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NIPTを無認可Aで採血だけで受けてT21陽性中絶のトラウマ

Aさん30代。初めての妊娠。広告で見た無認可AでNIPT(新型出生前診断)を受けて結果は陽性。羊水検査施設を自分で探して駆け込み、最終的に中絶。それ以来妊娠はトラウマになりました。

寝ててもいいですか?

患者さんはわたしが行くと、ちからなくベッドに横たわっていました。
具合が悪そうです。

どうぞ、説明も横になって聞いていいですよ、お気遣いなく。

そう言って問診票をみたところ。

無認可(ちなみにうちも当然無認可ですが)Aクリニックで数か月前に受けて陽性になり、羊水検査をして陽性確定し、中絶した経験をお持ちでした。

前回妊娠の経緯

初めての妊娠

初めての妊娠は本当に言葉にできないくらい嬉しくて幸せなものですよね。
Aさんもそういう幸せをただただかみしめていました。

新型出生前診断(NIPT)

Aさんは35歳未満です。
それでも、やっぱり子供の健康状態は自分たちの一生を左右するからと出生前診断を受けることにしました。
この時点ではよくあることですが、陽性になるなんて考えたこともありませんでした。
自分は大丈夫、という根拠のない自信に満ち溢れていました。
だから、広告ででてきたAクリニックにしました。
どこで受けても同じかな、採血するだけだから、って思ったそうです。

しばらくして受け取った結果は陽性。
しかし、検査をしたクリニックに問い合わせすらできないし、出来たとしても専門外なので結局何のサポートも受けられません。
インターネットで調べたら、羊水検査を受けないといけないことはわかりました。
そのとき、詳しく解説してあるミネルバクリニックのHPを参考にしてくれたそうです。

羊水検査

ショックを受け、途方に暮れながら、病院なびなどで羊水検査を可能な施設を一生懸命探しました。
家からは少し遠い医療機関なのですが、なんとか行けるところを自力で見つけていきました。

羊水検査は16週からなので、NIPTの結果が出た12週からは1か月くらいあります。
そして、羊水検査の結果は、ターゲットが決まっているのでFISH法で大体1週間以内に出ます。
ミネルバクリニックでは、陽性になった方には、羊水検査の際は必ずFISH法を追加するようにお願いしてと患者さんにお伝えしています。産婦人科の先生の中にはそういう細胞遺伝学的検査の方法について知らないひともいるからです。

Aさんの行ったクリニックの先生は、やはりFISHをご存じなかったようで、普通に染色体検査をしました。
普通の染色体検査の結果は3週間くらいかかります。
結果は陽性。確定しました。

妊娠中絶

結局、Aさんは20週になり、中絶しました。
20週の妊娠中絶は出産と変わりません。
前の日から入院し、子宮口を拡げて、翌日出産というのが一般的です。

産婦人科病棟には当然、普通に出産する人たちがたくさんいて、赤ちゃんのなきごえも響きます。
幸せそうな母子たち。

それに引き換え自分の境遇を思うと涙が止まらず。
忙しそうな医師や看護師助産師に自分の思いを伝えることができず、何のケアもサポートも受けることなく退院しました。

トラウマ

そして、Aさんにとっては妊娠が本当にただただ 怖いもの になってしまったのです。

そんななか、2回目の妊娠。
全く嬉しくありませんでした。
またあんな目に合うのかと怖くて体が震えました。

2度目のNIPT

でも。初めての妊娠でトリソミーのお子さんを妊娠したAさんは、35歳以上でなくてももともとNIPTを受けたほうがいい人に当てはまっています。
1度あることは2度ある。
AさんにとってNIPTを受けないという選択肢はなかったそうです。
2回目は絶対ミネルバクリニックに行こうと思っていました。
だから、ミネルバクリニックに来たのですが、説明をちゃんと受けられるのはともかく、やはり怖くて仕方がないので体がふるえて気分が悪くなり、ベッドで横になっていたんです。
私は最初、悪阻がひどくて横になっているのかとおもっていたんですが、そうじゃなかったのでびっくりしました。
今まで何人か、説明を受けずにNIPTを受けてトラウマになった人が来たのですが、本当にかわいそうです。

わたしは言いました。

その赤ちゃんは、あなた方夫婦に命の大切さを教えてくれるために来たんです。
短い命でも役割があるんですよ。
50年前はダウン症候群(21トリソミー)の平均寿命は2歳でした。今は60歳になっています。
社会がなかなか障害のある方々が安心して暮らせるようになっていないので、障害児を置いて死ねないという考えのご両親ならば、100歳近くまで働いて稼いで養わないといけないことになります。
これがダウン症候群(21トリソミー)の出生環境を悪くしている原因となっています。
それは、妊婦さんたちの選択が悪いということを意味しません。
お子さんを産んだら産んだ人の一方的な責任になる中、中絶する人を責めるのは間違っていると思います。
あなたは間違っていません。
ただ、一つだけ約束してください。
そのお子さんがいたことを忘れないでいてあげてください。
それだけでいいんですよ。
神様は耐えられない試練は与えないそうです。
今度はきっと大丈夫ですよ。

そして彼女は検査を受けて帰りました。

2回目のNIPTの結果

彼女の人生2回目のNIPTの結果は、陰性でした。

うちは、異常ならば異常なところを赤で記載しているのですぐわかりますよと伝えています。
なので、赤い字がなかったら落ち着いて読んでいいよってことです。

落ち着いて、きっとしばらくすると無事にうまれることでしょう。

今回の症例で考えたこと

NIPTはやはり事前の説明と、事後のケアが非常に大切だと改めて思いました。
皆さんのお役に立てるよう、日々精進しようと思います。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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