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羊水検査は、お腹の中の赤ちゃんの染色体疾患や遺伝子の異常を調べる検査です。妊娠中の方にとって、赤ちゃんの健康状態を正確に知ることができる重要な検査の一つです。
胎児の先天疾患を調べる検査は他にも、NIPT(新型出生前診断)や超音波検査などがありますが、羊水検査はこれらの検査で異常が疑われた際に最終的な診断を確定するための「確定的検査」として位置づけられています。
羊水検査でわかること

羊水検査では、胎児の様々な染色体異常や遺伝的疾患を高い精度で検出することができます。具体的にどのような疾患がわかるのか、詳しく見ていきましょう。
すべての染色体異常
羊水検査はG分染法・FISH法・マイクロアレイ検査によって行われ、以下の染色体異常をほぼ100%の精度で発見することができます。
主要な常染色体異常
- 21トリソミー(ダウン症候群):最も頻度の高い染色体異常症で、知的発達の遅れや特徴的な顔貌、心疾患などを伴います
- 18トリソミー(エドワーズ症候群):重篤な発達障害や多臓器の奇形を伴い、多くの場合生後1年以内に死亡します
- 13トリソミー(パトウ症候群):重度の知的障害、多発奇形を伴い、予後は非常に厳しい疾患です
性染色体異常
- モノソミーX(ターナー症候群):女性にのみ起こり、低身長や卵巣の発達不全などが特徴です
- XXY(クラインフェルター症候群):男性にのみ起こり、高身長、不妊、軽度の学習障害などがみられます
- その他の性染色体異常:XYY症候群、XXX症候群なども検出可能です
その他の染色体異常
上記以外にも、すべての常染色体異常や構造異常(転座、欠失、重複など)も検出することができます。
検査精度について
| 項目 | 精度 |
|---|---|
| 感度(異常を正しく検出する確率) | 99.4% |
| 特異度(正常を正しく判定する確率) | 99.5% |
羊水検査は非常に高い精度を誇る検査ですが、100%完璧な検査ではないことも理解しておく必要があります。
遺伝子疾患
染色体レベルでは検出できない遺伝子疾患についても、羊水検査で発見することが可能です。
遺伝子疾患の検査は、家族歴や遺伝カウンセリングの結果に基づいて実施されることが一般的で、以下のような疾患が対象となります:
- 筋ジストロフィー
- 嚢胞性線維症
- 鎌状赤血球症
- β-サラセミア
- テイ・サックス病
- その他の単一遺伝子疾患
これらの検査では、特定の遺伝子変異や酵素の異常がないかどうかを詳細に調べることができます。
開放性神経管奇形
開放性神経管奇形は、妊娠初期に神経管が正常に閉鎖しないことで起こる先天異常です。主に以下のような疾患が含まれます:
- 二分脊椎:脊椎の一部が開いた状態
- 無脳症:脳の大部分が欠損した状態
- 脳瘤:脳組織が頭蓋骨外に突出した状態
羊水検査では、α-フェトプロテインという胎児由来のタンパク質の量を測定することで、これらの神経管奇形を検出することができます。正常値よりも著しく高い場合、神経管奇形の可能性が示唆されます。
羊水検査でわからないこと
羊水検査は非常に優れた検査ですが、すべての異常を検出できるわけではありません。検査の限界についても正しく理解しておきましょう。
モザイク
モザイクとは、正常な染色体を持つ細胞と異常な染色体を持つ細胞が混在している状態のことです。
羊水検査では培養された細胞の一部を解析するため、以下のような場合にモザイクを見逃す可能性があります:
- 正常な細胞の割合が非常に高い場合
- 培養過程で正常な細胞のみが増殖した場合
- 異常な細胞の割合が検出限界以下の場合
このため、モザイクについては確実に発見できるとは限らず、出生後に判明するケースもあることを理解しておく必要があります。
染色体異常症以外の疾患
生まれてくる赤ちゃんの約3〜5%が何らかの治療を要する疾患や障害を持っているとされていますが、その中で染色体異常が関係するものは約0.92%程度に過ぎません。
羊水検査で検出できない疾患には以下のようなものがあります:
- 多因子性疾患:複数の遺伝要因と環境要因が関与する疾患(先天性心疾患の一部、口唇口蓋裂など)
- 後天的な障害:妊娠中の感染症や薬剤の影響による障害
- 軽度の知的障害:染色体異常を伴わない知的障害
- 自閉症スペクトラム障害:出生前には検出困難な発達障害
- 難聴や視覚障害:遺伝的要因以外による感覚器障害
羊水検査は万能な検査ではなく、すべての疾患を事前に発見できるものではないことを十分に理解した上で検査を受けることが重要です。
羊水検査の方法と種類
羊水検査には主に3つの解析方法があり、それぞれ特徴や精度が異なります。多くの場合、複数の方法を組み合わせて総合的に判断します。
G分染法(染色体分染法)
G分染法は最も基本的な染色体解析方法で、染色体の数と形を顕微鏡で直接観察する方法です。
検査の流れ
- 採取した羊水中の胎児細胞を約10-14日間培養
- 細胞分裂を止めて染色体を固定
- ギムザ染色により染色体に縞模様をつける
- 顕微鏡下で46本の染色体を1本ずつ確認
検出可能な異常
- 染色体の数の異常(トリソミー、モノソミーなど)
- 大きな構造異常(転座、欠失、重複など)
- すべての常染色体・性染色体異常
特徴
- 結果判明まで約14-21日
- 約5-10Mb以上の大きな異常を検出
- 最も広範囲な染色体異常をカバー
FISH法(蛍光in situハイブリダイゼーション法)
FISH法は、特定の染色体に対する蛍光プローブを使用して、培養前の細胞でも迅速に解析できる方法です。
検査の流れ
- 採取した羊水2mlを遠心分離して細胞を集める
- 低張処理により細胞を膨張させる
- スライド上に細胞を固定
- 13・18・21番染色体および性染色体用のプローブを反応
- 蛍光顕微鏡で蛍光シグナルを観察
検出可能な異常
- 13・18・21トリソミー
- 性染色体数異常(X、Y染色体)
- 特定の染色体に限定された解析
特徴
- 結果判明まで最短2-3日
- 迅速検査として有用
- 解析できる細胞は全体の約3分の2
- G分染法との併用が推奨
マイクロアレイ検査(染色体マイクロアレイ解析)
マイクロアレイ検査は最も精密な解析方法で、染色体の微細な変化まで検出できる最新の技術です。
検査の原理
- 胎児のDNAを抽出
- 蛍光物質で標識
- 数万から数十万のプローブが配置されたアレイチップにハイブリダイズ
- 各領域の蛍光強度を測定して染色体量を解析
検出可能な異常
- G分染法で検出できるすべての異常
- 微細欠失・重複症候群
- 約100kb以上の小さな異常
- コピー数異常(CNV)
特徴
- 解像度はG分染法の約100倍
- 結果判明まで約7-10日
- 最も詳細な染色体解析が可能
- 未知の臨床的意義を持つ変異も検出
検査方法の比較
| 検査方法 | 結果判明 | 解像度 | 検出範囲 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| G分染法 | 14-21日 | 5-10Mb | 全染色体 | 基本的・包括的 |
| FISH法 | 2-3日 | – | 特定染色体のみ | 迅速・限定的 |
| マイクロアレイ | 7-10日 | 100kb | 全ゲノム | 高精度・詳細 |
羊水検査と他の出生前診断の比較
出生前診断には様々な種類があり、それぞれに特徴があります。羊水検査と他の検査を比較して、適切な検査選択の参考にしましょう。
| 検査名 | 時期 | 方法 | リスク | 精度 | 費用 |
|---|---|---|---|---|---|
| NIPT | 妊娠10週〜 | 母体採血 | なし | 感度99%以上 | 10-20万円 |
| 母体血清マーカー | 妊娠15-20週 | 母体採血 | なし | 感度80-85% | 2-3万円 |
| 羊水検査 | 妊娠15-20週 | 羊水採取 | 0.1-0.3% | 感度99%以上 | 10-15万円 |
| 絨毛検査 | 妊娠11-14週 | 絨毛採取 | 0.2-0.5% | 感度99%以上 | 10-15万円 |
| 超音波検査 | 妊娠全期間 | 超音波 | なし | 疾患による | 保険適用 |
検査選択のポイント
適切な検査を選択するためのポイントをご紹介します:
スクリーニング検査から始める
まずはリスクのない非侵襲的検査(NIPT、母体血清マーカー、超音波)でスクリーニングを行い、異常が疑われた場合に確定診断として羊水検査を検討するのが一般的な流れです。
検査時期を考慮する
- 早期診断希望:絨毛検査(11-14週)
- 標準的時期:羊水検査(15-20週)
- スクリーニング後:結果に基づいて適切な時期に実施
リスクと利益のバランス
侵襲的検査は流産リスクを伴うため、事前のカウンセリングで十分に検討することが重要です。
羊水検査を受ける時期と流れ

検査可能な妊娠週数
羊水検査は妊娠15週0日から妊娠22週6日までの期間に実施されます。この時期が選ばれる理由は以下の通りです:
妊娠15週以降を推奨する理由
- 羊水量の確保:十分な羊水量(200ml以上)が確保できる
- 胎児細胞の質:培養に適した活発な胎児細胞が含まれる
- 安全性の向上:手技の安全性が高まる時期
- 神経管欠損のリスク軽減:15週以前では神経管欠損のリスクが指摘されている
妊娠22週までとする理由
- 結果判明時期:検査結果が判明するまでに2-3週間要するため
- 意思決定の時間:結果を受けての十分な検討時間の確保
- 医学的管理:必要に応じた医学的対応が可能な時期
検査の詳細な流れ
検査前(1-2週間前)
- 遺伝カウンセリング:専門医による詳細な説明と相談
- 同意書の取得:検査内容とリスクについての十分な理解
- 感染症検査:B型肝炎、C型肝炎、HIVなどの確認
- 超音波検査:胎児の状態と羊水の位置確認
検査当日
所要時間:約60-90分
- 来院・受付(15分)
- 体調確認
- 最終確認と同意
- 血圧・体温測定
- 超音波検査(15分)
- 胎児の状態確認
- 胎盤の位置確認
- 羊水量の評価
- 最適な穿刺部位の決定
- 穿刺・採取(10分)
- 腹部の消毒
- 局所麻酔(必要に応じて)
- 超音波ガイド下での穿刺
- 羊水15-20mlの採取
- 検査後の観察(30-60分)
- 穿刺部位の確認
- 胎児心音の確認
- 母体の状態観察
- 安静時間の確保
検査後の注意事項
- 当日:激しい運動や重労働の禁止
- 翌日まで:入浴は シャワーのみ
- 3日間:性交渉の禁止
- 1週間:重いものを持つ作業の制限
検査後の経過観察
以下の症状がある場合は直ちに医療機関に連絡してください:
- 持続する腹痛
- 性器出血
- 破水感
- 発熱(37.5度以上)
- 強い違和感
羊水検査の費用について

検査費用の内訳
羊水検査は基本的に自費診療となり、費用は施設により異なりますが、一般的な内訳は以下の通りです:
| 項目 | 費用相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 穿刺の手技料 | 8-12万円 | 羊水検査の手技そのものの金額 |
| 基本検査費用 | 8-12万円 | G分染法による基本的な染色体解析 |
| FISH法追加 | 5~10万円 | 迅速検査として追加する場合 |
| マイクロアレイ検査 | 10-20万円 | 高精度解析を希望する場合 |
| 遺伝カウンセリング | 5千-1万円 | 30-60分の専門カウンセリング |
| 超音波検査 | 3千-5千円 | 検査前後の胎児確認 |
保険適用について
基本的に羊水検査は自費診療ですが、以下の場合に一部保険適用となることがあります:
保険適用となる場合
- 染色体異常症の家族歴がある場合
- 過去に染色体異常児の出産歴がある場合
- 夫婦のいずれかが染色体異常の保因者である場合
- 他の検査で明らかに異常が疑われる場合
自費診療となる場合
- 年齢による検査希望(高齢妊娠など)
- NIPT陽性後の確定診断
- 不安解消を目的とした検査
費用を抑える方法
- 複数施設での費用比較:施設により価格差があるため事前確認
- 検査項目の選択:必要な検査のみを選択
- 医療費控除の利用:年間10万円を超える医療費は控除対象
- 保険会社への確認:一部の医療保険で給付対象となる場合
羊水検査のリスクと安全性
羊水検査は非常に安全な検査ですが、侵襲的な手技であるため一定のリスクが存在します。正確な情報を理解した上で検査を検討することが重要です。
主要なリスク
流産・死産のリスク
最も重要なリスクは流産・死産で、発生頻度は約0.1-0.3%(300-1000回に1回)とされています。
近年の大規模研究では:
- 2016年以降の報告:流産率0.1-0.2%
- 従来の報告:流産率0.2-0.5%
- 技術改良:超音波ガイド下穿刺により安全性が大幅に向上
感染のリスク
子宮内感染の頻度は約0.1%以下と非常にまれです。
感染予防策:
- 厳重な無菌操作
- 使い捨て器具の使用
- 検査前の感染症スクリーニング
- 抗生剤の予防投与(必要に応じて)
その他のリスク
- 母体の軽度の出血:約1-2%(多くは軽微)
- 一時的な腹痛:約5-10%(通常24時間以内に改善)
- 羊水漏出:約1%以下(多くは自然に止まる)
- 胎児への軽微な損傷:約0.1%以下(臨床的に問題となることはまれ)
安全性を高める要因
技術的改良
- 超音波ガイド下穿刺:リアルタイムで針の位置を確認
- 細い針の使用:22Gまたは20Gの細い針を使用
- 一回穿刺:複数回の穿刺を避ける技術の向上
施設・医師の経験
- 年間実施件数:多くの経験を持つ施設での実施
- 専門医の技術:産婦人科専門医・周産期専門医による実施
- 設備の充実:高性能超音波装置の使用
患者側の要因
- 適切な時期:推奨される妊娠週数での実施
- 体調管理:良好な体調での検査実施
- 検査後の安静:適切な安静の確保
リスクを軽減するための対策
検査前の準備
- 十分な遺伝カウンセリング
- 感染症の事前スクリーニング
- 胎児の状態確認
- 母体の健康状態チェック
検査中の注意
- 常時超音波モニタリング
- 無菌操作の徹底
- 適切な穿刺部位の選択
- 必要最小限の羊水採取
検査後のフォロー
- 十分な観察時間の確保
- 緊急時の対応体制
- 適切な生活指導
- 定期的な経過観察
よくある質問(FAQ)
Q1. 羊水検査は痛みを伴いますか?
A. 多くの方が「注射程度の痛み」と表現されます。局所麻酔を使用する場合もあり、我慢できないほどの痛みではありません。検査後に軽度の腹痛を感じる方もいますが、通常は数時間で改善します。
Q2. 検査結果はどのくらいで分かりますか?
A. 検査方法により異なります:
- FISH法:2-3日(主要な染色体異常のみ)
- G分染法:14-21日(全染色体解析)
- マイクロアレイ:7-10日(高精度解析)
Q3. 検査で異常が見つかった場合、どうすればよいですか?
A. まず遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。検査結果の詳細な説明、疾患の予後、利用可能な支援などについて十分な情報提供を受け、ご夫婦でよく話し合って判断することが重要です。
Q4. 羊水検査は何歳から受けられますか?
A. 年齢制限はありませんが、一般的に以下のような場合に推奨されます:
- 35歳以上の妊娠(高齢妊娠)
- NIPTなど他の検査で異常が疑われた場合
- 染色体異常の家族歴がある場合
- 過去に染色体異常児の出産歴がある場合
Q5. 双胎妊娠でも検査は可能ですか?
A. 可能ですが、単胎妊娠より技術的に困難で、リスクもやや高くなります。それぞれの胎児から別々に羊水を採取する必要があり、専門的な技術と経験が必要です。
Q6. 検査後の日常生活で注意することはありますか?
A. 検査当日は以下の点にご注意ください:
- 激しい運動や重労働は避ける
- 入浴は翌日まで控え、シャワーのみ
- 性交渉は3日間控える
- 異常を感じたら直ちに医療機関に連絡
Q7. NIPTで陽性だった場合、必ず羊水検査を受けるべきですか?
A. NIPTは非確定的検査のため、陽性の場合でも偽陽性の可能性があります。確定診断のためには羊水検査または絨毛検査が必要ですが、最終的な判断はご夫婦の意向によります。遺伝カウンセリングを受けて十分検討することをお勧めします。
まとめ
羊水検査は、胎児の染色体異常や遺伝的疾患を高い精度で検出できる確定的検査です。検査でわかることは非常に多岐にわたりますが、すべての疾患を検出できるわけではないことも理解しておく必要があります。
羊水検査の重要なポイント
- 検出できる疾患:全ての染色体異常、特定の遺伝子疾患、開放性神経管奇形
- 検査精度:感度99.4%、特異度99.5%と非常に高精度
- 実施時期:妊娠15週0日〜22週6日
- 検査リスク:流産・死産リスク0.1-0.3%
- 費用:8-15万円程度(自費診療)
検査を検討される方へ
羊水検査は個人の価値観や状況により判断が分かれる検査です。検査を受ける前には必ず遺伝カウンセリングを受け、以下の点について十分に話し合うことが重要です:
- 検査の目的と期待する結果
- 検査のリスクと利益
- 結果が陽性だった場合の対応
- 家族の意向と価値観
- 経済的な負担
東京の「ミネルバクリニック」では、臨床遺伝専門医による丁寧な遺伝カウンセリングと、最新の検査技術による羊水検査を提供しています。年齢制限なく、一人ひとりの状況に応じた最適な出生前診断をご提案いたします。
妊娠中の不安や疑問がございましたら、まずはリスクのないNIPT(新型出生前診断)から始めることをお勧めします。「ミネルバクリニック」では、順次新しい精度の高くなったNIPT技術を導入し、妊娠9週以降から(臨床研究として早期NIPTは6~8週から)検査を受けていただくことが可能です。
出生前診断に関するご相談は、「ミネルバクリニック」まで是非お気軽にお問い合わせください。

