InstagramInstagram

結節性硬化症(TSC)をNIPTで調べることはできるのか?


臨床遺伝専門医として多くの患者さんを診てきた経験から、遺伝性疾患の早期発見の重要性を実感しています。特に結節性硬化症のような新生突然変異の多い疾患は、家族歴がないことが多いため見過ごされがちです。ミネルバクリニックでは、信頼性の高い検査技術を用いたNIPT検査で、このような疾患のリスクを早期に発見することができます。検査に不安や疑問をお持ちの方は、ぜひ無料カウンセリングでご相談ください。

無料カウンセリングを予約する

結節性硬化症とは?思いのほか多い神経皮膚症候群

結節性硬化症(Tuberous Sclerosis Complex: TSC)は、皮膚や脳、心臓、腎臓、肺など複数の臓器に良性腫瘍(過誤腫)を形成する遺伝性疾患です。この疾患は、約6,000〜10,000人に1人の割合で発症する比較的頻度の高い神経皮膚症候群として知られています。

TSCの主な症状

  • 皮膚の低色素斑(灰白色斑)
  • 顔面の血管線維腫
  • 脳の皮質結節
  • てんかん発作
  • 知的障害
  • 自閉症スペクトラム障害
  • 心臓の横紋筋腫
  • 腎臓の血管筋脂肪腫

TSCは症状の現れ方や重症度に大きな個人差があり、軽症から重症まで幅広い臨床像を示します。同じ家族内でも症状の程度が異なることも珍しくありません。

TSCと遺伝子変異:新生突然変異が約80%を占める

TSCは、TSC1遺伝子(9番染色体上に位置)またはTSC2遺伝子(16番染色体上に位置)のいずれかの変異によって引き起こされる常染色体優性遺伝性疾患です。これらの遺伝子は、細胞の成長と分裂を調節するmTOR経路に関わるタンパク質をコードしています。

驚くべきことに、TSC患者の約80%は新生突然変異(de novo mutation)によるものです。これは、両親には変異がなく、卵子や精子が形成される過程、または受精直後に変異が生じるケースを指します。言い換えれば、TSCの多くは家族歴がなく、突然生まれてくる子どもに発症する可能性があるということです。

残りの約20%のケースは、親から子へと遺伝するパターンをとります。親がTSCを持っている場合、子どもに遺伝する確率は50%となります。

家族歴がなくても安心できる検査を
結節性硬化症の約80%は新生突然変異によるものです。家族歴がなくても発症リスクがあるTSCを出生前に検査できれば、お子さまの健康管理に大きく役立ちます。ミネルバクリニックでは、最新の検査技術を用いて精度の高い検査を提供し、全国どこからでもオンライン診療に対応、採血はお近くの提携医療機関で受けることも可能です。

出生前診断の新たな可能性:NIPTでTSCを検出できるか?

従来、TSCの診断は主に臨床症状に基づいて行われてきました。しかし、胎児期や出生前に診断できれば、早期からの治療計画や適切な医療体制の準備が可能になります。

NIPTとは?

非侵襲的出生前検査(Non-Invasive Prenatal Testing: NIPT)は、母体の血液中に存在する胎児由来のDNA断片を分析することで、胎児の遺伝的情報を調べる検査方法です。主にダウン症などの染色体異常の検査に用いられていますが、技術の進歩により単一遺伝子疾患の検出も可能になってきています。

ミネルバクリニックでのTSC検査

ミネルバクリニックでは、TSC1遺伝子、TSC2遺伝子の新生突然変異をNIPTで調べることが可能です。この検査により、胎児がTSCを発症するリスクを出生前に評価することができます。

特に、家族歴のないケースでも、新生突然変異によるTSCのリスクを調べられることは大きな意義があります。前述のように、TSCの約80%は新生突然変異によるものであり、家族歴からは予測できないからです。

NIPTによるTSC検査のメリット

  1. 非侵襲的な検査方法: 母体の血液採取のみで行えるため、羊水検査や絨毛検査などの侵襲的な検査に比べてリスクが低い
  2. 早期発見の可能性: 妊娠初期から検査が可能で、早い段階でTSCのリスクを評価できる
  3. 新生突然変異の検出: 家族歴がなくても、新規に発生した変異を検出できる可能性がある
  4. 適切な医療計画: 出生前にTSCのリスクが判明すれば、専門医による適切な出生後の管理体制を整えることができる

TSC診断の重要性と早期介入

TSCは進行性の疾患であり、年齢とともに様々な症状が現れることがあります。早期診断によって以下のようなメリットが期待できます。

  • てんかん発作の早期治療と管理
  • 脳腫瘍の早期発見と適切な観察
  • 腎臓や心臓などの臓器合併症の定期的な評価
  • 自閉症スペクトラム障害の早期発見と療育支援
  • 行動や発達の問題に対する早期介入

結節性硬化症と自閉症スペクトラム障害の関連性

結節性硬化症(TSC)と自閉症スペクトラム障害(ASD)には強い関連性があることが研究によって明らかになっています。TSCを持つ人の約30〜60%が自閉症スペクトラム障害の診断基準を満たすとされ、これは一般人口における自閉症の有病率(約1〜2%)と比較して著しく高い割合です。報告により幅はありますが、非常に高い頻度で自閉症がみられます。

TSCにおける自閉症のリスク因子

特に以下の要素がTSC患者における自閉症発症の主要なリスク因子として報告されています。

  • てんかん性スパズム(infantile spasms)の既往 – 乳幼児期の難治性てんかん(特にウエスト症候群)は、発達障害や自閉傾向のリスクを高めます
  • 側頭葉に位置する皮質結節の存在
  • TSC2遺伝子変異(TSC1と比較してTSC2変異の方が神経学的症状が重度になる傾向)
  • 早期の発達遅延の存在
  • 脳の構造異常 – 脳皮質結節や白質病変などが神経ネットワーク形成に影響を及ぼし、社会的認知やコミュニケーションの障害につながります

発症のメカニズム

mTORシグナル異常

TSC1/TSC2変異によりmTOR経路が過剰に活性化し、神経細胞の成長・分化・シナプス形成に異常が起こります。これは自閉症の病態と一致しています。脳内のmTOR経路の過剰活性化は、TSCの特徴であるてんかん発作と皮質結節形成の原因となるだけでなく、脳の神経ネットワークの発達に影響を及ぼし、自閉症様行動や社会的コミュニケーションの困難さを引き起こす可能性があります。

遺伝的・神経生物学的な視点

TSCはモノジェニック(単一遺伝子)疾患による自閉症の代表例です。より広く、mTOR経路関連遺伝子(PTEN, FMR1など)の異常は「mTORopathy(mTOR病)」として、自閉症を伴う神経発達障害の新しい分類として注目されています。この視点は、TSCだけでなく関連する神経発達障害の理解と治療アプローチに重要な示唆を与えています。

早期発見・早期介入の重要性:臨床的インプリケーション

TSCの早期診断は、関連する自閉症スペクトラム障害の早期発見と適切な介入にもつながります。具体的には

  • TSCが診断された乳児では、早期に自閉症のリスクを評価する必要があります
  • 乳児期からのてんかんコントロールや早期療育介入によって、発達アウトカムの改善が期待されます
  • TSC関連ASDは薬剤治療(mTOR阻害薬など)の研究が進められています
  • 生後2年以内に自閉症の早期介入を開始した場合、社会的スキルや言語能力の発達に大きな効果が期待できるとされています

近年の研究では、TSC診断後の包括的な早期介入プログラムによって、自閉症症状の重症度を軽減できる可能性が示唆されています。

TSCにおける新生突然変異と親のモザイク状態について

TSCの大部分は新生突然変異によるものですが、興味深いことに、臨床症状がない親が「モザイク状態」でTSC遺伝子変異を持っているケースも報告されています。

親のモザイク状態とは?

モザイク状態とは、体の一部の細胞だけが遺伝子変異を持っている状態を指します。親の体の細胞の一部だけがTSC1またはTSC2の変異を持っている場合、臨床症状がなくても、その変異が子どもに伝わることがあります。

特に、生殖細胞(卵子や精子)を作る細胞に変異がある場合、子どもにその変異が継承される可能性があります。

このような親のモザイク状態は、従来の検査では検出が難しいことがありますが、高感度なNIPT検査によって発見される可能性があります。

院長アイコン

臨床遺伝専門医として多くの患者さんを診てきた経験から、遺伝性疾患の早期発見の重要性を実感しています。特に結節性硬化症のような新生突然変異の多い疾患は、家族歴がないことが多いため見過ごされがちです。ミネルバクリニックでは、信頼性の高い検査技術を用いたNIPT検査で、このような疾患のリスクを早期に発見することができます。検査に不安や疑問をお持ちの方は、ぜひ無料カウンセリングでご相談ください。

無料カウンセリングを予約する

確定診断のための次のステップ

NIPTでTSCのリスクが示唆された場合、確定診断のためには次のようなステップが考えられます。

  1. 遺伝カウンセリング: 専門の遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医による相談
  2. 確定検査の検討: 羊水検査や絨毛検査などの侵襲的検査による確定診断
  3. 妊娠中のフォローアップ: 超音波検査などによる胎児の発達の慎重な経過観察
  4. 出生後の管理計画: 早期介入と適切な医療ケアの準備

ミネルバクリニックでは、NIPT検査が陽性の場合、必ず臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを提供しています。 検査結果の意味、今後の選択肢、お子さんのケアについて専門的な視点からサポートいたします。

まとめ:TSCの早期発見がもたらす希望

結節性硬化症(TSC)は決して珍しい疾患ではなく、約6,000〜10,000人に1人の割合で発生しています。その約80%は新生突然変異によるもので、家族歴からは予測できません。

ミネルバクリニックで提供されているNIPTによるTSC1遺伝子、TSC2遺伝子の検査は、この重要な遺伝性疾患の早期発見に貢献する可能性があります。出生前診断によって、お子さんの将来的な健康管理計画を早期から策定することができ、より良い予後につながる可能性があります。

検査をご検討の方へのメッセージ

TSCに関する正確な情報と適切な診断は、患者さんとご家族の生活の質向上に大きく貢献します。妊娠中の遺伝カウンセリングや出生前検査について、専門医にご相談されることをお勧めします。

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医の院長が直接あなたの不安や疑問に寄り添い、最善の選択をサポートいたします。

ミネルバクリニックのNIPT検査
ミネルバクリニックでは、国内外で注目されている新しい遺伝子検査技術を採用し、結節性硬化症(TSC)を含む多様な遺伝性疾患のリスクを高精度に検出するNIPT検査を提供しています。臨床遺伝専門医である院長による丁寧な説明と検査後のフォローアップで、あなたの妊娠生活を安心してサポートします。全国どこからでもオンライン診療で対応可能です。

参考文献

  1. Curatolo P, Bombardieri R, Jozwiak S. Tuberous sclerosis. Lancet 2008; 372:657.
  2. Northrup H, Koenig MK, Pearson DA, Au KS. Tuberous sclerosis complex. In: GeneReviews [Internet], University of Washington, Seattle.
  3. Tyburczy ME, Dies KA, Glass J, et al. Mosaic and Intronic Mutations in TSC1/TSC2 Explain the Majority of TSC Patients with No Mutation Identified by Conventional Testing. PLoS Genet 2015.
  4. Peron A, Au KS, Northrup H. Genetics, genomics, and genotype-phenotype correlations of TSC: Insights for clinical practice. Am J Med Genet C Semin Med Genet 2018.
  5. Verhoef S, Bakker L, Tempelaars AM, et al. High rate of mosaicism in tuberous sclerosis complex. Am J Hum Genet 1999; 64:1632.
プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事