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原発性アルドステロン症の遺伝子検査|遺伝する?若い高血圧・家族性アルドステロン症(Ⅰ〜Ⅳ型)の原因5遺伝子を調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

原発性アルドステロン症の遺伝子検査|遺伝する?若い高血圧・家族性アルドステロン症(Ⅰ〜Ⅳ型)の原因5遺伝子を調べる

原発性アルドステロン症は、副腎からアルドステロンというホルモンが出すぎて起こる高血圧です。「本態性高血圧」と言われて薬を何種類も足してきた方の中に、この病気が隠れていることがあります。多くは遺伝子1つで決まる病気ではありませんが、20歳前に始まった方やご家族に同じ病気・若い脳卒中の方がいる場合には、親から子へ伝わる「家族性アルドステロン症(Ⅰ〜Ⅳ型)」が見つかることがあります。型がわかると、効く薬の選び方や、ご家族を若いうちに見つける道筋が変わります。このページでは、原因の5遺伝子を調べる遺伝子検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

アルドステロンが出すぎる高血圧(原発性アルドステロン症)のうち、生まれつきの遺伝子の変化で起こる家族性アルドステロン症の原因5遺伝子(CACNA1H・CLCN2・CYP11B1・CYP11B2・KCNJ5)を一度に調べます。ただし、Ⅰ型の原因である「融合遺伝子」は、この検査では確実に見つけられるとは限りません。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

原発性アルドステロン症と診断され、20歳前に始まった方(若年性高血圧)、ご家族に原発性アルドステロン症や40歳未満の脳卒中の方がいる方、ご家族に家族性アルドステロン症と診断された方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。家族性アルドステロン症と確定すれば、お子さん1人あたり2分の1の確率で同じ変化を受け継ぐため、ご家族の検査も考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの治療と計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. 原発性アルドステロン症とは:アルドステロンが多すぎて起こる高血圧

原発性アルドステロン症(アルドステロン症、PA)は、副腎が体の必要と関係なくアルドステロンを出しすぎ、高血圧になる病気です。アルドステロンは腎臓で塩分(ナトリウム)と水を体にため込み、カリウムを尿に出させるホルモンで、ふつうは腎臓から出るレニンという酵素の指令で量が調整されています。原発性アルドステロン症では、レニンが低いのにアルドステロンが高い、というねじれが起こります。

珍しい病気と思われがちですが、2025年の米国内分泌学会の診療ガイドラインでは、一般の診療所にかかる高血圧の方の5.9%(研究により3.2〜14.0%)、18〜40歳の若い高血圧の方では16.2%が原発性アルドステロン症と示されています[1]。同じガイドラインは、高血圧のすべての方に、アルドステロンとレニンを測るスクリーニングを勧めています[1]。

症状:低カリウムがない人も多い

原発性アルドステロン症のおもな症状は高血圧で、血液のカリウムが低くなる(低カリウム血症)のは一部の方だけです。5大陸の医療機関のデータでは、低カリウム血症があったのは原発性アルドステロン症の方の9〜37%(施設による幅)でした[5][2]。「カリウムが正常だから違う」とは言えません。

カリウムが下がると、疲れやすい・だるい・手足の力が入りにくい、といった症状につながることがあります。ただし、これらは原発性アルドステロン症だけに見られる症状ではないため、症状だけで判断せず、血液検査で確かめます。

見つけ方と診断基準の流れ

診断は「スクリーニング→確認検査→どちらの副腎が原因かを調べる」の3段階で進みます。日本内分泌学会の診療ガイドライン(2021年)は、アルドステロン/レニン比(ARR)が200以上かつ血中アルドステロン濃度が60 pg/mL以上を、スクリーニング陽性の目安としています。測定法の変更(RIA法からCLEIA法へ)でアルドステロンの値が低めに出るようになったため、境界の範囲も設けられています[3]。

スクリーニングで疑われたら確認検査を行い、手術を考える場合は副腎静脈サンプリング(副腎の静脈から採血する検査)で、片側の副腎が原因か、両側かを調べます。同じガイドラインは、片側性なら副腎の摘出手術、両側性ならミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)による治療を勧めています[3]。こうした診断と治療は、内分泌内科などの専門の医療機関で受けていただきます。

放置するとどうなる:脳卒中・心房細動などのリスク

原発性アルドステロン症は、同じくらいの血圧の本態性高血圧と比べても、脳卒中や心臓の病気が起こりやすいことがわかっています。31研究の解析では、本態性高血圧と比べたオッズ比が、脳卒中2.58、冠動脈疾患1.77、心房細動3.52、心不全2.05でした[4]。血圧の数字だけでなく、アルドステロンが多いこと自体を治療の対象にする理由がここにあります。

2. 原発性アルドステロン症は遺伝する? 多くは遺伝子1つでは決まらない

原発性アルドステロン症の大多数は、親から子へ伝わるタイプではありません。一方で、ごく一部に、生まれつきの遺伝子の変化で起こり、親から子へ伝わる「家族性アルドステロン症」があります。2024年の欧州の診療ガイドラインは、原発性アルドステロン症のうち家族性の割合を、報告では1〜5%、実際はおそらく1%未満としています[9]。「高血圧 遺伝」と調べる方は多いのですが、ふつうの高血圧と、遺伝子1つで起こる家族性アルドステロン症は分けて考える必要があります。

腺腫の中だけで起きる変化と、生まれつきの変化のちがい

同じ遺伝子の名前が出てきても、「副腎の腫瘍(腺腫)の中だけで起きた変化」と「生まれつき全身の細胞にある変化」では、意味がまったく違います。前者は体細胞変異と呼ばれ、子どもには伝わりません。後者は生殖細胞系列の変化で、お子さんに伝わることがあります。

アルドステロンを出す副腎腺腫では、KCNJ5遺伝子の体細胞変異がよく見つかります。1636人のメタ解析では全体の43%で、欧米・オーストラリアの研究では35%、日本と中国の研究では63%でした[7]。日本の106の腺腫を調べた研究では73%でした[8]。これらは腺腫の中だけの変化で、血液や唾液で調べるこの検査の対象ではありません。この検査が調べるのは、生まれつきの変化です。

家族性アルドステロン症Ⅰ〜Ⅳ型

家族性アルドステロン症には、原因の遺伝子が違うⅠ〜Ⅳ型があり、型によって治療の第一選択が違います。いずれも常染色体顕性(優性)遺伝で親から伝わるか、ご本人の代で新しく起きた変化(de novo)で起こります[9]。

🧬 家族性アルドステロン症の4つの型

型 原因の遺伝子 特徴 治療の第一選択
Ⅰ型(グルココルチコイド奏効性アルドステロン症) CYP11B1とCYP11B2がつながった融合遺伝子 アルドステロンがACTH(下垂体のホルモン)の指令で作られる。若い年齢での脳出血・脳動脈瘤が多い家系がある デキサメタゾン(ステロイドの薬)
Ⅱ型 CLCN2 若いうちに発症。変化があっても大人になって血圧が正常な人もいる(不完全浸透) MRA
Ⅲ型 KCNJ5 両側の副腎が大きく腫れる重い型が報告されている MRA(効かなければ両側の副腎摘出が第二選択)
Ⅳ型 CACNA1H 10歳までに発症した例で見つかっている。新しく起きた変化の例もある MRA

※型と遺伝子・治療は2024年の欧州の診療ガイドライン[9]、特徴は文献[10][11][12][13][14]による。MRA=ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬。

Ⅰ型は、1992年に原因がわかった、最初の家族性アルドステロン症です。8番染色体の上で隣り合うCYP11B1とCYP11B2が不等交叉でつながり、アルドステロンを作る酵素が、本来は関係のないACTHの指令で作られるようになります。そのため、ステロイドの薬でACTHを抑えると、アルドステロンも下がります[10]。Ⅰ型の登録研究では、家系の48%、患者さんの18%に脳血管の合併症があり、その70%が出血性の脳卒中、最初に起きた年齢は平均31.7歳でした[11]。

Ⅱ型は、若くして発症した原因不明の原発性アルドステロン症の80人のうち8人で、CLCN2遺伝子の変化が見つかったことから明らかになりました(2人は新しく起きた変化)[14]。同じ年に、9歳で診断された方で新しく起きたCLCN2の変化も報告されています[15]。Ⅲ型は、KCNJ5遺伝子の生まれつきの変化で、重いアルドステロン症と両側の副腎の大きな腫れを起こす家系から見つかりました[12]。Ⅳ型は、10歳までに発症した40人のうち5人(12.5%)で同じCACNA1Hの変化が見つかり、うち2人は新しく起きた変化でした[13]。

3. どんな人がこの遺伝子検査を考えるとよいか

この検査が向いているのは、原発性アルドステロン症と診断され、20歳前に始まった方や、ご家族に原発性アルドステロン症・若い脳卒中の方がいる方です。2024年の欧州の診療ガイドラインと2025年の米国内分泌学会のガイドラインは、どちらも20歳未満で発症した方に遺伝子検査を勧めています[9][1]。

受けるとよい場面(若いうちの発症・家族歴・若い脳卒中の家系)

  • ●原発性アルドステロン症が20歳前に始まった方[9][1]
  • ●ご家族に原発性アルドステロン症の方、または40歳未満で脳卒中を起こした方がいる方(2016年の米国内分泌学会のガイドラインは、この場合にⅠ型の遺伝子検査を提案しています)[2]
  • ●ご家族が家族性アルドステロン症と診断されていて、ご自身が受け継いでいるか知りたい方(家族性と確定した方の親・きょうだい・子には、遺伝子の検査が勧められています)[1][9]
  • ●若年性高血圧で、原発性アルドステロン症と言われ、型を知って治療を考えたい方

本態性高血圧と言われて薬を足し続けてきた方にとって、原因に名前がつくことは、治療を組み立て直すきっかけになります。家族性アルドステロン症とわかれば、Ⅰ型ならステロイドの薬、Ⅱ〜Ⅳ型ならMRAが第一選択というように、治療の考え方がはっきりします[9]。

受けなくてよい場合・別の検査が向いている場合

中高年になってから見つかった原発性アルドステロン症で、ご家族に同じ病気の方がいない場合は、家族性である可能性は低く、まず必要なのは内分泌内科での診断と治療です。先に書いたとおり、家族性の割合は報告で1〜5%、実際はおそらく1%未満とされています[9]。また、まだ原発性アルドステロン症かどうか確かめていない段階では、遺伝子検査よりも、血液のアルドステロンとレニンの測定が先です。

見た目の血圧が同じでも、原因がアルドステロン以外の場合は、調べる検査が違います。下の表で、血液検査の結果や症状から、当院のどの検査が近いかを確かめてください。

血液のホルモン検査から、どのパネルを選ぶか

「アルドステロン高値の原因を知りたい」「アルドステロン値が高いと言われた」ときは、レニンとカリウムの値を一緒に見ると、どの検査が近いかの見当がつきます。最終的な判断は主治医の診断と遺伝カウンセリングで行います。

🔍 血液検査・症状から選ぶ内分泌の遺伝子検査

こんなとき 向いている検査
高血圧で、アルドステロンが高くレニンが低い(原発性アルドステロン症と診断)。20歳前の発症・家族歴がある このページの検査(原発性アルドステロン症5遺伝子)
高血圧で、カリウムが高い 偽性低アルドステロン症2型(ゴードン症候群)遺伝子検査パネル
子どものころからの高血圧に、性の発達の異常(外性器の男性化・性早熟)が伴う 先天性副腎過形成(CAH) NGSパネル検査(11β水酸化酵素欠損症など)
低カリウムで、手足が急に動かなくなる発作がおもな症状 低カリウム性・高カリウム性周期性四肢麻痺 遺伝子検査
低カリウムが続き、主治医からバーター症候群を疑うと言われた バーター症候群NGS遺伝子パネル検査
甘草(カンゾウ)を含む漢方薬などを飲んでいて、高血圧や低カリウムが出た 薬による偽アルドステロン症の可能性があります。遺伝子検査ではなく、処方した医師・薬剤師にご相談ください

※11β水酸化酵素欠損症は、アルドステロンではなく別のホルモン(DOC)が増えて若い年齢で高血圧になる病気で、指定難病「先天性副腎皮質酵素欠損症」の病型のひとつです(厚生労働省の資料で確認)。偽アルドステロン症は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の資料で甘草による副作用として扱われています(2026年10月時点で確認)。

内分泌のほかの病気が気になる方は、背が伸びない・複数の下垂体のホルモンが足りない場合は複合下垂体ホルモン欠損症(CPHD)遺伝子検査、思春期が来ない場合は低ゴナドトロピン性性腺機能低下症関連遺伝子検査、性分化の違いがある場合は46,XY性分化疾患遺伝子検査、甲状腺の病気では甲状腺機能低下症・甲状腺ホルモン不応症遺伝子検査、血液のカルシウムが高い場合は副甲状腺機能亢進症遺伝子検査、若いうちの糖尿病ではMODY・新生児糖尿病遺伝子検査、生まれてすぐの一時的な糖尿病ではPLAGL1遺伝子検査をご覧ください。

\ あなたの1回の検査が、ご家族を若いうちに見つける手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

家族性アルドステロン症と確定した場合、ご家族は同じ変化だけをピンポイントで調べられます。症状のないご家族の検査も、臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングから始められます。

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4. 調べる5つの遺伝子と、わかる病気

この検査では、家族性アルドステロン症の原因として知られる5つの遺伝子(CACNA1H・CLCN2・CYP11B1・CYP11B2・KCNJ5)を一度に調べます。同じ遺伝子が、アルドステロン症以外の病気に関わることもあるため、表にまとめました。

🧪 原発性アルドステロン症遺伝子検査で調べる5遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
CACNA1H 家族性アルドステロン症Ⅳ型
小児欠神てんかん・特発性全般てんかん6のかかりやすさ(感受性)
常染色体顕性
感受性の遺伝子(この遺伝子だけで病気が決まるものではない)
CLCN2 家族性アルドステロン症Ⅱ型
運動失調を伴う白質脳症
特発性全般てんかん11のかかりやすさ(感受性)
常染色体顕性(不完全浸透)
常染色体潜性
感受性の遺伝子
CYP11B1 家族性アルドステロン症Ⅰ型(CYP11B2との融合遺伝子)
11β水酸化酵素欠損による先天性副腎過形成
常染色体顕性
常染色体潜性
CYP11B2 家族性アルドステロン症Ⅰ型(CYP11B1との融合遺伝子)
CMO Ⅰ欠損による先天性低アルドステロン症
CMO Ⅱ欠損による先天性低アルドステロン症
常染色体顕性
常染色体潜性
常染色体潜性
KCNJ5 家族性アルドステロン症Ⅲ型
QT延長症候群13型
常染色体顕性
常染色体顕性

※対象遺伝子は当院の検査内容による(2026年10月20日に検査のおおもとの一覧と照合し、一致を確認)。病気と遺伝のしかたはOMIMの登録情報(UniProt・HPOの注記で確認)と文献[9][10]による。

CYP11B1とCYP11B2は副腎でホルモンを作る酵素の遺伝子で、CYP11B2はアルドステロンを作る酵素(アルドステロン合成酵素)の遺伝子です[10]。残りの3つは、細胞膜でイオンを通す「チャネル」の遺伝子で、KCNJ5はカリウム、CLCN2は塩素、CACNA1Hはカルシウムのチャネルを作ります[12][13][14]。

💡 用語解説:顕性(優性)と潜性(劣性)

常染色体顕性(優性)遺伝は、対になった遺伝子の片方に変化があれば発症しうる遺伝のしかたで、お子さんに伝わる確率は1人ごとに2分の1です。常染色体潜性(劣性)遺伝は、両方に変化がそろったときに発症し、片方だけ持つ人は「保因者」と呼ばれ、ふつうは症状がありません。CYP11B1・CYP11B2は、同じ遺伝子でも変化の種類によって、顕性と潜性の両方の病気に関わります。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、5つの遺伝子の中の小さな変化(1文字の置き換わり・小さな挿入や欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。次世代シーケンサー(NGS)で、遺伝子のたんぱく質を作る部分と、その境目を読みます。読み取りが不十分なところはサンガー法で補い、見つかった欠失・重複は別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。遺伝子検査には必ず限界があります。

Ⅰ型の融合遺伝子は、このパネルで確実に見つけられるとは限らない

⚠️ Ⅰ型を強く疑うときは、専用の検査が必要になることがあります

Ⅰ型の原因は、CYP11B1とCYP11B2がつながった融合遺伝子です。2つの遺伝子は、つながる部分の配列が約94%同じで、短く区切って読むNGSでは区別がとても難しいとされています。Ⅰ型の遺伝子診断には、ロングPCR法(長い範囲をまとめて増やす方法)やサザンブロット法が使われてきました[16]。2024年の欧州の診療ガイドラインも、Ⅰ型の診断にはロングPCR法を行うべきとしています[9]。この検査は、よく似た配列が判定を妨げることがあると断っており、融合遺伝子を見つけるための検査としては作られていません。Ⅰ型を強く疑う場合は、遺伝カウンセリングで、融合遺伝子を調べる検査が別に必要かを一緒に考えます。

「異常なし」でも原発性アルドステロン症ではない、とは言えない/VUS

  • ●陰性でも否定はできません:この検査で変化が見つからなくても、原発性アルドステロン症ではないという意味ではありません。原発性アルドステロン症の大多数は家族性ではないからです。家族性であるかどうかについても、Ⅰ型の融合遺伝子のように、この検査では見つけにくい原因が残ります。
  • ●調べていない遺伝子:この検査の対象は5遺伝子だけです。CACNA1D(てんかん・神経の症状を伴う若年発症の原発性アルドステロン症に関わる)など、ほかの遺伝子は含まれていません[9]。
  • ●見つけられない変化:染色体の転座・逆位、繰り返し配列の伸び、遺伝子の働きを調節する離れた領域やイントロンの深い部分の変化は調べられません。1つのエクソンだけの欠失・重複は、日常的には検出されません。欠失・重複を調べられる範囲は検体によって違い、2つ以上の続いたエクソンの欠失・重複は血液の検体の場合です。
  • ●腺腫の中だけの変化:副腎の腺腫の中だけで起きた体細胞変異や、体の一部の細胞にだけある変化(モザイク)を見つけるようには作られていません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。ご希望により、VUSを報告に含めないオプション(無料)も選べます。

調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針にそって、遺伝カウンセリングでご説明します。

6. 病的変異が見つかったら、次にできること

家族性アルドステロン症の原因が見つかると、ご本人の治療の考え方、ご家族の検査、お子さんへの確率が、具体的に決まります。生まれ持った遺伝子は一生変わらないので、一度の検査でわかったことは、この先ずっと使える情報になります。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。

①ご本人:型によって治療が変わる

2024年の欧州の診療ガイドラインは、Ⅰ型にはデキサメタゾン、Ⅱ〜Ⅳ型にはMRAを第一選択として勧めています。Ⅲ型でMRAが効かない場合は、両側の副腎摘出が第二選択とされています[9]。片側の腺腫が原因のふつうの原発性アルドステロン症では、片方の副腎の摘出手術が勧められているのとは、考え方が違います。片側性で手術を受けた705人の国際共同研究では、薬なしで血圧が正常になった方が37%、手術前より少ない薬などで血圧が改善した方がさらに47%、アルドステロンの異常が治った方が94%(699人中)でした[6]。

Ⅰ型では、若い年齢で脳出血や脳動脈瘤が起こった家系の報告があり、MRI(MRアンギオグラフィー)で脳動脈瘤を調べることが提案されています[11]。KCNJ5の変化はQT延長症候群とも関わるため、変化の種類によっては心電図の確認を主治医と相談します。治療や薬の選び方は、内分泌内科などの専門の医療機関で決めていただきます(当院は治療・薬の処方を行っていません)。

②ご家族:症状のない家族の検査と、血圧・カリウムの見張り

ご家族の中で原因がわかると、親・きょうだい・お子さんは、同じ変化があるかだけをピンポイントで調べられます。米国内分泌学会の2025年のガイドラインは、家族性アルドステロン症の方の親・きょうだい・子に遺伝子の検査を勧め、生まれつきの変化がわかっている家系では、アルドステロンを抑える負荷試験は必要ないとしています[1]。同じ変化を受け継いでいれば、若いうちから血圧やカリウムを見張り、早く治療につなげられます。受け継いでいなければ、その家族性アルドステロン症について、ご家族と同じ確率を心配しなくてよくなります。

ただし、Ⅱ型やⅣ型では、変化を持っていても大人になって血圧が正常な人がいることが報告されています(不完全浸透)[9][13]。「親は血圧が正常だから大丈夫」「親が軽いから子も軽い」とは言えないため、知ったうえで見張りの計画を立てることに意味があります。

③お子さんへの確率と、妊娠を考えるとき

家族性アルドステロン症は常染色体顕性遺伝なので、変化を持つ親から、お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継がれます。性別には関係しません。ご本人の代で新しく起きた変化の場合も、ご本人からお子さんへの確率は2分の1です。

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんに同じ変化があるかを調べることができます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ただし、出生前診断を行うかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断します。妊娠を考えている段階からご相談ください。もちろん、何も調べずに出産を迎えることも、同じように尊重される選択です。

CYP11B1・CYP11B2は、潜性遺伝の病気(11β水酸化酵素欠損症・CMO欠損症)にも関わります。この2つの遺伝子は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の対象に含まれています(男性版は遺伝子一覧でご確認ください)。

④陰性・VUSのとき

変化が見つからなかった場合も、原発性アルドステロン症そのものの治療は変わらず必要です。Ⅰ型を強く疑う家族歴があれば融合遺伝子の検査を、症状が広く病気をしぼれない場合は全エクソーム検査(WES)を考えます。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。

7. 日本の制度(2026年10月時点)

原発性アルドステロン症は、指定難病には含まれていません。2026年4月1日時点の指定難病348疾病の一覧に、アルドステロン症の名前はありませんでした(東京都の難病医療費助成制度の案内〔2026年8月発行〕で確認)。

一方、子どもの医療費助成の制度である小児慢性特定疾病では、内分泌疾患群に「アルドステロン症」が対象疾病として掲載されています(小児慢性特定疾病情報センターで確認)。その解説では、両側性の病型の中に、グルココルチコイドで治療できる型(Ⅰ型)も挙げられています。助成を受けるには認定の条件を満たし、申請する必要があります。くわしくは、小児慢性特定疾病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜の検体なら、ご来院いただかずにオンライン診療で受けられます。血液の検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

料金・遺伝カウンセリング料・オプション・報告書の言語

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 CACNA1H・CLCN2・CYP11B1・CYP11B2・KCNJ5(5遺伝子)
調べ方 塩基配列の解析・欠失挿入の解析(どちらも料金に含まれます)
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
至急オプション 結果までの期間が約7日短くなります。55,000円
VUS除外オプション 無料
検体 血液(EDTA採血管4mL×2本)・抽出DNA・頬の内側の粘膜(スワブ)・唾液
オンライン診療 唾液・粘膜・血液いずれも対応(血液は全国の提携医療機関で採血)

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。オンライン診療の流れはオンライン診療のご案内をご覧ください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご自身とご家族のこれからに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。唾液・粘膜の検体ならオンライン診療で受けられ、結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | 診療時間・アクセス

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「高血圧の家系だから」で終わらせない】

高血圧は身近な病気なので、「うちは高血圧の家系だから」と、原因を深く考えずに過ごしている方は少なくないと思います。けれども、若いうちに始まった高血圧や、ご家族に若い脳卒中の方がいる場合には、その背景に、遺伝子1つで起こる病気が隠れていることがあります。原発性アルドステロン症の大多数は家族性ではありません。だからこそ、どの人が家族性を考えるべきかを見分けることが、臨床遺伝専門医の仕事だと考えています。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。家族性アルドステロン症は、型がわかれば、使う薬や見張る合併症がはっきりし、ご家族を若いうちに見つける道も開けます。遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 原発性アルドステロン症は遺伝しますか?

大多数は親から子へ伝わるタイプではありません。2024年の欧州の診療ガイドラインでは、原発性アルドステロン症のうち家族性の割合は報告で1〜5%、実際はおそらく1%未満とされています。ただし、20歳前に始まった方や、ご家族に原発性アルドステロン症・若い脳卒中の方がいる場合は、家族性アルドステロン症を考えて遺伝子検査を検討します。

Q2. 家族性アルドステロン症は、子どもに遺伝する確率はどれくらいですか?

家族性アルドステロン症は常染色体顕性(優性)遺伝なので、変化を持つ親から、お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継がれます。性別には関係しません。ただし、Ⅱ型やⅣ型では、変化を持っていても大人になって血圧が正常な人もいると報告されています。

Q3. 原発性アルドステロン症は治りますか?

片側の副腎が原因の場合は、副腎の摘出手術が勧められています。国際共同研究では、手術を受けた705人のうち、薬なしで血圧が正常になった方が37%、手術前より少ない薬などで血圧が改善した方がさらに47%、アルドステロンの異常が治った方が94%(699人中)でした。両側性の場合や家族性アルドステロン症の多くは、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などの薬で治療します。

Q4. 若いのに高血圧です。遺伝子検査を受けるべきですか?

まず、血液のアルドステロンとレニンを測って、原発性アルドステロン症かどうかを確かめることが先です。原発性アルドステロン症と診断され、20歳前に始まった場合や、ご家族に同じ病気・40歳未満の脳卒中の方がいる場合には、この遺伝子検査が役立ちます。

Q5. カリウムが正常なら、原発性アルドステロン症ではないのですか?

そうとは言えません。5大陸の医療機関のデータでは、低カリウム血症があったのは原発性アルドステロン症の方の9〜37%でした。カリウムが正常でも、アルドステロンとレニンの測定で確かめます。

Q6. 遺伝子検査で異常がなければ、原発性アルドステロン症ではないのですか?

いいえ。この検査は家族性アルドステロン症の原因5遺伝子を調べるもので、原発性アルドステロン症の大多数は家族性ではありません。また、Ⅰ型の原因である融合遺伝子は、この検査では確実に見つけられるとは限りません。陰性でも、原発性アルドステロン症そのものの治療は引き続き必要です。

Q7. 原発性アルドステロン症は難病指定されていますか?

指定難病には含まれていません(2026年4月1日時点の348疾病で確認)。子どもの医療費助成の制度である小児慢性特定疾病では、内分泌疾患群に「アルドステロン症」が対象疾病として掲載されています。助成を受けるには認定の条件を満たす必要があります。

Q8. 家族性アルドステロン症とわかったら、家族はどうすればよいですか?

親・きょうだい・お子さんは、見つかった変化があるかどうかだけをピンポイントで調べられます。米国内分泌学会の2025年のガイドラインは、家族性アルドステロン症の方の親・きょうだい・子に遺伝子の検査を勧めています。受け継いでいれば、若いうちから血圧やカリウムを見張り、早く治療につなげられます。症状のないご家族の検査も、遺伝カウンセリングから始められます。

🧬 一度の検査で、治療の選び方とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。家族性アルドステロン症の原因がわかれば、ご自身の治療の考え方だけでなく、ご家族を若いうちに見つけることや、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、ご家族の遺伝子検査や出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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