InstagramInstagram

妊娠率をアップさせるために必ず知ってほしい方法も含めた4つのこと

「絶対に妊娠したい」と思って妊活をしているご夫婦の中には「これがいい」と聞いてご自分で色々なことを試している方も多くいるでしょう。しかし、やってみたけど上手くいかないという場合や、「これはどうなの?」という方法もあるでしょう。他にも不妊治療をしていて「自分が原因では?」と悩む方も少なくありません。

そこで今回は、妊娠率を高めるために知っておきたい知識をご紹介します。噂ではなく医学的・科学的根拠に基づいた妊娠力アップの方法になりますので是非最後までご覧ください。

妊娠しやすくするために適性な体重がある

体重計を手に持ってダイエット成功をアピールする女性
もしかしたらご存じの方も多いかもしれませんが、妊活をする上で体重はとても大切です。肥満状態だと、卵胞ホルモンが過剰に分泌されて、ピルを飲んでいるような状態となり、妊娠率が下がってしまいます。反対に痩せすぎてもいても排卵姓不妊の確率が高くなります。

例えば、痩せたくて激しいダイエットをすると月経が不安定になった経験はありませんか?その原因は、身体のエネルギー不足による卵巣の機能停止です。卵巣が排卵できるだけのエネルギーを身体が供給していないので生理が来なくなるのです。しかも痩せすぎは子宮内膜症になる可能性が高くなり、これも不妊の原因となります。妊娠した場合に体重を適切に増やせず、低出生体重児を産むリスクも出てくるのです。

実は妊娠しやすい体重というのがあります。BMI値だと「19〜25」程度と言われています。BMI値の計算方法はご存じだと思いますが、念のため以下に掲載しておきます。

BMI = 体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)

もし19~25の間に入らなかった人は適正範囲に収まるようにしましょう。

痩せすぎのあなたがやってみることは

改めて言うまでもなく体重を増やすことです。だからといって大量にドカ食いをして単に体重を増やせばいいというわけではありません。タニタ科学研究所の報告では、「下肢筋肉量が高い人は卵巣機能が高い」ということが研究結果が出ているそうです。下肢筋肉量というのは下半身の筋肉です。特に太ももにある下肢筋肉の大部分は大腿筋に当たるので太ももの筋肉を鍛えると卵巣機能が高まって妊娠できる確率が高くなります

下半身の筋肉と卵巣の働きが関係する理由は、筋肉を鍛えると成長ホルモンの分泌が高く維持できるからです。また、下半身の筋肉量が多い人は、女性ホルモンの分泌が多く、卵巣機能が高いという研究結果が出ています。しかも筋肉は子宮をあるべきところで支えたり、いきみやすくしたりするため難産や早産を引き起こしにくくなります。

太り気味のあなたがやってみることは

ご存じだと思いますが、減量です。しかし急激なダイエットはかえって妊娠しにくい体質になるため注意が必要となります。まず食事ですが、量を減らすだけでは意味がありません。食事量を減らすだけだと栄養バランスが崩れてしまい、卵巣機能が止まる恐れが出てきます。しかも食べないと脂肪の前にエネルギー量の多い筋肉から減ってしまうので大幅に量を減らすのは得策とはいえません。

そこで重要になるのが運動です。運動をして筋肉量を増やしつつ脂肪を燃焼させるのが妊娠しやすい体質になるための近道です。痩せすぎの人と同様下半身の筋肉を鍛えるのがいいでしょう。いきなり運動を始めるのはハードルが高いので歩くことと階段の上り下りを日頃から意識するところから始めてみてください。

次に栄養バランスの摂れた食事をすることです。妊活には葉酸が大切だと聞いたことがあるかもしれませんが、葉酸だけ摂取していても体重減や妊活に効果があるとはいえません。人の体は60~70%が水分で、20%がたんぱく質などのアミノ酸でできています。筋肉、内臓、血管、血液、爪、髪や皮膚のコラーゲンなど多くのものを構成しています。20のアミノ酸のうち、9つを「必須アミノ酸」と呼んでいますが、たとえば、筋肉の材料となるのはその中の3つでバリン、ロイシン、イソロイシンです。これらのアミノ酸を合わせて「BCAA」と呼び、食事でしか摂れない栄養素になります。しっかりと運動をして栄養バランスがある食事を摂ることで体脂肪を落としつつ妊娠しやすい体質へと変化させていくのです。

アミノ酸全9種を含んでいる食品を「アミノ酸スコア100」として覚えておくのがおすすめです。代表的なものとしては、肉、卵、魚、大豆になります。これらを必要量食べておけば、筋肉は作られます。また、食べ合わせも大事で、実は、米は61点なんですが、米の足りないアミノ酸であるリジンを補うには、リジンが豊富な大豆製品を食べると100点になります。つまり、ご飯に納豆や豆腐のお味噌汁がアミノ酸スコア100点のメニューです。

妊娠しやすくするために有効な運動量の目安

運動している女性
先述したように妊娠しやすい体質にするには運動が大切です。しかし激しい運動は良くないためどれくらいの運動をすればいいのかわからなくなるでしょう。そこで運動量の目安をご紹介します。

1997年のノルウェーの報告では、少なくとも60分間激しく運動した女性の不妊のリスクは6.2倍増加したそうです。反対に毎日少なくとも30分間の激しい運動をしている女性の排卵性不妊のリスクが低いと報告されています。

他にも1994年から2003年に行われたアメリカでの多施設共同研究によると、週に4時間以上運動を行う女性は、体外受精で出生率が40%減少したという報告がされています。そして定期的な運動をしていない女性と比較して着床不全および流産のリスクが2倍増加したそうです。

そして、2007年にアメリカの研究で体外受精を受けている女性では中等度の運動が着床率と出生率の上昇に関連していることがわかりました。中等度の運動とは、600 MET-min/week以上3000MET-min/week未満という定義です。具体的にはウォーキングを毎日35分間(週末だけなら2時間)、ランニングを毎日20分間(週末だけなら1時間10分)、サイクリングを毎日15分間(週末だけなら50分間)にあたります。他にも適度な運動としてガーデニング、ヨガ、ゴルフがあげられます。

妊娠率を上げるために知っておきたい”タイミング”

妊娠しやすいタイミングで性行為をすれば自然妊娠できる可能性は高くなるのはご存じだと思います。よく言われるのは排卵日の二日前です。もちろん間違っていませんが、実は妊娠率が上がるのは排卵日の6日前からの1週間です。なぜなら妊娠の可能性が最も高い性交のタイミングは排卵日の2日前、次いで排卵日の前日なのですが、精子の寿命は約36~48時間のため、排卵日の6日前から36~48時間ごとに性交することでより妊娠しやすくなるのです。

そのタイミングを狙って性行為をするのがタイミング法となります。排卵日を予測するために必要なのが基礎体温チェックです。市販の排卵日チェッカーで検査したり、スマホのアプリもありますし、専用の婦人体温計を使って測るのもいいかもしれません。生理不順だったとしても排卵のタイミングがまちまちで生理周期がずれるという程度なら妊娠はできますのでまずは基礎体温チェックをしてみてください。

そして自然妊娠率が高いのが、2〜3日おきの子作りだと言われています。つまり、排卵日の6日前からの1週間の間に2~3日おきに性行為をすると自然妊娠率が上がります。ただ、共働きや長時間労働でなかなか夫婦の時間が持てないカップルもいると思いますので、少なくとも排卵日前後には、こまめにタイミングを取っていただけるようパートナー話し合ってください。

妊娠率を上げるために知っておきたいセックスのこと

生理周期や検査から排卵日をチェックし、排卵日前後に性行為を行うタイミング法は手軽で医師に相談しなくても始められる方法です。恐らく妊活中のカップルが最初に始める不妊治療でしょう。そこで気になるのが性行為自体にも妊娠しやすい方法はあるのかどうかです。

一度は聞いたことがある話を検証してみます。

排卵日以外のセックスは意味がない?

妊活中は排卵日以外に性行為をしても妊娠する確率が低いから意味がないというのがよく言われています。その通りなのかと言われると答えが「ノー」です。確かに受精の可能性は低くなりますが、妊活にいい影響を与える場合があるからです。

例えば、避妊しないセックスによって子宮内膜が精液にさらされることで、着床の際に受精卵が異物として認識されるのを防いでくれます。排卵日付近以外にセックスを行うことで、排卵日に着床しやすくなるのです。また、排卵日前後だけしかセックスをしないと義務感が強くなり、お互いに緊張したまま行為に及ぶようになります。そうなるとストレスがたまってしまい妊娠しやすい環境とは言い難いです。緊張感や義務感を和らげるためにも排卵日以外のセックスは効果的といえます。

妊娠しやすいセックスとは?

可笑しい夫婦が寝そべって白い毛布の下に隠れ、喜びに満ちた目でカメラを見つめている
「朝のセックスの方が妊娠しやすい」「排卵日付近のために禁欲期間(セックスをしない期間)を設けたほうがいい」などさまざまな情報が氾濫しています。どれも医学的根拠はないので信ぴょう性は低いといえます。

例えば、「朝にセックスをすると妊娠しやすい」なんて医学的根拠は全くありません。せいぜいマンネリ化を防げるくらいしか効果はないでしょう。続いて、「排卵日付近に質の良い精子を残すために禁欲期間(射精しない期間)を設ける」「禁欲期間がないと精子濃度が薄くなる」という情報も間違いです。禁欲したところで精子の濃度に差は出ません。それどころか古くなった精子は運動率が低下してしまうのでかえって妊活には逆効果です。はっきり言って回数が多い方が確率は高まります。

セックスの体位についても、様々な情報が飛び交っていますが、体位と妊娠率に大きな関連性はありません。体位を心配するよりもリラックスして行為をできるようにしましょう。

妊活中のセックスをプレッシャーにしないために

やはり妊活中のセックスは、「確実に妊娠したい」という思いが強くなりすぎてしまうどうしても精神的にプレッシャーがかかり気味です。プレッシャーや義務感を感じずに、二人がリラックスしてセックスをするのが重要です。そこでいくつか工夫する方法がありますのでご覧ください。

・普段からキスやハグなどセックス以外のスキンシップを行う
普段からスキンシップをとっておくことで排卵日付近のセックスへのプレッシャーを和らげられる場合があります。

・性交時には前戯や雰囲気づくりなどを行う
セックス自体を楽しむ方法として前戯を行ったり雰囲気づくりをこころがけたりすることもおすすめです。セックス自体が楽しめると互いにオルガスムスに達しやすくなります。オルガスムスに達すると腟が収縮し、子宮が腟口近くまで降りてきて大量の分泌液が出るため、精子の運動を助けてくれる場合もあります。

・排卵日付近を意識しすぎない
妊活中だとどうしても排卵日を意識してしまい、セックスできなかったらプレッシャーになってしまいます。しかし先述したように妊娠しやすいタイミングは排卵日の1週間前からです。ガチガチに排卵日の2日前などの決めごとを儲けずに幅を広く取るとリラックスしてセックスをしやすくなります。また、排卵日付近にセックスが出来ない場合も落ち込みすぎず、別日にトライしてみるのも一つの方法です。

日常生活の中で卵子の老化を防ぐ

加齢をしていくと卵子が老化するのは生物として逆らえない現象です。30代になると特に卵子の質も数も減っていくために気になるでしょう。現代の生活には、卵子の老化を促す因子が多数あります。しかし、たとえば「活性酸素」は細胞の老化を促進させますが、一方で体内の抗酸化力をあげることで老化を防ぐことができます

抗酸化力アップの鍵は日常生活です。「禁煙する」「日焼け止めを塗る」「お酒の量を減らす」などの生活習慣の改善を心がけ、毎日の食事の中で「抗酸化作用」をもつ食品を意識して摂ることも大切です。抗酸化作用をもつ代表的な栄養素には、ビタミン A、 C、 E、ポリフェノール、リコピンなどのカロテノイドなどがあります。

ビタミンEが豊富な食材はアーモンド、カボチャ、ウナギのかば焼き、植物油です。ビタミンCはブロッコリー、赤ピーマン、キウイ、柑橘類などになります。トマト、スイカ、人参、柿は強い抗酸化作用があるリコピンが豊富です。レバー、銀ダラ、モロヘイヤ、人参 などの緑黄色野菜などが多く含まれています。

不妊治療の種類はありますが、卵子と精子が老化していては着床率も下がってくるので栄養バランスを取りつつ積極的に摂取していきたい栄養素です。

ステップアップが正しいわけではない

医師と夫婦
不妊治療をするときは、女性の場合だと生理周期に合わせて排卵、卵管、子宮など各部位に何らかの問題がないかどうか、「フーナーテスト」と呼ばれる性交後試験を行い、男性側だと精子を採取して検査するなど、さまざまな可能性を想定して検査していきます。そこで最短かつ効率的に妊娠できる計画を立てていきます。

通常の不妊症だと「タイミング法」「人工授精」「体外受精」及び「顕微受精」を順番にしていく「ステップアップ方式」が定番です。しかし、近年ではタイミング法を試さずにいきなり人工授精や体外受精からスタートするカップルも珍しくありません。なぜなら厚生労働省によると初婚の平均年齢は夫 31.1 歳、妻 29.4 歳と30歳前後なっており、35歳以上の出産数は2019年に25万1850人と全出生数の20%を超えるほど高くなっているからです。

体外・顕微受精から戻って人工授精に移り、タイミング法をやってみるというのパターンもあります。また、必要に応じて排卵誘発剤やホルモン剤を併用しながら治療を進めていくのでご自分とパートナーの体調によって変わってきます。何より早く子どもを授かりたいのならば早めに婦人科の医師に相談するのが確実です。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事