NIPTは2011年に世界で始まって10年近くたちました。10年たつと技術もどんどん進みます。NIPTも第1世代→第2世代→第3世代と技術革新しています。一般にはわかりにくい違いを説明したいと思います。
最も重要なのは『第三世代は146塩基対という母親の血液の中で胎児のDNA比率(胎児分画)が一番高い長さを選択的に測定するため、ほかの測定方法に比べて、胎児分画が高い状態で測定できる』という点です。胎児分画の高さは正確性に影響を与えます。
もう1つはDNAの断片を抽出する時点でDNAの外側についているメチル基を見ている点がこれまでのNIPTとは違う点です。メチル化のされ方が個体により違うので、DNAが全く同じであるはずの一卵性双生児ですら、「双生児である」ことが検査会社側でわかるようです。
ミネルバでは第2世代も扱っていますが、両方はかった患者さんのを比べると、大体第3世代の胎児分画が第2世代より多くなっています。胎児分画はNIPTの結果の正確性に最も影響します。そういう意味で大変優れた検査方法が第3世代と言えるでしょう。
但し、検査会社により何を測定するかが違いますので、例えば全染色体や700万塩基のサイズで全部の染色体の部分的な欠失・重複をくまなく検査することは、第三世代の会社にはできません。これらは第二世代の会社に出しています。
NIPTの各世代を比較する
第1世代 | 第2世代(例:パノラマ、ナテラ) | 第3世代(スーパーNIPT) | |
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標的とする方法 | 標的なし | 標的領域をマルチプレックスPCR増幅 | 標的領域由来のcfDNAの溶液内ハイブリダイゼーションキャプチャ |
オリジナル胎児断片 | 母体血液からキャプチャ | 標的領域のPCR産物(アンプリコン)クローンを使用 | 母体血液からキャプチャ |
定量か定性か | ビン・フラグメントを計測する解析方法(定性) | ハプロタイプ再構成とモデル適合 | 次世代シークエンサーを用いたマルチエンジン解析(定量) |
PCRの際にできた重複産物の除外 | 読み取り深度不足のため不可 | 不可 | 除外して解析可能 |
PCRエラー | 読み取り深度不足のため不可 | 不可 | PCRエラー伝播を検出・感知できる |
胎児分画 | 包括的モデル適合を用いた推定値 | 可能。モデル適合の一部であり精度は低い。 | 非常に正確に計測可能 |
測定パネルの拡張性 | 拡大は容易であるが精度は低い | 全ての領域でSNPを見つけることはできないため困難 | 他の染色体や微細欠失への拡張が容易であるが精度は低い |
微細欠失 | 精度が悪い。7Mb未満の小さな欠失に対する感度が低い。 | 精度が悪い。PPVも低い。 | 非常に高精度。1Mbというサイズにも対応。 |
バニシングツイン | 不可 | 不可 | 可能。消失4週間後に検体を採取。 |
第1世代のWGS法は、母子のDNAを区別して測定することはできなかったのですが、第3世代だとそれが以前のものに比べて正確にできるようになりました。ということは、正確性が増しているということになります。
上図は第1世代と第2世代を比較したものですが、第1世代と第2世代では解像度(違いを区別できる最小単位)が30万~100万塩基より大きくなってしまうのに対し、第2世代のSNPベースの検査では一塩基の違いを認識でき、精度も高くなっているというのが大きな違いです。
第1世代NIPT(全ゲノム)
第一世代シーケンシングは、サンガーシーケンシングとしても知られ、1977年にフレデリック・サンガーと共同研究者によって開発された鎖終結法を指します。DNA分子は修飾ヌクレオチド(ddNTP)を用いて増幅され、1サイクルにつき1塩基のみの付加が許されます。第一世代の方法は、クローンDNA集団の配列決定を可能にしました。DNA配列決定への最初の大きな進出はヒトゲノム計画でした。
サンガーシーケンスとNGSの決定的な違いはシーケンス量である。サンガー法では一度に1つのDNA断片しかシーケンスしないのに対し、NGSは超並列で、1回のシーケンスで数百万個の断片を同時にシーケンスする。このプロセスは、一度に数百から数千の遺伝子をシーケンスすることにつながります。
第一世代は全ゲノムシークエンス(WGS)またはターゲット法に基づいています。
プロトコルは血清 ➜ DNA抽出 ➜ ライブラリーの準備 ➜ 塩基配列の測定 ➜ 解析 ➜ レポートの順となっています。
zスコアを用いた単純統計解析:正規化染色体値(normalized chromosome value ; NCV)
NCV >3➜陽性の場合;NCV≦0➜陰性の場合;0~3➜では結論が出ない
低深度(0.1~0.5X):シークエンサーで塩基配列を1回決定することをリード1といいますが、データーは積み下がっていく形なので深度とも表現します。1リード=1深度です。第1世代では50回しか読めませんでした。深れば深いほど正確になるのですが、ごみも増幅してしまうためゴミデータが除去できない場合は、ごみがそれらしく見えてしまい、判定を誤ってしまいます。ですので、第1世代では50回までしか読めませんでした。
胎児分画を測定できない
判定保留の可能性が高い
感度および特異度が不良
母親の血液由来の元のcfDNA断片にアクセスできる
第2世代NIPT (標的増幅)
第2世代シーケンシング法は、ハイブリダイゼーションによるシーケンシングと合成によるシーケンシングの2つに大別できます。
キャピラリー電気泳動を用いた従来のサンガーシーケンスと比較して、ショートリード、超並列シーケンス技術は、シーケンス能力に革命をもたらし、第2世代シーケンス法を立ち上げた根本的に異なるアプローチです。
NGSとWGSの決定的な違いは、次世代シーケンシング(NGS)が高スループット、低コスト、スピーディーな超並列第2世代シーケンシング技術であるのに対し、全ゲノムシーケンシング(WGS)は、サンガーシーケンス、ショットガンアプローチ、高スループットNGSシーケンシングなどのシーケンシング技術を用いて、細胞の全ゲノムDNAを一度に解析する包括的な手法であることです。
マルチプレックスPCRを用いた濃縮法に基づく
標的分析プロトコール 血漿➜ DNA抽出➜標的ライブラリ調製➜配列決定➜解析➜報告書
高い読取深度:第2世代はリードは500になっています。
SNPを用いて胎児分画を測定できる
第1世代NIPTと比較して高い感度と特異度
母親の血液から元の断片が失われている
PCRクローンの分析
断片サイズ情報なし
PCRの重複を除去したり、PCRの誤りを軽減したりすることはできない
Multiplex PCR法は不均一な増幅効率を有する
第3世代NIPT (スーパーNIPT)
次世代シーケンシング(NGS)は、ハイスループットシーケンシングとも呼ばれ、さまざまな最新のシーケンシング技術を総称する言葉です。これらの技術により、DNAやRNAの塩基配列の決定が、以前使用されていたサンガーシーケンスよりもはるかに迅速かつ安価に行えるようになった。
第3世代シーケンス技術は、超高スループット、スケーラビリティ、スピードを提供する次世代シーケンス(NGS)としても知られる第2世代シーケンスよりも大幅に長いリードを生成する能力を有する。
第2世代シーケンス法とは対照的に、第3世代シーケンス法は長いDNA(およびRNA)分子のシーケンスを目的としています。NGSは、従来のDNAシーケンス法の限界を克服することにつながりました。
結論として、第3世代シーケンス法を使用する利点は以下の通りです。
1.第三世代は読み取り深度が高い。これに対して、WGS第1世代技術では読み取り深度が非常に低いため、結果の統計的精度が低下したり、ゲノム全体ではなくごく一部しか読み取れないことが欠点です。例えば、スーパーNIPTでは読み取り深度が500倍に達しますが、旧世代シーケンスでは読み取り深度は50倍です。
2.全ゲノムシーケンスによる第一世代検査では、通常、胎児分画の計算が不正確であるため、偽陰性のリスクが高くなりますが、ターゲットNGSでは胎児分画が正確に計算されます。ターゲットNGSとは対照的に、全ゲノムベースのNIPTは異数体による変化とコピー数変異を区別することができない。
3.特異度と感度が高く、結論が出ないリスクが低い。
独自のTarget Capture Enrichment Technologyに基づく
標的分析プロトコールは 血漿➜ DNA抽出➜標的ライブラリ調製➜配列決定➜解析➜報告書
非常に高い読影深度
胎児分画を非常に正確に測定できる:146塩基対という胎児のDNA分画比率が一番高い長さを選択的に測定するため、ほかの測定方法に比べて、胎児分画が高い状態で測定できます。ミネルバでは第2世代も扱っていますが、両方はかった患者さんのを比べると、大体第3世代の胎児分画が第2世代より高くなっています。胎児分画はNIPTの結果の正確性に最も影響します。そういう意味で最も優れた検査方法が第3世代と言えるでしょう。
母親の血液由来の元のcfDNA断片へのアクセス
フラグメントサイズ分析を行う能力
重複を除去し、PCRエラーを軽減できる
第1世代および第2世代NIPTと比較して非常に高い感度および特異度
複数の解析方法のスコアを用いて精度を向上させる
異数性を超えた遺伝性疾患の検出技術を拡大する能力