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妊活中にお酒はNG?夫婦で気をつけるポイントは?

「妊活中にお酒を飲んでもいいのですか?」と患者さんからよく質問されます。妊娠後に女性がアルコール摂取をすると流産や死産したり、アルコールによる先天性異常が起きたりするので厳禁なのはご存じだと思います。

妊活中でも仕事やプライベートでもお酒の席に行く機会あるため気になることの一つでしょう。そこで今回の記事では妊活中のカップルがお酒を飲むと妊娠するのにどんな影響を与えるのかをまとめています。最後までご覧いただき妊活の参考にしていただけると幸いです。

お酒は妊娠に影響を与えるの?

結論から言いますと妊活中の女性はできればお酒を飲まないほうがいいです。なぜなら妊活中はいつ妊娠しても良いように普段から食べる食べ物が大切になるからです。

妊活中に葉酸を摂るように勧められるのは妊娠しやすい体質になるからではなく、妊娠初期の赤ちゃんが一番必要な栄養素だからです。妊活中のカップルはそれくらい妊娠したときのことを考える必要があります。

雑誌「コスモポリタン」のアメリカ版にアメリカ疾病管理予防センター(以下CDC)のアルコールについての見解についてレポートが掲載されていました。その記事では、連邦保険担当官が「避妊をせずに性交渉を行っている15~44歳の女性は、飲酒は控えたほうがよい」とする調査報告書を発表しています。

理由は、アメリカではほとんどの女性が妊娠初期に‟自分が妊娠している”と気づかずに飲酒をしているからだそうです。確かに妊娠中の女性がお酒を飲むとお腹の中にいる赤ちゃんに悪影響を及ぼすためお酒は厳禁です。

しかしながら、妊娠中にお酒を飲んでも無事に妊娠出産したという報告は数多くありますので、そこまで目くじらを立てる必要はありません。ただし、飲み過ぎはいけないのでお酒を飲む量に注意してください。

妊活中に飲んでもいいお酒の量は?

妊活中でもお酒の量に注意すれば飲んでもいいというのは先述したとおりです。では、一体どれくらいの量ならばお酒を飲んでもいいのでしょう。調べてみますとデンマークの大学で行われた研究報告があるのでご紹介します。

デンマークに住む21~45歳の女性で、不妊治療を受けていない妊活中の6,120人が調査の対象として、自己申告により週ごとの飲酒量を調査しました。アルコールの量は、ビール330mL(缶1本分)、ワイン(赤・白)120mL、デザートワイン50mL、ウイスキーやブランデーなどアルコール度数の高い蒸留酒20mLをそれぞれ1杯としています。

結果は『1週間で14杯未満のアルコールならば、特に影響は見られない』ということでした。つまりビールやグラスワインであれば1日に1、2杯程度であれば問題ありません。ロンドン大学の教授も『禁酒は、妊活に必ずしも必要というわけではない』とコメントしています。

日本の産婦人科医の中には「一番の問題はセックスレス。これが一番妊娠確立を下げている」という意見もあります。そのため妊娠していないカップルは、アルコールがときにコミュニケーションツールとなると副次的な効果があると考える声もあるようです。

女性のアルコールによる生殖医能力への有害な影響のメカニズムは知られていません。そのためガチガチに禁酒をするよりも節度を持って楽しむくらいにするのがいいでしょう。

妊活中にお酒以外に気をつけたほうがいいものは?

注意を呼びかける人々
妊娠中に気をつけなければいけないのはお酒だけではありません。他にも気をつけないといけないものがあります。一つはカフェインです。理由はカフェインは身体を冷やす作用があるので身体を温めておく妊活中のコーヒーは1日1~2杯程度にしておきましょう。

二つ目は喫煙です。たばこにはニコチン、タールなど、多くの有害物質を含んでいて、血流も悪くなるし卵子も老化するし、不妊のリスクを60%も上げると言われています。しかもタバコの科学物質は、一度体の中に入ると10~15年は排出されないと言われているので長くタバコを吸っていると妊娠率が低くなります。子どもが欲しいとならすぐに禁煙しましょう。

ちなみにiQOS(アイコス)などの電子たばこは科学的なデータがほとんどありません。しかし、電子たばこにもニコチンとタールが含まれているので吸うのは止めておきましょう。

三つ目はお魚の食べ方です。一部の魚介類には水銀が含まれているため食べ過ぎると妊娠中の胎児に悪影響を与える可能性があるため気をつけてくください。詳しくは厚生労働省のHPに記載されています。

外部リンク:魚介類に含まれる水銀について(厚生労働省HP)

働きながらの妊活中。どうやってお酒を断ったらいいの?

結婚後も仕事を続ける女性がいるのが当たり前の時代です。妊活中でも普段と同じように仕事をこなす女性がいても不思議ではありません。そこで気になるのが仕事の席でお酒を勧められた場合です。

正直に「妊活中なのでお酒はちょっと」といえるならばいいのですが、職場によっては言いにくい雰囲気もあります。その場合は「体調が悪いから」と言って断るのが無難です。もし同僚や先輩、後輩からフォローしてもらえるならば協力してもらえるかもしれません。妊活は当事者の努力だけではなく周りからの協力も大切になってくるので信頼できる人がいたら話しておきましょう。

男性の飲酒は妊娠に影響を与えるの?

先ほどは女性の飲酒について詳しく説明しました。では、飲酒が男性不妊の原因になるか?についてご紹介します。アメリカのボストンで行われた研究によると週に4杯以上飲む女性と男性は、4杯未満のカップルと比較して受精障害の確率が48%高くなる結果が出たそうです。

また、毎日ビールを飲む男性は、精子の運動率低下のリスクが27%高くなる結果が出ています。しかも白ワインを毎週飲むと精子の形態異常のリスクが43%も増加し、赤ワインを毎週飲むと精子濃度低下のリスクが23%増加したそうです。

ただし、精子に関して多くの文献は、ある程度のアルコールやカフェインであれば、精液所見体外受精に成績に影響しないとしているものが多くみられます。すなわち、女性同様「適量であれば大丈夫」というのが結論になります。

お酒を気をつけるだけではなくライフスタイルを見直そう

日の光の背景に愛する笑顔のカップル
妊活と聞くと「あれをするとダメ」「これをしたらダメ」というイメージがあると思いますけど、見直してほしいのは二人のライフスタイルです。暴飲暴食や夜更かしといった悪い生活習慣を見直し、体調管理をして健康的な生活を送ることが妊娠するには大切だからです。その中の一つにお酒は飲み過ぎないようにという項目があるだけだと思ってください。

ガチガチに「お酒を飲み過ぎるとダメ」となるとストレスがたまってかえって妊娠しにくくなります。それよりも緩やかに「ちょっと生活スタイルを変えてみようか?」と気軽な感じで、少し控えてみたり、反対に止めていたけれど、ちょっと気分を変えて少し飲みに出かけてみたりするのもいいかもしれません。何よりも二人が仲良く過ごすことが妊活をする上で最も大切なことです。お互いにストレスをためずに仲良く健康的な生活を送れるようにしてください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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