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子宮は胎児の時期に形成されるということをご存知ですか?
子宮が通常とは異なった形に形成される先天性の病気の「子宮奇形」は、無症状のケースが多く、初めて妊娠するまで気づかないことも少なくありません。
しかし、子宮奇形と検索すると「不妊」や「流産」といった、これから妊娠を希望している方にとってとても不安になるワードが、少なからず出てきてしまいます。
今回は、子宮奇形の基礎知識や形の種類を中心に、不妊や流産の原因に本当になってしまうのか、詳しく解説していきます。
子宮奇形と診断されて不安だという方、これから妊娠を考えていてあらゆる不安を取り除きたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
子宮奇形はどんな病気?
子宮奇形とは、子宮の形が通常とは異なっている状態のことで、女性の4〜5%ほどが子宮奇形であると言われています。
子宮奇形は生まれつき起こる先天性の病気で、成長とともに子宮の形が変化したわけではなく、胎児の段階で子宮が通常とは異なった形で作られています。
子宮は、胎児の時期にミュラー管という2本の管が癒着することで形成されますが、この癒着が上手くいかず子宮の数が2つになったり、ミュラー管が欠損したりすることで子宮奇形になると考えられています。
また、子宮奇形と診断された方は子宮だけではなく、同じミュラー管から形成される膣の奇形や、尿管や腎臓の奇形を合併している場合もあります。
子宮奇形の症状
子宮奇形の場合、下記の症状が現れる可能性があります。
- 経血の量が少ない「過少月経」
- 強い腹痛や吐き気、頭痛などの症状が起きる「月経困難症」
- 18歳を過ぎても月経がこない「原発性無月経」
- 妊娠しづらい
- 流産や早産
子宮奇形は基本的に無症状であることが多く、ご自身が子宮奇形であることに気づかずに過ごしている方が多くいらっしゃいます。
そのため、初めての妊娠で妊婦検診を受けた時や、なかなか妊娠ができず不妊症の検査を受けた時などに偶然、子宮奇形だと診断されるケースが多いと言われています。
子宮奇形の診断方法
子宮奇形は内診や超音波検査で診断することができますが、子宮奇形の中でもどのような種類に分類されるのか詳しい診断をしなければならない時には、下記の検査を行います。
- 子宮の形を外側から確認する「超音波検査」や「MRI検査」
- 子宮に造影剤を入れて形や通過性などを把握する「子宮卵管造影検査」
- 子宮の中にファイバースコープを入れて子宮の内部を確認する「子宮鏡検査」
子宮奇形の主な診断方法は超音波検査で、超音波検査で形を確認することができたり、無症状であったりする場合は追加の検査をしない場合が多いです。
しかし、不妊や流産が続いているといった子宮奇形が原因で何かしらのリスクを負っている可能性がある方は、より細かく子宮の状態を把握するために、子宮卵管造影検査や子宮鏡検査を行います。
また、前項でも解説しましたが、子宮奇形の方は尿管や腎臓の奇形も合併している可能性がるので、もしも、他の部位の奇形が疑われる場合は子宮奇形の検査の他に腎臓や尿管の造形検査を行います
子宮奇形の種類
通常、子宮の形は、外側は逆さまにした洋梨を少し潰したような形で、内膣は逆三角形のような形をしています。
前項でも解説しましたが、子宮はミュラー管という2本の管が癒着することで形成されます。
しかし、子宮奇形の場合はミュラー管同士の癒着が上手くいかず、子宮が2つに分かれてしまったり、形は正常でも内側に壁ができたままであったりと、正常な子宮の形とは異なった子宮が形成されてしまうのです。
また、ミュラー管同士の癒着だけではなく、ミュラー管自体が発育しない場合も、子宮奇形になってしまう原因となります。
子宮奇形の治療を行うためには、どの子宮奇形に当てはまるのか判別しなければなりませんが、子宮奇形は種類の見分けが難しく、中には超音波検査では見分けられないものもあります。
そのため、子宮奇形の種類を把握しなければならない場合は、子宮卵管造影検査や子宮鏡検査を行います。
子宮奇形と一口に言っても、子宮奇形の形はさまざまで、主に下記の5種類に分類することができます。
弓状子宮
子宮底と呼ばれる子宮の上部にあたる部分が、少しくぼんでいる状態。
単角子宮
子宮の大きさが通常の半分の大きさ。
2本のミュラー管の内の1本が発育していなかったり発育途中で欠損してしまったりすると起こる子宮奇形。
重複子宮
2本のミュラー管が癒着されず、子宮が完全に2つに分かれている状態で、子宮口や膣も2つある状態。
双角子宮
2本のミュラー感が部分的に癒着をしている子宮で、子宮の上部である子宮底がくぼんでいる状態。
双角子宮には、子宮が下部まで癒着されていないが子宮頸部が癒着しており、子宮外側がハート型で内膣の上部がくぼんでいる状態の「双角単頸子宮」と、子宮頸部まで癒着されず子宮口が2つに分かれており、内膣も2つある状態の「双角双頸子宮」の2つに分かれます。
中隔子宮
子宮の形は通常と同じ形ですが、内膣の内側に壁があり2つ分けられている状態の子宮。
子宮奇形は不妊や妊娠のリスクが高くなる?
これまで子宮奇形について解説しましたが、子宮奇形と診断されて気になることの一つとして、妊娠へのリスクが挙げられます。
子宮の形が通常と異なることで、不妊や流産のリスクは高まってしまうのでしょうか。
ここからは、子宮奇形によって不妊や妊娠のリスクが高くなるのか、解説をしていきます。
必ずしも不妊の原因になるわけではない
子宮奇形だからといって、必ずしも不妊の原因になることはないとされています。
しかし、子宮奇形の種類によっては妊娠の確率が通常の子宮と比べて低くなる可能性がでてきてしまうのも事実です。
前項で、子宮奇形は妊婦健診や婦人科検診で偶然発見されると解説しましたが、不妊に悩んでいる方が不妊症の検査に訪れた時に子宮奇形と診断されるケースがあります。
重複子宮や双角子宮、中隔子宮の場合は、他の子宮奇形の種類に比べて着床不全を起こしやすいので不妊につながることがありますが、必ずしも妊娠できないわけではなく、自然妊娠をされているケースももちろんあります。
なかなか妊娠しづらく、不妊症の原因が子宮奇形以外に認められない場合は、子宮の形を整える手術をすることで子宮奇形の妊娠へのリスクを回避します。
子宮奇形の種類によって手術方法は異なり、開腹手術や体への負担が少ない腹腔鏡手術を行います。
流産や早産のリスクは高くなる
子宮奇形は、必ずしも不妊の原因にはなることはないとされていますが、流産や早産のリスクは通常の子宮よりも高くなると言われています。
流産した原因の約5%は子宮奇形であると言われており、子宮奇形の中でも重複子宮や双角子宮、中隔子宮の場合に初期の流産を起こしてしまう可能性が高くなります。
また、胎児の発育の遅れや早産になるケースもあり、妊娠期間中は体調の変化や子宮の異変をより注意して確認することが大切で、分娩の時も胎児の回旋異常や子宮の収縮の異常などが起きてしまう場合があるので、帝王切開での出産になることも少なくありません。
そのため、何度も流産を繰り返している場合や妊娠や分娩時のリスクが疑われる場合は、子宮奇形を改善する手術を事前に行い子宮の形を整えます。
弓形子宮の場合は、子宮奇形であっても手術をせずそのまま様子を見る事が多いですが、重複子宮や双角子宮、中隔子宮の場合は妊娠中のリスクを避けるためにも手術をする場合があります。
しかし、子宮奇形で症状もなく自然分娩されている方ももちろんいるので、妊娠した場合は医師の指示に従い、少しでも異変を感じた場合は早めに産婦人科を受診しましょう。
まとめ
今回は、子宮奇形について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
子宮奇形は先天性の病気で、なかなかご自身で気づくのが難しいですが、症状がなければ特に手術などの治療をせずにそのままの状態で過ごすことができます。
不妊や妊娠時のリスクはないとは言い切れませんが、子宮奇形だからといって自然妊娠や分娩が不可能であることはもちろんなく、今までも多くの子宮奇形と診断された方が出産をしてきています。
万が一、子宮を整える手術をすることになっても、傷が最小限で済むような内視鏡手術で改善できる場合があるので、手術を検討されている方はまずご自身がどの子宮奇形の種類に当てはまるか検査を行い、医師に相談してみましょう。
突然、子宮奇形と診断されてしまうと驚いてしまう方もいらっしゃると思いますが、多くの女性が同じ悩みを抱えている病気です。
少しでも子宮に異変を感じたり、今後の妊娠に不安を感じていたりする方は、ぜひ早めに病院を受診し医師の診断を受けましょう。