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もともと卵巣腫瘍があると診断されている方だけでなく、今まで何の自覚症状もなかった方でも、突然の下腹部の痛みに襲われることがあります。
このような場合「卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん)」が疑われますが、まずは痛みの原因が卵巣腫瘍であることをCTやMRIなどの検査で確認し、診断の確定を行います。
卵巣茎捻転は、卵巣腫瘍が大きくなったことによって卵巣の根元や卵管がねじれ、それらの臓器への血流が途絶えた状態です。そのまま放置すると、卵巣に血液が届かない時間も長くなり壊死してしまうため、卵巣茎捻転と診断された場合は、緊急手術になることも多くあります。
この記事では、卵巣茎捻転を治療する手術の種類と費用相場、手術体験談、術後の生活に関する疑問についてご紹介します。卵巣腫瘍があると指摘された方や、卵巣付近になんらかの症状がある方はぜひ最後まで読んでみてください。
卵巣茎捻転とは
卵巣茎捻転とは、卵巣と子宮がつながっている部分がねじれる疾患のことです。「卵巣捻転」や「卵巣嚢腫茎捻転(卵巣嚢腫がある場合)」とも呼ばれ、ねじれによって激しい痛みが生じ、嘔吐を伴うことも多々あります。
ときには意識不明に陥るほどの激痛に見舞われることもあるので、救急車を呼んで緊急搬送される方も少なくありません。
卵巣茎捻転は、以下のような状態で起こりやすくなります。
- 良性腫瘍や嚢胞ができていて卵巣が腫れている場合
- 妊娠初期にルテイン嚢胞ができて卵巣が腫れている場合
- 不妊治療で排卵誘発剤を使用している
一般的には、卵巣が5cmを超えると茎捻転が起こる危険も高まるといわれています。ねじれかけたとしても元に戻ることもありますが、完全にねじれてしまうと卵巣への血流がストップしてしまうため、最悪の場合卵巣を摘出しなければいけません。
ねじれが途中で元に戻った場合でも、卵巣の大きさによっては病巣部分を切除するなどの手術を行うことになるでしょう。
卵巣茎捻転を治療する手術の種類と費用相場
卵巣茎捻転は、卵巣嚢腫の代表的な合併症で緊急疾患のひとつです。
卵巣は、骨盤内で固定されているわけではありません。通常の場合でも、体が動くと同時にプラプラと動いています。卵巣が正常な状態だと軽いのでねじれることはありませんが、腫れていると卵巣も重たくなっているため、ねじれて元に戻らなくなってしまうことも。
ここで必要になるのが、卵巣茎捻転の手術です。手術は主に3種類あり、卵巣や卵管の状態などによってどの手術を行うかを決定することになるでしょう。
ここからは、卵巣茎捻転を治療する手術の種類と手術費用相場についてご紹介します。
卵巣茎捻転を治療する手術の種類
以下は、卵巣茎捻転を治療する3つの手術です。
- 卵巣嚢腫摘出術:卵巣が完全に壊死していない場合に行われる。嚢腫部分のみを摘出し、正常な卵巣部分はできる限り残す。
- 卵巣摘出術:卵巣は完全に壊死していないものの、腫瘍が大きく卵巣を残すことが困難な場合に卵巣全体を切除する。
- 付属器摘出術:茎捻転によって卵巣が完全に壊死している場合に行われる。卵巣や卵管も含む嚢腫全体を摘出する。
これら3つの手術には、腹腔鏡手術と開腹手術の2つの方法があります。
従来、卵巣茎捻転を起こした卵巣嚢腫に対しては、お腹を5〜10cm程度切開して行う付属器摘出術が一般的とされていましたが、現在では開腹せずに1〜複数か所小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術で手術を行えるようになってきました。
腹腔鏡手術は傷が小さいため、入院期間も短く早期に社会復帰が可能です。ただし、腹腔鏡手術でお腹の中を観察した後に、途中で開腹手術に切り替える場合もあります。
卵巣茎捻転の手術費用相場
卵巣茎捻転の手術をする場合、入院することになるケースがほとんどです。
手術方法や入院日数などにより費用は大きく異なるため、あくまでも目安となりますが、腹腔鏡手術の場合約50〜70万円で、通常はその3割負担となります。
開腹手術の場合は、腹腔鏡手術よりも費用がかからないケースも多いですが、体への負担を考慮して腹腔鏡手術が可能であればそちらを選択した方がよいでしょう。
また、卵巣茎捻転の手術は高額療養費制度が利用できます。
高額療養費制度とは、医療機関や薬局などの窓口で支払う医療費が、1か月(1日から末日まで)で上限額を超えた際に超過分を支給してくれる制度です。上限額は年齢や所得などに応じて定められているので、加入先の医療保険者へ問い合わせてみることをおすすめします。
卵巣茎捻転の手術体験談
卵巣は、卵子の元である卵胞を育てて排卵する役割と、女性ホルモンを分泌する役割を担っている重要な器官です。
できるだけ卵巣を残すように手術が行われますが、ねじれてから手術を受けるまでに時間が経過していたり腫瘍が大きかったりする場合は、卵巣とその周辺組織を摘出する可能性もあります。
手術が必要になった患者さんの中には、突然のことに動揺し、泣いてしまったという方もいるようです。そこでここでは、卵巣茎捻転の手術体験談を2つご紹介します。
体験談1:定期検診が大事だと実感
1年ほど前からお腹の張りや下腹の痛みを頻繁に感じていましたが、婦人科へいくことに抵抗があったため我慢していました。
するとある日、生理痛にも似たようなキリで穴をあけられているような鋭い腹痛に突然襲われ、駆け込むようにして病院へ行きました。その日は土曜日であったことから、救急外来へ行ったところ、膀胱炎の疑いで月曜日にあらためて泌尿器科へ。
しかし泌尿器科の先生によると、膀胱炎ではなく婦人科の疾患だということで、そのまま産婦人科へ直行しました。そこで卵巣嚢腫による「卵巣茎捻転」という聞き慣れない病名と、緊急手術が必要だという事実を知り、うろたえて号泣‥
そのまま入院し、腹腔鏡手術で嚢腫のみを取り除き、ねじれた部分を元に戻す手術を受けました。手術自体は1時間程度で終了したのですが、普段から定期検診を受けていればよかったという後悔が拭えません。
卵巣茎捻転は無症状から突然強い症状が現れるそうなので、婦人科検診を受けたことがないという方は勇気を出して相談してみてください。
体験談2:卵巣がんで茎捻転を起こした
もともとひとり目の子を妊娠した際に卵巣嚢腫が見つかり、妊娠5か月のときに手術を受けていたので、お腹が膨れているのもその影響かもしれないと思っていました。
ところが、偶然子どもの頭が私のお腹にぶつかったとき、強烈な痛みが走りそのまま倒れてしまい、主人が救急車を呼んで緊急搬送されることに。
検査の結果、卵巣が腫れている状態で悪性腫瘍の可能性があるとのこと。卵巣がんで茎捻転を起こすのは稀のようで、「まさか自分がなるとは」と痛みで朦朧とする中で思ったのを覚えています。
私の場合は、今後の再発リスクを考慮して両卵巣と子宮の全摘出をお願いしました。手術は開腹で行い、5〜6時間で終了しました。今後は、術後の抗がん剤治療を受けながら子育てと仕事を両立させていきたいと思っています。
卵巣茎捻転の手術後の生活に関する疑問
これから卵巣茎捻転の手術を受ける方は、手術後の生活についても気になることでしょう。そこでここでは、卵巣茎捻転の手術後の生活に関するよくある疑問を2つご紹介します。
仕事復帰はいつから?
卵巣茎捻転の入院期間は、手術経過が順調であれば開腹手術で術後7〜10日、腹腔鏡手術で術後3〜5日ほどです。
退院後は1〜2週間ほど自宅療養して身体を休ませてから復帰することをおすすめしますが、立ちっぱなしの仕事や力仕事をされている場合は、術後ひと月以上の期間をあけ、経過をみて復帰可能か判断します。
喫煙や飲酒も傷口の治りを遅らせる原因になるので、仕事に早く復帰するためにも、控えてください。自宅でもできるだけ安静に過ごし、栄養バランスを考えて食事を摂りましょう。
性行為はいつから?
卵巣茎捻転の手術によって性生活に影響を与えることはありませんが、術後の経過観察が済むまでは避けましょう。両卵巣を摘出した場合、ホルモンの分泌がなくなることで膣の分泌液が少なくなり、潤い不足による性交痛が生じる可能性もあります。
卵巣摘出後に更年期のような症状がある場合は、ホルモン療法や漢方薬で対応することが可能です。性交痛については、潤滑剤を使用するなどの方法もありますので、無理のない程度に行いましょう。
まとめ
卵巣茎捻転を治療する手術の種類と費用相場、手術体験談、術後の生活に関する疑問についてご紹介しました。
卵巣茎捻転の手術には、嚢腫のみを摘出する卵巣嚢腫摘出術と卵巣をすべて摘出する卵巣摘出術、卵巣や卵管を含む嚢腫全体を摘出する付属器摘出術があります。これらは開腹手術か腹腔鏡手術のどちらかの方法で行われますが、できれば身体への負担が少ない腹腔鏡で受けることをおすすめします。
とはいえ、患者さんそれぞれに適した治療は異なるので、担当の医師とよく相談して納得のいくものを選択するようにしましょう。
実際に卵巣茎捻転を経験したことのある方たちは、普段から婦人科検診を受けることの大切さが身に染みたようです。中には、病気すら疑っていなかった方もいるようなので、なにか身体に異変を感じている方は、ぜひ一度婦人科検診を受けてみてください。