専用の器具を使用した温存療法です。

ペッサリーを直接膣に挿入することで、脱してしまっている子宮を人工的に膣の中に戻します。

このペッサリーは着脱が可能で、定期的に替え洗浄を行う必要があります。

そのため、ペッサリーで温存療法を行う場合は、医師によって付け替えをするか、もしくは、ご自身で着脱を行うかを選択することができます。

ペッサリーは入れたまま放置している期間が長いと、出血が起こったり臭いがきつくなったりするので、2〜3ヶ月に1回は必ず一度外して消毒と洗浄を行う必要があります。

医師によって着脱を行う場合は、約3ヶ月に1回は病院を受診しなければなりませんが、ご自身で着脱を行う場合は、毎日外して洗浄や消毒を行うことも可能なので、出血や臭いの心配が減ります。

しかし、ペッサリーは慣れるまでご自身での着脱が難しいという意見もあり、付け替えが難しい方や年配の方は病院でペッサリーの交換をすることが多いようです。

子宮脱が疑われる場合は、直腸や膀胱といった他の臓器も下垂や骨盤臓器脱を起こしている場合があるので、婦人科や泌尿器科に事前に骨盤臓器脱を治療しているか確認をしてから受診をすると、診断後の治療をスムーズに行えることができます。

出産による子宮位置異常

出産によって子宮位置異常が起きた場合は、手術といった外科的な治療を行うことはあまりありません。

特に、子宮下垂や子宮脱の場合は、出産によって一時的に子宮を支える筋肉が伸びてしまっているため、子宮を支える筋肉や靭帯の筋力を戻すトレーニングを行うことで改善に導きます。

特に、恥骨や尾骨といった骨盤の底にある筋肉である「骨盤底筋」を鍛えることで、子宮などの臓器を正しい位置に保てるだけではなく、尿もれも防ぐことができます。

また、骨盤底筋を鍛えるだけではなく、適度な運動を日々行うことも有効的です。

子宮位置異常は妊娠へのリスクはある?

子宮位置異常と診断されると妊娠や出産へのリスクが高まるのではないかと心配になる方もいらっしゃると思いますが、子宮位置異常は妊娠へのリスクは基本的にないとされています。

子宮後傾後屈が原因で精子が着床しづらいと言われることもありますが、医学的には立証されていません。

子宮後傾後屈や子宮下垂、子宮脱は妊娠すると位置が元に戻ることが多く、万が一、位置が戻らなかったとしても妊娠を継続することは可能で、自然分娩での出産も行えます。

しかし、子宮発達不全が原因で子宮後傾後屈になった場合は習慣流産になるリスクがあります。

これは子宮後傾後屈が原因でなく、子宮発達不全であると女性ホルモンの分泌が低下することによって流産が起こりやすくなっている状態だからだといえます。

また、第1子を出産した時に子宮脱を起こしている方は、その後の妊娠で子宮脱を再発しやすくなっているので、次の妊娠を計画する前に子宮脱の手術をおこなうのか、妊娠中に子宮脱になった場合の治療はどのようになるのか、医師に事前に相談しておくと良いでしょう。

まとめ

今回は子宮位置異常について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

子宮位置異常は、女性がかかりやすい病気ではあるものの症状が軽いものが多く、治療をせずとも生活する上では問題のないことが多い病気です。

また、妊娠へのリスクも基本的にはないとされているため、自然分娩での出産も可能です。

しかし、どのような病気でもそうですが、違和感や普段とは違う症状が出ているのに放置をしていると、子宮だけではなく他の臓器にまで影響が出てしまうので、注意しなければなりません。

万が一、ご自身の中でお腹のあたりに違和感があるといった、子宮位置異常に似ている症状が出ている場合は、婦人科を受診し早めに検査を行うことが大切です。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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