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ダウン症の子どもの合併症や成長発達は?ダウン症児との接し方と社会的支援をご紹介!

NIPT診断を受けて、ダウン症(21トリソミー)の陽性が出た場合、気になるのは出産後の赤ちゃんとの生活でしょう。ダウン症の子どもとどのように関わればよいのか、ダウン症児が成長していくための社会的サポートは整っているのかどうか気になることは多いはずです。
今回は、ダウン症の赤ちゃんとともに生活するにあたって知っておきたい、ダウン症の合併症や成長発達から、上手な関わり方と社会のサポート体制をご紹介します。

ダウン症とは?軽度・重度のちがいを紹介

まずはダウン症の特徴や原因、軽度・重度のちがいをご紹介します。

ダウン症とは

ダウン症(ダウン症候群)とは、22本の染色体が1本多いことによって起きる先天性異常疾患です。21トリソミーともいわれており、知的障害や身体的な異常が見られます。600〜800人に1人の割合で出生するといわれ、ダウン症特有の共通した特徴があります。
顔の特徴は以下のとおりです。

●頭…やや小さめで絶壁
●目…少し離れていて、ややつりあがっている・斜視
●鼻…小さくて低い
●舌…大きめ
●耳…少し低めの位置

その他の特徴として、筋肉の緊張が低く筋力が弱いことや、合併症を引き起こしやすいことが挙げられます。【ダウン症の合併症】については次の章で詳しく説明します。

ダウン症の軽度・重度のちがい

ダウン症の程度は知的発達の度合いによって軽度から重度まで分類することができます。ただし、明確な基準が決められているわけではないため、ここでは参考程度の基準をご紹介します。ダウン症の程度として考えられる基準は以下のとおりです。

軽度:IQが50〜70未満で、自立した生活ができる
中度:IQが35〜50未満で、日常生活に軽度サポートが必要
重度:IQが20〜35未満で、日常生活の多くでサポートが必要
最重度:IQが20未満で、日常生活全般にサポートが必要

ダウン症の程度は出生後、成長する過程で初めて明確になります。知的発達の程度により、療育手当などの国からの支援金額が異なるものもあります。また、程度によって様々なサポート体制が用意されているため、最大限活用するようにしましょう。ダウン症に対する社会的サポートについては記事の後半でご紹介します。

次回妊娠の再発率

ダウン症の子どもを妊娠した経験のある方なら、再発率について心配するのは自然の流れです。結論、ダウン症の妊娠と次回妊娠の再発率とは関係ありません。前回と今回でダウン症を発症する科学的根拠はないからです。ただし、年齢によってダウン症の発症率は高くなる傾向にはあります。そのため、高齢妊娠の場合、ダウン症のリスクが高いことを考慮しておかなければいけません。

【時期別】ダウン症の合併症

ダウン症は染色体異常により発症する症状です。そのため、染色体に対する治療のない現代医療では根本的な解決はできません。 しかし、ダウン症における合併症に対しては、対症療法が中心となります。
合併症は、早期発見・早期治療で予後が改善します。新生児期から手術適応である合併症もあるため、時期別に起こりやすい合併症をしっかりと確認しておきましょう。以下では「乳児期」「学童期」「成人期」に起こりがちな合併症と、それに対する対応をご紹介します。

乳児期

乳児期のダウン症には、主に以下の合併症があります。

【心疾患】:心室中隔欠損、心内膜欠損、動脈管開存など
【消化器疾患】:十二指腸閉鎖・食道閉鎖など
【精神疾患】:精神遅滞、うつ病、発達障害など

ダウン症の合併症で最も多いのが心臓の病気であり、全体の「約50%」が合併しているといわれています。生まれつき心臓の一部に穴が開いており、効率良く酸素を全身に届けられない心室中隔欠損が有名です。食道閉鎖症は食道と胃が繋がっていない症状で、出生後にすぐに手術・長期的な療養が必要です。それに伴って、ご両親の心身・経済的な負担が予測されます。
このようにダウン症を発症すると出生直後から重篤な合併症を抱えていることが多いです。
ダウン症の乳児期の合併症について詳しく知りたい方は「ダウン症の赤ちゃんを産む人の特徴とは?診断・合併症や出産後のサポート制度まで解説」の記事が参考になります。ぜひ、ご覧ください。

学童期

学童期のダウン症には、主に以下の合併症があります。

【循環器疾患】:動脈硬化・高脂血症など
【発達遅滞】 :運動・知能・精神遅滞など

学童期になると大食や偏食など食事にムラが出ることがあります。そのため肥満体型になりやすく、結果として動脈硬化・高脂血症を発症することが考えられます。これらの症状が長期的に続くと生活習慣病に移行する恐れがあるため、メニューや食事方法にもひと工夫が必要です。
また、ダウン症は運動能力や知能指数、精神の発達が一般的な子どもと比べて遅い傾向にあります。ただし、ゆっくりであっても確実に発達していけるため、発達に不安を感じている方はご安心ください。周りの子どもと比較するのではなく、その子に合った成長ペースを尊重できる関わり方が重要です。

成人期

成人期のダウン症には、主に以下の合併症があります。

【内科的疾患】:生活習慣病、甲状腺機能の異常など
【精神疾患】 :うつ病、適応障害など

大食・偏食による食生活の偏りから生活習慣病が慢性化するリスクが挙げられます。

頻脈、眼球突出、急激な体重減少 など

加えて甲状腺機能の変化で、以下のような症状が現れることも考えられます。

徐脈、むくみ、急激な体重増加など

また、就職すると会社の人間関係や社会のルールに適応できず、徐々に表情が乏しくなり、うつ傾向になることも稀ではありません。人間関係や生活環境の変化は、ダウン症の方にとってストレスとなることもあるのです。これらの課題を解決しつつ、お子さんが活躍できる場所を見つけられると良いでしょう。

ダウン症の子どもの成長発達

ダウン症の子どもの出産を控える両親にとって、我が子がどのように成長していくかイメージができないと不安になるでしょう。そこでこの章では、ダウン症の子どもの成長について、【身体的な発達】【精神的な発達】の面から解説します。ダウン症の発達の特徴について知り、子どものペースを尊重した育児ができるようになりましょう。

身体的な発達

ダウン症の子どもは、小さく扁平な顔に吊り上がった目、鼻や耳の位置が低い特徴があります。これらは出生児から特徴が出ている場合もあれば、成長とともに徐々に現れることもあります。顔の様子は、すべてダウン症特有のものではなく、もちろん両親の遺伝情報から受け継いでいる部分もあります。そのため、両親に似ている部分もあるでしょう。
また、筋力が弱いこともダウン症の特徴です。これにより身体的な発達として、首の座りやハイハイの時期が一般的な子どもと比べて遅い可能性があります。自分一人で歩くまでに通常の2倍かかることもあります。
一般的な子どもに比べ筋力の成長・発達が遅い要因として考えられているのは、舌が大きいことです。舌が大きいため哺乳が苦手な子が多く、筋力の成長・発達に遅れが見られると考えられています。

精神的な発達

ダウン症の精神的発達の具合には、個人差があるため、一概にはいえません。ただし、一般的な子どもと比べると知能指数(IQ)が低くなる傾向にあるといわれています。小児期は注意欠如・多動症により周囲のことが気になり、一つのことに集中できないケースが多いです。重度の知的障害になるほど自閉症の発症リスクが高いと言われており、うつ病の誘因にもなるといわれています。
ダウン症の精神発達で重要なのは、それぞれの子どものペースに合わせた関わり方で成長を促すことです。学童期からは一般学級、もしくは特別支援学級が選べます。周りと同じことを求めるのではなく、その子が今できることを伸ばしてあげると良いでしょう。ダウン症児に多い性格、ダウン症の子どもとの関わり方については次の章で詳しくご紹介します。

ダウン症の子どもの性格は?ダウン症児との接し方

ダウン症の子どもには、どのような性格が多いのか理解しておくと、子育てが楽しみになるかもしれません。ここでは、ダウン症の子どもの性格、ダウン症の子どもとの上手な接し方をご紹介します。

ダウン症の子どもに多い性格

陽気で人懐っこく、明るいことが多いといわれています。 表情豊かで元気いっぱいな子が多いです。 普段から人との触れ合いを求めたり、人前に出て代表を務めたがったりすることもあるのだとか。 そんないわゆる社交的な性格を持つ一方で、とてもがんこで融通の聞かない側面もあります。
また、「ダウン症の知能・性格の特徴と育て方」(池田由紀江筑波大学教授著)という本によると「彼らは相当な物まねの能力があり,道化役者に似ているユーモラスであり,生々とした滑稽のセンスがその物まねの特徴である」と記載されています。ダウン症の子どもは家族を笑顔で包む、エンターテイナーのようなお子さんが多いです。
しかし、思春期以降になると自分が周りと違うことに悩み、抑うつ傾向が見られる場合もあります。そのため、早い段階から心身共に充実した生活を送ることができるようにサポートしていきましょう。

ダウン症の子どもとの接し方

ダウン症の子どもは、ことばの理解が苦手な傾向にありますが、視覚的な情報を捉えることは得意な子が多いといわれています。そのため、話しかけるときは、ことばだけでなく、身振りや絵、文字などを交えてあげると伝わりやすくなるでしょう。
学習や遊びなどに対しては意欲や責任感をもって取り組む傾向にある子が多いため、少し苦手なことに取り組む際には事前に「できる」工夫を施してあげたり、助けを求めてきたりするまで待ってあげるようにしましょう。
子育てにおいては、お子さまの得意なことや可能性を見極め、できることを増やしていくのがポイントです。小さなことでもお子さまの「できた!」に気づいてあげたらたくさん褒めてあげるようにしてください。
また、ダウン症の子どもは「こだわり」が強く、頑固な部分があります。例えば、「決まった場所で着替える」「おもちゃを片付ける場所が決まっている」などのこだわりです。これらの、ルーティンや決まり事はダウン症の子どもにとって、安心感を得られるとても大切なことです。ルーティンや決まり事はなるべく否定せずに受け入れてあげるようにしましょう。

ダウン症の子どもに対する5つの社会的サポート

ダウン症の育児について経済的な負担が大きく、出産を断念する方もいます。経済的理由で授かった命を断念するのは、両親にとって苦渋の選択です。そこでこの章では、ダウン症に対する社会的なサポートについて以下の5つを紹介します。
近年、社会的サポートが充実しており、ダウン症の子どもやその親が暮らしやすい環境も整いつつあります。これから紹介するサポート体制を踏まえた上で、ダウン症の育児のイメージを持てると良いでしょう。

1.支援団体

ダウン症の子どもやその家族の生活の質向上を目指している支援団体として「公益財団法人日本ダウン症協会」があります。公益財団法人日本ダウン症協会の事業は、以下の5つです。

・相談支援事業
・情報提供事業
・普及啓発事業
・調査研究事業
・その他事業(出生前診断)

これらの事業を通じてダウン症に関する正しい知識を広めるとともに、子育てに悩む両親の相談支援も行われています。ダウン症の子どもとの生活に不安を抱えている両親のバックアップとなるでしょう。

※参考資料:公益財団法人日本ダウン症協会

2.各種手帳

ダウン症の方が取得できる手帳は、以下の2つです。

・療育手帳
・身体障害者手帳

療育手帳とは、知的障害の認定を受けた人もしくはその両親が申請できる手帳です。18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所から交付されます。医療費の助成や公共交通機関の料金免除、障害者求人などの紹介などのサービスを受けられます。
障害者手帳は国の決めた基準以下の身体能力の方に都道府県から交付される手帳です。 原則、一度交付されれば追加申請は不要です。障害者雇用や医療費の助成、保育園に優先的に入園できるなどのサービスを受けられます。これらの手帳により、ダウン症の方でも社会的な生活が営みやすくなりました。

※参考:
厚生労働省/障害者手帳
厚生労働省/身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

3.各種手当

ダウン症の方が受けられる手当は、以下の2つです。

・特別児童扶養手当
・障害児福祉手当

特別児童扶養手当とは、20歳未満の身体・知的障害を抱える児を育てる保護者へ支給される手当です。支給月額(令和5年4月より適用)は、【1級 53,700円】【2級 35,760円】です。詳しくは、厚生労働省のホームページ「特別児童扶養手当について」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/huyou.html)をご参照ください。
障害児福祉手当は、重度身体・精神障害で発生する経済的な負担を軽減する目的で支給されます。日常的に介護が必要な重度な障害を抱えている在宅の20歳未満の人が支給対象です。支給月額(令和5年4月現在)は15,220円です。

詳しくは、厚生労働省のホームページ「障害児福祉手当について」(www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/hukushi.html)をご参照ください。

4.医療制度

ダウン症児は、小児慢性疾患医療助成制度の対象となります。小児慢性疾患医療助成制度とは、18歳未満の小児慢性疾患を抱える子どもの健全育成や医療費負担軽減を目的に作られた制度のことです。
ダウン症の子どもで以下の状態があれば該当します。

・心疾患
・消化器疾患
・呼吸器疾患

これらの合併症があり、治療による経済的な負担が大きい場合は速やかに申請手続きをしましょう。

※参考資料:小児慢性特定疾患情報センター

5.教育制度

幼稚園は通常学級にて通園します。そのため、通園先もダウン症など発達障害を合併した児を受け入れた経験のあるところを選ぶ方がよいでしょう。小学校から中学校は通常学級に加えて、特別支援学級や特別支援学校で個人のペースに合わせた教育環境が整えられています。
また、令和2年には文部科学省が障害により病気療養中の子供への授業にメディアを活用することを発表しました。そのため、それぞれの子どもに合わせた教育環境の整備がより一層しやすくなったといえます。

※参考資料:
文部科学省/学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)(2文科初第259号)
文部科学省/日本の特別支援教育の状況について

ダウン症の子どもの将来を支える体制

ダウン症の子どもが成長して学校に通ったり、就職して働いたりする時期になると、教育や就労制度について気になるところでしょう。結論から言うと、現代はダウン症の方に対する教育・就労制度は充実しており、社会進出がしやすい時代といえます。
そこでこの章では、「教育体制」と「就労支援」の2つについて解説します。ダウン症の方でも皆と同じように社会生活が営めるため、ご安心ください。

教育体制

ダウン症の子どもに対しては、以下の教育体制が整えられています。

・特別支援学校・学級
・地域療育センター(障害児等療育支援事業)
・障害児保育

幼少期は一般の保育園や障害のある子どもが集まる施設に通所します。一方、学童期に入ると発達状況に応じて「一般の小学校(学級)」もしくは「特別支援学校(学級)」に入り、その子の成長スピードに合わせた教育が受けられます。
また、市町村が実施主体の地域療育センターで、発達障害のあるお子さんの育児・療育などの相談もできるため、覚えておくと安心でしょう。作業療法士、理学療法士などの専門家の視点で今後の育児・教育に関するアドバイスを受けることができます。
障害児保育とは、障害のある子どもの発達を促す教育支援のことです。一般企業やNPO法人が実施主体であり、未就学児に対しては「児童発達支援センター」、学童に対しては「放課後等デイサービス」などのサービスがあります。
また厚生労働省によると、2019年10月から「3歳から5歳までの障害のある子どもたち」を対象に児童発達支援等の利⽤者負担が無償化となりました。詳細については、リンク先で確認できますので、ご覧ください。

参考資料:
厚生労働省/児童発達支援ガイドライン P27
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課/就学前の障害児の発達支援の無償化について

就労支援

「ダウン症だと将来働けないのでは?」と心配になるご両親も多いのではないでしょうか。ダウン症の方でも就職して働けます。そして社会に馴染んで継続的に仕事ができるように、以下のサービスを受けられます。

・就労移行支援
・就労継続支援
・就労定着支援

「就労移行支援」とは、一般企業への就職を目指してスキルの習得をしてもらうサービスです。厚生労働省の許可を得た事業所や企業で職業訓練を受けられるため、現場に必要なスキルを効率的に学べます。障害の程度により一般企業への就職が難しいなら、「就労継続支援」を受けます。発達状況や個人の能力に応じて「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」で就職後の自立を目指します。
「就労定着支援」とは、障害のある方が長く働き続けられるようにサポートする制度です。人間関係や生活環境の変化による不安や悩みを解消して、長く働き続けられるアドバイスを受けられます。

まとめ

現代はダウン症の赤ちゃんが元気に育っていくために、社会的なサポートが整ってきています。ですが、社会的なサポートを十分に活用していくためには、ダウン症の赤ちゃんの家族によるサポートがなによりも大切です。医療制度や教育制度を理解し、ダウン症の子どものいきいきとした成長のために活用してください。
特に、出産後はダウン症の赤ちゃんとの向き合い方で悩んでしまう方が多いです。ダウン症の赤ちゃんは合併症をもって産まれてくることがほとんどなため、今回紹介した時期別の合併症を参照し、お子さんに変化が見られたら医療施設に相談するようにしましょう。
また、ミネルバクリニックでも相談を受け付けておりますので、出産前や出産後にダウン症の赤ちゃんのことで不安がある場合はぜひご相談ください。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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