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ソトス症候群とは

ソトス症候群は、比較的頻度の高い先天性異常とされていますが、インターネットを検索してみても専門用語が多く難しかったり、情報が少なかったりして、思うような知識が得られない方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、ソトス症候群とはどのような疾患なのか、症状や原因、治療法について解説しています。

ソトス症候群とは

ソトス症候群とは、先天性の染色体異常のひとつです。ソトス症候群も他の染色体異常と同じく、赤ちゃんの遺伝子に何らかのトラブルが起きることで、身体の形や機能にさまざまな特徴や合併症を持って生まれてくる疾患です。
詳しい疾患内容については次章で解説するため、ここではソトス症候群の代表的な特徴や原因について触れていきます。

ソトス症候群とは?

ソトス症候群は1〜2万人に1人の頻度で起こり、男女での頻度の差はなく、国内で報告されているのは800例ほどです。日本では2015年にソトス症候群が難病指定となり、国からの医療助成を受けられるようになりました。(*1)ソトス症候群は、個人差が大きい疾患ではありますが、ほとんどの赤ちゃんが持っているとされる特徴には、以下のようなものがあります。

*1参照:ソトス症候群(指定難病194)| 難病情報センター 

■ソトス症候群の赤ちゃんの主な特徴
・頭部の先端が尖って大きくなる
・出生前~小児期における骨格の過成長
・脳の異常や発達障害

また、たれ目やシャープな顎などもソトス症候群に見られる特有の顔つきです。通常の子と変わらない教育を受けることができるケースから、生涯に渡って手厚いサポートを受けなければならないケースまで、疾患の重さに振り幅があります。他にもさまざまな合併症を持って生まれるケースが多いものの、近年ではソトス症候群の研究や医療技術の発展の成果もあり、60歳を過ぎてご健在という方もいます。

ソトス症候群が引き起こされる原因

ソトス症候群の原因の95%以上は、受精前の卵子または精子の突然変異によるものと考えられています。具体的には、卵子または精子にトラブルが生じ、赤ちゃんの5番染色体の5p35という部分の“NSD1”という遺伝子に異常が起こることで引き起こされます。

一部ではNSD1遺伝子に問題は見つからないのにソトス症候群のような症状を持つ方もいらっしゃいますが、遺伝子検査で問題が確認できない場合でも、医学的な基準を満たせばソトス症候群と診断される例もあります。
また、NSD1遺伝子の異常にもいくつかのタイプがあり、症状の出方に差があることが報告されています。

■ソトス症候群のタイプ

タイプ NSD1遺伝子 特徴
欠失型タイプ NSD1遺伝子が含まれる部分の染色体が欠失 ・日本人に多く、全体の50%を占める
・精神遅滞、心臓や腎臓奇形がよく見られる
変異型タイプ NSD1遺伝子の一部が変異 ・症状が軽い例がしばしば見られる(個人差あり)・過成長がよく見られる
異常なしタイプ NSD1遺伝子に異常が見られない 特徴的な外見や発達遅滞などの臨床的知見で判断

ソトス症候群で引き起こされる疾患は?

ソトス症候群は特有の外見や発達遅滞以外にも、さまざまな症状や合併症が疾患として挙げられます。症状の種類や度合いの個人差が非常に大きな疾患ではありますが、ここではソトス症候群で引き起こされる疾患にはどのようなものがあるのか、解説していきます。

ソトス症候群の患者にみられる疾患

ソトス症候群に見られる疾患は「主要な疾患」と「合併症としての疾患」の2つに分けることができます。特に合併症は疾患の出方に個人差が大きく、発生頻度も非常に幅広いものです。

①主要な疾患(90%以上)

・特徴的な外見
先端が尖った大きな頭、タレ目、大きな耳、シャープな顎など。尖った頭は年齢とともに目立たなくなることもある。
・体格の過成長
幼少期から幼児期にかけて身長が急激に伸びる。ただし、身長の伸びは次第に緩やかになり、最終身長が過剰にならないこともある。骨年齢や高齢になりやすい。
・発達遅滞
身体の機能を上手くコントロールできないことが多く、独歩や発語の遅れが目立つ。IQは21〜103と多様なものの、多くのケースで発達障害や知的障害がみられる。

②合併症としての疾患(種類や頻度は非常に幅広い)

・心臓、腎臓、脳などの奇形
・尿路異常
・脊椎側弯症
・けいれん、てんかん
・耳、眼、歯の異常
・悪性腫瘍

ソトス症候群と悪性腫瘍

ソトス症候群では、小児期に悪性腫瘍が発生しやすくなることが報告されています。これは、ソトス症候群の症状のひとつである過成長が腫瘍の発生に影響していると考えられています。

■ソトス症候群と悪性腫瘍の研究報告
・Maldonadoら(1984)によるSotos症候群における悪性腫瘍の関連報告
・Nanceら(1990)によるSotos症候群および傍脊髄神経芽腫の15ヵ月齢の小児の記述
・Gorlinら(1990)がSotos症候群における良性または悪性腫瘍のリスクを3.9%と推定
・Le Marecら(1999)がSotos症候群の一卵性双生児の悪性腫瘍と遺伝的要因を示唆
・Leonardら(2000)による良性仙尾骨奇形腫を有するSotos症候群の小児2例を報告

ソトス症候群とウィーバー症候群のちがい

ソトス症候群と症状が似ているものにウィーバー症候群がありますが、両者は全く異なる疾患です。類似部分が多いために、混同されてしまうこともしばしばあるため、ここではウィーバー症候群とはどのような疾患なのか、両者の違いを説明します。

ウィーバー症候群とは?

ウィーバー症候群もソトス症候群と同じく染色体異常のひとつですが、ソトス症候群とは原因となる染色体部分が異なり、症状にもいくつかの違いがあります。以下にウィーバー症候群の特徴をまとめています。

■ウィーバー症候群の特徴

原因となる遺伝子 7番染色体の7q36に存在するEZH2遺伝子の変異
主要な症状 ・特徴的な外見
・過成長
・軽度~中度の発達遅滞
特有の症状 ・短く大きな頭
・屈指症
・関節拘縮(関節が固まること)
・やわらかい皮膚
・臍ヘルニア
・かすれた低い泣き声
・細くて粗めの髪
患者数 100人未満

ウィーバー症候群とソトス症候群がよく似ている点は、過成長や発達遅滞などですが、合併症についても類似している疾患が多々見られます。

主な合併症

ウィーバー症候群に起こる合併症には次のようなものがあります。

・心疾患
・口蓋裂(口の中の天井部分の形態異常)
・外耳道閉鎖
・軸後性多指症(指の形態異常)
・頸椎不安定、側弯
・けいれん
・小脳萎縮

どの合併症を持つのか、またその度合いにも個人差があります。

治療法

根本的な治療方法はないため、症状に合わせた対症療法を行います。

■ウィーバー症候群の治療方法例

屈指症、関節拘縮、側弯 整形外科による手術やリハビリなどを行う
心臓、脳、耳などの奇形 経過を観察し、必要に応じて薬物療法や手術を行う
てんかん 抗てんかん薬の処方
発達遅滞 必要に応じて理学療法、作業療法、言語療法などを行う

ウィーバー症候群は、50%の確率で親から子が同様の疾患を発症することが認められています。治療と並行して遺伝カウンセリングを行うなどし、疾患への理解を深めてもらうといったサポートも必要となるでしょう。

ソトス症候群との診断の分け方

ソトス症候群とウィーバー症候群は似ている部分が多い疾患ではありますが、次のような部分で診断が分けられています。

問題のある遺伝子の違い ソトスはNDS1遺伝子、ウィーバーはEZH2遺伝子
頭の形の違い ソトスは先端が尖った大きな頭、ウィーバーは短く大きな頭
歯の違い ソトスは歯が成熟しているが、ウィーバーでは見られない
その他の違い ウィーバーは低い泣き声、屈指症、関節拘縮がみられる

基本的には分子遺伝学検査によって診断されますが、稀に遺伝子異常が見られない場合もあるため、その場合は定められた臨床所見基準を元に診断されます。

ソトス症候群と遺伝

これまで報告されているソトス症候群のほとんどは孤発性(散発的に起こるもの)であるため、ソトス症候群は突然変異によって起こるのではないかと考えられています。そのため、親がソトス症候群でない場合、次の子どもがソトス症候群を持っているケースはほとんどありません。(一卵性双生児の場合は例外)
では、ソトス症候群患者の子孫に影響がでるというようなことはあるのでしょうか?

ソトス症候群は遺伝するのか?

ソトス症候群の遺伝子を持っている人が子どもをもうける場合、子どもにソトス症候群の遺伝子が受け継がれる可能性は50%といわれています。これは、ソトス症候群が常染色体優性遺伝(*2)を持つためです。

*2常染色体優性遺伝:両親から引き継いだ2つの常染色体の遺伝子のうち、どちらかに異常があれば、子どもに引き継がれてしまう遺伝のこと

ソトス症候群の治療法

ソトス症候群も他の染色体異常と同様に、根本的な治療法が確立されていません。そのため、発現した症状に合わせた対症療法を進めていくというのが一般的です。
ここでは、実際に行われるソトス症候群の治療方法について解説します。

ソトス症候群にはどのような治療が行われる?

ソトス症候群は出現する症状の種類や度合いの個人差が大きい疾患のため、どのような治療をどれくらい行うかはケースバイケースです。その中でも、ソトス症候群の方によく用いられる治療方法には次のようなものがあります。

■ソトス症候群の治療方法例

心臓、腎臓などの奇形 経過を観察し、必要に応じて薬物療法や手術を行う
てんかん 抗てんかん薬が処方される
発達遅滞 必要に応じて理学療法、作業療法、言語療法などが行われる
歯の異常 歯科による治療が行われるが患者の協力が得難いケースが多く、しばしば全身麻酔が用いられる

染色体異常を調べるなら出生前診断を

生まれてくる赤ちゃんにソトス症候群などの染色体異常がないかを調べる方法には、出生前診断というものがあります。染色体異常は、カップルのどちらかに先天性疾患を持つ場合、家族に染色体異常を持つ方がいる場合、高齢出産時に起こりやすくなるとされています。
また、何らかの理由で突発的に起こる染色体異常というものもあります。
すべての先天性異常を完璧に見つけることは難しいものの、不安要素を少しでも取り除くため、適切な準備を整えて赤ちゃんを迎えるために、出生前診断を選択するという方法もあります。

染色体異常に由来する先天性疾患の検査はNIPTがおすすめ

出生前診断にはいくつか種類がありますが、中でもおすすめなのがNIPT です。
NIPT は母体の血液のみで赤ちゃんの染色体異常の有無を調べることができ安全性が高く、他の非確定検査と比較しても非常に精度が高い検査です。

■非確定検査の精度(35歳の妊婦さんの場合)

陽性的中率 陰性的中率(*3)
NIPT 93.58%(21トリソミー)
77.92%(18トリソミー)
43.23%(13トリソミー)
99.9%
コンバインド検査 4.9%(21トリソミー・18トリソミー・開放性神経管奇形) 99.9%
母子血清検査 3.20%(21トリソミー・18トリソミー・開放性神経管奇形) 99.9%

*3:陽性的中率…陽性と判定されて本当に陽性である確率のこと

NIPT(新型出生前診断)とは?

NIPT は母体の血液中から胎児のDNAを検出し、染色体異常の有無を調べることができる検査です。妊娠9〜10週目以降と早期から受けられ、結果までの日数は10日程度です。
加えて、NIPTは非常に高い精度を誇り、陰性的中率については99.9%であることから、NIPTを出生前診断の第一選択とする妊婦さんも増えてきています。
ただし、あくまでも非確定検査のため偽陰性や偽陽性の可能性が稀にあります。もし陽性判定が出た場合には、羊水検査や絨毛検査といった確定検査を受けないと、断定的な診断ができない点には注意が必要です。
NIPTの費用は調べる病気の内容や施設によって差がありますが、およそ15〜20万円程度です。

NIPTを受けるならミネルバクリニックで

東京のミネルバクリニックは、臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設です。染色体異常やNIPTに関する深い知見を持ち合わせた遺伝カウンセリングを受けていただけるのはもちろんのこと、NIPT検査は業界随一の対象疾患の広さと技術を誇っています。
また、ミネルバクリニックでは患者さんの負担が少しでも軽減されるよう、次のような取り組みを行っております。

■ミネルバクリニックの取り組み

・妊娠6週目からの検査
・再検査時の追加料金なし
・羊水検査の費用を全額負担(8,000円の互助会への入会が条件)
・羊水検査を受ける病院をご紹介
・24時間つながる電話相談窓口の開設

また、院長自身も3児の母です。医学的な関りだけでないところでも、患者さんの気持ちに寄り添い、協力できることがあるのではないかと考えております。

まとめ

ソトス症候群は5番染色体の異常で起こる先天性の疾患で、1〜2万人の頻度で発生するとされています。主な症状としては、大頭症や過成長、発達遅滞などが挙げられますが、さまざまな合併症を持って生まれることも少なくありません。 症状の出方や度合いは個人差があるのも特徴のひとつです。
根本的な治療方法はないため、症状に合わせた対症療法や支援を行っていく形がとられます。

赤ちゃんが生まれる前にソトス症候群かどうかを調べる方法のひとつに新型出生前診断(NIPT検査)というものがあります。
NIPTは母体の採血だけで赤ちゃんの染色体異常の可能性を調べることができるため安全性が高く、その精度の高さにも定評があります。

NIPT検査を行う病院は全国に多数ありますが、当院ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを実施しており、疾患対象の広さも業界随一を誇っております。今まで数多くの妊婦さんの不安に寄り添い、妊娠、出産を導いてきました。
遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングやNIPTを提供しておりますので、安心してご相談ください。

この記事の著者:仲田洋美(医師)

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ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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