目次
カリオセブン症例集・CNV異常
母体由来CNVによる偽陽性を臨床遺伝専門医が解説
Q. NIPTでCNV陽性だったのに、赤ちゃんは正常だった?
A. はい、母体自身がCNVを持っている場合、NIPTで偽陽性になることがあります。
本記事で紹介する症例(検査会社パンフレットより)では、カリオセブンでCNV(コピー数変異)が検出されましたが、母体アレイCGH検査で母体由来と判明し、偽陽性と確定しました。
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症例の結論 → カリオセブンでCNV陽性 → 母体由来と判明 → 偽陽性確定 -
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偽陽性の原因 → cfDNAの約90%は母体由来 → 母体CNVが胎児異常と誤検出される -
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鑑別方法 → 母体アレイCGH検査で母体由来か胎児由来かを鑑別可能 -
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臨床的意義 → 臨床遺伝専門医による適切な結果解釈が不可欠
1. カリオセブンとは?全染色体のCNVを検出する最先端NIPT
【結論】 カリオセブンは、現在最も技術的に進歩した全ゲノムNIPTです。全染色体の全領域で7Mb以上のCNV(欠失・重複)を検出でき、従来のNIPTでは見つからなかった異常も発見できます。
カリオセブンは、母体血漿から検出されるセルフリー胎児DNA(cfDNA)を分析し、染色体の異数性(トリソミーなど)だけでなく、染色体構造異常(7Mbの大きさの欠失または重複)を全染色体の全領域において検出します。

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全染色体対応:1〜22番染色体+性染色体すべての領域を検査
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高解像度:7Mb以上のCNV(コピー数変異)を検出可能
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微細欠失症候群:日本最多の9疾患を検出
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検査方法:採血のみ(侵襲なし、流産リスクなし)
従来のNIPTとカリオセブンの違い
| 項目 | 従来のNIPT | カリオセブン |
|---|---|---|
| 対象染色体 | 13, 18, 21番+性染色体 | 全染色体(1〜22番+性染色体) |
| CNV検出 | なし or 限定的 | 7Mb以上を全領域で検出 |
| 微細欠失症候群 | 0〜5疾患 | 9疾患(日本最多) |
| 検出できる異常 | 主にトリソミー | トリソミー+部分欠失・重複 |
2. CNV(コピー数変異)とは?
【結論】 CNV(Copy Number Variation:コピー数変異)とは、染色体の一部が欠失(なくなる)または重複(増える)している状態です。これは健康な人にも存在することがあり、すべてが病的とは限りません。
CNVは「染色体の量」の異常です。通常、染色体の各領域は2コピー(父由来1つ+母由来1つ)存在しますが、CNVがあると1コピー(欠失)や3コピー以上(重複)になります。
欠失(Deletion)
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染色体の一部が失われている
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コピー数が2→1に減少
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重複(Duplication)
- •
染色体の一部が増えている
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コピー数が2→3以上に増加
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例:微小重複症候群
⚠️ 重要なポイント:CNVには病的CNV(疾患を引き起こす)と良性CNV(健康な人にも存在する正常変異)があります。NIPTでCNVが検出された場合、それが病的か良性か、そして胎児由来か母体由来かを判断することが重要です。
3. 症例解説:母体CNVによる偽陽性(検査会社パンフレットより)
【結論】 本症例は検査会社のパンフレットに掲載された実例です。カリオセブンで21番染色体にCNV陽性の結果が出ましたが、母体アレイCGH検査により母体自身がこのCNVを持っていたことが判明。胎児ではなく母体のCNVを検出していた偽陽性でした。
症例の経過
以下の画像は、検査会社が提供しているパンフレットに掲載された症例です。NIPTの偽陽性原因として「母体CNV」が実在することを示す貴重な実例として紹介します。

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①
カリオセブン(マルチNIPT karyo7)検査実施
母体血漿中のcfDNAを解析 -
②
結果:21番染色体にCNV(重複)陽性
通常であれば胎児の染色体異常が疑われる所見 -
③
母体アレイCGH検査を実施
母体自身の染色体を詳細に解析→同じ領域にCNVを確認 -
④
結論:母体由来CNV → 偽陽性と確定
胎児は正常。不要な羊水検査を回避できた
この症例から学べること
💡 臨床的に重要なポイント
- •
NIPTでCNV陽性 ≠ 必ず胎児異常
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母体由来CNVが偽陽性の原因になることがある
- •
母体アレイCGH検査で母体由来か胎児由来かを鑑別できる
- •
臨床遺伝専門医による適切な結果解釈が不可欠
4. なぜ母体CNVで偽陽性が起きるのか?メカニズムを解説
【結論】 NIPTで分析するcfDNA(セルフリーDNA)の約90%は母体由来です。そのため、母体自身がCNVを持っていると、胎児の異常と誤って検出されることがあります。
cfDNAの構成
NIPTは母体血液中に浮遊するcfDNA(cell-free DNA:細胞外DNA)を分析する検査です。このcfDNAには以下の2つの成分が含まれています。
約90%
母体由来cfDNA
母体の細胞から放出
約10%
胎児由来cfDNA
胎盤から放出(胎児分画)
偽陽性・偽陰性のメカニズム
母体CNVがNIPT結果に影響を与えるパターンは、以下の図のように整理されます。この図も検査会社パンフレットに掲載されている科学的根拠に基づいた説明です。
| 胎児の状態 | 母体CNV | NIPT結果 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 正常(2倍体) | なし | 陰性 | 真陰性 ✓ |
| トリソミー | なし | 陽性 | 真陽性 ✓ |
| 正常(2倍体) | 重複あり | 陽性 | 偽陽性 ✗ (本症例) |
| トリソミー | 欠失あり | 陰性 | 偽陰性 ✗ |
🩺 院長コラム【この症例が教えてくれること】
この検査会社パンフレットの症例は、NIPTの偽陽性原因として「母体CNV」が実在することを証明した貴重な実例です。cfDNAの約90%は母体由来ですから、母体が持つCNV(特に重複)があると、それが胎児の異常と誤認される可能性があります。
逆に、母体に欠失があると、本当は胎児がトリソミーでも「正常」と出てしまう偽陰性のリスクもあります。だからこそ、CNV陽性の場合は母体由来かどうかの鑑別が重要なのです。
多くのNIPT施設では「陽性なら羊水検査へ」と機械的に対応しますが、臨床遺伝専門医であれば、このような偽陽性の可能性を考慮した適切な対応ができます。
5. CNV陽性時の適切な対応とは
【結論】 カリオセブンでCNV陽性が出た場合、すぐに羊水検査へ進むのではなく、まず母体由来か胎児由来かを鑑別することが重要です。本症例のように母体由来と判明すれば、不要な羊水検査を回避できます。
アレイCGHとは?
アレイCGH(Comparative Genomic Hybridization:比較ゲノムハイブリダイゼーション)は、染色体全体のコピー数変化を高解像度で検出できる検査法です。NIPTよりもはるかに詳細にCNVを分析できます。
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①
カリオセブンでCNV陽性の結果が出る
-
②
母体アレイCGH検査を実施(母体血液から)
-
③
母体にも同じCNVがあるか確認
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④-A
母体にCNVあり → 偽陽性の可能性高い → 羊水検査不要の場合も
-
④-B
母体にCNVなし → 胎児由来の可能性 → 羊水検査で確定診断
この対応のメリット
✓ 不要な羊水検査を回避
母体由来CNVとわかれば、胎児は正常の可能性が高く、侵襲的な羊水検査を避けられる場合があります。
✓ 心理的負担の軽減
「陽性」と言われた不安を、科学的根拠に基づいて解消できます。
✓ 適切な次のステップ
真の陽性の場合は、速やかに確定検査へ進むことができます。
6. 臨床遺伝専門医がいる意味
【結論】 多くのNIPT施設では「陽性なら羊水検査」と機械的に対応しますが、臨床遺伝専門医がいる施設では、結果の背景を分析し、適切な次のステップを提案できます。
| 項目 | 一般的なNIPT施設 | 臨床遺伝専門医のいる施設 |
|---|---|---|
| 結果説明 | 「陽性/陰性」のみ | 臨床的意義まで詳しく解説 |
| CNV陽性時の対応 | 「羊水検査へ」と紹介 | 偽陽性の可能性を考慮した対応 |
| 偽陽性への対応 | 不要な羊水検査の可能性 | 適切に回避できる場合も |
| 遺伝カウンセリング | なし or 形式的 | 専門医による丁寧な説明 |
⚠️ NIPTは「検査」だけでなく「解釈」が重要
NIPTの結果は単なる「陽性/陰性」ではありません。偽陽性の可能性、母体要因、胎盤性モザイクなど、様々な要因を考慮した解釈が必要です。臨床遺伝専門医は、これらを総合的に判断し、患者さんにとって最善の選択肢を提案できます。
ミネルバクリニックのサポート体制
🏥 院内で確定検査まで対応
2025年6月より産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査も院内で実施可能に。
💰 互助会で費用面も安心
互助会(8,000円)に加入いただくと、陽性時の確定検査費用を全額カバー。
よくある質問(FAQ)
参考文献
- [1] Snyder MW, et al. Copy-Number Variation and False Positive Prenatal Aneuploidy Screening Results. N Engl J Med. 2015;372(17):1639-1645. [PubMed]
- [2] Bianchi DW, et al. DNA sequencing versus standard prenatal aneuploidy screening. N Engl J Med. 2014;370(9):799-808. [PubMed]
- [3] Hartwig TS, et al. Discordant non-invasive prenatal testing (NIPT) – a systematic review. Prenat Diagn. 2017;37(6):527-539. [PubMed]
- [4] Gregg AR, et al. Noninvasive prenatal screening for fetal aneuploidy, 2016 update: a position statement of the American College of Medical Genetics and Genomics. Genet Med. 2016;18(10):1056-1065. [PubMed]
- [5] Yin AH, et al. Noninvasive detection of fetal subchromosomal abnormalities by semiconductor sequencing of maternal plasma DNA. Proc Natl Acad Sci USA. 2015;112(47):14670-14675. [PubMed]
- [6] American College of Obstetricians and Gynecologists. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol. 2020;136(4):e48-e69. [PubMed]
- [7] International Society for Prenatal Diagnosis. Position Statement on cfDNA Screening. [ISPD]


