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妊娠の初期出血とは?知っておきたい5つの特徴と注意点

新たな生命をお腹に宿した妊婦さんは、幸せと不安の両方を背負った妊娠ライフを過ごしていくことになります。

妊娠が判明してからは体調管理を怠ることができませんが、十分に気をつけていても妊娠初期の身体的変化・精神的変化に直面すると誰でも戸惑ってしまうものです。中でも、妊娠の初期出血は生理とは違う出血がみられ、出血の状態から体に起きている変化に初めて気づくこともあります。

この記事では、妊娠の初期出血について知っておきたい5つの特徴と注意点を詳しくご紹介していきます。初期出血が重大な病気によって引き起こっている可能性もあるため、正しい知識を身につけておきましょう。

妊娠の初期出血とは?知っておきたい5つの特徴

妊婦さん

生理が予定日になってもこないのは妊娠している一つのサインでもありますが、妊娠の初期出血を生理と勘違いして妊娠に気づくことが遅れるケースもあります。

妊娠超初期以降、注意が必要な初期出血について知っておきたい5つの特徴をまずはご紹介していきます。

妊娠の初期出血が起こる原因

妊娠した後に生理とは異なる出血が起こる原因は、胎盤の形成と大きく関係しています。

妊娠初期は、赤ちゃん側の絨毛という細胞が子宮内膜に存在する母親の毛細血管を破って入り込み、胎盤がつくられていきます。胎盤が形成されることで赤ちゃんは母親側から栄養や酸素を取り入れることが可能となりますが、胎盤ができあがる途中に子宮内膜の毛細血管の破錠が起こることで出血が伴います。

この出血が直接流産に繋がることはほとんどありませんが、流産や切迫流産が原因となって起きた出血も妊娠初期には確認されることがあります。

妊娠の初期出血はいつ頃起こる?

初めて経験する初期出血にびっくりする方は多いですが、実は妊婦さんの約30%が経験するため珍しいものではありません。

初期出血は妊娠初期といわれる妊娠2ヶ月〜4ヶ月の間に起こる出血で、その出血の量は何が原因で起こったものかで大きく異なります。ティッシュにつく程度の少量のものからナプキンから漏れるほどの大量なものまであり、ほとんどのケースは大事に至りません。

しかし、重い病気を伴うケースも稀にあるため、病的な出血には要注意です。

病的な出血に要注意

妊娠は必ずしも健康な赤ちゃんの出産に繋がるとは限らないため、流産や子宮に関する病気に対して神経質になる方も多くいます。初期出血で病的な出血の原因として挙げられる病気や症状は以下となります。

     

  • 流産
  • 切迫流産
  • 絨毛膜下血腫
  • 子宮外妊娠
  • 胞状奇胎
  • 子宮頸管ポリ―プ
  • 子宮腟部びらん
  • 子宮頸がん

 

これらが原因となる病的な出血は「大量の出血を伴う」「出血と止血を繰り返す」「血の塊がみられる」などの特徴があります。生理による出血や着床出血に当てはまらなかった場合は、早めに医師に相談することをおすすめします。

生理みたいな症状が現れる着床出血

妊娠超初期は生理みたいな症状を伴う「着床出血」が現れることがあり、妊娠初期の4週〜11週くらいに起こる出血の8割以上を占めるといわれています。着床出血のチクチクとお腹の奥の方が痛む感覚は生理と似ており、腰付近が重苦しくなって痛みを伴うという点も共通しています。

しかし、出血が「生理よりも少量である」「出血する期間が生理よりも短い」「生理痛ほど激しい痛みは伴わない」という生理とは異なる特徴もあります。

生理と勘違いされがちな着床出血ですが、少しでもいつもとは違う変化がみられた場合は妊娠を疑いましょう。

安静にするしかないのか?

妊娠の初期出血がみられた場合、病院で診察を受けるまでは安静にする必要があります。安静にする以外に何かできることはないか?」と考えてしまう方もいるようですが、出血の原因が病的なものである可能性もあるため、無理をしないことが一番です。

生理的な出血の場合、診察を受けた後も引き続き安静を保ちながら経過観察となり、病的な出血の可能性が示唆された場合は、入院か自宅安静が推奨されます。

妊娠超初期〜初期は赤ちゃんの体の主な器官がつくられている最中であるため、医師の承諾を得ていない薬剤の使用を控え、自転車に乗った移動やゼーゼー息が切れるような運動は控えておくべきです。初期出血がみられた後は放置せず、早めに医師に相談することを心掛けましょう。

妊娠の初期出血の注意点

産婦人科

妊娠超初期〜初期に生理とは異なる出血がみられることは珍しくありませんが、着床出血とは異なる初期出血にはくれぐれも注意しなければなりません。ここからは、出血の色や状態に応じた注意点を解説していきます。

初期出血が茶色だった場合

妊娠の初期出血がどのようなものか理解していても、想像と違う色の出血がみられた場合は不安になってしまうものです。

初期出血が茶色だった場合、緊急性を要さないケースが多いといわれています。茶色の出血が起こる主な原因は、胎児の成長過程において毛細血管が切れることで起こる出血が、おりものと混ざって排出されるというものです。また、以前に起こった着床出血から時間が経過して排出された場合も茶色になることがあります。

緊急性を要さないといえども、初期出血がみられた場合は安静を心掛け、しっかり医師に相談することが原則となります。

初期出血が鮮血だった場合

着床出血とは異なる生々しい鮮血がみられた場合、今まさに出血が起こっている可能性が高まり、何らかの症状や病気によって引き起こされた出血であることが疑われます。

鮮血がみられた場合に疑われる症状がこちらとなります。

     

  • 流産
  • 切迫流産
  • 胞状奇胎
  • 子宮頸管ポリ―プ
  • 子宮腟部びらん

 

この中で特に注意すべき「流産」と「切迫流産」をご説明します。

流産による出血

赤ちゃんがお腹の外で生きていくことができない妊娠22週以前に妊娠が終了してしまうことを「流産」といい、過去にたくさんの妊婦さんが流産を経験しています。

妊娠初期において流産に至る確率は「約8%〜15%程度」といわれており、年齢とともにその確率は上昇します。

妊婦の年齢 流産の確率
20代 8%〜20%
30代 20%〜25%
40代 30%

流産が進行すると下腹部に陣痛に似た強い痛みが発生し、大量の出血を伴います。妊娠初期に鮮血がみられた場合、今まさに流産が進行している可能性が高まるためすぐに医師に診てもらうことが必要になります。子宮の内容物が全て排出された場合、完全流産となって痛みや出血が治まるか症状が軽くなりますが、子宮内に内容物が残っている場合は不全流産となり、引き続き痛みや出血を伴います。

流産の原因のほとんどが胎児が持つ染色体異常遺伝子異常によるものとなるため、母親の日頃の行動で防ぐことは困難です。染色体異常・遺伝子異常を根本的に治療する方法は見つかっていないため、流産に至っても自分を責めず、家族と一緒に前を向いていきましょう。

切迫流産による出血

切迫流産は、流産になりかけながらもまだ妊娠を継続できる可能性がある状態を指し、子宮口は閉じている状態でもごく少量〜中量の出血を伴います。

なお、切迫流産になった場合は妊娠12週まで有効な薬剤は存在しないため、絶対安静が原則となります。初期出血が鮮血だった場合はこのように無視できないリスクが生じるため、放置は禁物です。

初期出血に塊が混ざっていた場合

妊娠超初期〜初期で起こった出血に、赤茶色いレバーのような血の塊や黒い血の塊が混ざっていた場合は、流産の可能性が高まります。

妊娠超初期は化学流産が起こりやすく、妊娠検査薬で陽性反応が出たにも関わらず超音波検査で妊娠が確認される前に流産してしまうケースがあります。化学流産は生理と比べて出血の量や血の塊が多くなり、着床に備えていた状態の子宮内膜が厚みを持った血の塊として排出されることがあります。

妊娠超初期の段階では出血の量が多くなっても妊娠していると気づかず、生理だと判断してしまうことも珍しくありません。しかし、血の塊は流産の可能性を示すものでもあるため、異変に気づいたらすぐに医師に診てもらいましょう。

まとめ

妊娠の初期出血について知っておきたい5つの特徴と注意点をご紹介しましたが、参考になりましたか?

妊娠超初期に起こる着床出血は、ティッシュにつく程度の少量の出血があり、生理よりも出血の期間が短く、身体的な症状も軽いのが特徴です。ただし、お腹の奥の方が痛む感覚や腰が重くなるといった症状は生理と似ているため、妊娠の初期出血であると気づくことが遅れるケースもあります。気をつけなければならないのが、妊娠初期の鮮血や塊が混ざった出血です。これらの出血がみられた場合、流産が進行している可能性が高まるため、すぐに医師に相談するようにしましょう。妊娠の初期出血は妊婦さんの誰にでも起こり得るものであり、実際に出血が起きた時に正しい対処ができるかが大事になります。

実際にその場面に直面した場合は、この記事でご紹介した情報を参考にして、絶対に放置せずにまずは病院で診察を受けることを心掛けていきましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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