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双子の中絶で後悔しないために。出生前診断で片方が陽性だったご夫婦の決断

双子の中絶で後悔しないために。出生前診断で片方が陽性だったご夫婦の決断

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。2025年国際誌『Global Woman Leader』表紙抜擢など、世界基準の出生前診断と遺伝カウンセリングを提供。

双子の中絶で後悔しないために。出生前診断で片方が陽性だったご夫婦の決断

双子を授かった喜びに包まれる中、出生前診断(NIPT)で「片方の赤ちゃんだけが陽性」と告げられることは、ご夫婦にとって言葉にできないほどの苦しみを伴います。命の選択に直面し、孤独の中で後悔の恐怖と戦っている方へ。臨床遺伝専門医として、あなたがご自身で納得できる決断を下すための正しい知識とサポートについてお伝えします。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
👶 双子妊娠・減胎手術・倫理的葛藤
臨床遺伝専門医監修

Q. 双子の一人がNIPT陽性と言われました。どうすればいいですか?

A. まずは深呼吸をして、一人で抱え込まずに専門医に相談してください。
NIPTは確定診断ではありません。まずは確定のための検査(羊水検査など)について正しい情報を得ることが第一歩です。その後、あらゆる選択肢(妊娠継続や減胎手術)のリスクと倫理的な葛藤について、ご夫婦の価値観を否定せずに寄り添ってくれる専門医とじっくり話し合う時間が必要です。

  • 片方だけ陽性 → 二卵性双生児で起こり得る現実とNIPTの仕組み
  • 過酷な体験談 → 医療者からの価値観の押し付けによって傷ついたご夫婦の現実
  • 減胎手術の真実 → 母体への影響や、残された赤ちゃんへのリスク(約10%)
  • ミネルバの体制 → どんな決断も否定せず、最後まで徹底的に伴走する覚悟

1. 双子妊娠の出生前診断で直面する「片方だけ陽性」という現実

双子の妊娠と判明したときの喜びと、同時に訪れる「二人を無事に産んで育てられるだろうか」という不安。母体への負担も大きく、慎重な経過観察が求められる中で、赤ちゃんの健康状態を知るためにNIPT(非侵襲的出生前スクリーニング検査)を受ける方は少なくありません。

しかし、そこで「双子のうち、一人だけがダウン症などの陽性の可能性が高い」と告げられたとき、ご夫婦が受ける衝撃は計り知れません。「なぜうちの子が」「どうして一人だけ」というパニックと深い絶望感に襲われるのは、親として当然の感情です。

💡 医学的解説:双子のNIPTの仕組みと二卵性双生児

双子には、一つの受精卵から分かれる「一卵性双生児」と、別々の卵子と精子が受精する「二卵性双生児」があります。一卵性の場合は基本的に遺伝情報が同じですが、二卵性の場合は遺伝情報が異なります。
そのため、二卵性双生児の妊娠では、片方の赤ちゃんだけが染色体障害を持つケースが医学的に十分に起こり得ます。

また、NIPTの検査手法にも注意が必要です。広く浅く読み取る「ワイドゲノム法」は、胎盤にのみ異常が混ざる胎盤限局性モザイク(CPM)などの影響を受けやすく、7番染色体などで偽陽性(本当は正常なのに陽性と出てしまうこと)が多く、精度に課題があると私は実感しています。そのため当院では、必要な領域に絞って極めて高い精度で検査できる「ターゲット法」や、母体と胎児のDNAを識別できる「SNP法」を用いた検査を重視しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【陽性を告げられた、その瞬間のあなたへ】

「一人は元気です。でも、もう一人は…」この言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になり、涙が止まらなくなるお母様を数え切れないほど診てきました。同時に授かった命だからこそ、喜びと悲しみが引き裂かれるような苦しみがあるのだと思います。

しかし、どうか今はご自身を責めないでください。NIPTはあくまで「陽性の可能性が高い」という非確定検査です。まずは深呼吸をして、本当にそうなのかを確かめるための第一歩(確定検査)を落ち着いて踏み出すことが、何よりも重要です。

2. 【体験談】検査陽性後、双子の中絶を拒否されたご夫婦の苦悩

ここでは、実際に直面したあるご夫婦(Aさん)の過酷なエピソードをご紹介します。Aさんは初めての妊娠で二卵性双生児を授かり、東北地方にある日本医学会の「認証施設(基幹施設)」でNIPTを受検しました。結果は「陽性」。その後の羊水検査により、双子のうち一人がダウン症(トリソミー21)であることが確定しました。

もう一人の赤ちゃんは正常でした。お二人とも産んで育てるか、あるいは疾患を持つ赤ちゃんのみを諦めるか。Aさんご夫婦は血を吐くような思いで悩み抜き、後者の重い決断を下そうとしていました。しかし、そこで遺伝専門医から発せられたのは、信じがたい言葉でした。

「僕はね、中絶はダメなことだと思っているので、この病院では中絶をすることは出来ない」

日本医学会の施設認定基準では、基幹施設は「妊婦の希望による妊娠中断の可否の判断及び処置を自施設において行うことが可能であること」と明確に定められています。それにもかかわらず、担当医は自身の個人的な倫理観を理由に、患者の苦渋の選択を真っ向から否定し、処置を拒否したのです。

これは患者の自己決定権を奪い、精神的に追い詰める「医療者からの価値観の押し付け(パターナリズム)」にほかなりません。結果としてAさんは、涙ながらにインターネットで受け入れ先を必死に探し、300km以上も離れた遠方の病院まで足を運ばざるを得ませんでした。ただでさえ心身が極限状態にある妊婦さんに、これほどの負担を強いる医療の現状は、決して許されるものではありません。

私は約30年の臨床経験のなかで、のべ10万人以上の患者様とそのご家族の「切実な意思決定に伴走」してきました。医療者の役割は裁くことではなく、患者様が悩み抜いて出した結論を100%尊重し、医学的に安全な形でサポートし守り抜くことだと、強く実感しています。

3. 双子の中絶(減胎手術)に伴う母体への影響と倫理的な葛藤

Aさんのように、双子のうち疾患を持つ赤ちゃんだけを中絶し、もう一人の赤ちゃんを無事に出産するために行われる処置を「減胎手術(減数手術)」と呼びます。「もう一人の健康な命をどう守るか」「自分の選択は命の選別にあたるのではないか」と、お母様は言葉にできないほどの倫理的な苦しみを抱えながら、この選択と向き合っています。

💡 用語解説:減胎手術(減数手術)のリスク

減胎手術は、お腹の上から針を刺して特定の胎児の心拍を停止させる高度な医療処置です。決して安全で簡単なものではありません。母体への感染症や出血リスクがあるだけでなく、約5〜10%の確率で、残された健康な赤ちゃんまで流産や早産に至ってしまうという極めて重いリスクが伴います。

「10%」という数字は、単なる統計データではありません。それはお母様の心に、処置後もずっと「もし二人とも失ってしまったら」という強烈な重圧としてのしかかり続けます。

リスクを理解した上で、それでも前に進むためには、ご夫婦の間で何度も話し合い、心の整理を行う必要があります。このプロセスを急ぐと、将来的に深い後悔やトラウマを残す原因となります。だからこそ、私たち専門医は事実を隠さずにお伝えし、悲しみや恐怖をすべて受け止めた上で、最も安全な医療機関への連携など、具体的な解決策を共に探していくのです。

4. 後悔しない決断のために。命と向き合う「遺伝カウンセリング」の役割

「もしあの時、別の選択をしていたら…」
中絶や減胎手術という重い決断を下した方の中には、数年経ってもこの問いに苦しめられる方がいます。急いで出した結論や、誰かに「そうすべきだ」と言われて従った決断は、必ずと言っていいほど後悔に繋がります

だからこそ、命の選択において「遺伝カウンセリング」は極めて重要な役割を果たします。遺伝カウンセリングとは、単にNIPTの検査精度や陽性的中率などの難しい数値を解説する場ではありません。最初はパニック状態で来院されたご夫婦が、現在の経済状況、上の子への影響、周囲のサポート体制など、ご自身たちの生活や価値観を一つひとつ紐解き、涙を流しながらも「自分たちにとって何が最善か」を整理していくプロセスそのものです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【あなたたちの決断に、正解も不正解もありません】

インターネットを開けば、「命の選別だ」「生んでみれば何とかなる」といった無責任な言葉が飛び交っています。しかし、その言葉を発している人は、あなたたちのこれからの人生を代わりに背負ってはくれません。ネット上の匿名の非難に、これ以上傷つく必要はありません。

臨床遺伝専門医として、数多くの命の瀬戸際を見てきた私は断言します。そこにあるのは、ご夫婦がボロボロになるまで苦しみ抜いて、話し合って出し尽くした「答え」だけです。私はその結論を100%尊重し、全力を尽くしてお守りします。

当院では、遺伝カウンセリング料金(33,000円)を検査費用に内包しています。これは、当日の説明だけでなく、結果が陽性だった時や、その後の妊娠中に不安が生じた際にお金を気にせず「何度でも」専門医に相談していただき、ご夫婦が納得のいく答えにたどり着くまでの時間を保証するための配慮です。

5. どんな選択も決して否定しません。専門医が最後まで寄り添うサポート体制

双子のNIPTで陽性結果を受け取った後、最も恐ろしいのは「この先どうすればいいのか分からないまま、医療機関から放置されること」です。一部のクリニックでは、検査結果を通知するだけで「あとは自分で病院を探してください」と突き放されてしまうケースが後を絶ちません。たった一人で、あるいはご夫婦だけでこの重荷を背負い続ける必要はありません。

当院は非認証施設ではありますが、臨床遺伝専門医である院長自身が事前カウンセリングから結果判定、陽性後のメンタルケア、そして確定診断に向けた手配までを一貫して行う、極めて稀有な医療機関です。2025年6月からは、出生前の確定診断である「羊水検査」や「絨毛検査」も当院内で実施可能となりました。これにより、陽性後に他院へ転院して検査を待つという「不安な空白の時間」を最小化し、心細い思いをさせずに確定検査へ進むことができます。

さらに、当院では受検される皆様に「互助会(8,000円)」への加入を必須としてお願いしております。これにより、万が一陽性となり羊水検査が必要になった場合の検査費用は、上限なしで全額補助されます。金銭的な不安を取り除き、安心して次のステップへ進めるようにするためです。

私たちは、お腹の命に対するどのような選択(そのまま出産して育てる決断も、苦渋の末に中絶を選ぶ決断も)も決して否定せず、決して見捨てません。もし、ネット上の溢れる情報に疲れ果ててしまったら、一度ゆっくりとお話を聞かせてくれませんか?外苑前駅から徒歩1分の当院で、あなたの言葉にならない思いをすべて受け止めます。どうか、一人で抱え込まないでください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 双子のNIPTで、片方の赤ちゃんだけが陽性になることはありますか?

はい、特に二卵性双生児の場合は、それぞれの赤ちゃんが異なる遺伝情報を持っているため、片方のみがダウン症などの陽性となるケースがあります。

Q2. 双子でNIPTが陽性だった場合、次にどのような検査が必要ですか?

NIPTは非確定検査であるため、結果を確定させるためには羊水検査が必要です。双子の場合は、どちらの赤ちゃんが陽性なのかを正確に調べるために、それぞれの羊水を採取して検査を行います。

Q3. 双子のうち1人だけダウン症と確定した場合、どのような選択肢がありますか?

お二人ともそのまま出産して育てるという選択のほか、特定の赤ちゃんのみを中絶する「減胎手術(減数手術)」という選択肢があります。ご夫婦にとって何が最善かを、遺伝カウンセリングを通じて見つけていくことが非常に重要です。

Q4. 減胎手術(減数手術)には、どのようなリスクがありますか?

母体への感染症や出血のリスクに加え、もう1人の健康な赤ちゃんが流産・早産となってしまうリスク(約5〜10%と言われています)が伴います。決して安全で簡単な処置ではありません。

Q5. 病院で「うちでは中絶できない」と断られることはあるのでしょうか?

残念ながら、施設や担当医の個人的な倫理観によって、中絶や減胎手術を拒否されるケースは実際に存在します。そのため、検査前から、あらゆる選択を否定せずにサポートしてくれる施設を選ぶことが大切です。

Q6. どうしても迷って決められません。誰に相談すればいいですか?

お一人で抱え込まず、臨床遺伝専門医にご相談ください。当院では、どのような決断を下されても決して否定せず、ご夫婦が後悔しない選択ができるよう、確定検査からその後のケアまで一貫してサポートいたします。

🏥 専門医の遺伝カウンセリングへ

お腹の赤ちゃんのこと、ご家族の未来のこと、一人で悩んでいませんか?
当院は、患者様のどのような決断も否定せず、医学的な正確性と心の安全を最優先にサポートします。

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参考文献

  • [1] ACOG. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities. Practice Bulletin No. 226. [ACOG]
  • [2] ACMG. cfDNA screening(NIPT)に関するガイダンス・立場表明。 [ACMG]
  • [3] ISPD. cfDNA Screening Position Statement. [ISPD]
  • [4] 日本産科婦人科学会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針(改訂)」 [PDF]


プロフィール

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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