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胎動はいつから?どんな感じ?初めての胎動の感じ方と初産・経産婦の違い

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

胎動(たいどう)は、お腹の赤ちゃんの動きをお母さんが感じることです。初めての胎動は、お腹の中で腸が動くような、ポコポコ・ピクピクとしたかすかな感覚として気づくことがほとんどです。感じ始める時期は妊娠18〜20週ごろが多く、2人目以降の経産婦さんでは16週ごろから気づく方もいます[1][2]。この記事では、胎動はいつから・どんな感じで始まるのか、時期による感じ方の変化、胎動のパターン、家族にも感じてもらうコツ、胎動が少ないと感じたときの目安までを、臨床遺伝専門医が解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
👶 胎動の時期・感じ方・パターン
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 胎動はいつから、どんな感じで始まりますか?

A. 多くの人が妊娠18〜20週ごろに、お腹の中で何かがポコポコ・ニョロッと動くような感覚で気づきます。経産婦さんでは16週ごろから感じることもあります[2]。最初は腸の動きと区別がつきにくいほど弱い感覚ですが、週数が進むにつれてはっきりしたキックやパンチに変わっていきます。感じ始める時期には個人差が大きく、20週を過ぎてから気づく人も珍しくありません。

  • ➤赤ちゃんが動き始める時期 → 超音波では妊娠7〜8週ごろから動きが見える
  • ➤お母さんが感じる時期 → 初産婦は18〜20週ごろ、経産婦は16週ごろからのことも
  • ➤初めての胎動 → 腸が動く・ガスが移動するような、かすかな感覚
  • ➤臨月 → 動きは窮屈そうになるが、回数は減らないのが普通

1. 胎動とは?赤ちゃんはいつから動いている?

胎動とは、子宮の中の赤ちゃん(胎児)の動きを、お母さんがお腹の中から感じ取ることです。赤ちゃんが手足を伸ばしたり、体の向きを変えたり、しゃっくりをしたりすると、その動きが子宮の壁に伝わり、お母さんの感覚として届きます。

ここで知っておきたいのは、「赤ちゃんが動き始める時期」と「お母さんが動きを感じ始める時期」がまったく違うことです。超音波検査で赤ちゃんの動きを詳しく観察した古典的な研究では、妊娠7〜8週ごろにはすでに体を小さく動かす様子が見え始め、その後の数週間で、体全体を使う動き、手足だけの動き、しゃっくりのような動きなど、さまざまな種類の動きが次々に現れることが示されています[1]。妊娠初期の健診のエコーで、画面の中の赤ちゃんがピクッと動くのを見たことがある方もいるでしょう。

ところが、この時期にお母さんが動きを感じることはまずありません。お母さんがはっきりと胎動に気づくのは、多くの場合、妊娠18〜20週ごろになってからです[2]。つまり、赤ちゃんは動き始めてから10週間以上、お母さんに気づかれないまま動き続けていることになります。

動き始めてから、お母さんが感じるまでに差がある理由

赤ちゃんの動きをお母さんが感じられない理由は、主に赤ちゃんの大きさと力にあります。妊娠初期の赤ちゃんはまだ数センチほどの大きさで、たっぷりの羊水(ようすい:赤ちゃんを包む液体)の中に浮かんでいます。手足を動かしても、その力は羊水に吸収され、子宮の壁を内側から押すほどにはなりません。さらに子宮自体もまだ骨盤の中に収まっていて、お腹の表面から遠い位置にあります。

妊娠中期に入ると、赤ちゃんは急速に大きくなり、筋肉や骨格もしっかりしてきます。動きの力が増え、子宮も骨盤の外へ大きくなってお腹の前側に近づくため、動きが子宮の壁を通してお母さんに伝わるようになります。こうして、ある日「いま、何か動いた?」という最初の感覚が訪れます。

また、お母さんが「胎動を感じた」と気づくには、その感覚を胎動だと判断できることも必要です。とくに初めての妊娠では、胎動がどんな感じなのかを知らないため、実際には動きを感じていても、腸の動きと区別がつかずに見過ごしていることがあります。あとから「あのときの違和感が、最初の胎動だったのかもしれない」と気づく方も少なくありません。

💡 用語解説:初覚胎動(しょかくたいどう)

お母さんが初めて胎動を自覚することを、医学用語で「初覚胎動」、英語では quickening(クイックニング)と呼びます。超音波で見える赤ちゃんの動きとは区別され、「お母さんが自分の感覚として気づいた時点」を指す言葉です。気づく時期には、赤ちゃんの大きさ、初めての妊娠かどうか、胎盤の位置などが関わるため、個人差が大きいのが特徴です[3]。

妊娠7〜8週ごろ超音波で動きが見え始める
▶
妊娠16〜20週ごろお母さんが胎動に気づき始める
▶
妊娠32週ごろ動きの量が頭打ちになる
▶
臨月〜分娩回数は減らずに続く

2. 胎動はいつから感じる?初産婦と経産婦の目安

胎動を初めて感じるのは、多くの人で妊娠18〜20週ごろです。経産婦さんの中には、16週ごろから気づく方もいます。英国王立産婦人科医協会(RCOG)のガイドラインは、妊娠18〜20週ごろから多くの妊婦さんが胎動に気づき、経産婦さんでは16週という早い時期に感じることもあると説明しています[2]。

米国の医学テキストでも、初覚胎動はおおむね妊娠14〜22週の間に起こり、多くは18〜20週に集中するとされています[3]。なお、ここでいう「妊娠○週」は、最後の生理が始まった日を0週0日として数える週数です。数え方そのものは妊娠週数の数え方と出産予定日の計算で解説しています。

初産婦は妊娠18〜20週ごろが目安

初めての妊娠では、妊娠18〜20週ごろに胎動に気づく方が多くなります。妊娠月数でいうと、妊娠5か月の後半から6か月の初めにあたります。ただし、これはあくまで「多くの人が気づく時期」の目安で、この週数に入った瞬間に誰もが感じるわけではありません。

初産婦さんの場合、胎動がどんな感覚なのかを経験として知らないため、最初の弱い動きを胎動と判断するまでに時間がかかる傾向があります。英国の患者向け資料でも、初めての妊娠では胎動に気づくのがもう少し遅くなることがある、と説明されています[4]。「18週を過ぎたのに、まだよくわからない」という時期があっても、それだけで心配する必要はありません。

経産婦(2人目以降)が早く気づきやすい理由

2人目以降の妊娠では、前回の妊娠で胎動を経験しているため、弱い動きでも「これは胎動だ」と気づきやすくなります。米国の医学テキストは、経産婦は初産婦よりおおむね1週間ほど早く胎動を感じ、早い人では14週ごろから気づくこともあると述べています[3]。

早く気づく理由としては、前回の妊娠で胎動の感覚を経験しており、初期の弱い動きを胎動として認識しやすいことが挙げられます。一方で、2人目だから必ず早いとは限りません。胎動の自覚時期には個人差があり、胎盤の位置やそのときの活動状況などによっても感じ方は変わります。

お腹の外から見て胎動がわかる時期

お母さんが内側から感じるだけでなく、お腹の表面がポコッと盛り上がるのが外から見えたり、パートナーが手を当てて動きを感じられたりするのは、赤ちゃんがさらに大きくなって動きが力強くなってからです。一般には妊娠中期の後半から後期にかけて、外から見てもわかる動きが増えていきます。

ただし、外から見えるかどうかは、赤ちゃんの向きや胎盤の位置、お腹の壁の厚さによって大きく変わります。お母さんははっきり感じているのに、パートナーが手を当てたとたんに動きが止まってしまう、ということもよくあります。家族に感じてもらうための工夫は、第7章で紹介します。

20週を過ぎても胎動がわからないとき

妊娠20週を過ぎても胎動がはっきりわからない方は少なくありません。初覚胎動は22週ごろまで幅があるとされており[3]、とくに初めての妊娠や、胎盤が子宮の前側にある場合は、気づくのが遅くなる傾向があります[2]。この時期は胎動を感じる日と感じない日があるのも普通です。

一方で、妊娠24週を過ぎても一度も胎動を感じたことがない場合は、念のため次の健診を待たずにかかりつけの産婦人科に伝えて確認してもらってください。また、いったん胎動を感じるようになったあと、とくに妊娠28週以降に「いつもより明らかに少ない」「動きが弱い」と感じた場合は、様子を見ずにすぐ連絡することが勧められています。詳しい目安は第8章で説明します。

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3. 胎動はどんな感じ?初めての胎動の感じ方

初めての胎動は、「お腹の中で腸が動いた」「ガスが移動した」と感じるような、かすかでくすぐったい感覚であることがほとんどです。英国の患者向け資料では、胎動の感じ方を「キック」「パタパタとした羽ばたき(flutter)」「シュッと流れる感じ(swish)」「転がる感じ(roll)」などと表現しています[4]。日本語では、ポコポコ、ピクピク、ニョロッ、ムズムズといった言葉で表されることが多い感覚です。

初めての胎動は「腸が動く」ような感覚

初めての胎動は、腸の動きやガスの移動に似た、弱い動きとして自覚されることがあります。医学資料でも、初期の胎動はflutter(羽ばたくような感じ)、bubbling(泡立つような感じ)、tapping(軽くたたくような感じ)などと表現されています。

初期には、泡がはじけるような「ポコポコ」、軽く「ピクッ」とする感覚、何かがゆっくり移動するような感覚として自覚されることがあります。
妊娠週数が進むにつれて胎動はより明瞭になり、軽くたたかれるような感覚から、手足の動きによるはっきりしたキックとして感じられることがあります。

どの表現にも共通するのは、「痛みはなく、弱くて、お腹の奥のほうで何かが動いた」という感覚です。この時期の赤ちゃんは、まだ体が小さく力も弱いため、はっきりしたキックではなく、羊水の中でくるりと向きを変えたり、手足を少し伸ばしたりした動きが、ぼんやりとした感覚として伝わってきます。最初のうちは感じる場所もおへその下あたりに集中しやすく、子宮が大きくなるにつれて、感じる位置も上へ移っていきます。

ポコポコ・ピクピク・モニョモニョ──よくある表現

胎動の感じ方は人によって違い、同じ人でも時期によって変わります。よく使われる表現と、そのときに赤ちゃんがしていると考えられる動きを、ざっくりまとめると次のようになります。

🫧 胎動のよくある表現と考えられる動き

よくある表現 感じ方 考えられる動き
ポコポコ・ポコッ 泡がはじけるような軽い感覚 手足の小さな曲げ伸ばし
ピクピク(一定のリズム) 同じ間隔でくり返す小さな振動 しゃっくりのような動き
モニョモニョ・ニョロッ 何かがゆっくり移動するような感覚 体をひねる・向きを変える
グニュー・ぐーっと押される 内側から押し広げられる感覚 手足や背中を伸ばす(伸び)
ドン・ボコッ はっきりした衝撃 力強いキックやパンチ(主に妊娠後期)

※感じ方と動きの対応はおおよその目安です。お母さんの感覚だけで赤ちゃんの動きを正確に見分けることはできません。

たとえば「胎動がモニョモニョしているけれど、赤ちゃんは何をしているの?」と気になる方もいるでしょう。ゆっくりした動きのときは、羊水の中で体の向きを変えたり、手足を伸ばしたりしていることが多いと考えられます。一定のリズムでピクピクと続く場合は、しゃっくりのような動きの可能性があります。いずれも赤ちゃんの普段の動きで、特別な異常を示すものではありません。

胎動と腸の動き(ガス)の見分け方

初めての胎動は腸の動きとよく似ているため、どちらなのか迷うのは自然なことです。見分けるときの手がかりは、感じる場所とくり返し方です。

腸の動き(ガスの移動)は、お腹の広い範囲で、グルグルと音を伴って感じることが多く、食事のあとや空腹のときなど、消化のタイミングと関係しやすいのが特徴です。一方、胎動は、おへその下から恥骨(ちこつ)の上あたりの、子宮がある位置にまとまって感じることが多く、同じ場所で何度かくり返し起こります。そして週数が進むにつれて、少しずつ回数が増え、感覚もはっきりしていきます。

「何日か続けて同じあたりで感じる」「数日〜数週間のうちに、だんだん強く、わかりやすくなってきた」という場合は、胎動である可能性が高いと考えられます。反対に、一度だけで終わったり、日によってお腹のあちこちで感じたりする場合は、腸の動きのこともあります。どちらにしても、迷う時期は長くは続かず、多くの方は数週間のうちに「これが胎動だ」とはっきりわかるようになります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「まだ感じない」は個人差の範囲かどうか】

胎動を感じ始める時期は、お母さんの側の条件、たとえば初めての妊娠かどうかや、胎盤が子宮のどこに付いているかで大きく変わります。18〜20週という数字は「多くの人がこの辺りで気づく」という目安であって、ここで感じないことが赤ちゃんの異常を意味するわけではありません。

大切なのは、週数の数字と比べることよりも、いったん胎動を感じるようになってからの「その赤ちゃんのいつもの動き方」を知っておくことだと考えています。いつもと比べて明らかに少ない、弱いという変化こそが、医学的に意味を持つ情報です。

4. 妊娠時期別|胎動の感じ方の変化

胎動は、妊娠中期のかすかな感覚から始まり、妊娠後期には力強いキックへと変わります。臨月になると動きは窮屈そうになりますが、回数が減っていくわけではありません。RCOGのガイドラインは、胎動の量は妊娠32週ごろに頭打ちになるものの、妊娠後期の終わりに向けて回数が減ることはないと説明しています[2]。

📅 妊娠時期別の胎動の感じ方

時期 赤ちゃんの様子 胎動の感じ方
妊娠初期(〜15週ごろ) 超音波では活発に動いている ほとんど感じない。経産婦さんでまれに気づくことも
妊娠中期の前半(16〜20週ごろ) 体が大きくなり、動きが子宮の壁に届き始める ポコポコ・ニョロッとしたかすかな感覚。腸の動きと迷う
妊娠中期の後半(21〜27週ごろ) 羊水の中を自由に動き回る はっきりわかるようになり、回数も増える
妊娠後期(28〜36週ごろ) 筋力がつき、動きが力強くなる ドンッとしたキック。痛いと感じることも
臨月(37週〜) 子宮の中がせまくなる 大きな回転は減り、押す・伸びるような動きが中心に

※週数の区切りは目安です。妊娠初期・中期・後期の正確な定義は、妊娠中期・妊娠後期の解説をご覧ください。

妊娠中期:小さくてかわいい胎動

妊娠中期は、胎動を感じ始め、それがだんだんはっきりしていく時期です。最初は「気のせいかな」と思うほどのかすかな動きですが、21〜27週ごろになると、ポンポンと内側から軽く叩かれるような感覚として、毎日のように感じられるようになります。

この時期の赤ちゃんは、羊水の量に対して体がまだ小さいため、子宮の中をくるくると自由に動き回ります。そのため、胎動を感じる場所が日によって、あるいは数時間のうちに変わるのも普通です。強さもまだ控えめで、「小さくてかわいい胎動」と表現する方が多いのもこの時期です。お腹に手を当てて、次の動きを待つ時間が楽しみになる方も多いでしょう。

一方で、まだ動きが弱いため、胎動を感じる日と感じない日があるのもこの時期の特徴です。赤ちゃんが子宮の奥側(お母さんの背中側)を向いて動いているときなどは、動いていてもお母さんに伝わりにくくなります。

妊娠後期:力強いキック、痛いことも

妊娠28週を過ぎると、赤ちゃんの成長に伴って胎動はより力強く感じられるようになります。お腹の表面がボコッと盛り上がるのが目で見えたり、服の上から動きがわかったりすることもあります。感じ方は、赤ちゃんの向きや動きの種類によってさまざまです。

妊娠後期には、ドンッ、ボコッとした強いキックや、グニューっと内側から押されるような動きを感じることがあります。
胎児が手足を伸ばしたり体の向きを変えたりすると、妊娠中期の軽い動きよりも大きく、場合によっては痛みを伴うほど強い胎動として感じられることがあります。

子宮が大きくなって上に伸びるにつれ、胎動を感じる位置もみぞおちや肋骨(ろっこつ)のあたりまで上がってきます。赤ちゃんの向きによっては、肋骨を蹴られて思わず飛び上がるほどの痛みを感じたり、膀胱(ぼうこう)を押されてトイレが近くなったりすることもあります。胎動の痛みとその対処については胎動が痛いと感じるときで詳しく解説しています。

臨月:動きは小さくなるが、なくなりはしない

臨月に入ると、赤ちゃんは大きくなって子宮の中がせまくなるため、くるりと回転するような大きな動きは少なくなります。その代わりに、ぐーっと押す、手足を伸ばす、もぞもぞと位置を直すといった動きが中心になります。

ここで誤解されやすいのが、「お産が近づくと胎動は減るもの」という考えです。動きの種類や強さは変わっても、回数そのものが減るのは普通ではありません。英国の患者向け資料は、陣痛が始まるまで胎動を感じ続けるはずで、陣痛中も赤ちゃんは動くと説明しています[4]。臨月だからと動きの減少を見過ごさないことが大切です。お産が近づいたサインとしてのお腹の張りについては、前駆陣痛の解説もご覧ください。

5. 赤ちゃんは何をしている?胎動のパターン

胎動にはいくつかの決まったパターンがあり、手足の曲げ伸ばし、体の回転、しゃっくりのような動きが代表的です。これらはいずれも超音波で観察されている赤ちゃんの普段の動きで、妊娠初期のうちから少しずつ現れ、週数とともに組み合わさって複雑になっていきます[1]。

手足の曲げ伸ばし(キック・パンチ)

もっともよく感じるのが、手足を曲げたり伸ばしたりする動きです。お母さんの感覚としては、ポコッ、ポンッという軽い衝撃から、妊娠後期にはドンッという強いキックまでさまざまです。足で子宮の壁を蹴ったときは、お腹の外からも足の形がわかるほど盛り上がることがあります。

キックやパンチを感じる場所から、赤ちゃんの向きを推測することもできます。たとえば、みぞおちのあたりで強いキックを感じるなら足が上にある、つまり頭が下の向きである可能性が考えられます。ただし、お母さんの感覚だけで向きを確実に判断することはできません。胎動を感じる場所と赤ちゃんの向きの関係は、胎動の位置でわかることで詳しく解説しています。

体の回転(ローリング)

お腹の中がぐるりと大きく動いた、何かが波のように移動した、と感じるときは、赤ちゃんが羊水の中で体の向きを変えている(回転している)と考えられます。とくに妊娠中期は、子宮の中に余裕があるため、このような大きな動きをよく感じます。

回転の動きはゆっくりで、ニョロッ、モニョモニョ、グニューといった表現がよく使われます。臨月に近づくと子宮の中がせまくなるため、大きな回転は徐々に減り、体を少しずらす程度の動きが中心になります。

しゃっくり様運動

お腹の同じ場所で、ピクッ、ピクッと一定のリズムの小さな動きが続く場合は、赤ちゃんのしゃっくりのような動き(しゃっくり様運動)と考えられます。横隔膜(おうかくまく)が規則的に収縮する動きで、数分から長いときには数十分続くこともあります。

長く続くと心配になる方もいますが、しゃっくり様運動は赤ちゃんの普段の動きの一つです。英国で行われた症例対照研究では、胎児のしゃっくりを毎日感じていた妊婦さんでは、妊娠後期の死産との関連がむしろ低い傾向が示されていました[5]。ただしこれは集団での関連を示したもので、しゃっくりの有無で一人ひとりの赤ちゃんの状態を判断できるわけではありません。しゃっくりと胎動の見分け方は胎児のしゃっくりと胎動の違いで詳しく解説しています。

6. 胎動を感じやすい人・感じにくい人

胎動の感じやすさには、初めての妊娠かどうか、胎盤が子宮のどこに付いているか、そのときの姿勢や時間帯などが関わります。米国の医学テキストは、初覚胎動の時期にはお母さんの年齢、体格、出産経験、胎盤の位置などが影響し、とくに胎盤が子宮の前側にある場合は気づくのが遅くなりやすいとしています[3]。

初産と経産、体型、胎盤が前壁にある場合

第2章で説明したとおり、経産婦さんは胎動の感覚を知っているぶん、初産婦さんより早く気づきやすくなります。これは「感じる力」の違いというより、「胎動だと判断できるかどうか」の違いが大きいと考えられます。

胎盤の位置も大きく影響します。胎盤が子宮の前側(お母さんのお腹側)に付いている状態を「前壁付着(ぜんぺきふちゃく)」といい、この場合は赤ちゃんとお腹の壁の間に胎盤がクッションのように挟まるため、動きが伝わりにくくなります。RCOGのガイドラインも、妊娠28週より前は、胎盤が前側にあると胎動を感じにくくなることがあると説明しています[2]。胎盤の位置は妊婦健診の超音波で確認できますので、気になる方は健診で尋ねてみてください。胎盤そのものの役割については胎盤の基礎で解説しています。

💡 用語解説:前壁胎盤(ぜんぺきたいばん)

胎盤が子宮の前側(お腹側)に付いている状態を指す言い方です。胎盤の位置そのものは珍しいものでも異常でもなく、多くの妊娠でみられます。前壁にあると胎動が胎盤に吸収されてお母さんに届きにくくなるため、気づく時期が遅れたり、感じ方が弱かったりすることがあります。子宮の出口をふさぐ「前置胎盤」とは別のものです。

体型については、「お腹に脂肪が多いと胎動を感じにくい」とよく言われます。皮下脂肪が厚いほど動きが伝わりにくいという考え方には一定の理屈がありますが、米国の医学テキストでは、肥満の方でも胎動の感じ方は大きく変わらないとする報告も紹介されています[3]。体型だけで感じやすさが決まるわけではなく、胎盤の位置や赤ちゃんの向きなど、ほかの条件との組み合わせで決まると考えたほうがよいでしょう。

感じやすい時間帯・体勢

胎動には、一日の中でよく感じる時間帯があります。RCOGのガイドラインは、午後から夜にかけてが赤ちゃんの活動がもっとも多い時間帯だとしています[2]。妊娠後期の妊婦さんを対象にした調査でも、強い胎動を感じた時間として、夕方(72.8%)と、寝る前を含む夜(74.5%)を挙げた人が多く、朝起きたときに強い胎動を感じた人は22.0%にとどまりました[6]。

姿勢も関係します。同じ調査では、静かに座っているときに中等度以上の胎動を感じた人が82.8%だったのに対し、立っているとき(42.2%)や歩いているとき(39.0%)は少なくなっていました[6]。家事や仕事で動き回っているときは、赤ちゃんが動いていても気づきにくいということです。胎動を確かめたいときは、夕食後や寝る前など、静かに座るか横になってお腹に意識を向けてみてください。感じやすい体勢の詳しいコツは胎動の位置でわかることでも紹介しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「感じにくい」には理由があることが多い】

胎動を感じにくいと、自分の体や赤ちゃんに何か問題があるのではと考えてしまいがちです。けれども、胎盤が前壁にある、まだ初めての妊娠で感覚がつかめていない、日中は忙しく動き回っている、といった理由で説明できることがほとんどです。

こうした理由を知っておくと、根拠のない不安を減らすことができます。そのうえで、いったん慣れた胎動の「いつもの量」が明らかに減ったときだけは、理由を探すより先に、すぐ医療機関に連絡するという線引きを持っておくことが大切だと考えています。

7. 家族にも胎動を感じてもらうコツ

家族に胎動を感じてもらうには、赤ちゃんがよく動く時間帯に、静かな状態でお腹に手や耳を当ててもらうのが近道です。お母さんは毎日感じていても、パートナーや上の子が手を当てたとたんに動きが止まってしまい、がっかりすることはよくあります。いくつかの工夫で、感じてもらえる機会を増やせます。

よく動く時間に、毎日同じタイミングで

第6章で紹介したように、胎動は夕方から夜にかけて多く感じられます[6]。家族がそろう夕食後や寝る前の落ち着いた時間を「胎動タイム」にして、毎日同じタイミングでお腹に手を当ててもらうと、動きに出会える確率が上がります。

胎動を感じたときに、慌てて家族を呼んで手を当ててもらっても、その間に動きが止まってしまうことがよくあります。最初から家族に手を当ててもらった状態で、静かに待つほうが感じてもらいやすくなります。赤ちゃんに話しかけながら待つのも、家族にとって楽しい時間になるでしょう。

お腹に耳や手を当てて待つ

手を当てるときは、お母さんが一番よく胎動を感じる場所に、手のひら全体をやさしく密着させてもらいます。指先だけで探すより、手のひら全体のほうが小さな動きも伝わりやすくなります。妊娠後期になれば、力強いキックがはっきり手に伝わるはずです。

お腹に耳を当ててもらう方法もあります。耳を当てていると、胎動の振動が直接伝わるほか、お腹の中のさまざまな音が聞こえることもあります。胎動に伴う音については胎動音の解説で紹介しています。

家族の背中にお腹をくっつける

横になってリラックスしている時間に、家族の背中にそっとお腹をくっつけて、静かにしてみる方法もあります。手を当てる方法に比べて広い範囲で接するため、どこで動いても伝わりやすく、とくに妊娠後期には、赤ちゃんのキックを背中ではっきり感じられることがあります。

家族が胎動を感じられる時期には個人差があります。妊娠中期ではまだ外から感じるのは難しいことも多いため、なかなか感じてもらえなくても焦る必要はありません。週数が進むにつれて、自然と感じてもらえる機会は増えていきます。

8. 胎動が少ない・急に減ったときは

いったん胎動を感じるようになったあと、とくに妊娠28週以降に「いつもより明らかに少ない」「動きが弱い」と感じたら、翌日まで待たずに、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡してください。英国の患者向け資料は、妊娠28週以降に胎動の減少を感じたらすぐに連絡し、翌日まで待たないこと、家庭用の心音計に頼らないことを勧めています[4]。

胎動の減少は、赤ちゃんに十分な酸素や栄養が届いていないことなどのサインになることがあるため、医療機関では心拍のモニターや超音波で赤ちゃんの状態を確認します。一方で、RCOGのガイドラインによると、胎動の減少を感じた妊婦さんのおよそ70%は、その後の妊娠経過に問題がありませんでした[2]。連絡することは大げさではなく、赤ちゃんの状態を確かめるための行動です。

⚠️ すぐにかかりつけの産婦人科へ連絡したいとき

・妊娠28週以降で、いつもの胎動より明らかに少ない、弱い、または感じない
・横になってお腹に意識を向けても、いつものような動きが戻らない
・胎動の減少に加えて、出血、破水、強いお腹の痛みや張りがある
このような場合は、様子を見ずに連絡してください。家庭用の心音計で心音が聞こえても、それで安心と判断しないでください。

胎動を数える方法として、日本では「胎動カウント」を指導されることがあります。ただし英国では、決まった回数を記録する方法を全員に勧めるだけの根拠は十分ではないとして、数字そのものよりも「自分の赤ちゃんのいつもの動き方」を知っておくことを重視しています[4]。胎動カウントの具体的なやり方は胎動カウント、胎動が少ない日の考え方は胎動がいつもより少ないときで詳しく解説しています。

反対に、胎動が力強くなったことを心配する声もよく聞かれます。前述の英国の研究では、最後の2週間で胎動が強くなったと感じていた妊婦さんは、変化がなかった人に比べて妊娠後期の死産との関連が低く、一方、強さを伴わずに回数が減ったと感じていた人では関連が高くなっていました[5]。これも集団での関連であり、個人の確率を示すものではありませんが、「強い胎動そのものより、少なくなる変化に注意する」という考え方の裏付けになっています。

9. 遺伝の視点:胎動を感じる前に決める検査

赤ちゃんの染色体の病気について調べる出生前検査の多くは、お母さんが胎動を感じ始めるよりずっと前の、妊娠初期に受ける検査です。胎動を感じるのは妊娠18〜20週ごろですが、母体の血液で赤ちゃんの染色体の数の変化を調べるNIPT(新型出生前診断)は、それより前の妊娠初期から受けることができます。結果によって確定検査を検討する場合も、検査を受けられる週数には限りがあるため、検査を考えるかどうかは、胎動を感じる前の時期に決めることになります。NIPTを受けられる時期については、ダウン症はいつわかる?NIPTの時期で解説しています。

また、胎動の強さや回数、しゃっくりの多さから、赤ちゃんに染色体の病気があるかどうかを判断することはできません。「胎動が激しいとダウン症では」「しゃっくりが多いのは染色体の異常のサインでは」といった不安の声は少なくありませんが、胎動を手がかりに染色体の病気を見分ける方法は確立されていません。この点は胎動の強さでダウン症はわかるのかで、臨床遺伝専門医の立場から詳しく解説しています。

ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医がNIPTの前後に遺伝カウンセリングを行い、検査でわかること・わからないことを説明したうえで検査を実施しています。胎動を感じるのを楽しみに待つ時期の前に、どのような検査があるのかを知っておくことも、妊娠中の選択肢の一つです。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 2人目は胎動を早く感じますか?

早く感じることが多いです。経産婦さんは胎動の感覚を知っているため、弱い動きにも気づきやすく、初産婦さんより1週間ほど早く、早い人では16週ごろ、まれに14週ごろから感じることがあります。ただし個人差があり、2人目だから必ず早いとは限りません。

Q2. 妊娠14週のお腹のポコポコは胎動ですか?

可能性はゼロではありませんが、腸の動きであることのほうが多いと考えられます。お母さんが胎動に気づくのは多くの場合18〜20週ごろで、14週ごろに気づくのは経産婦さんの一部です。数週間のうちに同じあたりで、だんだんはっきりしてくる場合は胎動の可能性が高くなります。

Q3. 妊娠20週で胎動を感じない日があっても大丈夫ですか?

妊娠20週ごろは、胎動を感じる日と感じない日があるのは普通です。初めての妊娠や、胎盤が子宮の前側にある場合は、気づくのが遅くなったり、感じ方が弱かったりします。いったん胎動を感じるようになったあと、とくに妊娠28週以降に明らかに減った場合は、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡してください。

Q4. 胎動が激しいと男の子ですか?

胎動の強さや回数で赤ちゃんの性別がわかるという医学的な根拠は確認されていません。胎動の感じ方は、赤ちゃんの向きや胎盤の位置、お母さんの姿勢などによって変わります。性別は妊婦健診の超音波などで確認します。

Q5. 胎動の激しさはダウン症と関係がありますか?

胎動の強さや回数、しゃっくりの多さから、ダウン症などの染色体の病気を判断することはできません。胎動を手がかりに染色体の病気を見分ける方法は確立されていません。染色体の病気について調べる検査には、妊娠初期から受けられるNIPTなどの出生前検査があります。

まとめ

胎動は、お腹の赤ちゃんの動きをお母さんが感じることです。赤ちゃんは妊娠7〜8週ごろから動いていますが[1]、お母さんが気づくのは多くの場合18〜20週ごろで、経産婦さんでは16週ごろから感じることもあります[2]。初めての胎動は腸が動くようなかすかな感覚で、妊娠中期の小さくかわいい動きから、妊娠後期の力強いキックへと変わっていきます。

感じ始める時期には個人差があり、初めての妊娠や胎盤が前壁にある場合は遅くなりがちです。臨月になっても胎動の回数は減らないのが普通で、いったん慣れた胎動が明らかに少なくなったときは、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡してください[4]。胎動の強さで性別や染色体の病気を判断することはできません。

🧬 NIPT(新型出生前診断)をご検討の方へ

NIPTは、胎動を感じ始めるよりずっと前の妊娠初期に受けられる検査です。ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医が、検査でわかること・わからないことを説明したうえでNIPTを実施しています。結果によっては確定検査まで院内で対応しています。

参考文献

  • [1] de Vries JIP, Visser GHA, Prechtl HFR. The emergence of fetal behaviour. I. Qualitative aspects. Early Hum Dev. 1982;7(4):301-322. [PubMed 7169027]
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  • [3] Landess M, Christman M, Mikes BA. Fetal Movement. StatPearls. StatPearls Publishing; 2026. [NCBI Bookshelf NBK470566]
  • [4] Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. Your baby’s movements in pregnancy. Patient information leaflet. 2019. [RCOG]
  • [5] Heazell AEP, Budd J, Li M, et al. Alterations in maternally perceived fetal movement and their association with late stillbirth: findings from the Midland and North of England stillbirth case-control study. BMJ Open. 2018;8(7):e020031. doi:10.1136/bmjopen-2017-020031. PMID:29982198. [PubMed 29982198]
  • [6] Bradford BF, Cronin RS, McKinlay CJD, et al. A diurnal fetal movement pattern: Findings from a cross-sectional study of maternally perceived fetal movements in the third trimester of pregnancy. PLoS One. 2019;14(6):e0217583. doi:10.1371/journal.pone.0217583. PMID:31188847. [PubMed 31188847]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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