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羊水検査はいつからいつまで?適切な受診の時期とは

新しい命を授かることは、妊婦さんとご主人パートナー、周りのご家族にとって本当に喜ばしいことです。それと同時に、生まれてくる我が子が生涯健やかでいられるかどうかなど、心配事は少なくありません。羊水検査は出生前診断の1つとして知られ、赤ちゃんの周りにある羊水を検査することにより、出産前に赤ちゃんの健康状態や染色体異常を把握することができる検査です。

本記事では、羊水検査でわかることや、検査のメリット・デメリットなどをご紹介します。

羊水検査を受ける時期

妊婦さん
出生前診断の1つとして知られる「羊水検査」。使用機器や方法が特殊なことから、検査を受けることができるのは、流産の可能性が低く、母体の状態が安定している妊娠15〜18週に限られます。検査の主体となる羊水穿刺(羊水採取のためお腹に針を挿入すること)は通常1回のみ行いますが、羊水が適切に採取できなかった場合は2〜3回行うこともあります。

羊水検査でわかること

羊水検査を実施することで、以下の診断が可能になります。

  1. ・赤ちゃんの健康状態
  2. ・染色体異常による先天性の障害
  3. ・先天性代謝異常の一部
  4. 遺伝子の異常

羊水検査を行った場合、染色体異常や遺伝子異常が見つかる可能性があります
染色体異常とは、通常は46本存在する染色体の一部が欠けていたり、反対に数が多かったり、組み合わせが合っていなかったりすることなどが挙げられます。これにより、赤ちゃんはダウン症ターナー症候群など、先天的な障害をともなって生まれてくることがあります。

そのほか、遺伝子の異常や先天性代謝異常の一部が見つかる場合もあります。先天性代謝異常は、生まれつき特定の酵素に異常が生じて発症する疾患です。

羊水検査にかかる費用

羊水検査は保険適応ではないため、自費となります。実施する病院や検査の内容により異なり、おおよその費用は10〜20万円前後と幅があります。羊水検査に加え、別の検査が必要となった場合はさらに費用がかかる可能性があるため、実施を検討されている場合は、ある程度費用に余裕を持っておくと安心です。

羊水検査のメリット

羊水検査を受けるメリットには、以下のようなことが挙げられます。

  1. ・赤ちゃんの健康状態を把握することができる
  2. ・遺伝子異常、染色体異常の有無がわかる
  3. ・赤ちゃんの健康状態や染色体異常を把握するための検査として、精度が高い

「出産前に赤ちゃんの健康状態を把握して安心したい」と願うご夫婦人は少なくありません。また、染色体異常のある赤ちゃんは、ダウン症など先天的な障害を持って生まれることがほとんどのため、事前に我が子の状況を知ることで、通常の育児とのは異なること違いに対して心の準備ができるという側面もあります。

また、妊娠時に母体が高齢であればあるほど、生まれてくる赤ちゃんの染色体や遺伝子に異常が発生する確率が上がると言われています。そのため、高齢妊娠(35歳以上)の方は担当医から羊水検査の実施を勧められる場合があります。

また、ご家族に染色体・遺伝子疾患の方がいる、もしくはこれまでに染色体異常児を出産したことがある場合は、遺伝の可能性を考慮し検査がを勧められることがあります。

羊水検査のデメリット

羊水検査は赤ちゃんの健康状態を把握する検査ですが、時に以下のようなデメリットがみられることがあります。

  1. ・流産
  2. ・前期破水
  3. ・早産
  4. ・子宮収縮
  5. ・細菌感染
  6. ・針を挿入した際に赤ちゃんを傷つけるおそれがある

羊水検査を行うためには母体の状態が安全であるか(検査に耐えられる状態であるか)を事前に把握する必要があります。羊水穿刺前の検査では、出血やお腹の張り(子宮収縮)、子宮頸管の短縮がないかなどを確認します。出血や子宮収縮は流産や早産の可能性があり、子宮頸管の短縮は細菌感染を起こしているとみられる症状です。いずれかの症状が認められる場合は、検査を受けられるか医師に相談するといいでしょう。は避けた方が良いでしょう。

上述の症状のほかにも、母体が不安定な状態で無理に実施すると、前期破水(羊水が漏れ出る)や早産、流産へとつながる可能性があります。また、検査にあたり、お腹に挿入した針の先に赤ちゃんが当たり、傷つけてしまう可能性もあります。羊水検査を実施する場合は、これらのデメリットを事前に理解しておくことが必要です。

羊水検査は受けるべきか

不安な妊婦さんに寄り添いながらカウンセリングをしている女性医師
羊水検査は赤ちゃんの染色体異常や健康状態を把握するために有用な検査です。しかし、それらのメリットは、場合によりデメリットにもなり得ることを理解する必要があります。
高齢妊娠、過去に染色体異常児を出産したことがある、ご家族に染色体や遺伝子疾患を持つ方がいる場合では、生まれてくる我が子も何らかの異常や障害を持つ可能性が高いことから、事前に知っておきたいという理由で検査を受ける方がほとんど多くいまです。

しかし、中には「どのような子だったとしても受け入れたい」と、あえて検査を希望しない方ご夫婦もいます。また、検査自体は受けても、考えた末に結果は聞かないと決めたご夫婦方もいるようです。羊水検査を受けることを勧められる条件はいくつかありますが、強制ではありません。

あくまでも、受ける・受けないの判断はご夫婦妊婦さんとパートナーに委ねられています。生まれてくる我が子がどのような状態であっても受け入れ、育てていく覚悟があるか、障害児だったがあるとわかった場合には、子どもにとって適切な環境を整えることができるかなど、出産の前にご夫婦でよく話し合うことが大切です。

羊水検査を受ける人の割合

1998年から2016年までの調査によると、羊水検査を受ける割合は1998年の10,419件以降、増加傾向を示していましたが、2014年の20,700件以降は減少傾向となり、2016年時点で18,600件となっています。

2013年からは母体の採血のみで非確定診断ではありますが、陰性的中率が99%の新型出生前診断NIPT)が実施されるようになったことで、羊水検査の実施件数は徐々に減少傾向にあるといえます。

羊水検査に限らず、出生前診断を受けることは任意であり、日本においては検査実施に対するデータベースなども存在しないことから、現時点での正確な検査件数や割合を個別に把握することができていないのが現状です。

また、2013年から実施されるようになったNIPTは、実施要件(検査を受けられる年齢など)が定められており、本来は認可施設において検査を受けることとされています。しかし近年の日本は高齢出産が増加したことで出生前診断へのニーズも高まり、認可外の施設で安価に、かつ手軽に受けられるというケースが問題になっています。このような状況から、調査結果よりも実際の検査総数は多いことが予想されます。NIPTは簡便である反面、単独では正確に診断を下すことができません。

そのため確定診断に羊水検査を用いる場合があります。また、高齢妊娠や近親者に染色体異常の方がいる場合は、精度の高い羊水検査を行うよう勧められる場合があります。

羊水検査の結果が出る時期

説明を受けた後笑顔の患者さん
羊水検査の実施は5〜10分程度と短いものですが、検査結果が出るまでに2〜3週間程度時間を要します。これは、採取した羊水から細胞を培養する行程が必要になるためです。染色体の検査を行うことができるようになるまで細胞を培養して増やし、状態が整った段階で観察します。

羊水検査の結果が出るまでに行われる行程や方法は以下の記事でも紹介していますので参考にしてください。

【関連記事】羊水検査の結果はいつ頃出る?結果が出るまでの3つのステップを解説

まとめ

赤ちゃんの健康状態や染色体異常などを知ることができる羊水検査。しかし、この検査は必ずしもメリットだけでなく、結果によってはご夫婦妊婦さんとパートナーにが難しい決断を迫られる可能性もあります。検査を受ける前にはご夫婦でよく話し合い、新しい命とどのように向き合っていくか考える機会を持つことが大切です。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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