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赤ちゃんのDNA量が少ないとどうなるの?
胎児分画とは?
NIPTでは妊婦の血液を使用し、
赤ちゃんに13・18・21トリソミーなどの染色体異常があるかどうか検査をします。
NIPTではセルフリーDNA(cfDNA)という断片化されたDNAを使って検査するのですが。
胎児分画とは、全cfDNAのなかの胎児由来(cell free fetal DNA; cffDNA)の割合を表すもので
「胎児」成分は実際には胎盤栄養膜に由来します(1, 2)。
なので、胎児トリソミーのcfDNA分析(NIPT)は胎盤の「リキッド・バイオプシー」と考えられています。
胎児分画が重要なのはなぜか?
NIPTの全ての方法は、正確なトリソミー・スクリーニングのために
最低限の胎児分画を必要とし、これは一般的に4%と推定されています(2)。
でも、正規化された染色体値に基づいて統計学的方法を駆使することと、
より高いシークエンシングリードカウントを組み合わせたプロトコルを用いることにより、もっと低い胎児分画でも高い分析感度を達成することができるんです(4, 5)。
高いリードカウント(より多くのcfDNA分子をカウントする)は、より低い胎児分画での分析感度を改善することが知られています。
2.0未満という低い胎児分画でトリソミーを正確に検出するためにこれらの方法を採用している検査会社もあります。
胎児の分画に影響を及ぼす生物学的因子は何か?
妊娠10~14週の間に採取したサンプル中の平均胎児分画は、
10%前後と報告されています(3)が、実際の値は、多くの要因に影響されるんです。
要因には、女性の妊娠週数、体重、胎盤の大きさ、妊娠が単胎であるか双胎であるか、トリソミーが本当に存在するかどうかなどがあります(3,6-9)。
ダウン症候群(21トリソミー)の胎児の妊娠では、妊娠中の平均胎児分画が最も高くなります。
18トリソミーまたは13トリソミーを有する妊娠では、平均胎児分画がより低くなります。
染色体的に正常な妊娠の平均は、これら2つの間のどこかにあります(5)。
妊娠初期(10~12週)に採血すると、多くの女性で胎児分画測定値が4%未満になるので、以前は測定できなかったのですが、
方法を改良することにより、胎児トリソミーの検出限界を低下させることで、低胎児分画からの失敗率は現在わずか0.1%となっています。
☞ですので、10週から検査して問題ありません。

1. Ashoor G, Poon L, Syngelaki A, et al. Fetal fraction inmaternal plasma cell-free DNA at 11-13 weeks’ gestation: effect of maternal and fetal factors. Fetal Diagn Ther 2012; 31:237-43.
2. Canick JA, Palomaki GE, Kloza EM, et al. The impact of maternal plasma DNA fetal fraction on next generation sequencing tests for common fetal aneuploidies. Prenat Diagn 2013;33:667-74.
3. Benn P, Cuckle H. Theoretical performance of non-invasive prenatal testing for chromosome imbalances using counting of cell-free DNA fragments in maternal plasma. Prenat Diagn. 2014; 34:778-83
4. Fiorentino F, Spinella F, Bono S, Pizzuti F, Mariano M, Polverari A, Duca S, Cottone G, Nuccitelli A, Sessa M, Baldi M. Feasibility of noninvasive prenatal testing for common fetal aneuploidies in maternal serum with low levels circulating fetal cell-free DNA fraction. Prenat Diagn 2015; 35 Suppl. 1: pag 1
5. Bono S, Pizzuti F, Mariano M, Polverari A, Duca S, Cottone G, Nuccitelli A, Sessa M, Spinella F, Baldi M, Fiorentino F. Massively Parallel Sequencing (MPS) reliably identifies trisomy 21, 18, and 13 in maternal plasma with low-level fetal cell-free DNA fractions. Poster presentation from the European Society of Human Genetics (ESHG) meeting Glasgow 2015.
6. Pergament E, Cuckle H, Zimmermann B, et al. Single-nucleotide polymorphism-based noninvasive prenatal screening in a high-risk and low-risk cohort. Obstet Gynecol. 2014;124 (2 Pt 1):210-8. 8. Norton ME, Jacobsson B, Swamy GK, et al. Cell-free DNA analysis for non invasive examination of trisomy. N Engl J Med. 2015;372:1589-97.
キーワード:cell-free DNA NIPT 胎児分画
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
1995年医師免許取得。血液・呼吸器・感染症内科を経て、臓器別・疾患別の縦割りの医療の在り方に疑問を感じ、人を人として”全人的”に診療したいという思いを強くし、臓器を網羅した横断的専門医となり、2010年にがん薬物療法専門医取得(2019年現在全国1200人程度)。臓器を網羅すると遺伝性がんへの対策が必要と気づき、2011年に臨床遺伝専門医取得(2019年現在全国1000人程度)。遺伝相談はセンシティブな分野にもかかわらず、昼間の短い時間しか対応できない大病院のありかたに疑問を感じて、もっと必要な人がハードルを感じずに診療を受けられるようにしたいと2014年12月に開業。以来、全国から大学病院でも難しい内容の対応を求める人々を受け入れ、よろづお悩み相談所として多くの人々の様々な”家族(計画)の問題”を改善に導く。
著書に”女性のがんの本当の話”(ワニブックス)、”遺伝するがん・しないがん”(法研)がある。
少ない専門家で、正直で嘘のない言葉選びから週刊誌等の取材も多く、医療系の特集に時折コメントが掲載。(週刊現代、週刊ポスト、週刊新潮など)。
テレビ出演も時々あり、小林真央さんの病状を市川海老蔵さんが初めて記者会見した日、フジテレビの午後4時台のニュース番組に生出演して解説。その他TBS, AbemaTVなど出演。
一人一人の事情に合わせた個別対応をするべく、しっかり時間を取って本当のニーズは何かを聞き取りすることを大切にしている。短い時間でもお互いが出会ったことが相手の人生に大きな意味があるような医師患者関係の構築を理想として日々精進。
患者さんが抱えている問題を解決するにはどうしたらよいのかを考えて医師歴8年目に法学部に学士入学した程度に”凝り性”。女医が少なかった時代に3人の母親として難関専門医を3つ取得して社会進出を続けた経験から、女性のライフスタイルを医学以外の部分でも支援したいと願っている。
いろんな人生経験から心に響く言葉を投げかけるため、”会うと元気になる”ということで有名。飼いネコ4匹。
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